艦隊これくしょん ~愛を込めて、花束を~   作:哀餓え男

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 残念!書きあがってるにで完全に気分次第……いや酔った勢いです!
 あ~んどぉ!完全新作ぅ!


第十三話 幕間 満潮と提督

 

 

 

 

 「で、新しい朝潮の感想は?」

 

 食堂で開かれている、大潮主催の朝潮歓迎会。

 それから執務室に逃げてきた私は、ボケーッとただソファーに座ってるのも退屈だから、仕方なしに司令官に感想を聞いてみた。

 聞いてみたんだけど……。

 

 「アサシオチャン…アッアッ……」

 

 などと、胸元の探照灯兼防犯ブザーに手が伸びそうな譫言(うわごと)を返してきた。

 しかも机に両肘を突いて口元を隠すように手を組む、所謂ゲ○ドウのポーズで。さらに、若干目が血走ってる。

 ハッキリ言って怖いわ。

 

 「はぁ……。司令官がこんなになるってことは、新しい朝潮は想定以上にそっくりだったみたいね」

 「アサシオチャン…アッアッ……」

 「それはもういい」

 

 ダメね。

 完全にバグってるわこのオッサン。

 このオッサンがここまでバグるってことは、新しい朝潮は姿形だけでなく声や口調、纏っている雰囲気までそっくりだったってこと。

 自分にそっくりな人は世界に三人いる。

 なんて言われてるけど、この人がバグるレベルでそっくりなことなんて有り得るのかしら。

 

 「『あの人』がいないのが不幸中の幸いね。もしいたら、きっと歓迎会どころじゃなかったわ」

 「アサシオチャン…アッアッ……」

 「しつこい」

 

 ぶん殴ってやろうかしら。

 いや、今の状態の司令官に殴りかかるのは危険極まりない。

 何故なら、司令官ってアホみたいに強いの。

 詳しくは割愛するけど、司令官は後ろから襲おうとしている人がいるとして、()()()()()に相手を制圧できるほど気配に敏感なの。

 で、今の司令官は放心中。

 そんな司令官に殴りかかろうものなら、司令官は私と気づかずに手加減無しで反撃するでしょうね。

 

 「上手く、やれるかしら」

 

 明後日から、朝潮の訓練が始まる。

 しかも嚮導艦は私。

 司令官がバグるほど姉さんとそっくりな子を相手に、上手くやれるかと考えたら緊張してきちゃった。

 

 「改二改装なんか受けてないから、格好まで同じなのよね。きっと」

 

 私たち姉妹に改二改装が実装されたのは、たしか姉さんが戦死した翌年くらいだったかな。

 当然ながら、力を求めた私たち八駆の三人は改装を受けたわ。

 

 「だからあの子だけ、改装前の制服……」

 

 九駆の四人は考えないものとする。

 別に他意はないのよ?

 ほら、新しい朝潮は私と同じ八駆じゃない?故に、八駆で新しい朝潮だけ制服が違うって意味で、あの子だけって言ったの。本当よ?

 

 「って、誰に言い訳してんのよ」

 「アサシオチャン…アッアッ……」

 「はぁ……」

 

 ツッコむのも面倒になってきちゃった。

 あ、でも、こんな司令官はレアだから、動画でも撮って大潮たちとの話のネタにするのも有りかも……って、なんか、執務机の黒電話が鳴り始めたんだけど……。

 

 「司令官、電話が鳴ってるわよ」

 「アサシオチャン…アッアッ……」

 「ダメか」

 

 さて、どうするか。

 執務机の黒電話は軍の専用回線を使ってる。

 つまり、かけてくる相手は軍関係者。

 大本営からかかってくることもあるから、出なければ控えめに言って大問題よ。

 なのに司令官は壊れてるし、秘書艦の由良さんはとっくに退勤して、朝潮の歓迎会で飲み食いしてる。

 だから……。

 

 「私が出るしかない……か」

 「アサシオチャン…アッアッ……」

 「黙れポンコツ」

 

 でも、なんて言って出れば良いんだろう?

 「おかけになった電話番号は、現在使われておりません」なんて通じないし、かと言って「はい。満潮です」と言っても「誰だ?」で、終わる。

 ここは無難に、「こちら横須賀鎮守府司令長官執務室」って言うべきね。某マンガのタイトルっぽいけどそれしかないわ。

 そうと決まれば……。

 

 「はい。こちら……」 

 『とっとと出なさいよアホンダラ!待ちすぎてお腹すいちゃったじゃない!』

 

 おうふ……。

 あまりの大声に、左の鼓膜が死んじゃった。

 まったく、堪え性のない人ねぇ。で、終わらせるほど、私は人間ができてない。

 なので……。

 

 「大声でわめくなヒステリー女!って言うか、誰よアンタ!」

 『アンタこそ誰よ!いいから先生を出しなさい!先生を!』

 

 はい、怒鳴り返しました。

 怒鳴り返すまでは良かったんだけど……。

 電話先のヒステリー女のある文言を聞いて、頭に上っていた血が一気に下がった気がした。

 いや、下がった。

 下がりすぎて寒気まで感じてるもの。

 何故なら、相手は声の幼さ的に駆逐艦。しかも、軍の専用回線を使って執務室に電話をかけるなんて図々しさを持ち、司令官を『先生』と呼ぶ人物。そんな人は、私が知る限り一人しかいない。

 

 「ま、まさか……」

 『いいから先生を出せ!早く!迅速に!大至急、出ぁぁぁぁぁせぇぇぇぇぇ!』

 「ひぃっ……!」

 

 間違いない。

 電話先にいるのはあの人だ。

 だけど、どうして?

 この人はほんの2ヶ月前に、恒例の南方巡りに行ったばかりなのよ?もしかして、寂しくなったとか?

 

 「貸せ、満潮」

 「え?あ、はい」

 

 お?さっきの怒声で、司令官が復活したみたい。

 そういうことなら喜んで受話器を渡すわ。

 だって電話先の人は、司令官の娘と言っても過言じゃない人。我が儘で傍若無人な娘の相手は、父親にしてもらわなきゃね。

 

 「私だ。ん?さっきの?いや、秘書艦ではない。さっきのは満潮だ」

 「ちょおっ……!」

 

 私だったってバラさないでよ!

 あの人をヒステリー呼ばわりしたのが私だって知られたら、帰ってきた時に何されるかわかったもんじゃない!

 

 「二週間後に呉だと?あの二人で良いか?」

 

 あ、やっばいこれ。

 司令官の台詞的に、二週間後に呉まで戻るから迎えを寄越してくれって電話だわ。

 

 「土産を忘れるなよ。なぁ?金を寄越せじゃぁ!?土産買う方が贈る方にせびんなボケ!は?方言が出ちょぉ?お前が出させちょんじゃろうが!」

 

 うわぁ、久しぶりに聞いたわね、このやり取り。

 他の艦娘より司令官の方言に慣れてる私でさえ、方言全開の司令官に怒鳴られたら萎縮しちゃうってのに、あの人は普通に言い返すもんなぁ。

 

 「はぁ!?掃除も洗濯もしちょぉわ!お前は俺のおかんか!」

 

 ああ、言われてみれば、あの人って鎮守府にいる時は司令官の身の回りの世話もしてるから、確かに娘って言うよりお母さんの方がしっくりくるかも。

 

 「飯?飯ぁ……缶詰。じゃ、じゃかぁしい!野菜なんぞ食わんでも死にゃあせん!」

 

 おっと、思いがけず司令官の食生活が判明しちゃった。この人、一人の時は作るのが面倒だからって缶詰ばかり食べてるのね。

 

 「髪の話をするな!」

 

 え?あれからどうして髪の話になった?

 いや、確かに司令官って額が広いわよ?広いけども、立ち上がるほど過剰反応するってことは……。

 

 「ったく、俺ぁハゲちょらんわ」

 

 受話器がバキッって音をさせて折れるくらい乱暴に戻すほど気にしてたんだ……。

 って、このオッサンの髪の毛を気にしてる場合じゃなかった。

 

 「なんで私の名前を出しちゃったのよ!」

 「なんでって……。「さっきの誰よ!秘書艦!?」って聞かれたけぇ……」

 「聞かれたけぇ……。じゃない!聞かれたからって、馬鹿正直に答えないでよ!」

 

 おかげで二週間後が怖い。

 どれくらい怖いかと言うと、朝潮の嚮導なんて放り出して他の鎮守府に転属したいくらい……いや、国内じゃ駄目ね。米国辺りに亡命してもまだ安心できないくらい怖いわ。

 

 「別になんもしゃあせんじゃろ。お前はアイツのお気に入りじゃし」

 「お気に入りのオモチャでしょ!?」

 

 司令官は知らないんでしょうけど、あの人って手加減を全く知らないから。私が泣くまでイジってくるから!

 去年ラバウルに行った時なんて、死ぬのを覚悟したくらいだったのよ!?

 

 「じゃあ、嫌いなんか?」

 「き、嫌いなわけじゃ……」

 

 ない、かな。

 あの人って根は良い人だし、私が泣いたら心底焦って謝ってくるもの。

 去年だって、あの人なりに私の入渠恐怖症を治そうとしてくれたんだと……思う。たぶん。きっと。メイビー……。

 

 「あの人が朝潮を見たら、どうするのかな」

 「そりゃあ、俺にもわからん」

 

 と、私の独り言に答えてくれた司令官は、窓を開けて真鍮製のシガレットケースから取り出した煙草に火を点けた。

 この人が、私がいるのに断りもなく煙草を吸うのは決まって、そうしなければ感情を制御できない時だけ。

 

 「毎度思うけど、不思議な匂いね」

 「そうか?俺にゃあ、他との違いがわからんが……」

 

 それはその銘柄ばっかり吸ってるからでしょ?

 ちなみに、司令官が吸ってるのはコンビニとかでも普通に置いてある紙巻き煙草じゃなくて、自分で巻く手巻き煙草。

 司令官が言うには、紙巻き煙草と比べてリーズナブルだし、違う銘柄どうしをブレンドして自分好みの味にできるからお薦めらしいわ。

 未成年の私に煙草を薦めるな。って、その話を聞いた時は思ったっけ。

 

 「すまん。一言、断るべきだった」

 「いいわよ。別に……」

 

 だって、司令官の煙草の香りは嫌いじゃないもの。

 そりゃあ、受動喫煙になることを考えたら忌避すべきなのよ?

 でも、司令官に煙草をやめさせようとしてた姉さんもそうだったんだけど、私はこの香りが嫌いじゃない。

 そのことを悟られたくない私は……。

 

 「そろそろ煙草、やめたら?」

 

 と、言ってしまう。

 この香りが……いや、煙草を燻らせる司令官を見るのが好きなくせに。

 そんなことを言う私に、司令官は毎度こう答えるの。

 

 「違法になったら、考えるさ」ってね。

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