セフィロス逆行物語   作:怪紳士

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第51話 エピローグ

ニブルヘイム事件から数週間、魔晄炉で中毒に罹った宝条及びガスト博士は無事回復した。

特に宝条の浴びた魔晄は途方もない量であり回復には相当な時間がかかると見込んでいたのだが、日を追うごとに正常になっていく様を見た医師たちは開いた口が塞がらなかったという。

 

結果的に、先に万全の状態となった宝条が未だ退院できてないガスト博士の病室を訪れていた。

珍しい来訪者に目を丸くした博士だったが、歓迎するように近くの椅子へ着席するよう促した。

 

「やぁ調子はどうかね。

 まぁ見たところ良さそうだからさっさと本題に入るとしようか」

 

本当に体調を気遣っているかも怪しい素振りで宝条は自分のペースに持ち込んでいく。

二人がまず行った事は、あの場で見た事についての意見のすり合わせである。

宝条は言わずもがな、ガスト博士も例のジェノバが操っていた魔晄に触れ、知識の一端を垣間見ていたのだ。

意識が戻ったガスト博士はあの出来事については幻だったのだろうかと半信半疑であった。

しかし古代種である妻に話せば静かに首を振り、何より非科学的な事を嫌う宝条が興奮気味に語るのを見て考えを改めた。

 

「別の世界を観測できる。

 とても素晴らしい事だと思わないかねガスト博士。

 それを突き止めた暁には膨大な知識を、見た事も無ければ存在しないような事も認識出来る。

 極端な話、私が不老不死にでもなって時間を掛ければこの世界に存在する全てを解き明かす事は可能かもしれん。

 だが選ばれなかった選択肢、歩まなかった歴史というのは予想は出来ても真実は分からない。

 なにせ分岐した別の道はその時点で失われるのだからね」

 

ガスト博士は自分が若い頃、仲間に夢を語る時を思い出した。

今目の前にいる人物はその時と同じ。

まるで童心返ったように目を輝かせているのは失礼だが少々不気味でもあるが。

 

「今回の出来事こそ私の永遠のテーマに相応しい。

 他の世界を認知出来るという事はこちらが仮ではあるが上位世界とも言えるのではないか。

 いや、そこも含めて追求していかねばならんな。

 どちらにしろそのきっかけに触れる事が出来た私達はなんと幸運か。

 あぁ素晴らしい、好奇心と知識欲が留まる事を知らない」

 

両手を大きくふって手振り身振りで話す宝条。

彼がこんなにも感情を込めるのは長い付き合いのガスト博士でも初めて目にする光景だった。

 

「とはいえ、まずは社長を説き伏せねばならんな。

 新プロジェクトの立ち上げだ」

 

ガスト博士は嫌な予感がした。

 

「そこでガスト博士にはジェノバプロジェクトを承認させた時の様な凡人にも分かりやすいプレゼンを頼みたい。

 私の説明は高尚過ぎて社長はおろか幹部達も置いてきぼりになってしまうようでね」

 

「ジェノバプロジェクトについてはどうするんだ?」

 

「今回の件に行き着いたから結果オーライとでも言ってしまえばよろしい。

 そもそも()()()()()()()()()()()()なんぞこの星には存在しないので何時かは失敗と報告しなければならなかった。

 まぁ良い言い訳が出来たとでも考えよう。

 一応はアナタの面目も保たれますよ」

 

クックックッと口角を上げる彼を見るに、早い話尻拭いはお前がしろと言われている気分だった。

プレジデント神羅が目指す約束の地とは、資源が無尽蔵に存在する場所という考えである。

ただ残念ながら古代種達が旅をして求めた本当の約束の地はそうではない。

 

「はぁ…まぁ…途中で投げ出した私が巡り巡って矢面に立つ事になるのも運命か」

 

「ガスト博士の奥方が魔晄の使用に難色を示していた理由もハッキリした。

 その辺りをついでに突いても面白いかもしれない」

 

魔晄炉の周辺は草木が枯れて、動物がその地から居なくなるというのは事実として存在する。

時が経てば回復するだろうと楽観視する者もいれば、一生渇いた大地となると予想している研究者も多くいる。

そしてこの二人は、魔晄の使用は大地を衰えさせ、そして星の破滅へ導くという結果を知ってしまった。

 

プレジデント神羅(あの男)の説得には骨が折れるでしょうが別に会社自体を否定する訳じゃない。

 神羅カンパニーが安定してこの星を支配するには、という謳い文句でも付けておけばそこまで無下にはしないと思いますがね。

 これからの研究には既存の設備とは別の新しい装置やシステムも必要だ。

 予算が潤沢にあり、他者に邪魔されない落ち着いた環境も欲しい。

 パトロンは必要だ、これからも会社を私の為に利用させてもらおう」

 

不敵な笑みで展望を語るこの男は決して星の為だとか人々の未来を憂いてなどと正義を振りかざす訳ではない。

たまたま自分が欲するものの先には世界の安定が必要不可欠だからだ。

ヒトの本質は変わらないが目的はいくらでも修正出来る。

 

「キミはやっぱり変わらんな」

 

呆れたように溜息を吐いたガスト博士だが、表情はどこか喜びもあった。

 

「私は自分勝手な人間でね、アナタもご存知でしょう。

 とりあえず科学部門は全面的にガスト博士を支持しますよ。

 差し当たってソルジャー部門と都市開発部門あたりは事前に懐柔でもしておきますか」

 

神羅カンパニーにある要の六部門。

そのうち半数が現在の方針に意を唱えれば、いくら絶対者であるプレジデント神羅でも考え直さねばならないだろう。

反神羅の敵は多かったが、外部からその牙城を崩すには至らずどの組織も失敗に終わっている。

しかし、内部からの改革ならばどうか。

新たなる新制神羅となり人々と真に寄り添うのか、二つに割れ真っ向から対立するのかはまだ分からない。

尚、この話を聞いた宇宙開発部門の統括は「だからわし、宇宙から脅威が来るって言ったじゃないか」とちょっと誇らしげだったという。

 

必要な事は一通り話した宝条は別れの挨拶もそこそこに病室を出た。

自分の研究室へ戻る最中にふと独り言を呟く。

 

「さぁ早く帰って来なさい。

 私はキミからはまだ聞きたいことが山ほどあるんだからな」

 

 

 

 

 

 

 

 

==========

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

永い永い旅路。

幾千、幾万の時が経つ錯覚を起こすほどに。

己の帰るべき場所、自らが関わりを持つ所。

地表にライフストリームが湧き出る場所を目指し突き進んだ。

やがて辿り着いた場所は炉の建設の為に魔晄の掘削作業を行っていたウータイ地方。

這い出た場所には建設途中の機材と神羅の看板が見えた。

緑が生い茂る自然豊かなその地に導かれたのは星の悪戯か。

ならばミディールでも良いだろうに、かつて敵対していた場所に到着してしまった辺り皮肉にも思えた。

 

大地を踏み立ち上がれば自分は生きているという実感が湧いた。

しかし同時に先程までは和らいでいた腹部の痛みが襲ってくる。

魔晄の中では一種の麻酔が効いているような状態だったのだろう。

どちらにせよ早く治療をしなければならない。

空は暗く星が見えるという事はつまり夜。

周囲には誰も居なかった。

夜目はきく方だが視界がやたら暗いのは限界が近い証拠。

腹を抑えて光のある方へ目指したがその先から記憶は途切れてしまった───。

 

 

 

 

 

───再び記憶が繋がりだしたのは数日後だったらしい。

らしいというのは俺の治療を施した人物がそう言っていた。

周囲はウータイのエスニックさを感じる部屋であり、体を横たえているのはベッドではなく床に直接敷くタイプの寝床。

枕元の横には正座した者がこちらを見つめている。

この地方の代表である男。

彼の娘が倒れていた自分を発見したのだという。

過去に敵対していた者をどうして助けたのか問うとあちらは答える。

 

「無論、思う所はある。

 だが弱った相手に石を投げるなどウータイ戦士の名折れ。

 ましてや、かつて勝利を掴めなかった相手にするなど笑止千万。

 他の者にも決して手出しはさせん。

 貴殿は安心してゆっくりと傷を癒されよ」

 

「……お気遣い感謝致します」

 

戦場では敵としか認識しなかった相手。

今の様な状況になり、初めて理解出来た誉れ高いウータイの戦士。

もっとたくさんの世界を、そしてヒトを知れという星からの説教という事か。

俺に対する拒絶は少しずつだが軟化してきたのかもしれない。

 

男が部屋を出て行ったあと私物を確認する。

ソルジャーの制服は衣文掛けに吊るされており、心なしか綺麗なっていた。

正宗は流石に部屋に無く、どこかに保管されているのだろう。

武器を本人から隔離するのは当然だし仕方ない事だ。

ただ携帯電話は側にあった。

手を伸ばし画面を見れば返信するのが億劫になるほどの着信履歴とメールの数々。

とりあえず統括に一報は入れなければと思い電話を掛けようとしたが、直後に電源が切れてしまった。

充電器は当然持っていない。

そもそもあったとしても今いる部屋にコンセントが見当たらない。

 

「今は回復に専念しろということか」

 

胸元に存在する御守りを掴み、俺は再び眠りに就いた───。

 

 

 

 

 

───それから暫くして。

体が完全に回復した俺は会社へ戻る事を決める。

着ていた民族衣装を綺麗に畳んで、久々にソルジャー1stの服に袖を通す。

屋敷の玄関では俺を見送るために主人と娘が待っていた。

 

「お世話になりました」

 

「うむ、達者でな」

 

「この御恩は忘れません。

 いつかお礼をさせてもらいます」

 

深々と頭を下げた俺に男は愛想よく笑って言う。

彼のお陰で最初は警戒していた住民も危険がないとわかるや否や結構な頻度で声を掛けて来た。

ミッドガルじゃ特定の者以外はまず話しかけてこなかったので最初は戸惑ったものだ。

でも嫌な気持ちは一切しなかった。

 

「気にするでない。

 が、どうしてもというならウータイでの日々を忘れないように。

 あと社長にヨロシク」

 

「わかりました」

 

成る程、食えないお人だ。

戦に負けたウータイが混乱せず人々が穏やかでいられるのも頷ける。

本当の意味でヒトの上に立つという事。

ジェノバと融合した己では成しえなかった事だろう。

 

「ハイ、アンタの刀」

 

「すまない」

 

娘が抱えていた自分の身長以上の刀を俺に差し出してくる。

 

「しっかしワザワザ傷だらけの柄に変えるなんて変わってるね」

 

住民の一人である武器職人。

正宗に興味を惹かれた事がきっかけで俺とよく話す間柄になった。

何回か話すうちに一つ無理を承知で持ち帰った形見に刀身を移せないかと頼んだら快く引き受けてくれたのだ。

自分で頼んでおきながら疑問に思っていたら理由を説明してくれた。

扱う者の魂とまで呼ばれる刀。

それを己に任せてくれるということが信頼されたという証明であり名誉な事だと。

 

「かもな」

 

不思議な顔をして俺を見上げる娘に対して刀を受け取りながら軽く笑う。

 

「そうだ、オヤジへの礼はともかく、発見したアタシにはちゃんとお礼してよね。

 とりあえずマテリア10個でいいよ。

 アタシは優しいんだ」

 

ふふんと鼻を鳴らす娘に対して、こちらも中々抜け目のない性格をしているなと思う。

 

「ホントはアンタが四六時中身に着けてるその透明なマテリアが気になるけどね。

 それを寄越せとは言えないよ。

 イヤ、アンタがくれるというなら貰ってあげてもいいけどさ」

 

言葉とは裏腹にチラッと物欲しそうな眼を向けられる。

 

「クックックッ、中々お目が高いな」

 

「でしょでしょ?

 だから恩人には対するお礼にはある意味ピッタリじゃない?

 いや別に無理ならしょうがないけどさー」

 

どうやら何か盛大な勘違いを起こしているようだ。

このマテリアは受け取った当初から一切の魔力を感じないただのガラス玉。

当然この娘にとっては大した品物ではない。

だが俺だけにわかる、俺だけが知る大切な想いが宿ったモノ。

かつて求めた黒マテリアなんぞと比べられぬほどのマテリア。

 

「コレは究極のマテリアだ。

 悪いが手放す事は出来ん」

 

胸元にあるマテリアを手に取り見つめて思う。

白でも黒でもない無色。

何物にも染まらない、これからどう歩むかは自分次第。

まずは心配してくれた者達にしっかり顔を見せに行こうと。

 

マテリアに映った自分の顔はとても嬉しそうだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




これで終わりです。
ここまで読んでくれた方、評価、お気に入り登録、コメント、誤字の指摘等々。
皆さま本当にありがとうござました。

あのキャラはどうなった?
あのキャラが出てないじゃん。
と思われるかもしれませんが私の力量不足で捌ききれませんでした。
期待していた方、本当に申し訳ございません。

特にヴィンセントについてはDC編も考えていて宝条とルクレツィアとの関係性の変化を書きたかったんですがそこらへんは別の話で何れ書けたらなとも思っています。

その時はまたよろしくお願いします。


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