その割にこのクオリティ…
ニューヤーク、それはアメリカ大陸随一の経済都市。
そこを占拠できるということは軍の徴収できる税金の量が増えるということに他ならない。
そして最近急なMSの開発、先行量産を繰り返している連邦軍にとって資金源の確保は何よりも重要な事であった。
『降下地点まで後3分。各機降下準備。コンテナ解放。』
俺とエレーナの乗るミデア一番機から編隊にむけて通信が飛ぶ。
俺たちも初めての試みに緊張がほぐれない。つい先ほどもやってたシステムチェックをもう一度繰り返す。
「降下モジュール接続を確認。ユニットブースターシステムオールグリーン。」
61式戦車も空挺出来るレベルの高さだ。万が一パラシュートが開かなくても落下直前にブースターを思いっきり吹けばなんとかなる、って整備の人が言ってた。
何故だろう、全然信じられない。
今さらやめてくださいも通用しないだろうし、出来る事は全てやって備えよう。
『隊長、本当にこれ大丈夫なんですかっ!』
ユリスが若干涙声で聞いてくる。
そういえばユリスは高所恐怖症だったな〜、なんてことを思い出す。
正直、俺に聞かないで欲しい。俺だって分からないんだから。
「大丈夫だ。降下姿勢制御と落下傘展開方法は頭にいれてあるな?それさえ頭にあれば後は何とかなる。」
適当な事しか言えないが俺だってそれを頼りにしてるんだ。
『降下1分前。降下位置に前進、待機。』
ここからはつまらない失敗を防ぐためおしゃべりは無しになる。
緊張感を持たないと簡単に死んでしまう。
『30秒前、降下姿勢。』
MSに膝を曲げさせて半ば淵から身を乗り出すような姿勢をする。
ここから下は空。足場も何も無い空間が広がる。
いくらライプニッツに慣れ親しんだ空間と言えど、戦闘機を駆るのと史上初のMSの空挺をするのは大きな意味が違う。
翼のある物と翼の無い物。
言葉にしたらたったこれだけの違い。されど彼にとっては空に拒絶されたかの様に感じられた。
『降下開始!』
無慈悲に最後の言葉が発せられ、俺は意を決して空に躍り出た。
すぐに落下傘が展開して落下速度を緩めようとする。
しかし、完全には速度を緩められず多少速い速度で モニターには地面が広がってきた。
地面まであと30mというところで増設されたブースターユニットを全力で吹かす。
そのかいあって多少の衝撃で着陸に成功する。
役目を終えたユニットはパージされた。
「全部隊集結。集結完了後、戦闘区域に進軍する。」
3分後、降下した全部隊の集結が完了し、南にあるニューヤークの中心部に向かって前進し始めた。
‡
南の空が明るくなりはじめた。
他の部隊が攻撃を始めたようだ。
『またパーティーには遅刻かよ。』
ベリアルがぼやくが無視する。
こっちだって好き好んで遅刻してる訳ではないのだ。
「総員傾注。俺、ユリス、マリアの三人で衝角陣形を組んで前衛に、エレーナは俺達の後方200mで支援。ベリアルは後方600mで戦車隊の直掩に着け。南下して中心部を目指す。」
素早く陣形を組んで都心部に向けて前進を開始する。
少し進んでいると愛機の強力なレーダーが敵の反応を捉えた。
「タリホー、敵1。方位1-8-5、距離1500。ベリアル狙撃出来るか?」
ザクならレーダーの索敵範囲外だが、あまり余裕はない。
敵の位置情報を素早くデータリンクして、ベリアルに狙撃可能か尋ねる。
俺の見たてが正しければやれるはずだ。
『OK、敵確認。マリアそこは邪魔だ!もっと右。…そう、そこでいいぞ。』
膝立ちの態勢のベリアル機から光条が走る。
ビームライフルなんかよりも太い光が途中の障害物を全て焼き払いながら直進していく。
光はザクの腹を貫いていく。
そして爆発。
「デカイ花火だな。わんさか集まってくるぞ警戒しろ。」
俺は素早く注意して、レーダーに目を走らす。
敵の発見が早ければそれだけ生き残れる可能性が上がるからだ。
『方位2-7-0より敵3。恐らく偵察小隊かと。』
エレーナから発見の報が入る。
200m後方から陸戦型ガンダムと同じだけのレーダー探査能力。新型だからなのかそれとも改造して専用のレーダーを搭載してるのか…。
なんにせよ楽になるならその方がいい。
『敵機ロックオン。隊長、発砲許可を。』
ベリアルのライフルはリロード時間が長いと言ってたな。
「ベリアル、次の再射撃可能までの時間は?」
『発砲可能までは20秒、フルチャージまでは1分。』
長過ぎる。それじゃ敵が移動しちまう。戦車隊も出来るだけ早めに中心部に送らなきゃいけないのに。
「エレーナ、一射目で真ん中、二射目で左を一撃で落とせるか?」
『恐らく。ただ、リロードで5秒はかかるので二射目の命中率は8割を下ります。』
「それで十分だ。ベリアル、射撃可能になったら右の敵の頭を吹っ飛ばせ。10秒後に射撃開始。」
射撃開始の掛け声と共にエレーナのショルダーキャノンが火を吹く。
放たれた弾丸は正確に敵のコックピットを貫いて機体を四散させた。
砲身の後部から空薬莢が排出されて新たな弾丸が装填される。
『ロック…、ファイヤ。』
二発目はコックピットに直撃こそはしなかったものの、腰に当たり動かなくなった。
着弾とほぼ同時にLRライフルの冷却が終了し、発射の声もなしに撃った。
ピンクの光条は綺麗に頭に直撃してメインカメラを吹っ飛ばした。
「声を出してから撃ってくれ。全機前進する、頭なしを始末して急いで中心部に向かうぞ。」
俺は急いで作戦に取掛る為に中心部へとMSを向かわせた。
もちろん、倒したのを始末するのも忘れずに。
‡
『やっと来たか。随分ごゆっくりな登場だな。』
フェンリル隊の隊長が声をかけてくる。
声色から皮肉ってるという感じは余りしないな。
「そう言うな。戦車隊を脱落車無しにここまで送り届けて来たんだ、少しの遅刻は許してくれ。それよりも支援爆撃の航空機隊はどうした?」
『あまりにも抵抗が激しいので主要目標の爆撃を完了したらさっさと逃げ帰ったよ。』
「遅かったか、ラーズグリーズ隊は?」
『ほぼ壊滅だ。小破1、中破2、大破2で死者は無し。俺たちは幸いに中破1で済んでる。』
予想以上の損害だな。まぁ、地球方面軍司令部の攻略の損害と考えたら安い方だな。
戦車隊を二つに分けて都市部と司令部の占拠。そしてその護衛。
あぁ、ラーズグリーズ隊の撤退の護衛もしないと。
「北大西洋艦隊に連絡、中破以上の機体の回収を頼め。護衛は此処からベリアルとユリス。戦車隊を二つに分ける。アルファチームは都市部の占拠、ダウンフォールの残りが護衛に付く。ブラボーチームは司令部の占拠、残存機が護衛。反対意見は?」
誰も何も言わないから大丈夫か?
『こちら北大西洋艦隊旗艦シーベレー、回収用の艦隊をそちらに回した。10分が限界だ。早めにきてくれ。』
「よし、ベリアル、ユリス頼んだ。自力歩行出来ない機体は機密保持の為破壊しろ。スーパーナパームをやる。」
そう言って腰のマガジンラックに付けておいた円柱状の物体をベリアル機に渡す。
それを受け取ってから二機は自分の仕事をしに消えた。
「俺たちも行くぞ。こんな事さっさと終わらせて休暇にしたいんだ。そっちも頼むぞ。」
応、と威勢のいい返事を聞いてから都市部に向かって前進し始めた。
‡
『都市部入り口付近左右にマゼラアタック2輌。恐らく門代りだと思われます。』
エレーナが単身生身で偵察してきた結果を報告てくれた。
手前の森にMSを潜めているからまだ見つかってないと思うから奇襲が可能だな。
相手が戦車なのに奇襲が必要か?
いや、初の市街戦だから余計な防御網は築かれたく無いし建物への射撃許可は降りてないからな。
『隊長、早く攻撃許可を。』
どうしようか悩んでいると、エレーナが自分のMSに乗り込んでマゼラアタックに照準を付けていた。
この娘は若干戦闘狂の気があるな。気をつけないと。
今回は市街地の制圧。
これが厄介なんだよな。戦闘であまりにも民間人に被害を出し過ぎると後の統治が大変だからな。
統治以外にも税金を払う民間人に多数の死者が出たら税率を下げたり、場合によっては戦災被害の見舞金なんかも出さなきゃいけないしね。
まぁ、要は此処で戦争するメリットが無いのだ。
「愚痴ってもしょうがないか。エレーナ、2射で砲台部を吹き飛ばせ。市街戦で建物への射撃許可は降りてないから注意しろ。流れ弾にも気を使えよ。」
軽く注意を促してから待ちきれずにエレーナが撃った。
初弾は綺麗に右側のマゼラアタックの砲台を潰したが、次弾は風の影響か左の車両部を破壊しただけにとどまった。
そしてマゼラドップが空を舞う。
その瞬間にマリアの放った120mmマシンガンが完璧に相手を捉えて爆散させる。
ベリアル並の狙撃能力だ、いい発掘をしたかもな。
「戦車隊突入。目標は議会場の占拠。俺たちはサーチ&デストロイで敵勢力の殲滅。陸戦教練の市街地演習を思い出せ。いいな!」
戦車隊突入から30分後、ブラボーチームから敵司令部占拠完了の報告を受けてニューヤーク攻略戦が終了した。
補足を
今回降下に使ったのは08小隊のアニメのOPで出てきた降下用モジュールの試作型です
(正しい名前はわからん)
あと、誤字脱字は御指摘頂きましたら随時対処しています