艦隊これくしょん ~愛を込めて、花束を~   作:哀餓え男

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確認はしたつもりでしたが、やっぱり誤字脱字が多いですね(・・;)
毎回誤字脱字報告してくださる方には、感謝してもしたりません。
本当にありがとうございます(///ω///)♪


第十二話 中々、粋な計らいだ

 

 

 

 退屈な車での移動を終えて、私がたどり着いたのは分厚い壁。高さは10メートルほどでしょうか。に、囲まれた施設の正門と思われる場所でした。

 それを見るなり私は……。

 

 「ここが、横須賀鎮守府?」

 

 と、誰ともなく聞いてしまいました。

 いえ、門の横に毛筆で『横須賀鎮守府』と書かれた看板がかかっていますから間違いないとは思うのですが、イメージとかなり違っていたんです。

 門もイメージと違って分厚い、片側3メートルほどの鉄板でできたスライド式です。当然ですが、向こう側は全く見えません。

 それに……。

 

 「すごく、堅そうです」

 「鎮守府ができた当初は、守衛所と遮断機があるだけだったんっすけどね。反政府勢力やら、「人間は深海棲艦に海を委ねるべきだー」って、のたまう『アクアリウム』っていうカルト集団とかに襲撃されたことが何度かあって、こんな頑丈な門にしたんっすよ」

 

 モヒカンさんは、少し悲しそうな顔で正門を見つめながら説明してくれました。

 もしかして、襲撃された時の戦闘に参加したんでしょうか。

 

 「いつの時代も、人間の本当の敵は人間ってことだな」

 

 それに続くように、金髪さんも苦虫でも噛みつぶしたような顔でそう言いました。

 やっぱりお二人は……。

 

 「その時の……戦闘に?」 

 「ええ、自分ら奇兵隊の第一義は艦娘さんらの護衛。当然、襲撃してきた奴らを迎撃したっす」

 

 これは、聞くべきじゃなかったですね。

 お二人にとっては、同じ人間を撃った苦い記憶のはずです。

 いくら職務だと言っても、良い思い出なわけがありません。

 

 「ああ、気にしなくていいっすよ。自分らは汚れ仕事専門っすから。人を撃ったのも、それが初めてってわけじゃないっす」

 

 私の気持ちを察してくれたのか、モヒカンさんがフォローしてくれましたが、そんなに悲しそうな笑顔で言われたらかえって申し訳なくなってしまいます。

 

 「はあ!?聞いてないってどういう事だよ!」

 「そ、そう言われましても、こちらは艦娘が新たに着任するから、来たら通してくれとしか……」

 

 はて?

 守衛所に着くなり、金髪さんが窓を開けて守衛さんと揉め始めましたが、何かトラブルでしょうか。

 

 「どうかしたんっすか?」

 「どうもこうもねぇよ。あのクソオヤジ、車ごと通せって伝えてねぇんだとよ」

 「あ~……オヤジの悪い癖っすねぇ」

 

 なるほど。

 私が来ることだけ伝わっていて、車ごと通して良いと伝わってなかったんですね。

 これだけ警備が厳重なのですから、そこをなんとかで通してはもらえないでしょう。

 

 「それじゃあ申し訳ないっすけど、朝潮さんはここで降りてください。庁舎は正門から真っ直ぐ行ったとこっすから」

 「わかりました」

 「それか、守衛所で茶でも飲みながら待ってても良いぞ?西門から入って車回すから」

 「西門?」

 「基本的に、こっちは許可された車両しか通さないんす。他の車両は、もうちょっと先に行った所にある西門からっすね」

 

 だったら、その西門から車で入ればいいのでは?いえ、別に待つのが嫌とか歩くのが面倒とかではけっしてないんですけど……。  

 

 「ここから庁舎まで、距離があるんですか?」

 「1kmくらいっすかねぇ。西門から車を回そうと思ったら4~50分ばっかしかかるんで、歩いて行く方が西門回るより早いっちゃあ早いっす」

 「あ、だったら歩きます。体もほぐしたいですし」

 「了解っす。ちょっばかし書き物があるっすから、あとは守衛に聞いてくれっす」

 

 半ば流されるままに守衛所で手続きを終えると、二人は守衛さんに案内されて私が門の内側に入るのを確認してから、車を出しました。

 さて、これから少しばかり、お散歩ですね。

 

 「遠目に見えるアレが庁舎……ですよね」

 

 眼前に伸びる道路の先に見えるのは、教本に載って

いた鎮守府の写真に良く似た建物。

 その正面のロータリーには、これまた夢で見たのと良く似た桜の木が、枝一杯に花を咲かせて……ん?今って3月ですよね?早くないですか?

 もしかして、早咲きする種類なんでしょうか。

 

 「あれ?今朝見たときは、花なんか咲いてなかったのに」

 

 門の内側まで送ってくれた守衛さんが、桜を見て驚いています。

 やっぱり、咲くには早いんですね。

 

 「あの桜は、いつもこの時期に咲くんですか?」

 「いえいえ、いつもは4月くらいです。ああでも、3年前にも一回あったな」

 

 3年前と言えば……。

 たしか、先代朝潮が戦死したのと同じ年ですね。

 と、頭の隅で考えながら守衛さんと敬礼を交わして、私は庁舎までの道を歩き出しました。

 なぜか、一歩進むたびに心臓の鼓動が大きくなっています。

 緊張しているのとは違う気がします。

 興奮しているのとも少し違う。

 高揚しているが、一番近いかもしれません。

 

 「先代も初めてここを訪れた時は、こんな気持ちだったんでしょうか」

 

 桜の花弁の一枚一枚がハッキリ見えるところまで来たら、頬が熱くなり始めました。手まで震えています。

 こんな状態で司令官にお会いしたら、私はどうなってしまうんでしょう。

 私がそんな心配をしながら桜の根元まで来ると、ヒラリと足元に桜の花びらが舞ってきました。

 見上げると、そびえ立つ桜の木が風に揺られて花吹雪を散らしていました。

 

 「綺麗……。私を歓迎してくれてるのでしょうか……って、そんなわけないですよね」

 

 自分で言って恥ずかしくなってしまいました。自意識過剰にもほどがあります。

 ですが、手の震えが少しはマシになっています。

 これなら、大丈夫そうですね。

 

 「えっと、執務室にはどうやって行けば……。誰かに聞けばわかるでしょうか」

 

 中で誰かに聞こうと歩き出そうとした時、正面玄関から誰かが桜を見上げながら出てくるのが見えました。

 歳は40に届かないくらいでしょうか。

 白い士官服を着たその人を見た途端、心臓の鼓動が跳ね上がりました。

 私はあの人を知っている。

 あの人と話したことがある。

 あの頃より顔の皺が増えていますし、装いも違いますが間違いありません。

 私がずっと会いたかった、あの時のあの人です。

 なのに、私は……。

 

 「あの時と同じか。お前も、嬉しいのか?」

 

 あの人の声を聞くなり、木の陰に身を隠してしまいました。

 どうして隠れちゃったんですか私!

 せっかく、もう会えないかもしれないと思っていた人に会えたんですよ?それどころか、あの人のお役に立てるんです。

 あの人が私を覚えているかはわからないですし、なんで艦娘になんかなったんだと怒られるかもしれません。

 でも、私はあの人の側で戦える。あの時の恩返しができるかもしれ……いや、するんです。

 だから、こんなところにいつまでも隠れてないで……。

 

 「そこにいるのは誰だ?」

 

 出よう。と、思ったら、あの人に気勢を削がれてしまって動けなくなってしまいました。

 だけど、どうして気づいた?

 あの人からは死角になってて、私の姿は見えないはずなのですが……。

 

 「なんだ。駆逐艦じゃない……か」

 「ふぇ!?」

 

 何が起こったのでしょう。

 いつの間に移動したのか、日本刀の柄に右手を添えたあの人が目の前に突然現れました。

 足音なんてしなかったのに。それどころか、私とこの人との距離は軽く10mはあったのに。

 いやいや、今はそれより……。 

 

 「あ、あの。失礼かと存じますが、あなたがこの鎮守府の提督。司令官……でしょうか」

 

 恐る恐る聞いてみましたが、彼は目を見開いて私を見つめたまま答えようとしません。

 違ったのでしょうか……。

 でも、あの人に間違いはないですし……。

 

 「あ、あの……。どうしよう、間違えたのでしょうか……」

 「いや、間違ってはいない。私が当鎮守府の司令長官、暮石 小十郎だ」

 

 答えてくれた!

 でも頬がヒクヒクしてる気がしますし、心なしか瞳も潤んでいるような……。

 あ、それよりも、とりあえず自己紹介しなきゃいけませんよね。

 幸い、司令官が急に現れてビックリしたせいで、緊張が少し和らいでいますから。

 

 「本日付で着任いたしました、駆逐艦 あしゃしおです!よりょしくお願いします!」

 「あしゃしお?」

 

 思いっきり噛んでしまいました!

 ちょ、これどうしたら良いですか?

 あ、でも、司令官が首を傾げて「あしゃしお」と、おっしゃったのが少し可愛い……じゃない!これはやはり、やり直した方がいいのでしょうか。

 

 「君のような幼い子が、戦場に出るのか?」

 

 私が頭の中でパニックを起こしていると、司令官が質問してきました。

 よかった。

 噛んだことは気にしてないみたい。

 でも、今のセリフはどこかで聞いた憶えが……いや、それより。

 

 「み、見た目は子供ですが、歳は12です。幼いと言われるほどでは……」

 

 司令官は、パニクっている私を気遣って質問してくださったのでしょうが、幼いと言われてちょっとだけムッとしたので、控えめに言い返してしまいました。

 司令官のご機嫌を損なってしまったでしょうか。

 

 「すまない。怒らせるつもりはなかったんだ。ただ……口が勝手にな」

 

 そう言って、頬を指で掻く司令官を見ていたら懐かしい気分になりました。

 この人のこんな表情は初めて見るはずなのに、私は以前にも見たことがある。これは、この人が本当に照れている時にする表情です。

 

 「ふふふ、司令官は相変わらずなのですね」

 「相変わらず?君とは、初対面のはずだが」

 「あ……。そ、そうですよね!なんで……」

 

 私は何で相変わらずなんて言ってしまったのでしょう。

 司令官は不思議そうな顔をしていますが、たぶん私も同じくらい不思議です。

 あ、でも、初対面は間違いです。

 あなたは憶えていないようですが、私とあなたは前に会ったことがあるんです……が、無理もないですよね。

 あの頃の私は今よりもっと幼かったですし、あなたにとっては、きっと救ってきた多くの人の中の一人なのですから。

 

 「どうかしたか?」

 「いえ、なんでもありません」

 

 今はまだ言わないでおこう。

 少し寂しいですが、前の私を覚えてないのならこれからの私を覚えてもらいましょう。

 

 「そうか?ならいいのだが」

 

 それっきり、司令官は黙ってしまいました。

 私も何を言っていいのかわからず、うつむくくらいしかできません。

 

 「「……」」

 

 ち、沈黙が重い。

 何か言ったほうが良いですよね。

 でも何を言えば……。

 あ、天気の話とか……は今さらですね。じゃあ任務……もダメです。私はまだ、まともに浮くことすらできません。ああ、私はどうすれば……。

 

 「君は、わかりやすいな」

 

 司令官の言葉につられて顔を上げると、司令官が右手を差し出しているのが見えました。

 桜吹雪を背景に、胸を張って左手に刀を携え、右手を差し出すその姿が威厳に満ちていて、格好良くて、私はつい見惚れてしまいました。

 

 「ようこそ、駆逐艦 朝潮。私は、君を心から歓迎する」

 

 司令官がおっしゃった言葉の意味が理解できません。

 歓迎?私は先代の朝潮とは違うんですよ?

 雪代所長の温情がなければ、とうの昔に養成所を追い出されていたくらい出来がよろしくないんです。

 そんな私の思考とは関係なく、私の口は……。

 

 「駆逐艦 朝潮。ただいま戻りました」

 

 と、言っていました。

 それどころか、目頭も妙に熱い。

 視界も歪んでいます。

 どうして、私は泣きながら「ただいま」なんて言ったんでしょう?

 

 「中々、粋な計らいだ」

 

 と、言いながら、司令官がクスリと笑うのが聞こえました。

 違う。

 今のは私が言ったんじゃありません。

 それなのに、私は満ち足りた気持ちです。達成感が込み上げて来ます。

 でも、少しだけ落胆もしています。

 私は何に落胆しているの?

 司令官に、もっと別の言葉をかけて欲しかったのでしょうか。

 もしかして、私じゃない私は「おかえり」と、言って欲しかったんじゃないでしょうか。

 

 

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