剣士だとでも思ったか?   作:アゲイン

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どうも作者です。
遂に週一更新になってしまいましたね。
前に言っていたことを達成できなくて申し訳なく思いますよほんとに。
それでもまだまだ続ける意思はあるので頑張っていきたいですね。




戦闘回が一話で終わるとでも思ったか? その1

 

 ―――本土から離れた位置にある孤島、伊座ノ上島。

 

 住民三百人程度の小さな島。

 生活は基本自給自足、娯楽は少なく教育もそこまで行き届いているわけでもない。それは田舎というよりは僻地とでも言うべき、文明から取り残された場所。

 異端の来訪者との邂逅から既に()()の月日が流れたこの島で今宵、特別な夜が始まろうとしている。

 

 役目を終えた太陽にもし感情があったならば心底悔しがったことだろう。海面の下からではこれから起こる事柄を見ることができないのだから。

 欠けた月の光が唯一の光源として暗闇を照らし、原初に近い世界で優雅にその始まりを待つ。

 靡く風、揺蕩う波すら静寂を保ちそれを心待ちにしているのだが……。

 

 

 

 

 ―――しかし、この風情を解さぬ存在もいる。

 

 

 

 

 空間に響く無粋なエンジン音、一隻のボートが闇夜を進んでいく。

 十人を越える人間が乗り込むその船は、ある目的のためかの島を目指していた。

 両手に銃器を携えての、実に物騒な目的である。

 目的地までもう少しというところ、その内に二人の男が会話を始めた。

 

「……なあ、本当にこんな人数必要なのか? 相手はガキ一人だってんだろ?」

「ガキだろうと伐刀者だ。

 しかも黒鉄の分家の一つ葛城の人間なんだぞ。

 上は戦力揃えて確実に殺ろうって思惑なんだろ」

 

 二人は、というかここにいるほとんどはこれまである工作活動に従事してきた面々だ。戦場を渡り歩いてきた戦闘員であり、人殺しのスペシャリストである。

 窮屈な自国から飛び出し自由を求めた結果、容易く悪への道を選んだ生粋の犯罪者たち、長年の反社活動を経て他人の命などちり紙程度の価値しかないと本気で思っている。

 そんな彼らにとって力とは、相手を服従させるための道具に過ぎなかった。

  

 そんな彼らは悪人で、しかしどうしようもないほどの弱者で、自尊心だけは人一倍の、ただの人間だった。

 だからこそ―――彼らは『解放軍(リベリオン)』の一員としての活動を心の底から楽しんでいる。

 

 

 

「今ごろ他の連中は高みの見物なんだろ?

 だってのに俺たちだけこんな扱いたぁ、あんまりだよなぁ……」

「うるせぇぞ、さっさガキを殺っちまえばいいだけだろうが」

「でもよう、こんな急に出撃させるか普通?」

「……」

 

 わめく男の言葉に話をしていた男も黙り込む。

 実際、的はずれなことを言っているわけでもないからだ。

 本命の計画の注力すればいいものを、わざわざ戦力を割いてまで行う理由が理解できないという主張は正しい部分もある。

 何と言っても俺たちは―――

 

 

 

 

 

 これから旧時代の兵器―――『弾道ミサイル原子力潜水艦』を使って大規模テロを行うのだから。

 

 

 

 

 

 かつての戦争で伐刀者たちが活躍する影で密かに開発されていた旧型の艦艇。元々はその亡国から秘密裏に回収していた別の組織がいたのだが、こちらの幹部の一人の逆鱗に触れるようなことをして壊滅させられた。その結果押収された物資の中にあったのがその船だった。

 そして面白半分に改修を重ねられ遂には実戦に投入できるようになるまでとなったこの潜水艦、どういうわけか幹部陣の興味を引き作戦が組み上げられていった。

 

 とはいえ、作戦自体は単純なものだ。

 『潜水艦を使って防御網の内側から日本を攻撃する』―――言葉にしてしまえばこの程度のもの。

 

 

 

 ―――そして今向かっている島はそのための補給所であり、中継地としての役割を持っている。

 

 

 

 

 

 住人が抱える本土への悪感情は強く、彼らと島の上層部と関係を結ぶことはとても容易かった。組織としても理想的な立地と言える島に拠点を置ける利点は高く、組織が物資を提供する見返りとして島側は労働力と土地を貸し出すという条件の元、協力関係を結ぶことになっていた。

 そうして長年の間秘密の関係を続けていた両者。

 

 

 

 だがその関係を揺るがす存在が現れた―――それが魔導騎士の卵、葛城浩太郎である。

 

 

 

「全く、こんなことなら最初から動いておけば良かったのによ」

 

 そうぼやく男。

 実際、島の協力者から報告はあがってきていたのだ。

 しかしこの報告の段階では大きく注意する必要すらない存在だったからこそ今まで見逃していたのだ。

 それが計画を進めるという段階になってのこれだ。

 

 島での補給作業時にこちらの存在がバレる可能性があるため先に排除してこい?―――そんなものはガキが島に来た時点で分かっていたことだ、今さらいうことではない。そもそも計画を組み立てている段階で無視するということで決定していたはずだ。

 にも関わらず何を及び腰になったのか、万全を期すという名目で自分たちがそのガキを排除するために動かされている。

 だからあのときすぐに動いていればと男は主張しているのだし、それ自体は正しいのだ。

 しかし繰り返し愚痴を溢すのだけは止めたほうがよかった。

 それに対しいい加減聞き飽きた別の兵士が、それでも感情を抑えできる限り冷静に反論する。

 

「これは慎重さが求められる計画だと何度言えば分かる。もし気づかれて船が傷つけられてみろ、どれほど計画が遅延させられるか」

「はっ、それこそ杞憂ってもんだ。

 標的のガキが何使うか知ってるか?鉄球だぞ鉄球、それも霊装ですらねぇってんだ。よっぽど雑魚に決まってんぜそいつ」

「だから余裕だと?」

「そりゃそうさ」

 

 何だったら俺一人でもよかったくらいだ―――そんな風に自信げにのたまう男に対し思わず失笑が漏れる。

 仮にも伐刀者を相手にしようというにその自信満々な姿があまりにも滑稽だったからだ。しかしそれはこういう手合いに対しては神経は逆撫でする効果しかない。 

 

「ああ、何がおかしいんだ……?」

「何だ、やるか?」 

 

 交わす視線に殺意が乗りだす。

 周りの人間もそれに感化されアドレナリンが脳を巡る。暴力は彼らにとって日常の一部、見るのもやるのも楽しい娯楽に過ぎない。

 遂に殴り合いになろうかというその時、ボートの操縦をしていた仲間からもう少しで到着することが告げられる。

 

 それに従って闘争の炎は鎮火され、全員が思考は既にこれからやるべきことに集中し始めていく。そこには冷徹なテロリスト、何だかんだ言いつつも、やるとなったら躊躇などない。

 この前哨戦をさっさと終わらせ、自分たちを虚仮にした者たちへ一泡吹かせてやる。

 その一心から戦意を昂らせる彼ら。

 

 そしてとうとうボートが砂浜へと競りあがり停止する。

 周囲に人影がいないか確認した兵士たちは各々ボートから飛び降り、素早く標的がいる場所へと向かおうとして―――

 

 

 

 

 

 

「―――ようやく来たか、待ちかねたぞ」

 

 

 

 

 

 

 ―――闇夜の先からの先制攻撃を受けた。

 

 

 

「おぐッ……!!」

 

 声が聞こえたかと思えば運の悪い兵士が一人、苦悶の声を挙げ踞る。幾人かの目には夜に闇に紛れ何かが―――小さな物体が飛来しそいつの腹部に強烈な勢いでぶつかってきたのが映っていた。

 それが敵に攻撃だと認識した彼らは倒れた仲間に構うことなく素早くボートの影に身を隠す。

 そこから反撃に転じようとしたがしかし、圧倒的に場所が悪い。

 海岸から侵入したため遮るものがなく、向かい側は濃い森林。

 そこに潜んでいると思われる敵の存在を見つけるため暗視装置を起動した者がいたがボートから顔を出した瞬間、最初の男と同じように暗視装置ごと頭を打ち据えられ昏倒してしまう。

 

「嘘だろ……」

 

 二人目の犠牲者の近くにいたのは先ほど大口を叩いていた男。

 それによってようやく何が襲いかかってきていたのかが判明し、驚愕に目を見開く。

 

 

 

 ―――それは()()()()()()()()()()()()()だった。

 

 

 

 シュゥゥゥと音を立て回転するその鉄球。

 原始的にもほどがあると馬鹿にしていた記憶が甦り、それをわざわざ武器に使う存在に思い至る―――()()()()と。

 

「クソガキがぁ……!」

 

 沸騰する頭に先んずるように体が動いた。

 ボートの影から飛び出て林へ向けて連続で発砲する。

 

「出てこいクソガキ! 蜂の巣にしてやる!!」

 

 脳裏によぎる様々な疑問も今は些事だった。

 理由はとにかく、自分たちは標的であるはずの存在から奇襲を受けた、それだけ分かっていればいい。

 そして話は簡単だ。

 奴を林の中から炙り出し、鉛弾をぶちこんでやる!

 そう意気込みバラバラと銃弾をばらまくが、これといって手応えらしきものは感じられない。仲間も次々に銃撃をかますが手前の木に当たるか影の奥へと消えていくだけ。

 そうこうしている内に弾を撃ち尽くす。

 ガチガチと音を鳴らす銃に苛立ちながら弾装を取り替えようと腰へ手をまわそうと―――

 

「―――へがッ!?」

 

 

 

 ―――したところに、背後から()()()()()()()()()()()()が独りでに飛び上がり、男の後頭部に直撃する。

 瞬間男の体に痛みとは衝撃が走り、抵抗する間もなく意識を刈り取られてしまうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そこから先は躍り狂う二つの鉄球の独壇場だった。

 鉄球の脅威を認識した兵士たちはまずはそれをどうにかしようと銃口を鉄球に向ける。

 しかしまるで意思があるかのように飛び交う銃弾をひらりと避け、全く衰えない回転力で地面を駆け回る。そしておもむろに跳び跳ねては確実に急所を捉え、一人、時には二人同時に兵士たちを無力化していく。

 その光景はまるで訓練された肉食獣が獲物を仕留めているかのよう。彼らはこの攻撃に対策を立てることもできず、部隊が壊滅するのは時間の問題であった。

 

 

 

 

 

 

 ―――そして最後の一人が苦悶の声を挙げて倒れ伏し、場には砂に擦れる鉄球の音だけとなる。

 しばらく音が鳴り響き、起き上がる者がいないことを確認しようやく迎撃者が姿を現した。

 兵士たちが散々攻撃していた森林の影の奥から―――ではなく。

 海岸の右手、僅かに盛り上がった砂の山が崩れ人の形をとっていく。体に着いた砂塵を垂れ流しながら徐々に起き上がり、人影は静かに周りを見渡す。

 

「……」

 

 その間に鉄球がまた独りでに動き、主の元へと戻り始める。

 その主とは勿論この男であり、この四年の年月で精神、肉体ともに成長を果たした浩太郎であった。

 跳躍した鉄球が浩太郎の手に握られる。

 パシッっと音を立てて握られた鉄球はあれほどの攻勢を仕掛けたというのに傷一つなく、鏡面のような輝きを保っている。浩太郎の能力に守られた鉄球は素材を越える強度を発揮するからなのだが、それを聞かせる相手は残念なことに全員眠ってしまっている。

 

「いや、違うな」

 

 常人であれば十人を越える兵士を無力化した以上これで終わりかと思うことだろう。

 しかしそれは間違いであることをこの四年の年月で培った感覚がまだこちらを見ている視線があることを訴えていた。

 

「……そこにいるのは分かっています、出てきていただけますか」

 

 その感覚が訴えるままにその存在に向けて話掛けるのだが……当然反応はない。その視線の先にあるのは無人のボートだけなのだから当たり前なのだが、それがあくまで見せかけであるという確信が浩太郎にはあった。

 

「応えてはくれませんか、でしたら仕方ありますまい」

 

 躊躇はなかった。

 握りしめた鉄球に今一度力を籠め全力で投擲する。

 狙いはボートの機関部、最早不要となったため爆発させて処理をしようという狙いでの攻撃だ。

 そしてそれを嫌うのならば―――と内心で呟いたところで、やはり。

 

 

 

 ガキンッ―――と。

 

 

 

 弧を描く軌道で投じられた鉄球は()()()()()()()()()()()()によって阻まれた。

 弾かれた鉄球はそのまま浩太郎の手に戻る。

 現れた大剣はその刀身を徐々に晒し、遂に持ち主の姿が露になる。

 

 

 

「やれやれ……流石に帰りの足がなくなるのは困る」

 

 

 

 武骨な印象のままの声で言葉を発する男。

 顔に傷を持つ黒衣の剣士はしかし―――その左腕を亡くしているようだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――『解放軍』幹部、ヴァレンシュタインだ。

 面白い技を使うな小僧。どれ、どこまでできるか確かめてやる」

 

 




読了ありがとうございました
遂に出せた原作勢
この強敵に対し浩太郎がどう戦うか
次回、激戦開幕
どうかお楽しみに
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