もうこの作品は週一投稿だよ、と公言するべきだなと腹を括りました。
自分の力量じゃそれが限界なんじゃ……。
そんなこんなでその2です。
戦闘ってより島の歴史の説明が多くなっています。
今回もよろしくお願いいたします。
「いやはや、やりもやったりといったところだなぁこれは」
ええおい、などとやたら親しげに話しかけてくる敵の幹部。
その癖視線にのせられた殺気の濃度は先ほど倒した兵士たちなどとは比べ物にならないほどに濃い。
大剣を肩に担ぐようにして構えている相手を前にして、その力量を測ろうと浩太郎は見に徹していた。
(……まず間違いなく歴戦の戦士、格上といったところか)
感じるのは格の違いとでもいうべきもの。
個人鍛練ばかりで対人戦をしてこなかったためか明確な差までは見通せないが、その自身の経験不足を加味してもまともな戦いで敵うような相手ではないだろうことは簡単に理解できる。
そうして相手の観察に集中する浩太郎、その間にもヴァレンシュタインは話を続けていた。
「こいつらもまあ……弱くはない、決してな?
そりゃあ伐刀者と比べれば雑兵に過ぎんが高々十代になったばかりの小僧にやられるような奴等ではない。それを倒してのけたお前はそこそこ優秀な奴なんだろうよ。
俺もちぃと見物に来てただけで出てくる予定はなかったんだがなぁ……こいつはちょいと予想外だ。
ただな、一つ理解できないことあるんだよ」
トン、トン、とまるで肩でも叩くように大剣を扱うヴァレンシュタイン。口調こそ朗らかで親しげに問い掛けてきてはいるものの、何か確信があることはその表情から伝わってくる。
そしてもう一度肩を叩いたとき、剣士から自然と漏れだしていた圧迫感が増大し、真っ直ぐに浩太郎に襲いかかってきた。
「お前、
島民に警戒され、行動を監視されていたお前がこの計画を知ることはできなかったはずだ」
「……」
「おかしいよなぁ、有り得ちゃいけないことだ。
でもこう考えれば説明はつくんだよ―――
―――
にやりと顔を歪める隻腕の男。
その表情は弱者に対する嘲りに満ち満ちていた。何という愚かな選択をしたのだと、心の底から彼はこの現状を笑っているのだ。
「馬鹿な連中だよなぁ……これで一体何が解決できると思ったんだ?
ここに俺がいる時点で、何もかんも台無しだっていうのに」
蔑み、見下し、無駄な抵抗だと断言する。
「なあ聞いたんだろ、この島のことを。
それで助けようって思ったんだろ。
俺たちと戦おうだなんて思ってしまったんだろ?
止めておけ、全部無駄だ。
それはこの島の歴史を語る上で避けては通れず、されど明らかにするには陰惨に過ぎる事柄であった。
浩太郎は思い返す。
あの日、村長の娘暮亜から語られた、島の悲しき出来事を―――
―――『この島はね、人間の栽培地なの』
暮亜さんのこの言葉から始まった島の起源は江戸時代中期にまでに遡る。
当時、この島は罪人たちの流刑地として使われていた。
男も女も隔たりなく様々な罪人がここに送り込まれ、過酷な環境に晒されながらも生き残った彼らは次第に独自の文化を築くようになっていった。しかし時間が進むにつれ本土の人間は島の存在を忘れ、島の人間もその歴史のほとんどを忘れていく中、村長の一族だけが唯一その事実を受け継いできたらしい。
そんな折、島に転機が訪れた。
あの世界中を巻き込む戦争が起こったのだ。
小さな島であり侵攻的価値の低かったことから運よく戦乱に巻き込まれなかったこの場所へ、難を逃れた他国の漂流者たちが辿りついた。
これによって異国の血を取り込むこととなり、それがある種の奇跡を起こすことになる。
それが『美貌の新生児』―――混血によって生まれた者たちだ。
これだけであればまだ問題はなかった。
戦争のただ中でも平和を享受しこれまでと同じ生活を続けていくことができただろう。
だが現実はそう上手く行くわけではない。
「可哀想な連中だよな、同情するよ。
なまじ人的価値が高まったせいで国の奴等に目をつけられてしまうなんて、運が悪いとかの話じゃないもんな。
伐刀者の素質があるならなおのこと、本当に悪どいことをするなお前らは」
これに関しては浩太郎も驚愕したものだ。
まさか自分同じような立場の人間がこの非道を行っていたなどとは。
だがそれならば自分を成長させぬための『伐刀者がいない場所』という条件をこうも簡単に達せられるはずだと納得もする。
そもそも伐刀者とは千人に一人の特異存在。
母数が少ないからといってそれなりの歴史を持ち、異国の血を取り入れたこの島の人間に全く発現しないということのほうがおかしいのだ。
島の人間たちとて子供や赤子を奪われるのを黙っていたわけではない。しかし旧時代的な生活を送っていた彼らにとって病気や出産、人口増加による生活圏の縮小、食料増加などといった諸問題を解決するためには外部に頼る他なく。
そうして奴らは実に狡猾な手段によって島の人間を支配していた。
「ま、いくら生活のためとはいえ、これではまるで牧場か何かだ。
これほど扱いが悪いのはそうそうは無いんじゃないか?
それでもあいつらは力がないからと逆らうことも出来ず、悲しみ憎しみの感情を胸に秘め今までずっとずっと耐えてきた。
俺たちはあいつらのために復讐の機会をくれてやったわけだ」
―――まあ、裏切られてしまったわけだが。
「残念だよ、こうなってしまった以上この島の住民は俺たちにとって不都合な存在になってしまった。特に村長ら上層部、やつらは構成員の顔を知っている。情報が国に渡ればこれからの活動に支障を来すことになるだろう。
―――だからまあ、早い話が皆殺しということになる」
まるで腹を切り裂くかのような苦痛と引き換えに子供を差し出し、後悔を重ねつつそれでも生を繋ぐ。
しかし、そうして生きいくしかないのかとうなだれる彼らは『解放軍』と出会い―――そして二つの道ができた。
一つはこのままの生活を続けていく道。
もう一つは武器を取り支配者へと反旗を翻す道。
―――選んだのは後者、戦禍に身を投じる修羅の道。されど……
「……させるものか」
―――浩太郎には責任がある、そのどちらでもない……『第三の道』を示した責任が。
島の住人に『解放軍』を裏切らせたのは自分だ。夢物語にも値しない未来を語り、それに島の命運を賭けさせたのは自分なのだ。その責任を果たすためにも……それだけはさせるわけにはいかない。
「出でよ『絶禍』―――其の名に在りし力を示せ」
霊装を出現させる浩太郎。
更には腰のホルダーから残りの鉄球を解放し―――周囲の地面へと落とす。その数四つ、両手のを合わせて合計六つの鉄球が浩太郎の支配下に置かれる。
「『転球法・六花ノ陣』―――さて、」
観察は終わり、準備は整った。
覚悟は既に決めてある。
場所はここ。
敵は目の前に一人。
ならば―――
「―――姓は葛城、名は浩太郎と申します。
ヴァレンシュタイン殿、お相手……
―――後は全力をもって打倒するのみ。
「ふッ……!!」
遥か格上との対決。
先手を取ったのはまたしても浩太郎だった。
体の捻りを十全に活かした投擲術は伐刀者としての身体能力も合わさり厚い鉄板もへこませるほど。
威力重視のストレートがヴァレンシュタインへと迫る。
「ふん」
それをまるで脅威と感じていないような態度で迎え撃つ隻腕の剣聖。実際彼の『摩擦』を操る能力の前にはたかが鉄球など避ける価値すらないと考えても仕方がないだろう。
だがそれは驕りというものだ。
「ん?―――ッ!」
目の前で鉄球の軌道が変化し地面へ突き刺さる。
それは大量の砂を巻き上げヴァレンシュタインの視界から浩太郎の姿を隠してしまう。
目眩ましだ。
続けて真横から水の弾丸。
更には頭上から風の斬撃。
後方の退路を閉じるように二つの鉄球。
たった一つの動作の内に繰り出した多彩な攻撃。
撹乱から始まり死角を突く連撃での包囲網、並みの伐刀者なら対処のしようもないだろう。
しかしそこは十二使徒の一人、素早い判断で危険度が高いと見た鉄球は大剣で弾き、残りを能力で凌ぐ。
遠ざかる鉄球、体表を滑る風刃と水弾。
しかし意外なほど容易く対処できた鉄球とは違い、水と風二つの攻撃は途切れることなく襲いかかってきている。その密度は時間が経過するごとに厚くなっていっていく。
ダメージこそないもののまるで嵐の只中にいるかのようだ。視界は最悪、敵の姿も音も掻き消されてしまっている。
「無駄な努力を」
だがそれを、ヴァレンシュタインは無様と断じる。
この程度で自分がどうにかなるものかと、軽く見られたものだな、と。ならば見せてやろうと前を見据えた。
そして―――大剣を上段に、構えを取る。
「ハァッ!!」
振り下ろしは神速と称するに相応しく。
地面に叩きつける前に軌道は横へと変わり周囲を薙ぎ払う。浩太郎が作り上げた風と水の結界は容易くその形を斬り崩され、ヴァレンシュタインの視界が元の光景へと戻る。
しかしだ。
「何ッ!?」
まるでそれを見越していたかのように、更なる異常がヴァレンシュタインを襲った。
自身の霊装を握る腕、それがあたかも縛り付けられているかなのように動かすことができない。いや、動かせないというよりもこれは―――
「ねじ、切ろうっていうのか……!!」
「その通りだ」
見えない力により掴まれているかのような感覚。それが容赦なく自身の腕を捻り上げようとしている。
抵抗しようともがくことすら許されない。
驚愕に表情を歪ませるヴァレンシュタインに対し、思惑通りというには感情に乏しい浩太郎。ただ余裕があるわけでもないのでそれを悟られぬようにしているだけなのだが。
実際、今の一撃で決めきる程度には魔力を注いでいたため拮抗している状態を想定していない。
そのため能力を維持するための負担が酷いことになっている。
「目眩ましはこのためか、味な真似をする……!!」
ヴァレンシュタインは自身の能力が効いていないことから物理的な攻撃でないことを看破している。そしてその原因が
身体能力だけでそれに抗う相手に浩太郎は静かに告げる。
「『六花ノ陣』は鉄球が作る円の力場が重なり合い、それが花弁のように見えるが故に付けた名だ。その真髄は交点に生ずる『極大の捻れ』を利用して拘束し―――」
「―――最終的には対象を
そして極転がヴァレンシュタインに襲い掛かり―――
読了ありがとうございました。
今回の説明で島の歴史なんかについては大体で説明できたとは思っていますが、分かりにくいところがあるのならご指摘してくださるとありがたいです。
次回こそもっと戦わせます。