剣士だとでも思ったか?   作:アゲイン

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いや、ただの閑話です。
どうも、作者です。
今回はまあまあ余裕をもって書けました。
とはいっても描写技術が向上してるとかはないです、不甲斐ない私を許してほしい。



ただの閑話とでも思ったか?

 

『―――昨夜未明、太平洋沖に突如出現した島について、先程政府が会見を開き、』『―――で』『専門家である河野教授からお話を―――』『……という』『―――の新しい日本の領土とするべく、』『―――から、所有者を名乗る団体の声明が』『んです……』『海流などに問題が出るのではないかと……』『あれこそは我らが教主様が予言せし聖地!!―――』『…………ッ―――』『―――』『…』

 

 

 

 

 

 

「……本当に、騒がしい連中だな」

「でも今だけのことです、すぐに別の話題で掻き消されますよ」

 

 いくつものモニターから、無秩序に流される情報の波。

 無責任に意見をのべる世間の反応に対してため息を吐く四十代の男に対し、テーブルを挟むようにして座っていた女性が気にすることではないとフォローの言葉を入れる。

 

「だといいが」

()()貴徳原(とうとくばら)が裏で手を回しているんですから、心配要りませんよ」

 

 根回しは完成している以上、この話題が予想した枠の中から逸脱することはない。そのことを男も理解しているが、何分自分の身内が関わったことだ。どこか不安を感じてしまうために出した言葉を女性が苦笑しながら諌める。

 それに面白くなさそうな顔をした男はふと、思い出したかのようにあることについて問う。

 

  

「まあいい、それで()()()―――()()()()()()()()()()()()()()?」

「はい、()()()()―――()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 鋭い視線で目の前の女性、「折木有里」に問いかけ、その返答を今回の図を引いた「葛城(かつらぎ)双極(そうきょく)」へと告げる。

 彼女は島での顛末と計画の進捗を確認するため一足早く本土へと帰還していた。ちなみに浩太郎は全力を発揮したため島で療養中であり、アイリスの看病という名のアピールにタジタジとなっている。

 さて、息子がそんなことになっているとは露も知らぬこの人物、名前から分かるように彼は浩太郎の唯一の肉親であり、折木の学生時代の恩師でもある。魔導騎士としては一線を退いて久しいが、それまでの功績から彼を慕う人間は多い。

 その人脈の広さは『島の住民を呪縛から解放したい』という、息子からの無茶ぶりに一切躊躇なく応えられるほど。

 警察、政治家、企業、自衛隊。

 およそ国の利益というものを守るための組織からは守護神のように崇められている。 

 しかしそんな彼にとって、()()()という一族はいまいち信用できない存在であった。その原因は貴徳原の当主の人柄と行動にある

 

「笑顔が胡散臭い男だった、反りが合わん。腹に一物抱えたようなのはやることに裏があるものだ。いくら本土の島関係者から浩太郎(あいつ)を守るためとはいえ、高々一企業が島の所有者に名乗り出るものか?

 しかも何だ、この()()()()()()というやつは、こんなものをあんな場所に作って何になるというのだ」

 

 その一因となっているのが、今彼がテーブルの上で広げている資料に書かれている『伊座ノ神島リゾート計画』というものだ。双極にとってみればこれがどんな意味で行われるか皆目見当が着かない。

 本土から一日も離れているという立地。

 見所なから観光地としての価値も低い。

 住民の感情も考慮すれば提案することそのものがナンセンスだ。

 これでどう計画を進めるというのだ、双極は実に馬鹿げた提案だと吐き捨てる。

 

「これまでは確かにそうでしたけど、浩太郎君のお陰で島の面積が広がりました。つまりはこれまで使えなかった空の交通網が使えるようになるってことです。

 海流の関係で行きづらかったって問題もこれで解決します。

 それに観光地になるのならお客さんを守るために防衛力を常駐させることができるようになる。これが島の人たちを守ることにもなりますし、観光地化による物流は彼らの生活を向上させます」

 

 私はいい案だと思いますけどね、と貴徳原グループが裏で進めている計画に好印象を示す折木。双極とてそのくらいは理解できてはいるし、この動きのお陰で黒鉄本家に隠れて利益を貪っていた分家の連中を牽制できているのだ。

 その点に関しては分かっている。

 しかしだ、その矢面に立つという代償と引き換えに要求してきたことに彼はまだ納得していなかった。

 その条件は何なのかというと、

 

 

「あいつは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()! 息子はまだ十一なんだ、その身柄を要求するなんて絶対に邪な考えがあるに決まっている!!」

「身柄って……人質じゃないんですから、端に娘さんの安全のためにってことじゃないですか。確か優秀な伐刀者だって話を聞きますしいくらなんでも心配し過ぎじゃないです?」

「馬鹿をいうな!! この年頃の子供というのはふとした弾みで関係を結ぶこともあるのだぞ! ましてや息子は島暮らしのせいかやけに男らしくなっている! その色気に生娘が欲をかいて手をだしてくるやもしれn、もしやそれが狙いかあの狸め!!!!」

「どうしよう、先生ってここまで親馬鹿だったけ?」

 

 自分では暴走が止められないところまで来てるなと冷静に観察している折木はどうやってこの部屋から抜け出すべきか機会を伺いつつ、時おりくる双極との問答に生返事を返すだけの機械と成り果てるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――一方、その話題の貴徳原の親子はというと。

 

 

『―――いいかいカナタ、もし奴が不埒なことをしてきたら構わないからぶっ殺しなさい。後のことは私がどうにかしておくからカナタは何も心配しなくていいからね』

「お父様、それは流石にどうかと思うのですが」

 

 

 

 こちらもあまり変わらないモンスターペアレンツぶりを発揮していた。端末越しだというのに伝わってくる愛情は重いの一言。

 国の要人たちに顔を売るために参加した今回の計画、矢面に立つ見返りとしてその立役者との面会を求めたカナタは護衛を連れ密かに島へと上陸していた。

 その娘に対し安全のために国の裏の重鎮に喧嘩を売ることも厭わないという父親に辟易しつつ、貴徳原カナタは自分の意思だけはきちんと伝えておかなければと言葉の隙を見つけ割り込む。

 

「お父様、悪いですけど彼の雇用については私が言い出したことです。これについては口出し無用でお願いいたしますわ」

『そんな、考え直してくれカナタ! あんなクソガキなんて必要ないじゃないか!!』

「たいして知りもしない方を悪く言うものではありませんわお父様。それに、お父様が想像されるようなことをされる方ならそもそもこんな大それたことを仕出かすはずがありませんわ」

 

 諦めの悪い父親に向かって正論で立ち向かう少女、これではどちらが大人なのか分かったものではない。

 ぐぬぬと呻く父にこれ以上付き合っている時間はない、もう少し何か言いたそうだったがそれを無視して無慈悲に通信を切る。

 

「さて、行きますわよ」

「お嬢様、あまり御当主様にそのような態度は……」

「いいのです、この位でお父様は怒りません」

「ですがってあああお嬢様!? 勝手に行かないでください!」

 

 父の対応に若干疲れを感じている彼女はこれ以上気分を害されては堪らないと、護衛の忠言に耳を貸す振りをして歩き出す。

 目指すは件の少年のところ、この島を変貌させたという彼に会うためにここまで来たのだ。

 

 

 

 ―――初めこそ、半信半疑だったが……これを見せられては信じるしかない。

 

 

 

 様変わりなんて言葉では収まらない島の変貌、踏みしめる地面のしっかりとした感触からこれがハリボテでないことが理解できる。元はほとんど砂浜で出来ていたなんて思えないほど。

 周囲に目を向ければ新しい大地に所々緑が芽生え出している、これは海水に浸り続けた地面からすればあり得ないことだ。これもまた彼が島に与えた影響の一つなのだと考えると好奇心をそそられて仕方がない。

 

 父が関わるという要人たちの計画、ある島を舞台にしたそれのあまりに荒唐無稽な内容を聞かされたとき、何と無謀なことをするのだろうと思った。

 しかし実際に事が終わってしまえば目の前に広がるのは想像を越える光景だ。これを見せられてしまっては興味を持つなという方が無理な話、リゾート計画のために東奔西走する父を尻目に自分は未知の存在と出会うためお忍びで行動していた。

 

 だって、こんな奇跡があり得るだろうか?

 悪政に苦しむ弱者のために自分の身を省みず戦い、弱味に漬け込む敵の策略を止めるため幹部を相手取る。挙げ句の果てには()()()()()()()という、ただの伐刀者に収まらない所業を自分と同じ位の子供が成し遂げたというのだ。

 

(まるで新しい英雄譚とでもいえばいいのかしら……そしてそれを知るのは限られた人間だけ)

 

 その幸運に選ばれた自分は本当に恵まれている。

 そしてその幸運をただ享受するのではなく、一族に還元出来てこそ貴徳原の娘というもの。

 ここで彼と良好な関係を結び、あわよくばその戦力を自分の大切な人たちのために使わせてもらおう。何だったら自身の令嬢としての魅力で籠絡してみせるのもいいかもしれない。これでも同世代の中では一段上の美しさを自負している、相手が常識外れの存在であってもその趣向までも人から外れているわけではあるまい。

 そんな若干十一歳でありながら財閥令嬢として相応しい腹黒さも併せ持つ貴徳原カナタ。

 しかし無意識な高揚によって沸き上がったその自信が砕かれるのは、浩太郎が休む平屋に入ってすぐのことであった。

 

 

 

 

 

 島暮らしの影響か、年齢以上に鍛え上げられた肉体を惜しげもなくベッドの上で披露する黒髪の少年。

 それを甲斐甲斐しく世話をする南国風衣装に身を包んだ褐色の少女。

 それはまるで絵画かゲームのイベントシーン。

 余人の入り込む隙が微塵もないように見える関係性を見せつけられ思考が停止するカナタ、さしもの彼女でもこの光景には度肝を抜かれた。

 不覚にも少女に声を掛けられるまで放心してしまった自分を内心で罵倒しながら、改めて自己紹介をする財閥令嬢。

 会話の主導権を握り直すべく苦々しい感情を笑顔で隠しながら朗らかな口調を語り掛けるも、それを天然混じりの夫婦漫才で乱されては米神をヒクつせることとなる。

 まさか自分が苦手とする人種がいるなんてと愕然とするカナタ。

 

 

 

 ―――そしてまさか、この出会いが自分の長い人生に深く関わってくるなど、この時の彼女には分かるわけのないことであった。

 

 

 

 しかして時間は加速する。

 舞台は原作へと近付き、少年は青年へと成長を遂げる。

 それは更なる動乱の渦へと彼を歩ませることになるだろう。

 されど彼は進むだろう。

 その先にこそ、望む世界があるのだから。

 

 

 




読了ありがとうございました
次回から学園編開幕、といいつつもうさっさと原作の部分にいくためちょっぱやで進めていきます。
流石に島の話はテンポが悪すぎた。
今度はそこらへん意識してやっていきたいです。
それじゃあまた。
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