艦隊これくしょん ~愛を込めて、花束を~   作:哀餓え男

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朝潮ちゃんマジギレ


第百五話 パーティーの後にしましょう

 

 

 

 12月16日。

 今日は私の誕生日です。

 各鎮守府から出向して来た艦娘たちの編成も終わり、今は各艦隊に分かれて装備の選定や調整、連携の確認やワダツミからの発艦訓練などで、鎮守府内は戦場と同じくらい騒々しいです。

 そんな中、私が何をしているかと言いますと、司令官がお忙しい分、執務室で書類仕事に追われております。

 満潮さんが手伝ってくれているとは言え、辰見さんがやらない分までこちらに回って来てるから大忙しです。

 まあ他の皆さんに比べれば、平和的な忙しさではあるのですが……。

 

 「誕生日だと浮かれて良い雰囲気では、ありませんね」

 「そうね。さすがに霞の時みたいに、駆逐艦全員集めてパーティーって訳にはいかないわ。寂しい?」

 「いえ、そんな事はありません」

 

 孤児になってから誕生日とは無縁の生活をしていました……と言うか、雪代所長に教えてもらうまで知りませんでしたし、養成所に居た頃も人の入れ替わりが激しくて私の誕生日を知ってる人なんて稀でしたから。

 

 「まあ、今年は私達だけのささやかなパーティーで我慢しときなさい。食堂の使用許可ももらったし、鳳翔さんが料理作ってくれるって言ってたから」

 「そうなんですか?いつの間にそんな打ち合わせを……」

 「一昨日の晩よ。私が司令官と、たまに飲んでるのは知ってるでしょ?」

 

 そう言えば、そんな羨ましい事をしてるんでしたね。

 と、言うことは、満潮さんもお酒を飲んでいるのですか?まだ未成年ですよね?

 

 「言っとくけど、お酒は飲んでないからね。ごく稀に飲ませてくれる事はあるけど、アンタが想像するような変な事はないから」

 

 別に想像はしていませんよ?まだ。

 でも、そう言われると想像しちゃうじゃないですか。

 満潮さんなら、司令官とそういう関係になってもゆる……許せ……許してあげてもいいですけど……。

 

 「なんで悔し泣きしそうな顔してるのよ。私と司令官が、そんな関係になるなんてありえないから安心しなさい」

 「本当……ですか?」

 「本当よ。司令官はアンタ一筋だし、浮気するような人じゃないのなんてアンタが一番知ってるでしょ?」

 

 知ってますけど……。

 やっぱり不安にはなります。

 だって、満潮さんは同性の私から見てもとっても可愛いですし、性格に難がなければ絶対モテる人ですから。

 

 「アンタ今、私の性格に難があるとか思わなかった?」

 

 おうふ……。

 顔に出てましたか?

 そうなんですね?

 だったら反省しますから、そんなにこめかみをピクピクさせないでください。

 ちょっと、ほんのちょっぴりそう思っちゃっただけなんです。

 あ、ごめんなさい。

 今のは間違い!だから、拳をポキポキ鳴らさないでください!土下座でも何でもして謝りますから!

 

 「まったく……。少しはポーカーフェイスってのを身につけなさいよ。将来が心配になるレベルでわかりやすいわ」

 

 なんだか、大淀さんにも似たような事を言われた覚えがありますね。

 そんなにやばいのでしょうか。

 わかりやすいのは良い事だと思うのですけど……。

 

 「あ、やっぱりシュウちゃんもそう思う?」

 「シュウちゃん?」

 

 誰でしょう?

 右肩を見ながら話してますね。

 そういえば、昨日あたりから何もない空間を見てニヤニヤしたり、話しかけたりしてましたが……。

 

 「満潮さん、まさか……」

 「え?何か言った?」

 「いえ!何でもありません!」

 

 これはきっとアレです。

 荒潮さんの愛読書に書いてあったイマジナリーフレンドってやつに違いありません!

 きっと満潮さんは、あまりに友達が少ないから、空想のお友達を作っちゃったんです。

 お可哀そうに……。

 でも安心してください。

 私はそんな満潮さんを見捨てたりしません。

 妹として変わらず接しますし、生温かく見守ってあげます。

 だって、深海化した荒潮さんよりは数倍マシですから。

 

 「なんか、また失礼なこと考えてない?」

 「そんな事はありません。安心してください。私は何があっても、満潮さんを見捨てたりしませんから」

 「そ、そう?なんかよくわかんないけど……」

 

 優しく見守るのよ朝潮。

 見えないお友達の事に触れてはダメ。これは満潮さんが、自分で乗り越えて大人へと至る大事な儀式なんですから。

 

 「あ、そうだ。私達だけとは言ったけど、九駆の四人と神風さん。それと、叢雲にも声かけといたから。あ、この書類そっちね」

 「これは……司令官宛ですね。忙しい人たちばかりじゃないですか。大丈夫なんです?」

 「夜は平気よ。今は作戦に参加する子は哨戒任務から外されてるしね。あ、これもそっちだわ」

 

 叢雲さんも来てくれるんだ。

 養成所に居た時は、すぐお別れになると思って教えてなかったから嬉しいです♪

 

 「ちなみに、先月の終わり頃にアンタの誕生日を教えたんだけど、叢雲がすっごい怒ってたわよ?なんで私に誕生日教えてなかったのよ!って」

 

 やっぱり来ないでください。

 会った途端に殴られそうです。

 

 「それと、はいコレ。パーティーの時じゃあ、他のプレゼントとかがかさばるだろうから、今渡しとくわ」

 「わぁ!ありがとうございます!開けてもいいですか?」

 「いいわよ。と言うか、むしろ開けなさい」

 

 中身は何でしょう。

 満潮さんがくれたのは、手の平に収まるくらいの小さな四角い箱でした。厚みはあまりないです。

 

 「これ、何ですか?金属製の……本?」

 「縮小した写真を入れる物よ。一応、三枚ばかし入るようにしてるわ」

 

 なるほど、ちょっとしたアルバムですか。

 あ、金属製のフレームに小さくした写真をはめて、上からガラスのような物で保護するんですね。

 

 「何の写真を入れるかはアンタの自由よ。写真を渡してくれればやってあげるから、決まったら持ってきなさい」

 「はい!ありがとうございます!大事にします!」

 「それとソレ、ポケットに入れてパーティーに持って行くのよ」

 「パーティーにですか?」

 

 30×60くらいの大きさだから、ポケットには楽に入りますが……。部屋に置いといた方がいいのでは?

 

 「いいから言う通りにするの。司令官からのプレゼントを見れば、意味がわかるわ」

 「は、はあ……」

 

 よくわかりませんが、言われた通りにしておきましょう。

 あ、もしかしたら司令官のプレゼントとセットなのかもしれません。

 でも、私が司令官にお願いしたのは御守りに出来そうな司令官の私物ですし……。

 う~ん、訳がわかりません。

 

 「それにしても量が多いわね。辰見さんは何してるのかしら。左門提督は、普通に書類仕事してるんでしょ?」

 「艦隊の方は由良さんが見てるらしいですから、やっているはずです。辰見さんは……ほら、ながもんと武蔵さんがケンカしないように見張るのが忙しいらしくて……それに昨日、出張から戻ったばかりですから」

 「っていう言い訳でしょ?叢雲は何してるのよ」

 

 そういえばそうですね。叢雲さんは何をしているのでしょう。

 パーティーの時にでも聞いてみましょう……。

 

 「お邪魔するわよ~」

 「邪魔すんなら帰れ」

 

 と思った途端に本人が来ました。

 正に、噂をすれば影と言うヤツです。

 ですが、執務室のドアをノックもせずに開けるのは如何なものかと思います。

 あ、満潮さんに帰れと言われた叢雲さんが、仲間になりたそうにこっちを見てます。

 

 「辰見さんに言われて来たんだから、そうもいかないのよ」

 

 それは辰見さんに、私達を手伝うように言われて来たと言うことでしょうか。

 でも、ソファーに一直線しましたから、手伝う気ありませんよね?

 まさか、満潮さんの一言で機嫌を損ねましたか?

 

 「朝潮、お茶」

 「あ、はい」

 

 くつろぐ気満々ですか。

 このやり取りも、養成所時代を思い出して懐かしく感じますね。

 あの頃も、よくこうやって顎で使われてました。

 

 「いきなり邪魔してるじゃない!何しに来たのよアンタ!」

 「え?最初に()()()()って言ったじゃない」

 

 あ、言葉通り邪魔しに来たんですか。

 しかも「何言ってんのアンタ』みたいな顔されて、満潮さんの額に青筋が浮かんでいます。

 あ、今の叢雲さんを撮って、満潮さんから貰ったプレゼントに入れるのはどうでしょう。

 部屋にお邪魔すると言って入って来て、本当に邪魔する人は稀ですから希少性は高い……ですが、やっぱり無しですね。

 それに、満潮さんは怒り心頭のようですが、時間的にそろそろ……。

 

 「まあまあ、満潮さん。丁度休憩の時間ですし、一服しませんか?」

 

 あ、もしかして、叢雲さんは狙ってこの時間に来たのでは?

 となると、軽く摘まめる物も要求してきそうですね。

 う~ん……。

 確か、お饅頭があったようななかったような……。

 

 「アンタがそう言うんならいいけど……。アンタ、慣れてるわね。もしかして養成所でも、こんな扱いされてたの?」

 「そうですね。だいたい、こんな感じでした」

 

 宿題を代わりにやらされたり、訓練終わりにマッサージさせられたり、私にお風呂で体を洗わせたり。

 まるで、お嬢様と召使いみたいでした。

 あ、湯飲みはどうしましょう。

 満潮さんには私のを使ってもらって、叢雲さんはお客様用でいいか。

 そうすれば、私は司令官の湯飲みを自然と使う事ができます。

 うん、完璧な作戦です!

 

 「ちょっと。それじゃあ私が、朝潮をイジメてたみたいじゃない」

 

 ん~……イジメとは少し違うような?

 叢雲さんは、私が嫌がるような事は絶対にしませんでしたから。

 おっと、いつも通りの温度で淹れちゃいましたが、猫舌の満潮さんは大丈夫なのでしょうか。

 あ、たしか叢雲さんも……。

 まあいっか。

 私も司令官も猫舌じゃないですし。

 

 「どちらかと言うと召使いって感じ?まさか、着替えまで手伝わせたりしてたんじゃないでしょうね」

 

 あ、それもありました。

 満潮さんって凄いですね。よくご存知で。

 それはそれとして、お饅頭……お饅頭はっと……。

 ありました!

 霞がお土産に持ってきてくれた、紅葉の形をしたお饅頭♪

 三つづつくらいでいいですよね?

 

 「いや~、私って良い所のお嬢様だったからさ~」

 「否定しなさいよ!着替えを人に手伝わせる程のお嬢様が、なんで艦娘なんてやってんの!?」

 

 ああ、そう言えばそんな話を聴いた覚えがあります。

 確か京都とかあっちの方の出身で、家の仕来りとか諸々が嫌になって家出して、養成所に入ったとか言ってました。

 

 「怖い物見たさって奴?スリルを求めて?」

 「冗談で言ってるんだろうけど、それって大半の艦娘を敵に回すから、二度と言わないようにしなさい。殺されたって文句言えないような事言ってるわよ」

 

 殺されるは言い過ぎかもしれませんが、確かにやめた方がいいですね。

 特に駆逐艦は、生きるために仕方なくか復讐のために艦娘になった子がほとんどです。

 さっきの叢雲さんのセリフに、気を悪くする人も多いでしょう。

 

 「ごめん、今のは調子に乗りすぎたわ。反省する」

 

 頭のアレがしゅ~んと垂れ下がってるから、本当に反省してるみたいですね。

 素直でよろしいです。

 頭を撫でてあげましょう。

 

 「ちょ、ちょっといきなり何!?」

 「え?頭を撫でてあげようと……。嫌ですか?」 

 「い、嫌じゃない……けど。やっぱり嫌!」

 

 どっちですか。

 頭のアレを立てて「フシャー!」って言いそうな感じですが、暴れないでくださいよ?

 お盆の上のお茶がこぼれてしまいますから。

 

 「熱いから気をつけてくださいね、叢雲さん。満潮さんもどうぞ」

 「ありがと、って熱!ここまで熱くしなくてもいいじゃない!ったく……。」

 「あら、叢雲も猫舌なの?」

 

 叢雲さんの右隣に、湯飲みを受け取りながら腰を下ろした満潮さんが尋ねましたが、叢雲さんは猫舌を恥ずかしいと思っているらしく、答えようとしません。

 ならば、ここは私が……。

 

 「ええ、辛い物も苦手です。満潮さんと好みが似てますよ?」

 「ちょ……!なんで言うのよ!」

 「ダメでしたか?」

 「い、いや、別にいい……けど」

 

 あ、それと、湯飲みを両手で持って身を縮めてフーフーしてお茶を冷ます仕草もそっくりです。

 まるで……。

 

 「お二人は実の姉妹だったりしません?」

 「「ないない」」

 

 おお!お二人のセリフと、湯飲みに口を半分つけながら右手首を振る動作が見事にシンクロしています!

 やはり、姉妹なのでは?

 

 「休憩が終わったら、ちゃんと手伝ってよ?アンタらがやらない分が、こっちに回ってきてるんだから」

 「この叢雲に任せなさい。なぁに、お礼はいらないわ。でも、どうしてもって言うなら仕方ない。貰ったげる」

 「むしろ、こっちがお礼してもらう立場なんだけど!?」

 

 満潮さんが激しくツッコミを入れ、叢雲さんが涼しい顔でサラリと躱す様は微笑ましく、少しだけ嫉妬しちゃいますね。

 だって、二人とも凄く仲が良いんですもの。

 

 「あ、そういえば今日のパーティーに、辰見さんも来るって言ってたわ」

 「辰見さんも?朝潮って、辰見さんと仲良かったっけ?」

 「別に、良くも悪くもありません。仕事上のお付き合い程度です」

 

 叢雲さんが心配なんじゃないですか?

 ほら、叢雲さんは私と満潮さんくらいしかお友達居ませんから。

 

 「なんか、アンタが喜びそうな人を連れて行くって言ってたかな……って、そうだ!どうして私に、誕生日を教えなかったのよ!先月の終わりに満潮から聞いて、ビックリしたわよ!」

 「む、叢雲さんが忘れてただけじゃないです……か?」

 

 誤魔化せません……よね。

 ですが、私だって叢雲さんの誕生日を教えて貰ってないのに、私だけが教えてないと怒られるのは理不尽なのでは?

 

 「へぇ、そういう嘘つくのね。アンタって」

 

 やっぱりダメですか。

 叢雲さんの目が据わってます。

 これは、殴られる覚悟をした方がいいかもしれません。

 

 「じ、時間なかったから、プレゼント用意するのに凄く困ったんだから……」

 

 おっと?殴られるかと思って身構えていたのに、叢雲さんがデレてそっぽを向いてしまいました。

 デレるんなら最初から怒らないでくださいよ。

 心臓に悪いです。

 

 「素直じゃないわねぇ、叢雲は。パーティーに呼んでもらって嬉しいなら、素直に嬉しいって言えばいいのに」

 「別に嬉しくなんか……!って、何してるの?満潮」

 

 聞いちゃダメです叢雲さん!

 そっとしておいてあげて!

 あの満潮さんが笑顔で、左手に小さく千切ったお饅頭を乗せて、右肩に差し出してる光景が不思議なのはわかります。

 きっとそこには、私達には見えないお友達がいるのです。

 

 「え?シュウちゃ……。妖精さんにオヤツあげてるだけだけど?」

 

 ついに妖精さんとか言いだしました!

 満潮さんの症状は、私が思った以上に深刻だったようです!

 

 「よ、妖精?そこに妖精さんがいるの?」

 「そうよ?可愛いでしょ♪」

 

 ええ、可愛いです。

 素敵な笑顔ですよ満潮さん。

 でも両の手の平を突き出して、あたかもその上に妖精さんでも乗っているかのように振る舞う姿が痛々しすぎます。

 

 「あ、朝潮、これ……」

 

 どう反応していいかわからないのでしょうが、私を見たって「触れちゃダメ」と伝わるように、ゆっくりと首振るくらいしかできません。

 

 「あ、叢雲の頭のアレが気になってるみたいよ」

 

 くっ……!

 泣いちゃダメです朝潮。

 これはきっと戦争の弊害。

 見えないお友達を作ってしまうくらい、満潮さんの心は疲弊していたのです。

 そんな満潮さんに気づいてあげられなかったなんて、私は妹失格ですね。

 

 「み、満潮。あなた、疲れてるのよ」

 「は?別に疲れてないけど?まあ、今日は書類仕事ばかりだから、肩は凝ってる気はするけど……」

 「そ、そう、肩……揉んであげようか?いえ、揉んであげるわね」

 「いや、いいわよ。ちょっ!?叢雲!いいったら!」

 「これ位やらせて?友達でしょ?」

 「ア、アンタがそこまで言うならいいけど……」

 

 叢雲さんはおそらく、泣くのを耐えられなかったのですね。

 だって満潮さんの後ろに回って肩を揉みだした途端に、涙を流し始めましたもの。

 揉まれている満潮さんはよほど気持ちがいいのか、温泉にでも浸かっているかのような間の抜けた顔をしています。

 

 「まあ、二人は放っておいて、仕事を再開しますか。パーティーまでに終わらせないと」

 

 主役の私が遅れては、元も子もないですしね。

 でも、主役は遅れて登場するとも言いますね。

 どっちが正解なんでしょう?

 と、呑気なことを考えていたのも束の間。

 叢雲さんのマッサージで寝落ちした満潮さんと、泣き疲れて寝てしまった叢雲さんをどうしてやろうかと、イライラしながら仕事はこなすことになり、なんとか終わらせたのですが……。

 

 「「すみませんでしたー!」」

 

 問題はこれですよ。

 私が仕事を終わらせるまで眠りこけていた二人を、どうしてあげましょうか。

 お昼寝はさぞかし気持ち良かったのでしょうね。

 起きた途端に、罪悪感を覚えるほどに。

 

 「お、怒ってる?」

 「いいえ?」

 

 なぜ、満潮さんは私が怒っていると誤解したのでしょうか。

 確かに土下座する二人の前で腕組みして仁王立ちはしています。

 ですが、表情をよく見てください。

 普通でしょう?

 

 「ま、真顔はやめて朝潮。アンタの真顔は怖いのよ……」

 

 はははは、何を仰るのですか叢雲さん。

 真顔が怖い?

 怒りも憎しみも表に出してない真顔の、何処が怖いのですか?

 

 「ね、寝ちゃったのは悪かったと思ってるわ!ね!叢雲!」

 「そ、そ、そ、そう!本当にごめんなさい!仕事も結局、一人でやらせちゃって……」

 「何を謝ることがあるのですか?叢雲さん。あなたは最初に、邪魔しに来たって言ったじゃないですか。正に有言実行。その心意気は大変素晴らしいと思います。あなたは言葉通りの事を、見事にやり遂げたのですからもっと胸を張ってください。改二になって大きくなったその胸を」

 

 おやおや?叢雲さん顔の下の床に水溜まりが出来てますよ?

 冷や汗ですか?それとも涙ですか?

 こんな状況で泣かれたら、まるで私がイジメてるように見えるじゃないですか。

 

 「もう許してあげて!それと真顔をやめて!どうしちゃったの?普段は心配になるくらい表情豊かじゃない!」

 「満潮さん。ご自分が仰ったことをもうお忘れですか?少しはポーカーフェイスを身につけろ。と、仰ったじゃないですか。私は、ソレを実践してるだけです」

 「ひぃっ!」

 

 ひぃ?

 なぜ、怯えるのですか?

 私は少し笑って見せただけ……ああ、いけません。

 ポーカーフェイスのつもりが、ついつい表情を崩してしまいました。

 

 「叢雲起きて!なんで一人だけ気絶してんのよ!」

 「おや、叢雲さんは、また寝てしまったのですね」

 「ち、違うの!あまりの恐怖に気を失っただけだから!寝てるわけじゃないのぉ!」

 

 まったく反省の色が見えません。

 私がどんな気持ちで、仕事をこなしたと思っているのです?

 やってもやっても減らない書類の向こう側で、スヤスヤと気持ち良さそうに眠る二人を見ていた私の気持ちがわかりますか?

 わからないでしょう!

 私だって一緒にお昼寝したかったんですよ?

 でも私は秘書艦。

 司令官に任された仕事を放り出して、お昼寝なんて出来ません。

 しかも今日は19:00(ひときゅうまるまる)から、私などのために皆さんがお誕生日会を開いてくれるんです。

 だから必死でやりましたよ。

 遅れるわけにはいきませんから必死にやりました!

 なのに、三人でやれば定時までに楽に終わるはずだったのに、一人でやったせいでお風呂に入る時間も無くなっちゃったじゃないですか!

 パーティーまであと二十分もないんですよ!?

 と言うことは、お風呂にも入らないまま司令官とお会いしなきゃいけないということです!

 

 「ほ、ほら、もうすぐパーティーの時間よ?もう向かった方が……」

 「そうですね。遅れるわけにはいきません」

 「そうよね!遅れちゃダメだものね!」

 「ええ、だから続きは、パーティーの後にしましょう」

 「え……」

 

 そう、続きはパーティーが終わってから。

 ああでも、そんなに絶望した顔をしないでください。

 大丈夫です。

 酷いことはしませんから、安心してください。

 ちょっと、ほんの少しだけ、お仕置きするだけですから。

投稿時間は何時くらいが良いですか?

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