クウラ先生のしくじり授業   作:クッコロ

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 本来予定していた三話が長くなったので、後半は四話として後日投稿します。八割方書けているので、早くて明日、遅くとも明後日月曜日の8:10には、投稿できると思います。


3 ばっちゃを本気で怒らせちゃったおバカさんな兄貴

「なるほど。つまり、有事の際は、フォ……『気』とやらがエネルギー通貨であるアデノシン三リン酸(ATP)の代わりに、運動や生命維持にあてられると?」

「はい、左様でございます。流石はクウラ様、聡明であらせられる」

「下らんおべんちゃらは不要だ。貴様ら、家庭教師が優秀なだけだろう。誇るがいい」

「こ、これはこれは、お褒めにあずかり光栄です」

 

 ワハハ。ワハハ。

 

 原作推定後しばらくして、俺は空間投影型の立体プロジェクターのある会議室で科学者たちと楽しく歓談していた。

 周辺銀河の勢力を確認したが、ジェダイのジェの字も類似する勢力もなし。辛うじてそれっぽい銀河パトロールは今のところ恐るるに足らず。ならば来たるべき正義の主人公との戦いに備えて早速修行だ……とならないのは、ひとえに俺が体を創る者(ボディビルダー)であり、鍛える者(トレーニー)でもあるが故だ。

 修行とは鍛錬であり、鍛錬とは科学なのである。

 生理的な化学反応を利用して、より強い肉体を作る。そのためには、まず正しい知識が必要だ。

 

 それなくして鍛錬を行うという無謀、例えるなら――。

 

 

 

 

 

 『真・女神転生 公式パーフェクトガイド(初版)』を参考にゲームを攻略する。

 

 

 

 

 

 ――という暴挙に等しい。

 

 初版とはいえ二百三十九ページ中、百五十箇所以上の間違いがある「パーフェクト」ガイドとはいったい……うごごご!!

 

 参考にしたら逆に迷うような情報で労力を無駄にしたくない俺は、まず自分の常識とこの世界の常識をすり合わせ、知識を補完することにした。

 世界が違えば根本的な物理法則からして違うかもしれない。氷が冷たい、太陽がまぶしい、物体が重力に引かれて地面に落ちる。なまじ己をとりまく法則が地球のそれと酷似しているため気づきにくいだけで、とんでもない間違いが潜んでいる可能性だってある。

 特にダディが使っていたフォース(仮)。明確に存在をにおわせているこいつがどういった影響を物理法則に与えているかなど想像もつかない。

 ひとまず、高校生レベルの基礎的な理数系知識については、教育係でもあるベリブルのばっちゃを質問攻めにして確認がとれた。

 

 しかし、流石にばっちゃの知恵袋も、俺の必要とする専門知識には対応していない様子。

 

 そこで我が居城――命名「魔城ガッデム」で働く知識層の中から数名の専門家を家庭教師として召集し、話を聞くことにした。

 最初は、戦々恐々としていた科学者たちだが、茶と菓子でもてなし、真摯に話を聞くにつれて次第に打ち解け、段々と語りにも熱が入ってくるようになった。俺に対する教示という形で行われていた会合も、一時間ほどで議論という形式へ自然と移行し、各々が持論を突き合わせている。

 

 こうなるのも無理はあるまい。

 基本的にコルド軍は、体育会系だ。大人の体、小学生の心、ゴリラの身体能力を持った逆コナンくんみたいな連中をダディが恐怖と暴力によって屈服させているのだ。

 

「むやみやたらと乱ぼうしたらあかんやで」

 

 とか

 

「りゃくだつは、きちんとせつどをもってやるやで」

 

 とか

 

「ごはん食べるときは、ちゃんといただきますしろ。殺すぞ」

 

 とか、そういう当たり前のことを一から教えて従わせている破落戸(ならずもの)――ダディの言う「品位のない畜獣ども」が大多数を占める集団である。

 

 そんな中で、科学者たちは圧倒的少数派だった。それもほとんどが科学の進んだ惑星から拉致同然に連れて来られた古代ローマ式専門職能奴隷である。肩身の狭い思いをしていたであろうことは、想像に難くない。

 反乱防止のため同郷の者とは離れ離れの部署に配属され、ノリと本能だけで生きてる一般兵卒たち相手に、日夜神経をすり減らしてきた。そんな彼等が一堂に会せばこうもなろう。

 

 好きな専門分野について語り合える仲間がいない。この辛さ、わかりみ深い。俺自身、身に染みて理解している。

 

 スクワットのスタンス幅と爪先の向きについて意見を貰いたいというのに、ジムのトレーナーから『膝を爪先より前に出さないフォームでやりましょう!』というトンチンカンな答えが返ってくる(絶句)。その時の裏切られたような気持ちときたら……。

 この状況を非トレーニーにもわかりやすく例えてみよう。「自転車に詳しいという友人に『今度レースに出るからセッティングについて相談に乗って欲しい』と頼んだら『俺なら補助輪つけるね』と嫌みでも何でもなく大真面目にそう返された」ようなものだ。

 

 

『FF外から失礼するゾ。それ、運動経験のない初心者のためのフォームだゾ。絶対膝壊れない代わりに、腰にかかる負担が増えるから、そのフォームでバーベル担ぐと腰がああぁああぁ、こわれちゃうぅううう*1

 

 

 親切心からアドバイスをくれた相手に対し、そのように返してはメンツを潰してしまうだろう。気を悪くさせるのも無粋なことだと思い口にしなかったが、ひどく疎外感を味わったものだ。

 

 科学者たちも、そういう孤独や遣る瀬なさを常々感じていたのだろう。とても楽しそうに議論を白熱させていた。

 

 というか俺が楽しかった。バイオメカニクス、解剖学、栄養学など諸々は特にそうだ。

 

 話を聞いているうちに分かったことだが、幸いにも俺の有するボディメイクにまつわる知識は、いくつかの例外――種族ごとの筋肉、内臓、骨格のプロポーションや細胞組成、神経、独自内臓器官による違い。フォース(仮)の働きなど――を除けば十分に通用するようだったので、ここぞとばかりに疑問点をあげて自己認識のブラッシュアップを行った。

 所詮、専門分野とは別にあくまで趣味の一環として勉強していた俺とは違い、流石はその道のプロである。些末な勘違いを即座に見抜いて訂正してくれるし、足りない知見を補完してくれる。非常に有難い。

 

 

 知識の内容に誇張や虚偽がないのも良い。コルド軍の主導で研究を行わせているためだ。この点、地球は予算のしがらみで、スポンサー企業の意向や研究者のメンツが絡んでくるから……。 

 

「この研究なんだけどさぁ、ウチの商品の売り上げ落としそうだから発表しない方向で、うん、はい、ヨロシクゥ」

 

 とか

 

「新しく出来た商品の『有用性を示す実験』を考案してくれよ、頼むよぉ(威圧感)」

 

 とか

 

「あの新発見が広く認知されると俺のプライドがズタボロにされて困るから、インチキ反論でっち上げてネガキャンしよ❤」

 

 とか、そういうことがままあるのだ。ふぁっく・おふ。

 

 

 あと、好きなだけ人体実験できる環境って……いいよね。おっと勘違いしてもらっては困る。コルド軍にもちゃんと人権はあるのだ、『人』権は。ダディの裁量によっては、あったりなかったりする素粒子みたいなものだが、いきなり実験室に連行されて『カートリッジ(意味深)』に加工されたりはしない。え? 

 

「そんなんじゃ、満足できねぇよ! もっとナナチやミーティみたいな可愛い子(意味深)を増やそうぜ!」

 

 だって? いや、ほら、コルド軍に非ずんば人に非ず。敵性異星人は人じゃない。いくらでも非人道的実験したってええんやで?

 地球では確証の持てなかった種々の理論が彼等の尊い犠牲のおかげで証明されていたのは、本当に感謝してもしきれない。ダンケ、ダンケ❤

 

 

 フォース(仮)についても色々なことがわかった。

 この世界のフォース(仮)は、俺の知るスターウォーズという物語に登場するフォースよりも、遥かに汎用性に富み、出力も桁違いに高い。もっぱら「生命エネルギー」や「生体エナジー」、或いは、持ち主の気質や心の有様によって性質に違いが表れることから「気」とも呼ばれている。ぶっちゃけ、(仮)を外してフォースと呼ぶのも(はばか)られるほどの違いがあるので、今後は、この世界の流儀に倣って気と呼ぶことにしよう。

 それで、この気であるが、いったいどのようなことができるのかというと……だいたい何でも出来る(適当)。

 体中に(みなぎ)らせることで、肉体は超人的な運動能力と理外の防御力を得るに至る。

 様々なエネルギーの代用となる万能性があり、宇宙適応生物の大部分が無酸素状態で生存できるのもこれのお陰だ。俺が保育カプセルで死にかけたのは、まだこの力が少ない幼生体であったために生命力が枯渇しかけたのだとか。

 他にも念動力による物体操作や空中浮遊、害意を乗せて放出することで気功弾やエネルギー弾と呼ばれる遠距離攻撃、物体の創造、時間停止や体の入れ替えといった特殊な使い方も……んん?

 

 強化、変化、操作、放出、具現化、特質……。

 

「ははーん、さてはここ、HUNTER×HUNTERの世界だな(名推理)」

 

 新たな疑念が増えてしまった。

 

 

 とまれ徒事(あだしごと)はさておき、理論の洗い出しが出来たなら、今度はそれを有効活用しなくてはならない。

 湖にドデカイ穴を穿つダディの気を基準に仮想敵ジェダイを定め、それらを打倒すべく研鑽あるのみである。

 

 運の良いことに、ダディが気前よく☆PON☆と途方もない額のお小遣いをくれたので、一先ずはライトセーバーの作成について考えてみることにした。

 

 まず前提としてこの世界、近接武器の類がほとんど発達していない。ショートからクロスレンジでの戦闘は、一部例外を除き、もっぱら素手で行われているくさい。

 理由については、科学者との対話によって既に判明している。そう、すべては例のアレ。気による肉体強化のためだ。

 生半可な近接武装では、筋力に武器が耐えられずに壊れてしまう。気を武器に浸透させることで肉体強化と同様に威力と強度を高める運用法も存在するようだが、自前の肉体や精神と紐付けされた気を無機物に注ぐという行為がそもそも難しく、高い集中力を要求されることからあまり一般的ではない様子。仮に、強化した肉体での運用に耐える武器などがあれば話は別だが、これなら武器を使うより肉体を強化して拳で殴るという選択肢がとられるのも道理である。

 非戦闘員の護身用武器には、軽くコンパクトで携行性に優れ、引き金を引くだけで簡単に使える光線銃が普及していったこともあり自然淘汰的に廃れてしまったようだ。

 

 さて、このような現状でライトセーバーを導入する価値が有りや無しやであるが……俺は十分に有りだと判断した。

 仮にライトセーバーで武装した剣士と徒手空拳の戦士が戦う場合を想定してみよう。遠距離攻撃は、偏向斬擊により弾き返され、近接戦においては、武器のリーチにおいて戦士が一方的な不利を被る形になる。重量のある実体剣と異なり、質量のない光刃は、手数においても拳のラッシュに匹敵し、抑制フィールドに閉じ込められた高温のプラズマは、触れた物を容赦なく溶断するため防御も難しい。ヒルト以外の部分は壊れる心配が無いので、気によって強化した肉体で思う存分振り回せるのも良い。

 

 そして何より優雅で格好いい!

 

 ぶん回して自分にかすって死にかねないという、扱いの難しい武器ではあるが、実用化されれば脅威となり得るポテンシャルを秘めている。

 仮想敵ジェダイがこれを携え侵攻してくる場合を想定し、こちらも同質かそれを上回る物を開発すべきだ。そう痛感したのである。

 

 斯くして、濃密なディスカッションによって意気軒昂していた俺と科学者たちは、若干熱に浮かされたようなふわふわとしたテンションで一大プロジェクトに取りかかったのだ!

 

 できた!

 

 いや、はえーよ……と、この度は思わなかった。

 言うて試作品初号機である。

 元々、光線銃や宇宙戦艦の武装をはじめとしたビーム兵器は、既に実用化されていたこともあり十分なノウハウが存在していた。不定形のエネルギーを刀身状に投射、固定する力場については、光速宇宙航法に携わる分野に流用出来そうな技術があったので採用。一時間もしない内にひな型が完成した。

 

「デカい……デカくない?」

「試作品ですので、多少は、ですね」

 

 ただし、古い光線銃や宇宙船を解体して入手した既存の部品を継ぎ接ぎして、ヒルトの中に無理矢理突っ込んだため、鉄アレイのような形状になってしまっている。クソダサい。

 この辺は追々技術を磨いていく過程で小型化、高性能化による洗練がなされるだろうから……ま、ええか(適当)。

 それよりも、せっかく作ったのだから、まずは使ってみないことにはお話にならない。

 

「皆の者、良くやってくれた。褒美として――」

 

 

 

 

 

 ――このマサムネの切れ味、貴様らの体で味わわせて進ぜよう――

 

 

 

 

 

「ヒェっ!」

「いや、冗談だゾ。ビビるな。傷つくだろう」

「お、おたわむれを。趣味が悪うございますぞ」

 

 特に深い意味もなく、科学者たちの心臓に健康上よろしくない負担をかけてから、スイッチ、オォン。装置からエネルギー刃が形成される。俺の注文どおりダークサイド印の真っ赤な刃だ。流石に映画のような「ブァォゥン」という音はせず、大気中の塵が焼ける「ジジ」とも「チチ」とも言い難い小鳥の囀りがごとき可愛らしい音を立てている。

 

 おお! と実験の成功に歓声をあげる皆の前で、まずは一回転。右手首のスナップでクソ重たい試作セイバー・初代マサムネを軽やかに翻して見せる。刀身が消えてしまうようなことも、ヒルトの位置からズレてしまうようなこともなさそうだ。

 二旋、三旋。腕の動きを追加して、体の側面や正面に光の軌跡で大小無数の円を描く。

 

 先程とはまた趣の異なる歓声があがった。作業機械のひしめく工作室、周囲の机や工具には毛ほども擦らせることなく、高速で振るわれる光の剣。ふふ、格好よかろう。ちょっとした大道芸のようなパフォーマンスに皆の視線は釘付けだ。

 

 ああ^〜たまらねえぜ。楽しい。超楽しい。

 

 セーバースピン検定、準一級の血が騒ぐ。

 さらに体幹の横回転を加え、背後で一回――ッ!?

 

「アツゥイ!」

「クウラ様あああああああ!」

 

 地球人にはなかった器官――しなやかで美しい尻尾があることをすっかり忘れていた。幸いなことに軽い火傷程度の怪我で済み、優秀な『一族の肉体』の再生力も相まってあっという間に治った……のだが。

 

 

 

 

 

「困りますよ、本当に。大人の貴方たちがついていながら、どうしてこんな大騒ぎになっているのです? 分別のある方々だと思っておりましたが、勘違いでしたか?」

「面目次第もございません……」

 

 お小遣いで「イケないおもちゃ」を作って遊んでいたのがベリブルばっちゃにバレた。 

 怒ってる。超怒ってる。いつもは、どこかつかみ所がなく、余裕と気品を感じさせる軟らかな物腰のばっちゃが青い肌に青筋を浮かべていた。おこなの? そうだよ(自問自答)。あたりまえだよなあ。

 

「クウラ様もですよ。旺盛な好奇心は、たいへん結構でございますが、ご自重も覚えていただかなくては」

「ハーイ、ごめんなサイドチェストー(抱腹絶倒ギャグ)」

 

 このあと滅茶苦茶怒られた。解せぬ。

*1
膝を前に出すフォームは、主に大腿四頭筋をターゲットとして負荷をかけるフォーム。膝を前に出さないフォームは、大腿四頭筋への負荷が弱まりハムストリングスなど体の後ろ側の筋肉に負荷が行くフォームです。運動経験が浅く大腿四頭筋の弱い人が膝を前に出すフォームをとると、筋肉が負荷に負けて怪我をする可能性があることから、初心者には、出さないフォームが推奨されるのですが……情報が広まる間に細部が抜け落ち、今では膝を爪先より前に出さないフォームが常に正しいと思われているようです。主人公の言っているように、このフォームはバーベルを担ぐと腰に悪く、そもそもほとんどの人がスクワットでメインに鍛えたいのは大腿四頭筋であり、後ろ側の筋肉は、デッドリフトやヒップスラストで鍛えた方が合理的なため、本格的にトレーニングする人には、あまりおすすめできないフォームだと私は思います。もっと詳しい説明も可能ですが、ローバー、ハイバーにおける重心の違い、膝蓋大腿部応力や骨格の個性など、他にも色々触れなくてはならず長くなるので割愛します




 クウラ兄ちゃんは、死ぬまでこの世界がスターウォーズ原作だと思い込み続けることになるでしょう。死んでから勘違いに気づき、生き返ってから自分のやらかしたことの重大さに気づくも「まっええか」で済ませます(唐突なネタバレ)


・ライトセーバー
 ピカピカ光る格好いいおもちゃ(肉が焼き切れる)が完成しました。コルド軍の一部に流出して「ライトセーバースピン」というスポーツが流行の兆しを見せています。いずれ技術が発展して出力が上がるにつれて、たくさんの死傷者を出すことでしょう。やったぜ。


・上司の息子から呼び出しを食らって生きた心地がしなかった科学者たち

彡(゚)(゚)「ファッキンコルドのぼんから呼び出しくろたわ。なにさせられるんやろ。今度こそ命あらへんかもな、遺書書いとくか……」
彡(^)(^)「なんやこいつ、ごっつい話わかるやつやんけ! はー、蛮族とは思えんくらい勤勉なやつやなぁ。よっしゃ、なんでもこたえたろ」
彡(●)(●)「ファッ!? このぼん、短期間でワイらの言うたこと全部理解しよったんか!?(勘違い) これで生後一ヶ月とか、マ? こら将来立派な学者さんやな! Vやねん」
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