転生した羊の姫は,あの日の勇者に憧れる   作:ふふ歩

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申し訳ありません、最終話の予定でしたが、長くなりそうなので分割する事にしました。



心融①〜満点の星の下で〜

 

 

 

ーー村に戻り、僕達は村外れにある医院に連れて行かれた。

 そして、この村唯一の医師である壮年の蜥蜴人の先生は、僕達を一通り診察してから深い溜息を吐いて呆れたように呟いた。

 

 

 

 

「ーー村長、私っている意味あるんですか?」

 

 

 

 

 何でも先生の見立てでは、どうやら僕達の怪我や魔力の消耗は殆ど治っており、ルゥシィは翅の再生こそひと月程度治療が必要だが、体調自体は一週間ほど安静にしていれば問題無く、僕に至っては2、3日栄養のある食べ物を取って、ゆっくり寝てさえすれば入院の必要すら無いらしい。

…村長さんの本気の魔法は、とんだ医者殺しだったという訳だ。

 

 

 

 

「この前の腰の怪我にせよ今回の事にせよ、魔力による治療はメリットも大きいですが、通常の治療と比べたら急激な変化を伴う以上リスクを伴います。あまり濫用するようならば、医院の看板は何時でもお譲りする準備は出来とりますよ村長」

「それは困りますなぁ。

先生がおられなかったら、盤戯(ボードゲーム)と晩酌の相手がいなくなってしまいます」

「…全く、この村に来てしまったのが私の運の尽きだ。

後でしっかりと魔法薬の調合と納品、お願いしますよ」

 

 

 

 

 カラカラと笑う村長に呆れたように頭を掻くと、先生は僕とルゥシィに処方する薬を作りに奥へ引き込んでいく。

 病室に用意されたベッドにルゥシィを寝かせながら、僕は大きく欠伸をしたーー何だか酷く眠い。

 

 

 

 

「一気に魔力を使った影響だろうな。恐らくは魔力酔いの一種だろう」

「ナーベの魔法で治ったとは言っても、今日は大変だったんだもの、無理は無いわよ。

ーーもう先生には話してあるから、今日の所はここでルゥシィと一緒にゆっくりしていなさい」

「え…? でも明日はーー」

 

 

 

 

 僕の言葉を、皆まで言うなと父が遮る。

 入院しようとしまいと、今回の騒動の後始末で暫くはバタバタするから、僕の誕生日の宴は暫く延期にするそうだ。

 考えてみなくても当たり前の事だが、ぼんやりとした頭のせいか言われるまで気が回らなかった。

 

 

 

 

「ーー余計な心配はしないでいい。さぁ、もう休みなさい」

「う、ん…ありがと…おとう、さま…」

 

 

 

 

 視界が溶けるような眠気に、辿々しく答えるのが精一杯だった。

 その後、重たくなって行く体を引き摺るように、父と母の手を借りてどうにか寝間着に着替え、ベッドに横になる。

 もう目も開けられずに、僕の意識は微睡の中に沈んでいった。

 

 

 

 

__________________________________________________

 

 

 

 

 

ーー夢を見た。

 

 

 

 

 

 はっきりと夢と分かるけれど、醒めたらきっと覚えていないんだろうな、と思えるような、深い眠りの中の夢を。

 

 

 

 

 

 僕は、僕以外に動く者は誰もいない空間をひたすら歩き続けていた。

 小さい頃に見た夢の中のような光景だったけれど、少し違う。

 

 

 

 

 

ーー空には、降り注ぎそうな程の星々が輝く夜空が浮かび、僕の姿を鮮明に照らし出している。

 

 

 

 

 

 そして、辺りを見回すと、まるで昨日見た魔力溜まりのように、あちこちから虹色の魔力が渦を巻いているのが見えた。

 その渦に近付き手を翳すと、まるで火花のように眩く、暖かな光が弾ける。

 

 

 

 

 その光の泡の中には、思わず顔が綻んでしまいそうな程に平和で穏やかな営みが映っていた。

 

 

 

 

 幼子を愛しげに抱きしめる人族の夫婦。

 家族と共に夕食を囲んで団欒する、魔族の子供達の幸せそうな笑顔。

 洞穴の中で寝そべりながら、目も開かない子供達に乳を与える魔物。

 戦場での誉を玉座の間で讃えられ、名誉と栄光を手にした戦士。

 親を失った孤児達を慈しむような笑顔で抱きしめる、老齢の僧侶。

 長年の恋が実り、愛しげに愛を誓い合う貴族の夫婦。

 その日ようやく手に入れた糧を仲間達と分け合い、生きる喜びを噛み締める奴隷の子供達。

 

 

 

 

 

…老若男女、ヒトや魔物、獣ーー様々な姿がそこにある。

 

 

 

 

 

 そこで僕は気付いたーーこれはきっと、世界の記憶だ。

 循環の果てに、悪意や怒り、悲しみや憎しみを浄化された、人々の想いが込められた魔力が最後に行き着く場所、それがここなのだ。

 そんな場所も、そんな知識も知らない筈なのに、この時の僕は何故かそう確信していた。

 

 

 

 

 そんな暖かな魔力に囲まれながら、僕はひたすら歩き続ける。

 目的ははっきりとしている。

 きっとこの先に、僕にとって大切な『誰か』が待っているーーそんな確信があった。

 

 

 

 

 歩いて、歩いて、何処までも歩いてーーその先に、居た。

 

 

 

 

ーー少年だ。

 背は、僕よりも頭一つ半くらいに高い。

 美しい蜂蜜色の金髪を靡かせ、まるで吸い込まれそうな程に澄んだ、浅葱色の瞳が整った顔を飾っている。

 歳の頃は僕と同じくらい。

 燻んだ鋼色の鎧を身に纏い、腰には簡素な飾りの付いた剣を佩いていた。

 

 

 

 

ーー僕がこの世界に生まれてから目の当たりにする、この世界の人間の子供。

 

 

 

 

 今まで見た事も出会った事も無い筈のその少年から、僕は目を離す事が出来なかった。

 そんな僕に、少年は気さくな雰囲気で手を上げる。

 

 

 

 

「久しぶり!! 元気だった?」

「ーーあ…の…? 誰、ですか…?」

 

 

 

 

 僕は震える声で彼に呼びかけると、彼は笑顔を浮かべながらこちらに歩み寄って来る。

 そして僕と目線を合わせるかのように軽く屈み込むと、じっと見つめて来た。

 

 

 

 

 吸い込まれそうな程に綺麗な瞳だーーそこには、僕が映っている。

 

 

 

 

 彼女の好きだった色に浮かぶ僕の顔は、戸惑いと…少しの期待に揺れていた。

 

 

 

 

 

ーー期待…? 僕は一体、何に期待を?

 

 

 

 

 

 僕が自分自身の感情に戸惑っていると、少年はニコリと笑ってーー、

 

 

 

 

 

「ーー気付くのが遅いっ!!」

 

 

 

 

 

 ペチン、と僕の額に向かって見事なデコピンをお見舞いした。

 

 

 

 

 

「あいたっ!? いきなり何をするんだよっ!! 君は相変わらず乱暴だなぁ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーーえ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 つい反射的に飛び出た自分自身の言葉に、僕は呆然とした表情を浮かべる事しか出来なかった。

 

 

 

 

 

「全く…すぐに気付いて欲しいモンだよ。こっちはすぐ分かったってのにさ」

「君…は…」

 

 

 

 

 

 少年は不機嫌そうに眉根を寄せながら、プクッと頬を膨らませてみせる。

 それは、僕の記憶の中の、僕の愛した人の仕草そのままだった。

 でも声も、口調も、外見も、そして更には性別すらも全く違うので、僕の頭は混乱しっ放しだ。

 言葉では言い表せないような、様々な感情が僕の心を掻き乱す。

 けれど、それでも確信が持てなくて、僕の呼び掛けはか細く、自信なさげに震えてしまう。

 

 

 

 

「……君、なのかい?」

「あ、まだ疑ってる。まぁ、でも無理ないよなぁ…俺も最初の頃は自分でも違和感あったし」

 

 

 

 

 

 そう言うと、少年はあー、とかうー、とか喉を震わせ、何度か咳払いをする。

 

 

 

 

 

「ーーこれでどうかしら?

男の子の声だからちょっと慣れないだろうけど、そこは我慢してよねーーあなた」

 

 

 

 

 

 僕の耳に染み付いた、いつもの口調で少年はーーいや、妻はにっこりと笑った。

 

 

 

 

 

「あぁ…」

 

 

 

 

 

 溜息が漏れ、涙が溢れる。

 

 

 

 

 君か…本当に君なのか…!!

 

 

 

 

ーー色々と、言いたい事や、謝りたい事や、聞きたい事が沢山あるのに、あまりにも多すぎて詰まったように言葉が出ない。

 ならばせめて、触れたい、抱き締めたい。

 僕は手を伸ばしながら、駆け寄ろうとしてーー、

 

 

 

 

 

「はい、ストップ!!」

「ぶっ!?」

 

 

 

 

ーー妻が作り出したであろう光の壁に、顔面を強打させられていた。

 

 

 

 

 

「な、何をするんだよぅ…」

 

 

 

 

 

 ジンジンと痛む鼻を摩りながら抗議の声に、妻はビシリ、と僕を指差しながら答える。

 

 

 

 

 

「ーー忘れてないでしょ? 約束。今度は私が見つけるって言ったじゃない。

だから、ちゃんと向こうの世界で私が貴方を見つけるまでは、そう言うのはナシ!!

そもそも、鬼がまだ探してるのに、隠れた方からこっちだよって言うのは興醒めもいい所よ」

「かくれんぼ、か…懐かしいねーーバレてたのかい?」

「バレバレもバレバレよ。私は手加減されて喜べるような子供じゃないんだから」

 

 

 

 

 勿論、忘れてなんかいないーーだからこそ、いきなりの妻の暴挙も納得してしまった。

 君は負けず嫌いだったからね、と言うと、当たり前でしょ、と妻が返す。

 それはとても懐かしい、阿吽の呼吸のような会話ーー僕達は2人でクスクスと笑う。

 

 

 

 

「大体ここに私達がいるのも、ある意味反則みたいなものだしね。

ーーそもそも、何でこんな所に来れたのかも、貴方に会えたのかも皆目検討つかないし」

「うん…僕も全然、何が何だか分からないや」

 

 

 

 

 

 妻の言うように、僕自身もこの場所が何だかは朧げにしか理解出来ていないし、何故こうして未だに会えていない彼女と出会い、話すことが出来てているかは分からない。

 でも、これだけは言えるーー。

 

 

 

 

 

「僕達は、あの世界を旅立つ前も後も、ずっと一緒だったんだよ。

だから、今もこうして何処かで繋がっているんじゃないかな?」

 

 

 

 

 

 だってほらーーと、僕は天上を指差す。そこには、満天の星々が輝いている。

 星の配置も、光も全く違うけれど、その美しさだけはどちらの世界でも変わらない 。

 それを道標にして、きっと僕等はまた巡り会えたのだ。

 例えまだ体は出会っていなくても、心だけでも会えたのだーー絶対に、会えない筈が無い。

 

 

 

 

 

「お互いに、あの星々の何処かで見守ってくれてるって思ってたから、ここまで来れたんだよ、きっと」

「“この星空のどこかに僕はいて、その星で笑ってる。

そう思いながら夜、空を見上げたらぜんぶの星が笑っているように見えるよ。“

…確か、サン=テグジュペリ?

向こうでもそうだったけど、随分とロマンチストになったものね?」

「そうだね…女の子になったからかも」

「そうね。全く、前とは見違えて可愛くなっちゃって。こりゃ探すのは苦労しそうだわ」

「そっちこそ、すっかり逞しい美少年になったよね。

しかも種族まで違うから、まずは会いに行くのが大変だよ」

 

 

 

 

 

 そうしてひとしきりクスクスと笑い合っていると、ふと妻は俯きながら押し黙った。

 

 

 

 

 

「そうね…会いたいなぁ」

「うん」

「話したいことがいっぱいあるの」

「僕もだよ」

「…私、待ったよ。貴方がいなくなってから、一杯一杯待ったよ」

「うん」

「私、生きたよ。精一杯、残りの人生を、しっかりと生きたよ」

「うん」

「私、寂しかったよ。貴方がいなくなってから、凄く凄く寂しかったよ」

「うん」

「だから、会えた時は、ギュってしてね。今までの寂しさなんて、吹き飛んじゃうくらいに強く」

「ーー約束する」

 

 

 

 

 

 僕も少し俯いて、妻の顔を見ないままひたすら頷き続けた。

ーーそうしないと、僕も同じように頬を濡らす滴を見られてしまいそうだったから。

 

 

 

 

 

「ーーーーさて!! 湿っぽいのはお終いだ!! そろそろ帰るよ!!」

 

 

 

 

 

 服の袖で目元を力強く拭うと、妻は口調を戻して踵を返した。

 それは、またこの世界における人生に戻ると言う決意の表れだ。

 名残惜しいけれど、僕もまた妻から背を向けて歩き出すーーふと、気付いた。

 

 

 

 

「ーーそう言えば、どうやって帰ればいいんだろう?」

 

 

 

 

 これは夢である以上、目覚めれば醒める筈なのだが…。

 

 

 

 

「そうだなぁ…その光を辿っていけば、戻れるんじゃないかな?」

 

 

 

 

 妻の言葉に足元を見ると、そこには鱗粉のような光の帯が続いている。

 そして遠くから、声が聞こえてくるーーこれは、ルゥシィの声だ。

 

 

 

 

『ーーメ…ちゃ……メルちゃん』

 

 

 

 

 

 僕を呼ぶ声が響き渡るーーそれに従って、周りの景色が次第に白んでいく。

 妻の言う通り、この声を辿る度に意識が浮上していくのを感じた。

 

 

 

 

 

「ーーふふ、君を凄く大事に思ってるんだな。声だけで分かるよ。

いい友達が出来たみたいで安心したよ」

「うん…この世界で、初めて出来た大切な友達だよ。いつか、君にも紹介するよ」

「ああ、楽しみに待ってるよ。ちなみに俺にも大切な人達が一杯いるんだ。

ーー皆、仲良くなれると思う」

「君の友達の事だから、きっと活発な子たちばかりなんだろうね。こちらこそ、楽しみにしてる」

 

 

 

 

 それじゃあ、と僕達は互いに背を向け合って、自分を待つ人達の元へと帰るために歩き始めた。

 いつ会えるかどうかはまだ分からないけど、きっとそれはそこまで遠い日では無いと信じて。

 

 

 

 

「あ、ちなみに浮気したら許さないんだからね。

女の子同士なんて非生産的な事、承知しないんだから」

「ーーしないよっ!! 何でいい雰囲気をぶち壊すかなぁ君は!!」

 

 

 

 

 最後の最後に、あまりにもあまりな言葉に、思わず僕は顔を真っ赤にしながら振り向きざまに叫んだ。

 あはは、冗談冗談ーーと笑って、今度こそ妻は光の向こうへと去っていく。

 

 

 

 

「ーーーー愛してるわ、貴方」

 

 

 

 

 そう、一言だけ睦言を囁いて、もう彼となった彼女は去っていった。

 

 

 

 

「うんーー僕も、愛してるよ。いつか、またね」

 

 

 

 

 僕もそう一言、彼が去っていった方に向けて囁くと、声が聞こえる先へと歩いていく。

 強くなっていく光にひたすらに歩いて、歩いてーーそして目が覚めた。

 

 

 

 

__________________________________________________

 

 

 

 

 

ーー目を覚まし、身を起こす。

 はっきりとは覚えていないが、どうやら夢を見ていたらしい。

 辺りを見回すと、外はすっかりと夜の帳が落ち、月は天上に輝いているーーどうやら、日が変わって間も無く程の時間のようだ。

 

 

 

 

 

「あれ…涙…?」

 

 

 

 

 

 何故か理由は分からないが、僕の頬は涙が作った線によって濡れていた。

 でも、悲しいのではなくて、何処か胸が暖かいーー不思議と気分は晴れやかだ。

 

 

 

 

 

「ーーメルちゃん、大丈夫?」

 

 

 

 

 

 涙を拭っていると、不意に隣のベッドから声が聞こえた。

 そこには、僕と同じように身を起こしたルゥシィがいたーーどうやら、僕と同じように目を覚ましたらしい。

 僕は嬉しさのあまり叫びそうになるが、時間を考えてどうにかその衝動を抑えると、飛び起きてルゥシィに駆け寄り、抱きしめた。

 

 

 

 

「ーーこっちの台詞だよルゥちゃん…っ!! 良かった…!!」

「わぷっ…!?…うん、ありがと、メルちゃん」

 

 

 

 

 僕の勢いに一瞬面食らったけれど、ルゥシィも嬉しそうに微笑みながら僕を抱きしめ返してくれた。

 それから僕達は、暫くずっとそのままでいたーー互いの体温を、生きている事の証を確かめ合うように。

 

 

 

 

「ーーごめんねメルちゃん。私が約束破ったから、こんな事になっちゃって…」

「ううん、いいんだよルゥちゃん…僕も、ルゥちゃんをちゃんと最後まで守れなくて、ごめん」

 

 

 

 

 それ以上の言葉はいらなかったーー魔力を通じて、互いの気持ちは全て分かっているから。

 ルゥシィがどんな思いで僕を見ていて、どんな理由であの場所に行ったのか。

 僕がどんな思いでルゥシィを守っていたのか、全てーー。

 そして暫しの抱擁の後、何だか少し恥ずかしくなって、お互いはにかむように笑い合った。

 

 

 

 

「そう言えば、すっかり忘れてたねぇーーお誕生日おめでとう、メルちゃん」

「あ…そう言えばー」

 

 

 

 

 あまりにもバタバタしていてすっかり忘れていたけれど、日が替わったという事は…そうか、僕は10歳になったのだ。

 真夜中に2人きりで迎える誕生日ーーちょっぴり寂しいけれど、何だか物凄く特別な感じがした。

 

 

 

 

 

「2人っきりじゃないよメルちゃん。見て見てーーお月様に、お星様もいるよー」

 

 

 

 

 

 僕のそんな感情を感じ取ったのか、ルゥシィが窓の外を指差す。

 そこには、前世でも見た事が無いくらいの満天の星空が広がり、青白く輝く月がある。

 彼女らしいロマンチックな言葉に、僕は思わずクスクスと笑った。

 

 

 

 

 

「そうだね。こんなに一杯のゲストに囲まれて、僕は幸せ者だよ」

「ふふふっ、メルちゃんったらオトナみたいな事言うねぇ」

 

 

 

 

 

 そう笑い合って、ベッドの淵に並んで腰掛けて、煌めく星々を一緒に眺める。

 2人の間を、穏やかで静かな時間が流れた。

 

 

 

 

 

「ところでさ、メルちゃん」

「ん? なぁにルゥちゃん?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーメルちゃんが前に暮らしてたお星様は、あれの中のどれなんだろうねぇ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーその時の僕の衝撃は、正に絶句と言う他に無い。

 あまりにも唐突に、ルゥシィは僕が誰にも話したことの無い秘密を言い当てていた。

 驚きのあまり、僕はパクパクと口を開け閉めする事しか出来ない。

 

 

 

 

 

「……る、ルゥちゃん、何、言ってーー」

 

 

 

 

 

 どうにか出した声も、途切れ途切れで、何処までもぎこちなかった。

 これでは、何か僕に秘密があると自白しているようなものではないか。

 どうやって誤魔化そうかーー混乱する頭のままで、必死に考えを巡らす僕に向かって、ルゥシィは更に口を開いた。

 

 

 

 

 

「ねぇメルちゃんーー私の事、好き?」

 

 

 

 

 

 それは聞きようによっては、まるで愛の告白のよう。

ーーしかし、ルゥシィの表情には浮ついたものは一切無く、ただ真剣な感情だけが伝わってくる。

 

 

 

 

 

「勿論、好きだよーールゥちゃんは、一番大切な友達だよ」

 

 

 

 

 

 だから少しだけ冷静になって、僕は淀みなくはっきりと答えることが出来た。

 

 

 

 

 

「んふふ、そっか。嬉しいなぁーーでも、」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーー一番大切なのは、前の世界のお嫁さんなんだよね?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 もう、僕は誤魔化す事なんて出来なかった。

 それは、僕の根幹を成す言葉ーー間違いない、ルゥシィは、僕の秘密を全て知っている。

 凍り付いた僕を、ルゥシィはただ静かに、穏やかな笑みを浮かべて見つめていた。

 

 

 

 




とうとうバレてしまったメルちゃんの秘密。
その事実にルゥシィがどんな思いを抱いているのか、次話をお待ち下さい。
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