剣士だとでも思ったか?   作:アゲイン

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戦闘描写ってこんなに難しかったけ……?
キャラを掴みきれていなかったのもあって時間が掛かってしまいました。
すまんこってす。


それと主人公の名前が他の方の作品と諸被りしていたのでちょっと変更しています。
「桂浩太郎」 から 「葛城浩太郎」
これからはこっちの名前でおなしゃす。


格下とでも思ったか?

 

 

 ―――リトルリーグ準決勝第二試合、これの勝者がこの黒鉄王馬と戦うことになる。

 だが目の前で行われているのは、戦いともいえない一方的な蹂躙。

 これが伐刀者の戦いなのかと疑問を抱き、すぐさまその思考に蓋をした。

 決着が着いたからだ。

 

「……こんなのって……ありかよ」

 

 絶望に濡れた声が聞こえた。

 分家の中でも有力視されていた槍使いであり、以前俺を相手にした時も食い下がる程度はあったその実力、それを一切も発揮することなく奴は床へ沈んだ。対策らしい対策も講じることもできず、完全に心が折れた顔をしている。

 対戦相手は今回初めて参戦した新顔。これまでの試合全て無傷での勝利を納めてきた。

 無名の選手のこの番狂わせともいえる結果にしかし、歓声が上がることはない。

 奴等もまたこれまでの試合の有り様に言葉が出ないのだろう。

 

「―――ありがとうございました」

 

 その一種異様な光景に動じることなく、格上を下した男は慇懃な態度で礼をする。

 その振る舞いはぱっとしない風貌や戦い方に反し実に静かだ。これほど戦闘者に見えない男も珍しいだろう。

 だがその実力は疑うまでもなく、結果が物語っている。

 だからこそ気に入らない。

 あれは―――あの眼はなんだ。

 弱者を見下しているわけでも、強者を尊んでいるいるわけでもない。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()―――この戦いにそれ以上の価値を見いだしていない。おそらくそれは、この俺を含めここにいる全てに対してそうなのだろう。

 有象無象のみならず……この俺を、まるで路傍の石かのように……。

 

 

 

 

 

 ―――ふざけた真似をしてくれる……!!!

 

 

 

 

 

 

 拳が音を鳴らす。

 魔力が自然と溢れでる。

 歯が軋みを上げ脳が沸騰しそうだ。

 それほどに、身体が闘争を求めている。

 早く、早くと―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――そして決勝、今日の最後を締め括る試合。

 奴は思った通り、この俺を前にしているというのに毛ほども揺るぐことはない。

 それどころかこれまでと同じように、試合前の礼から始めた。

 

「お初にお目に掛かります、黒鉄王馬様。

 自分は葛城浩太郎、本日は本家の方の胸を借りられるこの貴重な機会に感謝いたします。

 先達の皆様の記憶に残るような試合となるよう、此度は全力を尽くす所存。

 どうか一戦、ご指導頂きたく存じあげます」

 

 これまで戦ってきた全ての相手に見せた、過剰なまでにへりくだったこの態度。あくまでも自分は挑戦者であるという態度を崩さない。

 そこに微塵の恐怖もない。

 だが覇気もない。

 戦意の欠片も見受けられない。

 改めて対面しても印象が変わりない―――ああ、気に入らん。

 

「ふん、まさか貴様のような奴がいるとはな。分家の奴等の力量も相当落ちたと見える」

 

 そんなことを思っていたからだろうか、ふと口が滑った。

 普段の俺ならしないような、そんな思わずといった言葉。

 だが何かに突き動かされるように俺の口は止まらなかった。

 

「……伐刀者でありながら霊装も抜かずに戦うなど、不遜を通り越して最早侮辱に等しいぞ」

 

「無礼は百も承知。

 しかしこれは自分が志すことへの挑戦なのです。未だ登り始めたばかりではありますが、険しくなければ意味のない。

 何よりこの二刀、いささか厄介な代物。

 未熟な自分ではまだ、これを抜くに相応しくなく……ご容赦を」

 

「……っ!!」

 

 ―――頭が沸騰しそうだった。

 なんだそれは。

 まるで俺を試金石かのように。

 ここをなんだと―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 よほど劣等な親から生まれたようだな。その減らず口も遺伝によるものだろう

 

 」

 

 様々な思いが脳裏を巡り、吐き出した言葉は憎悪に濡れていた。

 奴は俺を見ていないという事実が思考の全てを支配していた。

 だからだろう……これが愚かなことであると認識することができなかったのは。

 

 

 

 

 

「     ……ほう      」 

 

 

 

 

 たった一言。

 その一言で奴の纏う雰囲気の全てが変わった。

 それはまるで湖面の奥から化け物が現れたかのように、一瞬にして存在感が大きくなる。

 

(馬鹿な……ありえん)

 

 身体に感じた冷や汗の存在。

 それはこれまでの人生で流したことのない種類の汗。

 それはつまり、目の前の男に―――

 

 

 

(―――ありえん!! そんなこと断じてありえん!!!)

 

 

 

 否定する。

 それだけは断じて否定する。

 王者たるこの俺がそのようなこと、断じてあるわけがない。

 振り払うように自分の霊装を出現させ、奴に突きつける。

 

「剣を持って生まれたならば、それを振るい戦うのが伐刀者というものよ!

 それを出来ぬというのなら最早貴様は武芸者ですらない!

 去るがいい!!

 ここにお前に居場所はない!!」

 

「あえて何もいいますまい。

 言葉は不要、存分に己が技を交わし合いましょうぞ」

 

「抜かせぇ!!!」

 

 奴も霊装を出現させ、準備を終える。

 そして審判が始まりを告げ―――

 

 

 

 

 

 

 

 ―――瞬間、数多の敵を薙ぎ倒してきた自然界の理不尽が、意思をもって襲いかかってきた。

 

 

 

 

 

 

「ぐぅう……!!」

 

 予想通りの初手。

 目の前に顕現するは゛嵐゛、しかもこれまでより明らかに密度が濃い。

 『風使い』である俺でもここまで出せるか分からないほどの暴風を、奴は事も無げに操ってみせる。

 奴と戦った者共はこの疑似嵐を突破できず敗退してきた。

 だが、

 

「なめるなぁあああ!!!」

 

 そんなもので俺を止められると思うなよ。

 予想を越えていようとも、備えが効かないわけではない。

 俺は自身を取り巻く風を操り、奴の風を受け流す。

 更に、

 

「はぁああ!!」

 

 一閃、繰り出すは真空の刃。

 暴風の中を突き進み奴へと迫る。

 

「甘い」

 

 しかし奴はこのリーグ初めての反撃に対し、想定していたかのように次手を打つ。

 結果は相殺―――バンと音を鳴らし簡単に迎撃したのは俺と同じ真空波だった。

 

「《空壁(くうへき)》を斬り進むとはお見事、されど威力の殺されたその技ならば自分でも対処は可能です」

 

「ほざくな、対して驚いてもいないだろうが」

 

 本当に発言の全てが癪に障る。

 だが反論しようにもこの位置からの攻撃は文字通り無意味、ならば近づくまで。

 そう考え、

 

「ッ!?」

 

 

 

 ―――襲いかかる攻撃に足を止められた。

 

 

 

「《空撃(からうち)》―――何のことはありません、所詮はただの真空波。刃というほどには鋭くなく、弾丸というには大きすぎる。

 しかし使いやすさ―――何よりその()()が素晴らしい」

 

 それはまるで機関銃のようだった。

 その弾丸を例えるなら太い鞭―――一発一発はそれほどではないものの、暴風との合わせ技によって前に進むことができない。

 上下左右―――あらゆる方向から滅多打ちにされる。

 

 鎧に魔力を回し衝撃を緩和、攻撃を斬り払ってどうにか凌ぐ。

 だがそれ以上の事ができない、そんな本来ならありえない拮抗が起きている。

 魔力量というものの差があるはずなのだ。

 その差は決して覆らない、そのはずなのに―――その常識がまるで通用しない!!

 

(ふざけるな……ふざけるなよ……!!)

 

 それは黒鉄家の掲げる信条に反することだ。

 ランクによって決められた序列を覆すということだ。

 運命に逆らうということだ、世界を乱すということだ。

 それを、こいつは何も分かっていない。

 

 

「どうされました、あなた様はこんなものではないでしょう。

 この攻防相合わせの《祟り風》など、自分にとって前座に過ぎません……さあ、お次はどうされる?」

 

 風の鞭打でうるさいはずが、奴の声はどうしてか耳に届いていた。

 それがまたどうしようもなく心を乱す。

 こんな……こんな姿を晒すなど―――

 

 

 

 

「―――馬鹿にするなぁあああああああああああ!!!!!!!!!!!!!」

 

 

 

 

 それは怒りだった。

 いい様にやられ戯れ言も否定できず、そんな自分に対しての怒りだった。

 感情に呼応するように風の防具が拡大する。

 それは一瞬奴の風を押し止め無風の空間を作り出し、力を溜める隙をもたらした。

 魔力を限界まで―――それこそ残りを全て振り絞ったまさに乾坤一擲の一撃。

 

 

「おおおおおおおおおぉおおぉおおおぉおおぉおお!!!!!!!!!」

  

 

 次の瞬間には、迫りくる攻撃が届く前に名前すらついていないそれを解き放った。

 

 

 

 

 ―――それは《竜巻》にとてもよく似ていた。

 

 

 

 

 あらゆるものを蹂躙する暴力性を一ヶ所に纏め上げ、野太刀の刀身を遥かに越えたモノが奴の壁を破壊していく。

 あれほど俺を阻んでいたものも、この力の前では脅威ではない。

 穴が空く。

 道が形成される。

 真っ直ぐに、奴への道が。

 

「……ッ」

 

 考える前に身体が動く。

 足が地を蹴りだし前へと送り出す。

 後先考えない突貫、本能が選んだ最適解。

 残りカスのような魔力を使って全身のバネを駆動させ、瞬く間に距離を潰した。

 

「終われぇええええぇええええ!!!!!」

 

 烈―――繰り出すは唐竹割り。

 

 確信―――間違いなく最高の一撃。

 

 歓喜―――脳裏に踊る勝利の二文字。

 

 

 

 

 

 

 

 

「               」

 

 

 

 

 

 

 

 ふと、何かが聞こえた気がした。

 

 

 

 

 △▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼

 

 

 

 

 

 

 ―――目が覚めたとき、見慣れない天井がそこにあった。

 

 

 周囲で誰かが驚くような声が聞こえる。

 いつの間に気を失っていたのか、奴との戦いはどうなったのか。

 疑問が頭を埋め尽くす中、あの人が部屋を訪れた。

 自分の父、黒鉄厳だ。

 

「気がついたようだな」

 

 こんなところにくるような人ではない。

 少し驚く気持ちが浮かぶ。

 だがそれを吹き飛ばすような事実に衝撃を受けた。

 

 

 

 ―――負けたのだ、自分は。

 

 

 

 強く否定しようとする感情を必死に押さえ、一体何があったのかの続きを聞く。

 

 

 ―――あの最後の一瞬、『竜爪』が奴に届くと思ったその瞬間。

 ほんの少しだけ早く動いた奴はそれまで柄頭の上から動かさなかった手を僅かに浮き上がらせたのだという。

 気づいたときには手を突き出した格好をしており、そこから発生した二対の竜巻が俺の霊装を砕きながら諸共に吹き飛ばした。

 霊装の破壊はどんな伐刀者に共も致命的、その負荷に耐えきれず俺は気絶させられてしまったようだ。

 

「……」

 

 絶句……としか言い様がない。

 奴は最後の瞬間まで自分の信条を覆すことはなかったのだから。

 あの瞬間、自分が過去最高の力を発揮していたのは確かだ。

 それを越える何かを奴が持っていたとでもいうのだろうか。

 そんなわけはない……再度沸き上がる否定の感情はしかし、淡々と事実を告げる自らの肉親の冷たい言葉によって封殺される。

 

 代わりに込み上げてきたのは怒りだ。

 不甲斐ない自分に対する尋常ではないほどの怒り。奴との戦いの前に抱いたものを遥かに越えるそれ。

 敗北―――それも相手を格下と見て侮り、挑発したにも拘わらず反対に全力を尽くさせられた末の敗北。

 圧倒的なまでの……言い訳のしようのない完全なる敗北だった。

 

 

 

 

「……くく」

 

 しかし、それは決して王馬の挫折を意味しない。

 

「くく、くははは……」

 

 スッと怒りが引いた。

 笑えてきたからだ。 

 楽しくて仕方なかった。

 

「くははははっ……!!」

 

 負けた、ああ負けたとも……だがそれがどうした。

 更なる鍛練を積み、次こそ勝利を掴み取るだけのこと。

 寧ろ明確な目標が出来た分だけ飛躍した成長ができるというもの。

 敗北すら糧として、俺は真の強者となる。 

 

 

 

 ―――覚悟しておくがいい、次に会う時は今度こそ俺が勝つ。

 

 

 

 

 

 

 

 こうして、黒鉄王馬と葛城浩太郎の最初の邂逅は終わった。

 今後彼らは度々戦うことになるが、それはしばらく先のこととなる。

 この戦いの結果を重く見た派閥による謀略により、僻地へと封じ込められることになる浩太郎。

 彼が再び表舞台へ舞い戻るのは破軍学園へと入学してから。

 欲にまみれた権力者たちの安息が、ただ嵐の前の静けさでしかなかったのだと知るのもまた―――この時であったのである。

 

 

 




次は実況風で戦闘後の話になるかな……
また投稿遅くなると思うよ
でもできれば週末までには上げたいっす
そんじゃまた

原作キャラだったら誰と絡ませたいですか?

  • 原作開始前の破軍学園関係者
  • 他校の関係者
  • 解放軍の誰か
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