クウラ先生のしくじり授業   作:クッコロ

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 前回、書きためてから投稿すると言いました(ホモは嘘つき)。
 進捗状況とか活動報告にぼちぼちあげているので気になる方はどうぞ。


2 原作を勘違いしちゃった兄貴

 この世に生を受けて早一ヶ月、俺は、すっかり疲れ果てていた。なんのことはない。環境がガラリと変わったことによるストレスのせいだ。

 せめてもの救いは、転生者のお約束である例のアレがなかったことくらいだろうか。

 なんというか、こう……情け無用の強靱大人パワーでがばーっと股をおっぴろげにされて、秘密の花園に注がれる舐めるような視線に耐えながら、おむつの中にドヴァーっと出た糞の処理をされたり、妙齢の女人の懐からぽろりーんとこぼれ()でたる豊満な乳房にむしゃぶりついて「さっく・まい・ままず・てぃてぃーず」を強要されたりする羞恥刑のことだ。

 流石は宇宙人の科学技術といったところか。危うく俺を殺しかけたあの装置――保育カプセルがそういう雑事を全部やってくれるので手間がかからないらしい。そればかりか意識がない間に睡眠学習による宇宙公用語のすり込みも行われていたようだ。ダディ――救出劇がクールだったのでダディクールにあやかってそう呼ぶ――の話す言葉があまりにも違和感なく聞こえていたので全然気づかなかったが、よくよく考えれば日本語がデフォルトな俺に宇宙人語を理解できるのはおかしな話である。当たり前だよなぁ。

 

 まあ、もっとも一般宇宙人脱糞プレイとママのおっぱい授乳プレイについては、物理的に不可能なので心配の必要はなかったくさいのだが。

 

 排泄物については、ごく単純な理由だ。俺の種族は、う〇こしない。アイドルかな? 原理は馴染みのない用語が多すぎて説明されてもうまく理解できなかったが、真空無重力下での活動が可能な宇宙適応生物には、ままある特徴らしい。

 まあ、そういう進化をした理由についてはなんとなくわかる。だって嫌だろう。無重力なのだ。不意にこらえようのない便意をおぼえ、小惑星の陰などでむざむざとうかつにも用を足そうものなら、ひり出した糞が容赦なく宙に浮いて飛んでくる。汚い(小並感)。

 

 授乳については、そもそもマミィが存在しなかった。ダディが三行半を叩きつけたとか、逆に愛想つかされたとかではない。

 用意する物は、どこのご家庭にもある、優秀な人物から採取した精子と卵子のペア。これを体外受精させて培養液の入った装置にセットするとぉ。えー、これでなにができるの~、ワクワクウラさ~ん(煽り)。じゃーん、遺伝的に優れた能力を持つ可愛い(?)赤ちゃんのできあがりー。わー文明の利器ってスゲー(棒読み)。

 俺誕生秘話である。こうやって子供作るのが最近のブームらしい。なんか複雑な気分だ。グレそう。

 

 話がそれた。

 

 こうして保育カプセルで一週間の養育期間を経て無事に……生後一時間もしない内に死にかけるも特に問題なくロールアウトされた俺。もう普通に歩いたり、飯食ったり出来るようだ。身長も小学校高学年くらいある。いや、はえーよ。そう思うのは、やはり地球人の感覚ゆえなのだろうか。

 

 新生活の拠点は、惑星クウラだった。いや、さみーよ。多分、地球人でなくともそう思う。レジャーで時折訪れるならまだしも、ここで生活するとか何の罰ゲームだ――と思うじゃろ?

 割と平気だった。

 寒さを感じないわけではない。むしろ、地球人の頃より感覚が鋭敏だ。わずかな気温や気圧の変化すらも感じ取ることができる。その上で、それが苦にならないのだ。尻尾といい甲殻といい、てっきりこの体は爬虫類のような変温動物の流れを汲む種族で寒さに弱いものと思っていたが、特にそんなことはなかった。極寒のなかにあって体温はおよそ一定で、体温低下による体調不良どころか、シバリングによる体の震えすら起こらない。なんだこの生き物。ダディがことあるごとに高笑いしながら言ってる「宇宙最強」は、あながち間違っていなかったりするのだろうか?

 

 そんな具合に、寒冷地で生活する上での懸念が解消されていくにつれて、ここでの生活も悪くないように思えてきた。

 周囲の反応や当人の態度から察するに、ダディは王様である。衣食住に困ることもなさそうだ。俺ら裸族だから衣は要らないが。

 

 星の真ん中、地軸の上に建てられた無数のドームが連なる白亜の宮殿。巨大な蟻塚にも似たそれは、周囲の雪景色に自然と溶け込み調和していた。土台となる小高い丘陵は、わざわざ平地の雪を退け、中空状の強化石材を設置した上で周囲に土を盛って均したようで、中腹に宇宙船の発着場、内部には、広大なドック、荷物の集積場、部下たちの居住区や慰労施設諸々を包括した小規模の都市、様々な工業製品の生産プラント、それから地下牢と拷問部屋があった。

 

 俺の寝室は、一番天辺にあり、窓からは、透明感のある水晶の葉が茂る針葉樹の森と磨かれた鏡のような氷湖が、紺碧(こんぺき)の朝にきらめき、石楠花(しゃくなげ)色の夕に染まる姿を一望できる。なんか視界の隅に赤黒い水たまり(意味深)が見えるのは気のせいだろう。

 

 空気が綺麗で住居は清潔、ダディの言っていたとおり飯もうまい。おまけに世話係として侍る部下たちには、何故か筋肉ムキムキが多いので、持病の「マッチョ欠乏症」の発作に苦しむ心配もない。寒冷地適性の高い体積の大きな人材を採用したのだろうか? 何にせよ大きいことは良いことだ。

 

 と、ここまでは良かったのだ。ここまでは。

 

 いやー(庶民メンタルに王侯貴族の暮らしは)きついっす。

 側仕えが常に最低二人は侍っていて気が休まらない。ダディは「藁束(わらたば)のようなものだ。いないものとして振る舞うがよいぞ」って言うけれども、これ無理だゾ。しかも俺を……というかダディを皆が恐がっているせいで、俺の一挙手一投足で周囲が縮み上がるし……。ましてや声をかけようものなら……。ああ、クロワッサンみたいな僧帽筋していた可憐なメイドと腹筋で大根下ろせそうだった護衛の彼には悪いことをしてしまった。

 今のところダディを除いて唯一まともに接してくれているのがベリブルという初老の女執事くらいしかいない。このままでは、コミュ力が落ちてしまう。

 

 あと他にも、部屋が広すぎて落ち着かないと漏らせば、部屋を設計したデザイナーが処刑されそうになるし、飯がちょっとでも気に入らないと食道楽のダディが海原雄山みたいなキレ方してシェフを処刑しようとするし、俺が軽い気持ちで「プロレス見てえな~」などとつぶやこうものなら、翌日には屋外特設リングが氷湖の上に設営され、宇宙プロレス連盟に無理言って派遣してもらったレスラーたちがムンムンと精気に溢れた艶めかしい肉体をクソ冷たい氷点下の外気にさらしながら心臓停止デスマッチを執り行い、敗者を湖に沈めて処刑しようとするし……。なんで君たちそんな処刑好きなの? 命を大切にしないやつは死ね(支離滅裂な発言)!

 

 いや、まあ、プロレス観戦が楽しかったのは認める。この体に精神が引っぱられているのか、目の前で残虐殺戮ショーが行われてもあまり動じなかったし。むしろ、興奮したし。

 特にドーレ選手、いいね。分厚い筋肉とほどよい脂肪の乗ったまさにザ・レスラーといった体型で、深い緑色の肌をしていた。生意気な若手ヒールレスラーというコンセプトだろうか? 相手の頭を脊柱ごとぶっこ抜いて凶器として扱うパフォーマンスは、俺の一番好きな仮面ライダー「シンさん」を彷彿とさせて最高に燃えた。試合後にツーショットで撮ってもらった写真は、ダディの写真の隣に飾ってある。

 そして、それだけ入れ込んだ選手だからこそ、反動で罪悪感がすごかった。聞けばベッパー星のマグマの中にある大陸出身というではないか。環境が真逆過ぎて絶対に体おかしくなるだろ、これ。実際、鼻声だった。なんでこんな極寒の星に派遣したんだよ、俺のせいだよチクショウ(かぶせ気味)。

 

 こんな具合ですっかり精神が疲弊してしまった俺は、部屋にこもってふさぎ込むようになってしまった。迂闊(うかつ)な言動でまたぞろトンデモナイことになりそうで嫌になったのだ。

 

 そして、当然、俺がこんなことになってしまえば、居ても立ってもいられない人物がいる。

 

「クウラ! なんだその覇気のない為体(ていたらく)は! そのような有様では、この父のような偉大な男になれんぞ!」

 

 特にひねりもなくダディだった。

 

「お前の性根をたたき直してやる! さっさと起きてついて来るがいい」

 

 尚口では厳しいことを言っているが、全然怒っていないことは明白である。べ、別に親子の絆でわかったとかじゃないんだからね!

 いや、だって、小脇にギター抱えて、使い古されたでっかいリュック背負っているもの。はみ出してる串は、マシュマロ焼くやつでは?

 直火で炙ったマシュマロに弱い俺は、言われるがままホイホイとついて行っちゃったのだ。

 

 んで。

 

 湖の側でキャンプ設営していたら、森から熊が出た。

 淫乱でも、テッドでもない。ただのベアーだった。

 全体的に赤黒い毛並みをしていた。頭に無数の角、腕や肘に鉱物様の打撃突起を備えている。

 デカイ。なんか一トンくらいありそう。どうやったらそんなに太れるんだ。羨ましい。痩せたい人間からすると信じられないことかもしれないが、ボディビルダーにとって太れることは一種の才能である。

 

 食が細い上に太りにくい体質だった前世の妄執から、逆恨みとしか言い様のないジットリとした視線を向けていると、相手もこちらに気が付いたのか、クゥーン、と迫真の鳴き声をあげて走り寄ってきた。

 わー、かーわいー。目が血走ってて、口元からボトボト涎がこぼれてりゅぅ。美味しいお肉みーつけたって思ってそう。

 よく見ると毛の一部にまばらな白色が見いだせる。ああ、逆か。元々白い毛並みが赤く染まっているのだ。

 

 なぞは全て解けた。

 

 ダディが抹殺したとかいう原住民。その遺棄された死体をモリモリ食べて大きくなったんだな、こいつ(確信)。すっかり人の味を憶えたって顔をしていらっしゃる。いやらしい。やっぱ好きなんですねぇ。

 

 一人でいるときに遭遇したなら恐怖でしかない。だが、残念だったな。俺には、最新鋭の光線銃(ブラスター)で武装したダディの部下たちがついているのだ(他力本願)! 負ける気がしない!

 さあ、スケ=サン(モブ)、カク=サン(モブ)、その他大勢! 血に飢えた畜生を文明の利器でこらしめてやりなさい!

 ……などと口にしてはいないのだが、わらわらと自主的に集まってきた銘々が非人道めいた一糸乱れぬフォーメーションを組み、構え、射撃。色とりどりの光線が飛び交い、哀れクマ=サンは爆発四さ……。

 

 

 

 無傷ゥ!

 

 

 

 毛ほどの怪我も負ってねぇ。うせやろ、はぁ~(クソデカため息)ほんまつっかえ、辞めたらこの仕事?

 もうめちゃくちゃだよ。

 光線に驚いて一瞬だけ動きを止めた熊は、それがなんら障害にならないことを悟ったのか、再度、吶喊を開始した。

 果敢にも徒手空拳で反撃を試みる者をなぎ払い、なんか手から爆発するグミみたいなのを連射する者は歯牙にもかけず、こっちに近づいて来る。

 ファッ!? なんで手近にいるズタボロの部下を食べないんですかねぇ。あっ(察し)、もしかして小さくて柔らかい肉がお好みと? お前、ショタコンかよう(絶望)。

 

「ははーん、さてはここ、モンスターハンターの世界だな(名推理)」

 

 アホなことを口走ったのは、余裕の表れではない。熊は悪路を車と同じ速度で走破できる。子供の足で、ましてや、積もった雪に足を取られる雪上で逃げ切れる道理などなかった。

 万歳アタックで覆い被さるようにして襲い来る熊を前に、諦観から思考を放棄した。せめて苦しまずに逝けることを願い瞑目する。

 

 一秒。また一秒。

 

 心音だけがこだまする永遠にも等しい数瞬が過ぎるが、いつまで経っても衝撃が来ない。

 恐る恐る目を開く。

 そして見た。

 視線の先で、もう最近すっかりおなじみとなった赤いマントが翻る。

 

「ダディ!」

 

 コルド大王が逞しい両腕を広げ、伸び来たる熊の腕とがっぷり四つに組んでいた。

 無茶だ! 逃げろ! ――と思ったのは、最初の内だけ。涼しい顔でいるダディに対し、肉体派おじゃる丸のような苦悶の表情を浮かべる熊。最早、この時点で雌雄は決していた。

 

「部下をたやすく一蹴した手並み。まずは褒めおこう。だが、貴様には決定的に不足しているものがある。わかるか?」

 

 十倍近い体重差を物ともせずに熊を押しやりながら、不敵な笑みを浮かべてダディは告げる。

 

()()だ」

 

 白い甲殻に覆われた前腕がにわかに膨らむ。厚い毛皮と鉱質の突起に守られた熊の腕に、紫色の太い指が食い込み、カアン、と甲高い音を立てた。潰れた肉の内側で、骨が砕ける音だった。

 

「グガアアアア!」

「唾を飛ばすな」

 

 たまらず絶叫をあげるその(あご)を棍棒と見紛(みまご)う膝が捉える。

 ゴム鞠が跳ねるように勢いよく上空へ打ち上げられる熊。その後を、地を蹴り、倍する速度で追いすがるダディ。重力と慣性を完全に無視しているとしか思えない鋭角的な軌跡を空に描き、熊の軌道上へ先回り。体を翻し、()()()()()

 

「頭が高い」

 

 しなる尻尾が毛と肉を抉り、血飛沫をまき散らしながら、体を打ち据える。

 来た道を逆しまに辿る巨躯。着地点には、再び当然のように控える紫色のシルエット。

 

「毛並みを整えろ」

 

 とどめの蹴りが吸い込まれるように胴体へ直撃すると、熊の体はくの字に曲がり、地面と水平に飛んで、湖に浮かんだ氷山にめり込んで止まった。

 

 これは……落ちたな。

 そう思い、ダディを振り仰いだのだが、その視線は未だ熊が飛んでいった方に向けられている。

 いぶかしく思い、俺もそちらに視線を向けると……なんか光ってる。

 氷山から這い出してきた熊の角が帯電し、口元に青白い光の球が形成されているではないか。これは、ゴジラやスペースゴジラのように撃つ……のだろうか。撃つのだろうな。

 

「くくっ、つくづく見苦しい真似を……破ぁ!」

 

 対するダディは、嘲るように唇を歪めると、右腕を頭上に掲げた。刹那、その総身を薄紫色のオーラが包み、掌に小さな光が灯る。それは見る見るうちに膨らみ、空を覆い隠すほどの大きな光の玉となって、白い森を毒々しい紫一色に染め上げた。

 その威容を前にして、怒りに歪んだ熊の顔が怯えの色を孕む。直後、逃げるように青い光の奔流が解き放たれ、一瞬遅れて巨大な光球が投じられた。

 軌道上でぶつかり合った両者は、わずかに拮抗することもなく、紫が青を飲み込み、熊に着弾。

 炸裂したエネルギーがまばゆい光を放ち、俺は思わず目を背けた。

 地面が揺れ、風は哭き、轟音が鼓膜を震わせる。

 大きな三本指の足で地面を掴み、踏ん張って耐えていると、次第に揺れは収まった。

 

 ゆっくりと開いた瞳に映るのは、巨大な穴だった。熊も氷山もない。湖の底がぽっかりと円形に抉られ、地の底へ続くと言わんばかりのそこに、周囲の水が流れ込み、幾筋もの滝を形作っている。

 

「ふふん。禽獣(きんじゅう)とは哀れなものよ。力の差を理解できず、頭の下げ方もわからない。圧倒的な強者を前に、死、以外の選択肢など……端から存在しないのだからな」

 

 不意に一瞬、陰りのある表情を浮かべるも、またいつものごとく高らかにガハハ笑いをするダディ。

 呆然と突っ立つ俺の頭をポンポンと撫でると、風になびくマントを翻し、何事もなかったかのようにテント設営に戻って行った。

 

「ダディ、クール」

 

 一族生まれってスゴイ。改めて俺はそう思った。

 

 このあと滅茶苦茶キャンプした。

 

 尚夕餉は、一族の長が直々に肉を切り分け、家来にサーブするという古き良き蛮族スタイルで振る舞われた。俺とベリブルのばっちゃだけは、ダディの奏でるアコースティックギターの音色をBGMに楽しい会食となったが、同席する部下一同は、恐縮して味がわからないという顔をしていた。

 

 こわい上司の休日につきあわされる部下は、とってもかわいそうだなっておもいました(こなみかん)。

 

 いや、出勤扱いで危険手当つきの給与が支給されるんだし、やっぱ全然可哀想じゃねーわ(熱い手のひら返し)。

 

――――――――――――――

 

 さて、こうした一幕を経て、ダディの「超能力」を目撃した俺は、これをきっかけにある可能性について考えるようになった。

 

 ――この世界、もしかして創作物に近い世界なのではないか?

 

 いわゆる理論物理学の論説の一つ、多元宇宙論である。

 この手の論説は、トレーニング関連の論文を読むかたわら気晴らしの娯楽に流し読みしていた記憶がある。

 

 例えば『真夏の夜の淫夢』をはじめとしたホモビの世界を「役者さんが演技しているのではなく、全て実在する本物の世界」と仮定しよう。その世界をたまたま動画サイトでうっかり観測してしまったノンケが、実在する人物をキャラクターとして切り出し、性格や設定を脚色して継ぎ接ぎすることで『BB先輩劇場』という創作物が生まれるとする。この淫夢とBB先輩劇場の関係がこの世に存在する全ての創作物に当てはまるというのだ。つまり逆説的に、創作物の元となった世界は、細部が異なるも異世界として実在する(強弁)。

 

 という考えだ。

 

 一見すると荒唐無稽(こうとうむけい)であるが、実際に異世界転生したと思しき俺がいるので一考せざるを得ない。

 そう、別にここが「ただの異世界」なら、それはそれで別にどうでも良い。むしろ喜ばしいとすら思う。

 異世界ですらない元いた世界の遠く離れた星の出来事で、ダディの使った超能力もただの発達した科学の産物である。それなら尚よろしい。

 

 しかし、ここが物語の世界で、何かしらのアウトラインに沿ってイベントが起こるとすればどうだ?

 俺やダディの立ち位置とは何だ?

 

 混迷する宇宙世紀――及び腰の銀河パトロールは、何の役にも立たず、残忍で凶悪な宇宙生物が幅を利かせる末法の世界。そんな乱世に覇を唱える一人の男がいた。最強の一族、コルド大王。息子クウラと共に銀河を駆け、秩序の光をもたらすべく奮闘する愛と勇気の物語が今幕を開ける!

 

 絶対ない。

 俺の目から見てもダディは、歪みねえ暴君だからね。仕方ないね。

 それにこの体になってみて分かった。おそらく脳の構造が地球人と違う。物の捉え方、感じ方にいくらかの相違が見受けられる。

 特に殺生に対する忌避意識の緩さは、特筆すべきものがある。緩い。とにかく緩い。たぶんドラゴン田中の尻の穴よりも緩い。

 理非知らぬ小さな子供が蟻を潰して無邪気に笑っているのとは、わけが違う。地球人の倫理観を丸々有していて、それでも尚目の前で行われるデスマッチ(直球)に眉をしかめることなく、躍動する筋肉を凝視して歓声を上げていたのだ。相当なものだろう。邪悪と呼んで然るべき精神構造をしている。

 元々俺にとって脳や人格などは、良質な筋肉を育むための歯車やアプリみたいなものだ。多少仕様変更がなされようとも構わないといえば構わない。

 ただ、客観的に見て物語の主人公の性格、性質とはかけ離れていると思う。

 ピカレスクロマンの可能性は微レ存だが、普通に考えれば敵役だろう。宇宙で幅を利かせている残忍で凶悪な宇宙生物そのものである。いずれ、悪絶対殺すマンにマウントをとられて正義の力で死ぬまで殴られる運命にあるのだ。

 

 では、どうすれば生き残れる?

 善人になる? 根から邪悪なこの一族が? 表面上取り繕うことは出来るだろう。少なくとも俺は。

 だが、ダディ、コルド大王は無理だ。彼は絶対に変わらない。

 いや、少し違うか。

 

 

 

 

 

 変えたくないのだ。他ならぬ俺が。

 

 

 

 

 

 その性質は生来悪であっても、そこには彼なりの美学が垣間見えた。優しさがあった。俺はそれを貴いと感じたのである。

 きっとそれは、仮初めの善性を得ることで変質してしまう。酸素に触れた鮮血が醜く濁るように。

 俺にはそれが許せない。耐えられない。

 彼には、悪の大王様として、いつまでも快活に笑っていて欲しいのだ。

 

 故に俺は、原作を特定することにした。

 先に述べたように、杞憂であるならそれはそれでいい。「多元宇宙論なんて嘘だゾ。縁もゆかりもない異世界転生ゾ」とか「原作のある世界だけど主人公と一切関わらない一般通過悪の一族ですが、なにか?」とか。

 しかし、懸念が的中しているなら、原作を知ることで様々なアドバンテージを得られる。主人公に先んじて封殺することも夢ではない。

 俺が全く原作を知らない世界の可能性もあるが、創作物として俺が観測した世界に記憶なり魂なりが流れ着いたと仮定した方が筋は通る。読んだ原作の印象が薄くて忘れている場合、或いは、転生という未知の現象に関わる不具合で()()()()()()()()場合は……これもうわかんねぇな。

 ともかく、物は試しだ。推測してみよう。

 まず、周囲の人間の名前と姿で思い当たるものがない。このことから、完全に原作と一致する世界でなく、あくまで似たような世界であると仮定。

 次に、今の自分の周囲をとりまく環境にあって、昔の自分のそれにないものを片端から列挙していく。

 

 多種多様な宇宙人、飛び交うブラスターの光、宇宙船の艦隊、進んだ科学、超人的な身体能力、物理法則を無視した動き、超能力、悪の宇宙帝国、父の猥褻な乳。

 

 それでいて且つ俺が知っているとなると候補は限られる。

 

 

 即ち――。

 

 

「ははーん、さてはここ、スターウォーズの世界だな(名推理)」




 次回「目指せシスの暗黒卿! 下せオーダー66! ジェダイの騎士は皆殺しだ! の巻」へ続く。


 非現実的な世界の景色や建造物を想像するのってワクワクしますよね。書いてて楽しいのですが、考察に夢中になって筆の進みが悪くなるのが玉に瑕です。

 多元宇宙論の解釈が間違っているかもしれませんが、許してください。何でもしますから。この世界では、こういうものとしてハイヨロシクー。


・ダディの悪行に対する兄ちゃんの見解
 鎌倉武士や戦国武将みたいなものでは? お外の国の有名な支配者たちも「占領下の地域は、自分が住んで目を光らせるか、旧来の統治方法を継続しよう。無理? じゃあ、そこにあるもの全部破壊しよう。特に外道行為は最初になるべく全部まとめてやろう」とか「男たる者の最大の快楽は敵を撃滅し、これをまっしぐらに駆逐し、その所有する財物を奪い、その親しい人々が嘆き悲しむのを眺め、その馬に跨り、その敵の妻と娘を犯すことにある」とか言ってるし多少はね?


・ドーレ
 スタンド使いが引かれあうように、原作の親衛隊員と出会いました。将来、プロレス団体から追放されて無職となり、途方に暮れているところにクウラ兄ちゃん直々の熱烈歓迎オファーが来て困惑することになるでしょう。


・品位
 クソ汚いミーム汚染に脳をやられている主人公にもぶっ刺さるお言葉。
 †悔い改めて†
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