残念だったなぁ、トリックだよ
俺たちがベルファスト基地に到着して、即応状態待機で2週間が経とうとしたその日、事態は急変した。
「ジオン軍地球方面軍司令ガルマ・ザビの国葬がテレビで中継されるらしいぞ!」
そんな声とともに慌ただしく走り回る足音が聞こえる。
そう、ザビ家の末っ子のガルマ・ザビ大佐の戦死し、国葬の様子が全てのチャンネルで放送される事になっている。
恐らく大半の人間は食堂のTVでその様子を見るのだろう。
俺たちはどうしようか…
「ベルンシュタイン少尉殿、我々はどうするべきでありますか?」
そう、今だに俺たちはMSの前でたむろしているのだ。
因みに隊全員が別基地の所属かつ貴重なMSパイロットという事あり、士官待遇の扱いをされている。
「士官食堂で見るか。人も少ないだろうしな。」
そう言って真っ先に士官食堂に向けて歩き出す。
他も何も言わずについてきた。
‡
士官食堂にはベルファスト基地所属のほぼ全ての士官が集まっていた。
この光景を見て思わず呟いてしまう。
「予想以上に多いな。」
「隊長、時間です。」
そんなエレーナの声の後にジオン公国軍総帥のギレン・ザビの姿がガルマの遺影の前に映される。
『我々は一人の英雄を失った!
しかし!それは敗北を意味するのか⁈
否‼始まりなのだ‼
地球連邦にくらべ我がジオンの国力は三十分の一以下である‼
にもかかわらずっ今日まで果敢に戦いぬいてこられたのは何故か⁉
諸君‼
我々ジオン公国の戦争の目的こそが正義であるからだ‼
それはコロニーに住む諸君らが一番よく知っている!
我々は地球を追われ宇宙移民として地球から捨て去られた‼
金もうけと利己主義にこり固まった一握りのエリートが宇宙の新天地も含む連邦全域を支配して五十余年!
宇宙に住む我々が正当な権利と自由を要求して何度連邦の圧政者どもにふみにじられたことか‼
かつてジオン・ダイクンは人類の革新は宇宙の民たる我々から始まると言った!
その言葉のとおり!
我々は過酷な宇宙空間を生活の場としながら共に苦悩し練磨して今日を築きあげてきた!
我がジオン公国はダイクンの夢と理想をまさに形あるものとしてきたのだ‼
ジオン公国の掲げる人類一人一人の究極の自由の為の戦いを!神が見捨てるわけがないっ‼
わたしの弟、諸君らが愛してくれたガルマ・ザビは死んだ!
何故だ‼?
新しい時代の覇権を我等選ばれた国民が得るのは歴史の必然であるっ‼
ならばこそ我々はガルマの前に襟を正し!士気を高め! この戦局を打開しなければならないっ‼
人類全体の明日のために‼
しかしながら地球連邦のモグラどもは自分たちのみが人類の支配権を有するとして我々に攻撃を加える‼
諸君の父も子も兄弟も!その無分別な暴力の前に死んでいったのだ‼
この怒りを悲しみを!忘れてはならないっ‼
それをガルマは死をもって!我々に示してくれたのだ‼
我々は今!この怒りを結集し連邦軍に叩きつけるべきである!
そうしてこそはじめて真の勝利を得ることができる‼
この勝利こそ戦いに斃れた者たちへの!最大の慰めとなるっ‼
国民よ!
悲しみを怒りにかえて立て!国民よ‼
我等ジオン公国の国民こそ神に選ばれた民であることを決して忘れてはならないっ‼
優良種たる我等こそ人類の救いを得るのである‼
ジーク・ジオン‼』
それからずっとテレビからは参列者の“ジーク・ジオン”と叫ぶ声が聞こえ続けた。
「なにをいうか‼」
隣から大声が聞こえたので慌てて振り向く。
「ジオン・ダイクンを抹殺した男が‼ザビ家の独裁を目論む男がなにをいうか‼」
ベリアルが感情を露わにしていた。
初めて見るな。こいつがこんなに感情を表に出しているとこ。
他の隊員も吃驚している。普段からは想像も付かないからな。
「胸クソ悪い演説だな。戦況が膠着し落ちてきた士気をいま一度高めるために弟の死を利用しただけだろ!」
食堂の椅子でも蹴り飛ばしたくなったが我慢する。
椅子を蹴ったところで戦局は好転しないのだ。ならば、敵に八つ当たりする方向性でいこう。
こっちの方が生産的だ。
そんなことを考えていると俺の携帯型無線が鳴り出した。
余談だがこの無線は腕時計に小型無線を搭載した新型なのだ。
先日のMS受領の時に一緒に持ってきてもらった物である。
周りに軽く頭を下げてから無線に出る。
「ダウンフォール隊か。すぐに隊長と副隊長はメインタワーにある作戦会議室に来てくれ。指令が降りた。」
「了解!」
返事をしてすぐに向かう。無論、ベリアルも連れてだ。
‡
「ダウンフォール隊が到着しました。」
扉の脇に控えている衛兵(?)が扉の中に声をかけてから扉を開く。
そこにはたくさんの高官が一つのテーブルを囲っていた。
俺は扉から3歩進みそこで敬礼をしてから口を開く。
「ダウンフォール隊、ただいま到着しました。」
「あぁ、すまないね。そのままで悪いが聞いてくれ。君たちもザビ家の演説を見たかね?」
目で答えを促してくるので頷く。
どうやら此処のみなさんは前の大きなスクリーンで拝見していたようだ。
「それならば話が早い。早速だが地球方面軍司令部のあるニューヤークを占領して欲しい。」
無茶だ。いくらなんでも。
「それは我が隊のみで、という事でしょうか?」
「いくらなんでもそれは無い。君達を使い潰すような事はしない。勿論、ちゃんとした戦力の一部隊として働いてもらう予定だ。」
まぁ、それならば何とかなるかな。
戦力の内容によるけど…
「戦力…と申しますがどの規模の戦力をお考えで?」
言ってくれれば儲け物程度の考えで聞いてみる。
無論、タダでは教えてくれなかったが。
「それは出来ない。君達が参加表明をしてくれるまでは。まぁ、拒否権は無いのだがね。」
当たり前だな。一パイロットに作戦の拒否権なんて与えられないだろう。それこそ特務部隊レベルじゃないと。
それに俺自身も狐の化かし合いが出来るほどすれてないので無意味な問いかけだったな。
「拒否権が無いのなら参加します。戦力と大まかな戦略をお願いします。」
「戦力はジャブローから第48戦術飛行師団、ベルファストからは北大西洋艦隊の全艦艇と特設MS部隊さらには空挺師団、そしてマドラス基地とトリントン基地所属の特設MS部隊。これが戦力の全てだ。」
凄い戦力だな。若干過剰戦力と言えなくもないが。
てか他にもMS部隊あったんだ。
「トリントン基地のMS部隊はフェンリル隊、ベルファスト基地のはラーズグリーズ隊だ。隊の規模としては君達と似たり寄ったりだがな。」
二つとも神話関係の名前なんだな。あっちの方がかっこいいな、個人的に。
「戦略として君たちの部隊は戦闘地域手前で空挺戦車部隊と共にエアボーンしてもらう。これは同時にMS用落下傘バックパックの試験運用も兼ねている。で、降下後は戦車部隊の護衛だ。機密保持の為他の部隊の行動予定は教えられない。」
機密保持には賛成だが、現場の連絡不足にならないかが心配だな。
「今夜のうちに用意しとけ。深夜のうちに移動、夜明けから作戦を開始する。では解散。」
こうして、ニューヤーク攻略にも参加させられるのであった。
質問が幾つかあったのでここで回答を
Q.エレーナの機体はジムキャノンじゃねぇの?
A.違います
キャノン砲はオプションパーツで取り外しが可能な物です
前線での評価が予想以上に高かったのでショルダーキャノンを固定装備にしたのがジムキャノンという設定
いきなり肩にキャノン砲生えたMSは作らないと思うんですよ
Q.対MS用マグナム弾って?
A.特に考えて無かったんですよね
何となく名前のカッコ良さを先行させたから
ほら、榴弾とか、貫通弾なんて書くよりもカッコいいじゃないですか
ザクの正面装甲を距離300mからうち抜ける実包
それ以上でもそれ以下でも無い
あまり後書きを長くしてもアレなのでこの辺で
あと、誤字・脱字のご指摘ありがとうございます
教えてくださった物に関しては逐次修正をしています
これからもよろしくお願いします