転生した羊の姫は,あの日の勇者に憧れる   作:ふふ歩

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前回に引き続き、特訓は一旦お休み。
現地勢におけるメインヒロイン候補とのイチャイチャパートとなります。


特訓の合間〜大切な友達〜

 初めての大失敗騒動の翌朝、目が覚めると、心配そうな顔をした父と母が駆け寄ってきた。

 

 

 

「ーーごめんねええええ!! メルううううう!!」

 

 

 

 と母は物凄い勢いで走り寄ってきて、泣きべそを掻きながら僕を力一杯抱きしめる。

 

 

 

「う、うん、心配かけてごめんなさい、お母様」

 

 

 

 ちょっと痛くてこそばゆかったけれど、それは本気で僕を心配しているからこそだーー僕は抵抗せず、母の相変わらず力一杯の愛情に身を委ねた。

 

 

 

「ーーこらこら止めないか、困っているだろう。

…おはようメル。何処か痛い所や気分が悪かったりしないか?」

 

 

 

 父はそんな母を嗜めながらも、本人自体も何処かほっとした様子だ。

 

 

 

「ううん、お父様。全然平気だよ。むしろ何だかちょっと調子がいいくらい」

 

 

 

 父の言葉に僕は頭を振るーー別に強がりや心配をかけたく無いという訳でもなく、実際に自分でも不思議なほどに絶好調とも言える程に調子が良かった。

 

 

 

ーーやはり、昨日見た夢のおかげだろうか?

 

 

 

 僕はそのままの勢いで、早速昨日失敗した母との特訓のリベンジを果たそうと意気込んでいたのだが、残念ながらそれは父と母両方から止められてしまった。

 村長さんや母による治療魔法のおかげでもうすっかり治っているが、あまり大したことは無かったとは言っても怪我は怪我なのだから、大事を取って今日は一日特訓は休みにするらしい。

 

 

 

「メルが平気な顔をしているからと、僕達にも油断があったのかもしれないしな。

ーー今日は丁度村長殿の私塾も休みな事だし、今日は一日思う存分友達と遊んで、気分転換をしてくるといい」

「え? いいの!?」

「ええ、勿論よメル。何か失敗した時は、一度頭をとことん空っぽにするのも大切よ?

ただ、松明が灯る時間よりは前に帰って来て頂戴ね」

「ありがとうお父様、お母様!!」

 

 

 

 

 僕は両親の言葉に目を輝かせたーー特訓が始まってから、以前と比べて近所の子供達とは時間が合わない事も多かったから、一日中思う存分自由に時間を使えるのは本当に久しぶりだ。

 

 

 

 まだこの世界に慣れない頃は、下手をしたら孫よりも年下の子供達に混ざって遊ぶのは少し気恥ずかしかったし、思わず保護者の目線になってしまい、無鉄砲な彼らの行動の一つ一つにハラハラしたりしたものだ。

 しかし、大きくなるにつれ、段々と自分が子供に還った事の違和感は大分消え、今では彼らと野山を駆け回り、遊び回るのは僕の大好きな時間の一つだ。

…勿論一番が本を読む事なのは変わらないが、世界を越えてようやく、一緒に楽しい時間を共有出来る友達が出来たのだーーそればかりにかまけるなんて勿体ない。

 

 

 

 

 そうと決まれば話は早いーー僕は手早く朝食を終えて後片付けを手伝いながら、さて誰を誘おうかーーと、仲の良い子達を思い浮かべていたら、不意に我が家のドアがドンドンとやかましく叩かれた。

 

 

 

 

「メールーちゃーん!! あーそーぼー!!」

 

 

 

 

 まるでドアなんか無いかのように、元気で大きな声が響き渡る。

 声の主は見なくても分かるーーそれは、僕がいの一番に頭に思い浮かべた子だった。

 

 

 

 

「はぁーい!!」

 

 

 

 

 僕はその声が聞こえた瞬間、すぐに僕は駆け出して、『彼女』を招き入れる。

 

 

 

 

「おはよーメルちゃん!! 今日は遊べるー?」

 

 

 

 

 そこには、ヒラヒラと揚羽蝶のような美しい翅をはためかせながら、朗らかな笑みを浮かべてこちらを見下ろす、ルゥシィの姿があった。

 

 

 

 

「うんっ!! 丁度今日は一日休みになったんだ!!」

「わぁー、グウゼンだねぇ。何だか晴れてていい天気だから、何だかそんな気がしてたんだー」

 

 

 

 

 少し間延びした穏やかな声で、ふにゃりと笑う彼女に、思わず僕も嬉しくなってしまう。

 けど、そこでふと気付く。

 

 

 

 

「あれ? でもルゥちゃん、確か昨日も来てたってお母様から聞いたんだけど…?」

「昨日は曇りだったんだけど、風が気持ち良かったからねぇ。メルちゃんはお出かけしてたけど」

「…そういえば、一昨日も来ようとしてたんだっけ?」

「そーだよー、雨が降ってたから、メルちゃんもお休みだと思ってねぇ。

でも、雨の音を聞いてる内に眠くなっちゃったんだよねぇー」

 

 

 

 

 そう言って彼女はあはは〜、と笑うーールゥシィはいつもこんなだ。

 マイペースで、気紛れで、何があってもいつも朗らかに笑っているーーまるでお日様のように。

 

 

 

 

「あ、あはは…ルゥちゃんは相変わらずだね…」

「ふふーん、当たり前でしょ? 私は私なのだー」

 

 

 

 

 自慢げに胸を張る彼女は、あ、そうだったいけないいけない、と、両親に向かってぺこり、と頭を下げる。

 

 

 

 

「こんにちは、メルちゃんのママに、メルちゃんのパパ。メルちゃんと遊んでいいー?」

「ははは、こんにちはルゥシィ。勿論構わないとも」

「ただし独り占めはダメよー?」

「勿論ー。メルちゃんは皆のメルちゃんなのだー」

 

 

 

 何処までも天真爛漫だけれど、きちんとする所はちゃんときちんとするーーそんなルゥシィは、村の大人達にからも大人気だ。

ーーどちらかと言うと、アイドルというよりもマスコット的な感じだけれども。

 

 

 

「ーーそれじゃあ、行って来ます!!」

 

 

 

 ともかく、許可は出たーー僕は2人に見送られ、お気に入りのスカーフを身に纏って外へと飛び出した。

 今日はルゥシィの言うとおり、雲一つ無い青空が広がっているーー少し日差しが強いが、日陰の中だったらそこまで暑くも無い。

 

 

 

「じゃあ、何処に行く?」

「あはは、勿論決まってるじゃ〜ん」

「「ーー東の森!!」」

 

 

 

 2人の言葉が同時に重なる。

ーーそこは、村の大人達が木や薪を切り、木の実や野草を採ったりする場所で、あまり奥に行きすぎたりしない限りは、年頃の子供達にとっては格好の遊び場所だ。

 森に入ってすぐの場所にある炭焼き小屋の近くには、大小様々な花が咲く広場があり、僕達はいつもそこで鬼ごっこをしたり、本を読んだりするのがお気に入りだった。

 

 

 

 

 そうと決まれば話は早い。早速僕達は森目掛けて出発した。

 僕の家からは暫く歩かなくてはいけないため、ぐずぐずしていては折角の時間が勿体ない。

ーーパタパタと翅をはためかせるルゥシィに置いて行かれないように、小走りで追いかける。

 

 

 

 

「そう言えばメルちゃん、最近飛ばないけどどうしたの〜?」

「あ、うーん、それなんだけどーー」

 

 

 

 

 まだ魔力の事や危険性をあまり認識していなかった頃、僕は彼女と遊ぶ時は必ずと言って良い程に魔力で宙を浮かんで遊んでいた。

 だが、特訓を受けるようになってからは、やらないようにしている。

 赤ん坊の頃から何の気無しにやっていた事なので、僕にとってはもう手足を動かすのと殆ど変わらないのだが、大人達にとってはそうは行かないらしい。

 そのため、魔力のコントロールが一定の水準を満たすまでは、みだりにやらないようにと言い含められてしまったのだ。

 

 

 

「ありゃりゃ、残念だなぁ。久々にメルちゃんと木の上をお散歩出来ると思ってたんだけど〜」

 

 

 

 そんな僕の経緯を聞いて、ルゥシィは眉を寄せながら口を尖らせる。

 あからさまに残念そうな顔に、僕は少し罪悪感を覚えた。

 

 

 

 

 でもそこで、僕の中にちょっとした悪戯心が湧き上がった。

ーー今日は貴重な気分転換の日なのだ…ちょっと位羽目を外しても、きっとバチは当たるまい。

 僕は魔力を操作して、ふわり、とルゥシィと一緒に並ぶように浮かび上がった。

 

 

 

 

「ーーあー、パパとママの言いつけ破ってメルちゃん悪い子だー」

 

 

 

 

 そうは言いながらも、僕と一緒に飛べるのが嬉しいのか、ウキウキしているのがよく分かる。

 この村にはフェアリィ族はルゥシィの一家しかいないし、こんな風にして一緒に、文字通り飛び回れる子供は僕だけなのだ。

 

 

 

 

「ふふ、でもいつも我慢してるから、今日くらいいいかなーって」

 

 

 

 

 僕も嬉しくなって、思わず笑みを浮かべた。

 こう言う無鉄砲は子供の特権ーーそして何より、友達と一緒に何かをやる時間と言うのは、本当に貴重なものなのだから。

 

 

 

 

「それじゃあ早速、森まで競争しよ〜。よ〜いどーん!!」

「あっ、ずるい!! 待ってよぅルゥちゃーん!!」

 

 

 

 僕らはそんな風にはしゃぎながら、東の森までの空中散歩を楽しんだのだった。

 

 

 

 

__________________________________________________

 

 

 

 

 

 森の入り口には、既に何人かの子供達が集まっていた。

 

 

 

 

「おせーよルゥシィにメルリア!! お前らが最後だぞ!!」

 

 

 

 

 ガッシリとした一際体格の大きい、オーク族の少年が不機嫌そうに声を荒げる。

 

 

 

 

「へー、メルも来るなんて久しぶりね!! でかしたわよルゥ!!」

 

 

 

 

 そう言いながら親指を立てて破顔するのは、緑がかった肌を持ち、額に小さな角を生やしたゴブリン族の少女。

 

 

 

 

「皆揃った所で、何して遊ぶ? 僕はチャンバラがいい!!」

「えー、それじゃ男の子組が有利じゃん!! アタシはおままごとがいい!!」

「やだー、そんなのつまんなーい!! 折角なんだから森の中探検しようぜー!!」

 

 

 

 やいのやいのと騒がしい他の子供達を見ても、その姿形は様々だ。

 僕と同じような悪魔でも、父のように典型的な悪魔の姿をした子もいれば、角を生やした子に、羽を生やした子もいる。

 獣人ならば村長さんのように直立した動物の顔をした子もいれば、人間とほぼ変わらない、耳や手足が獣と同じようになっている子。

 果ては人の形をしているスライムや、リザードマンと呼ばれる蜥蜴人などもいる。

 

 

 

 

ーーまるで前世で妻から借りてやった、RPGでよく登場するモンスター達そのままの姿。

 

 

 

 

 しかし誰もが各々の、一見すれば種族すら違うように見える外見を気にもしていない。

 恐らくは魔族にとっての種族の違いとは、ちょっとした個性や、人間にとっての人種や民族の違い程度の認識なのだ。

 勿論、それぞれに文化や価値観、食生活等の違いは確かにあるため、もっと大きい街では居住する区画を分けたりもしているらしいが、ここのような小さい集落ではそこまで問題にはならないため、このように一緒くただ。

 

 

 

 

ーーそして結局、暫くの間遊ぶ内容についてやいのやいのと話し合った末、結局森の中で鬼ごっこに決まる。

 

 

 

 

「んふふ〜、さーて、ちょっと本気出しちゃお〜」

「頑張ろうね、ルゥちゃん」

 

 

 

 

 鬼は、一番遅く来たという事で、まずは僕とルゥシィになった。

 

 

 

 

「げー、ルゥシィが鬼だと、俺ら逃げられる訳ねーじゃん!?」

 

 

 

 

 足の遅い子達がブゥブゥと文句を漏らすーー小柄なルゥシィが本気で森の中を飛び回ったら、下手な大人よりも早いのだから当然と言えば当然だろう。

 生来魔力が豊富であり、生まれた頃から飛ぶ事の出来る程に魔力操作の巧みなフェアリィ族にとって、森は正にホームグラウンドなのだ。

 

 

 

 

「皆落ち着いて!! 代わりに向こうにはメルがいるから、ルゥを何とかすればチャンスはあるわ!!」

 

 

 

 

 一方、僕は恐らく村の子供達の中で一番足が遅い。下手をしたらスライム族の子よりも遅い。

 前世でも運動は壊滅的だったのが、どうにもこの世界でも苦手意識が続いてしまっている。

 彼らはそんな僕が鬼の1人という事に希望を見出しているようだがーーしかし、

 

 

 

 

「ふふふっ、残念でした」

 

 

 

 

 僕はそんな子供達に見せつけるように、ふわり、と宙に浮かんでみせた。

 その瞬間、子供達からは一斉に悲鳴のような叫びが上がる。

 

 

 

 

「げえええ!? メルリアまで飛んだぞ!? ずっけぇ!!」

「メルちゃんまで飛んだら勝負になんないじゃん!!」

「嘘つきー!! 暫く飛ばないって言ってただろー!!」

 

 

 

 次々に飛んでくる抗議の声ーーしかし、僕は怯む事なく皆に向かってにっこりと笑いかけた。

 

 

 

「ごめんね、今日は久しぶりに皆と遊べるから、ちょっとはしゃぎたい気分なんだーー覚悟してね?」

「畜生可愛い!!」

「可愛いけど鬼だ!!」

「鬼ごっこの鬼だけど可愛い!!」

 

 

 

 

ーー何だか男の子達が顔を赤らめているような気がするが、まぁあまり気にしないでおこう。

 

 

 

 

「それじゃあ、今から数えるよー!! いーち!! にーい!!」

「男子のアホ共は放っておいて逃げるよー!!」

「固まらないで散らばってー!! 少しでも時間を稼ぐの!!」

 

 

 

 それを聞いて騒いでいた子供達も、慌てて駆け出していく。

 

 

 

 

「ーーじゅーう!! さ〜て、頑張ろっかメルちゃん!!」

「うん!! それじゃあ、ルゥちゃんはそっちからお願い。僕はこっちから」

 

 

 

 

 そして僕達は軽く打ち合わせをしてから、風のように森の木々の間を縫いながら飛び出す。

 

 

 

 

 

ーーそれから10人近い子供達を全員捕まえるのに、朝食を食べ終わるくらいの時間もかからなかった。

 

 

 

 

 

 その後、僕は鬼ごっこにおいて空を飛ぶ事を禁止された。

 

 

 

 

 

ーーちょっと、はしゃぎ過ぎてしまっただろうか?

 

 

 

 

 

「オウボウだー!!」

「僕達のロマン…じゃ無かった!! メルのケンリを守れー!!」

「オイラオトナの気持ちちょっと分かったかもしれない!!」

 

 

 

 

 だが少し不思議だったのが、鬼ごっこ中は文句ばっかり言っていた男子勢の一部が、禁止を言い渡された瞬間僕を庇って禁止反対派に回った事だーーちなみに彼らはその後漏れなく女子勢から袋叩きに合った。

 

 

 

 

「どうしたの皆?」

「ーーメル…アンタ女の子として何か思う所は無かったの? 空飛んでる間とか」

「えっと…いつもは足が遅いから、皆に追いつけて楽しいなー、とか…。

後は、男の子にも勝てるくらいに速いから、風が気持ちいいなー、とか…」

「それから…?」

 

 

 

 

「あ、それから、今日久しぶりにルゥちゃんと一緒に飛べて嬉しかったなぁ、って」

 

 

 

 

 聞かれた事に僕が指折り数えながら答えると、女の子達は何だか生暖かい笑みを一斉に浮かべた。

 そして僕を取り囲んで代わる代わる頭を撫でくり回したり、ギュウッと抱きしめたりしてくる。

 

 

 

 

「え? え? 何、皆? くすぐったいよぉ」

「…いいの、いいのよメルちゃん」

「アンタは何も気にしないでいいの。アタシ達がメルを守るから、安心して」

「ただ、メルリアのお母さんには言っておくから、ちゃんと後で女の子の振る舞いをちゃんと教えて貰ってね?」

「う、うん…」

 

 

 

 

 正直訳が分からないが、彼女達の不思議な圧に、僕は肯く事しか出来なかった。

 

 

 

 

「ーーんふふ〜、メルちゃんは相変わらず人気者だねぇ」

 

 

 

 

 そんな僕を、少し離れた木の枝の上から、ルゥシィがニコニコしながら見ていた。

 

 

 

 

__________________________________________________

 

 

 

 

 

ーーそれから暫くして、かくれんぼをしたり、おままごとをしたり、僕達は時間のある限りとことん森での遊びを楽しんだ。

 そして昼頃にもなると、男子は男子、女子は女子で別れて、思い思いに好きなことをしてバラバラになって遊びつつ、昼食前には解散になるのが常だ。

 

 

 

 

 僕はと言うと、ルゥシィと2人きりで、木々の間を飛び回ったり、色々な所に生えた木の実や果物をもぎり取っておやつ代わりに食べたりしていた。

 

 

 

 

「ーーへぇ、大変だったねぇメルちゃん」

「うん…ちょっと髪の毛も短くなっちゃって…」

 

 

 

 

 リンゴに似た味のする果物を齧りながら、僕は昨日自分がしてしまった失敗について、ルゥシィに話していた。

 ただ、具体的な話をし始めると彼女の頭が痛くなってしまうので、わかりやすいようにざっくり、とではあるが。

 

 

 

 

「ーー火、水、土、風かー…うーん…」

 

 

 

 

 すると、僕の話を聞いたルゥシィは、珍しく考え込むような素振りを見せる。

 その顔は何処となく真剣で、今まであまり見た事の無いような表情だった。

 

 

 

 

「どうしたのルゥちゃん?」

「あ、うん…何だか不思議だなーって思って…メルちゃんのお母さんが言うには、その4つが『精霊』さんのキホンキソなんでしょ?」

「うん、そうだけど…」

 

 

 

 

 僕はルゥシィの言葉の真意が分からず、曖昧な返事しか出来ない。

 そんな僕を他所に、ルゥシィは続けて自分が腰掛ける枝をペチペチと叩く。

 

 

 

 

「じゃあ、この木はそのキホンキソの中のどれなんだろうねぇ?」

「え? うーん…どうなんだろう…?」

 

 

 

 

 その言葉に、僕は少し考え込んだーーそんな事少しも考えた事が無かった。

 土から生えてるから土…? いやでも、中には水草のように水の中でないと育たないものがあるし…。

 考え込んでいると、木々の間から風が吹き、枝葉をさやさやと鳴らしながら僕達の頬を撫でた。

 

 

 

 

「薪にすると火で燃えるしー、水と土を吸って大きくなるしー、木の間に吹く風はこんな風にいい音で気持ちいいしー。

…あ、全部揃ってるねぇ」

「あ、本当だ。そう考えると面白いね」

 

 

 

 

 ルゥシィは時々突拍子も無いことを言い出す事も多いが、たまにこうして物事の本質を捉えていたりするので面白い。

 

 

 

 

「それなら、キホンキソの火、水、土、風にー、木があったらパーフェクトだよねぇ」

「あはは、そうなったら、属性が4つじゃなくて5つにーー」

 

 

 

 

ーーそこまで言って、僕の脳裏に一つの閃きが駆け巡った。

 それは前世において、僕が書いていた物語のために集めていた資料の中に書かれていた、一つの思想の事だ。

 それは僕の暮らしていた国に程近い場所で起こった思想であり、若干マイナーではあるけれども、よく漫画やゲームの設定などにも使われているものだった。

 

 

 

 

 これなら行けるかもしれないーー僕は嬉しくなって思わずルゥシィに飛びついていた。

 

 

 

 

「ありがとうルゥちゃん!! すっごいヒントだよ!!」

「わぷっ!? 急にどしたのメルちゃんー?」

 

 

 

 

 ルゥシィは突然の僕の行動に目を白黒させていたけれど、僕が満面の笑みを浮かべているのを見て、同じようにお日様の笑顔を返す。

 

 

 

 

「えへへ、私メルちゃんの役に立った〜?」

「うん!!」

「メルちゃんの特訓、上手く行きそう〜?」

「勿論!!」

「なら良かった〜」

 

 

 

 

 その笑顔を見て、僕は初めての友達がルゥシィで良かったと心から思った。

 

 

 

 

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ーーその日の夜、僕は屋根裏に父と母を呼び出した。

 

 

 

 

「……何か、掴んだようだな」

 

 

 

 

 僕の自信に溢れた表情を見て、父はそれに何かを感じ取ってくれたようで、満足げに肯く。

 

 

 

 

「ーーうん、見てて2人とも」

 

 

 

 

ーー僕の大切な友達がくれたヒント…決して無駄にはしない!!

 

 

 

 

 僕は一回深呼吸すると、精霊を集めるために集中力を高めたーー。

 

 

 

 




メルちゃんの嫁がアップを始めました(嘘
次回は、メルちゃんが思い付いたものの答え合わせと、メルちゃんの最大の秘密である転生に関する話となります。
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