第一話 辞令
ー辞令ー
以下の者を本日1200時に第六作戦会議室に招集する
発 地球軍省アジア方面マドラス基地司令部
宛 第35飛行隊所属ライプニッツ・ベルンシュタイン少尉
俺がこんな辞令を受け取ったのは朝食を食べ終えてからだった。
俺の顔を見て不機嫌そうに鼻を鳴らす豚上官からぶっきらぼうに辞令を渡されたのは朝の9時。
それからやる事が無かったので護身用拳銃の完全分解整備をして暇を潰してから第六作戦会議室に向かっていた。
「ったく、今更飛行隊の生き残りに何の用かね。」
別の飛行隊に所属させられる事はないはずだ。周りの奴等からは『死神』と嫌がられてるからな。まぁ、変わらずに関わってくれる奴もいるけどな。
そんな益体のない事を考えながら司令部の中を歩いていると、ピンクの髪をした女性兵士が第六作戦会議室に入って行くのを見てしまった。
「俺の呼び出しと関係があるのか?やめてくれ…」
あそこに入って行くという事は俺に何かしらの関係があるんだろう。一気に疲れが押し寄せてきて部屋に帰りたくなったが、命令違反で独房にいれられる方が嫌なので気合を入れ直して作戦室の扉を叩く。
「失礼します!」
入れ、という渋い声を聞いてから俺は扉を開いた。
渋い声って事は少なくともあの女性兵士は上官じゃ無いな。
入ってみるとそこには、新兵らしき女性兵士が2人と見覚えのある金髪の優男がいた。何でお前がそこにいる?
「君が最後だ、ベルンシュタイン少尉。掛けたまえ。」
さっきの渋い声でそう促してくる。階級は…大佐かよ。本当に何の用だ。
「では、失礼いたします。」
俺は小さく頭を下げてから入り口近くの椅子に座った。
横の金髪が何か言いたそうだが無視しといてやる。どうせ真面目な奴とか言うんだろうからな。
そうしていると大佐殿が口を開く。
「諸君、まずは自己紹介からしよう。私はマドラス基地司令部のドミニクだ。階級は大佐。今から君たちの上官になる。」
司令部の人間が一介の少尉の上官?何がしたいんだこの軍は?
俺の疑問をよそにドミニクは続ける。
「諸君らは我が軍がMSの開発に成功したのは知っているかね?」
こういう時はこの中で一番階級が高い奴が返事をする暗黙の了解があるので、俺が代表して口を開く。
「噂程度ならあります。」
「うむ、実は先行量産型がもうすぐこの基地に配備される手筈になっている。諸君らにはテストパイロットをしてもらう。因みにこれは最高幕僚会議の決定でもある。」
俺たちがMSのテストパイロット⁈
周りの奴らも唖然とした表情になっている。
って、最高幕僚会議って連邦軍の意思決定機関じゃねぇかよ!
「それでは本日はこれにて解散。あぁ、明日は1400時に第4ハンガーに集合しといてくれ。」
そう言い残してドミニクはこの部屋から去って行く。
俺たちは未だにショックから立ち直れていなかったが、意外にも一番早くショックから立ち直ったのはあの金髪だった。
「いやー、大変な事になったね。ライ?」
うるせぇ、愛称で呼ぶな。気持ち悪い。
こいつはベリアル・ヨハン。俺よりも年上で対して接点も無いのに、何故かからんでくる変な奴の一人だ。
「上官に対して失礼だぞ、ヨハン准尉。」
「そう言う君は年上に対して失礼じゃないのかい?ベルンシュタイン少尉?」
ッチ、相変わらず面倒な奴だ。
「まぁ君のその無礼な態度は今に始まったことじゃ無いから許してあげよう。そんな事よりも彼女たちと長い夜を語り合う方が実りがある。」
「黙っとけ女たらし。すまないな、自己紹介を頼めるか?」
俺がそう聞くと、黒髪の方から挨拶をしてくれた。
「お初目にかかります。ユリス・ガラスティンです。階級は兵長。」
「私はマリア・フロストル。階級は同じく兵長。ユリスとは訓練兵からの同期です。」
ピンク髮の方も挨拶をしてくれた。
黒髪がユリス、ピンクがマリアね。
「俺はライプニッツ・ベルンシュタイン。こっちがベリアル・ヨハン。よろしく頼む。」
そう言って握手を交わす俺たち。
これがダウンフォール隊の発足だった。