艦隊これくしょん ~愛を込めて、花束を~   作:哀餓え男

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第二十三話 幕間 満潮と提督(二)

 

 

 

 

 「で?姉さんからのプレゼントはなんだったの?」  

 

 時刻は21:30(ふたひとさんまる)

 例によって、今日も『居酒屋 鳳翔』で司令官の晩酌のお付き合い。今日の司令官はどこか晴れやかな顔をしてるわね。姉さんからのプレゼントを貰って機嫌が良いのかしら。

 

 「ああ、シガレットケースじゃった」

 

 タバコ入れか。

 いい加減やめればいいのに、そんな物を貰っちゃったら余計やめなくなるんじゃない?

 姉さんも止めさせたがってたのに、なんでそんな物を贈ろうとしたのかしら。

 

 「そういやぁお前ら、アイツのことを朝潮に話したんか?」

 「アイツって?」

 「俺がアイツって言やぁ、あの馬鹿娘のことに決まっちょろうが」

 「ああ、あの人のことか」

 

 司令官が馬鹿娘なんて呼ぶ人はあの人しかいない。

 その人は()()()()()()()()()()()()()()()()から艦娘をやってる人で、他国も含めてもっとも艦娘歴が長い人。正真正銘、最古の艦娘よ。

 もっとも、長く艦娘をやってるせいか、それともこのオッサンと長く一緒にいたせいかはわかんないけど、性格がとんでもなくひん曲がってる。

 曲がり過ぎて2~3周してるんじゃない?って思うほどよ。

 

 「あの二人が迎えに行く云々って話になった時に、ちょっとだけ話したわ」

 「なるほどな。サイキョウの艦娘って言うたそうじゃないか」

 「ええ、言った」

 

 大潮と荒潮はどうか知らないけど、私は最も怖いって意味でね。

 だって、あの人は私の天敵と言っても過言じゃないんだもの。

 あの人に比べたら、別の意味で怖い時雨が可愛く思えちゃうくらいよ。

 

 「また、騒がしくなるわね」

 「全くだ。別の意味でもな」

 

 別の意味でも?

 それは軍事的にってことかしら。

 いや、それで間違いなさそうね。

 口調も雰囲気も仕事モードになってるから、今から作戦に関する話をする気なんだわ。

 

 「二ヶ月後に、大湊主導で大規模作戦が計画されている」

 

 やっぱりか。

 でも、おかしいわね。

 大湊警備府は、横須賀鎮守府と舞鶴鎮守府の補佐と、対潜哨戒をメインに行うところで、艦娘も海防艦が主だったはず。

 その大湊が主導で、いったいどこを攻略する気?

 いや、違うわね。

 たぶん、大湊主導という建前で艦娘をそこに集め、攻略に使う艦娘自体は横須賀か舞鶴のいずれか、もしくは両方から出すんだわ。

 と、するなら、攻略目標は北方で最大規模の敵棲地。アリューシャン列島ね。

 

 「ねえ、大本営って馬鹿なの?」

 

 私がそう言ったのには理由がある。

 まず、大規模と銘打たれる作戦は大本営が立案し、各鎮守府や泊地に発令される。

 確かに棲地攻略は、人類の生存圏を拡げるのと、敵の脅威を排除するって意味では重要よ。

 それでも、アリューシャン列島の棲地攻略は重要とは思えない。

 これは判明している深海棲艦の習性の一つなんだけど、深海棲艦は棲地を取られると取り返そうとするのよ。

 つまり、二ヶ月後の作戦でアリューシャン列島を攻略した場合、今度は防衛戦を続けなきゃならなくなるの。ハッキリ言って、そんな僻地に艦娘を駐留させる余裕はないわ。

 そんなことはわかりきってるはずなのに、どうして大本営はそこを攻略する作戦を立てた?

 

 「あ、違う。本命はそこじゃない」

 

 その大規模作戦の攻略目標は、アリューシャン列島で間違いない。

 でも違う。

 これは布石だわ。

 恐らく、アリューシャン列島攻略は後の作戦のための前準備。言わば前段作戦。

 よくよく考えると、ここ数年で行われた大規模作戦には無駄なものが多い。

 たしか三年前のグアムを皮切りに北マリアナ諸島、カロリン諸島、ウェーク島、マーシャル諸島と続いたわ。

 南方を深海棲艦から解放するって名目だったはずだけど、下手に取り戻したせいで、その周辺での戦闘が激化したと記憶してる。

 これらの作戦も、今回の北方攻略と同じく前段作戦だとしたら、その目的は最低限の戦力で()()()()()()()()()()()()を分散させ、現在進行形で削り続けることだわ。

 つまり、真の攻略目標は……。

 

 「ハワイ島。そこに巣食う中枢棲姫ね」

 

 そいつはおよそ10年前に、突如として現れた敵の中枢の一つ。そいつを倒すために、数年前から準備が進められてるんだ。

 でもそれだと、秘密にする必要性がないわね。

 ハッキリと、ハワイ島攻略のための前段作戦だと謳えばいい。

 まるで本命の攻略目標を隠すために、あえて小分けにしてわかりづらくしているように感じる……って、なんか視線も感じるんだけど……。

 

 「何?私の顔に、何かついてる?」

 「いや、驚いている」

 

 うん。確かに驚いてるみたいね。

 まあ、私に言わせれば、司令官が仕事モードの時にそんな顔をすることの方が驚きだけど。

 

 「たったアレだけの情報でそこまで読むとは、お前の頭はどうなってるんだ?私は大湊主導の大規模作戦が計画されているとしか言ってないんだぞ?」

 「普通でしょ?これくらい」

 「普通なものか。お前が言い当てた攻略目標は私と元帥殿、そしてその秘書艦しか知らないトップシークレットだ」

 「へぇ、そうなんだ」

 

 だから何?

 もしかして、拘束とかされちゃうの?

 冗談じゃないわ。

 私みたいな小娘に看破されちゃうような作戦を計画した司令官が悪いのよ。だから、私は悪くない。

 

 「今の事は他言無用だ。いいな?」

 「わかったわかった。誰にも言わないわ」

 「……それともう一つ。お前、提督補佐にならないか?」

 「は?」

 

 今なんて?

 私を提督補佐に?

 いやいやいやいや、それこそ冗談じゃない。

 姉さんの仇だってとってないのに、デスクワークが主な仕事の提督補佐なんて絶対に嫌よ。

 あ、そうだ。

 基本的に提督やそれに準ずる者は、妖精さんとコンタクトが取れる者しかなれない。これを理由にして、やんわりと断っちゃえ。

 

 「妖精を盾にするのは諦めろ。お前は、妖精が見えているだろう?」

 「な、なんの事やら……」

 

 え、ちょ……どうして知ってるの?

 私が妖精さんを視認どころか会話もできるってことは、大潮たちにも秘密にしてるのよ?

 ちなみに。

 艦娘も、基本的には妖精さんの姿を見ることができない。艦載機を扱う空母でさえ、パイロット妖精さんを見ることができないわ。

 私みたいに、妖精さんが見えるようになった者を除いてね。

 

 「入渠嫌いのお前が、去年のソロモン海戦から帰って来たくらいから足しげく工廠に通い始めたのを知って気になっててな。先週確かめに行ったら、お前が妖精と話しているのを見つけた」

 「ひ、独り言……。そう!独り言よ!いやぁ~、実は私って、工廠で独り言を言う癖があって……」

 

 苦しい。非っ常ぉぉぉぉに!苦しい言い訳だわ。

 先週ってことは、司令官が朝潮を朝食デートに誘った日よね?何してたんだろとは思ってたけど、まさか私をつけてたとは……。

 司令官の「それで誤魔化せると思っているのか?」と、言わんばかりの視線が痛いくらい突き刺さるから、誤魔化すのはもう無理かもね。

 

 「それにお前の奥の手。アレは、妖精の助けあってのモノだろう?」

 

 あ~……。

 それを出されちゃったら完全に無理。言い訳できない。

 工廠で妖精さんと遊んでたのを見られたのもだけど、奥の手を知られてたのが致命的すぎるわ。

 でも変ね。

 どうしてこのタイミングで誘った?

 私が妖精さんを視認してるってわかってたなら、もっと早くに誘っても良かったはずよ……と、言ったら薮蛇になりそうだから……。

 

 「どうしても、ならなきゃダメ?」

 「どうしても。と、言ったらどうする?」

 

 断る。

 断固として拒否するわ。

 司令官はきっと、妖精さんが見えるってだけで私を提督補佐にしようとしてるんじゃない。

 私が数年がかりで準備しているハワイ島攻略を言い当てた事で、指揮官として使えると判断したんだわ。

 逆に言うと、妖精さん云々はこじつけ。

 仮に私が妖精さんを視認できなくても、司令官は提督補佐にならないかと誘ったはず。

 それがわかったら、なおさら私には断る以外の選択肢がない。

 

 「ごめんなさい。私には、仲間に死ねと命じることはできません」

 「そう……か。わかった。この話は忘れてくれ」

 

 う……。

 本当に残念そうな司令官を見たら、とてつもない罪悪感に襲われちゃった。

 でも、今の答えで諦めてくれるってことは、それが一番の重責だってわかっているということ。

 そんな司令官だから、姉さんも命を投げ出したんでしょうね。

 

 「はい、提督にはぬる燗とお刺身。満潮ちゃんにはオレンジジュースね」

 

 私たちの会話が一段落ついたと判断したのか、鳳翔さんが飲み物を持ってきた。

 相変わらず、タイミングを読むのが上手いわね。

 鳳翔さんが来てくれなかったら、沈黙に堪えられずに無駄に叫んでたかも知れないわ。

 

 「鳳翔。今の話は……」

 「ご安心を。料理をする音で、何も聴こえませんでしたから」

 「そうか。なら、いい」

 

 嘘ばっかし。

 料理ってお刺身じゃない。

 ほとんど目の前で調理してたのに、さっきの会話が聴こえてないなんて無理があるわ。

 まあ、他言はしないと、暗に言ったんでしょうけど。

 

 「ところで提督。彼女も、北方攻略に参加させるおつもりで?」

 「ああ。丁度良い時に帰ってきてくれて助かった」

 

 ちょっとちょっと、鳳翔さん。

 ついさっき、聴こえてないとか言ってたのにそんなこと言って良いの?

 いや、方便ってのはわかってるのよ?

 でも、舌の根も乾かないうちにそれはちょっと……。

 

 「アイツは総旗艦に据える」

 「あらまあ、大出世ですね」

 

 待て待て待て待て。ツッコミどころが多すぎる。

 まず第一に、あの人って駆逐艦よ?

 駆逐艦を、棲地攻略艦隊の総旗艦に据えるですって?

 いやいや、そりゃあ、駆逐艦が旗艦を務める場合もあるわよ?でもそれは、やむにやまれぬって場合がほとんどで、普通は軽巡洋艦以上。

 横須賀にはあの人と鳳翔さんと並んで、最古参の長門さんがいるんだから彼女に任せるのが無難かつ最適解でしょ。

 それに、あの人とまともに艦隊行動が出来る艦娘なんて横須賀じゃあ私たち第八駆逐隊か、長門さんと鳳翔さんくらいしか居ないのよ?

 他の上位艦種なんて、あの人からしたら邪魔以外の何者でもないわ。

 

 「作戦終了間際か終了後に、高練度の駆逐艦ばかりを狙う隻腕の戦艦棲姫。お前たちも、噂くらいは聞いたことがあるだろう?アイツには、そいつを釣る餌になってもらう」

 

 隻腕の戦艦棲姫。そいつは姉さんの仇。

 姉さんがその命と引き換えにして左腕を奪った、私たち第八駆逐隊の仇敵。

 たしか最近行われた作戦で、佐世保鎮守府所属の時雨が被害に遭ったって聞いたわね。 

 まあ、死んだって話は聞いてないから生きてんでしょうけど。

 

 「釣り上げて、主力艦隊でタコ殴りにする。という算段ですか?」

 「いや、襲って来るのが、艦隊が消耗しきっている終了間際か終了後ではそうもいかん。かと言って、何処に隠れているかもわからない奴にかまけて作戦を蔑ろにも出来ない。あくまで作戦のついでに、奴を始末しなければならない」

 

 と、言うことは、作戦には本土の防衛にあたらせる艦娘を除いたほとんどの艦娘を動員しなきゃいけないから、横須賀から回せる艦娘は精々駆逐隊で一つか二つ分くらい。

 ん?駆逐隊で一つか二つ?

 

 「ちょっと待って、まさか……」

 「そのまさかだ満潮。釣り上げられた奴に、お前達第八駆逐隊をぶつける」

 

 私たちをアイツにぶつける?

 そう、やっと来たのね。姉さんの仇を討つチャンスがやっと巡ってきたんだわ。

 

 「自信がないか?」

 

 そんな訳ない。

 姉さんの仇を討つために、私たち三人はこの三年間、訓練を重ねてきたの。

 それこそ、あの人のしごきに堪えるほどにね。

 

 「いいわ。その話、乗ってあげ……」

 

 あれ?

 でも、そうすると朝潮は?あの子も戦艦棲姫討伐に参加させるの?

 う~ん。

 確かに、技術的には問題ないでしょうけど、あの子には荷が重すぎる。

 具体的に言うなら、実戦経験が圧倒的に足りないわ。

 いくら戦闘技術が高くても、姉さんが負けるほどの戦艦棲姫の相手なんて無理よ。

 

 「ちなみに。朝潮にも討伐に参加してもらう。実戦経験が少ないのも承知の上だ」

 「それ、正気で言ってるの?あと二ヶ月ばかしで、奴と戦わせるなんて無謀よ?」

 

 隻腕の戦艦棲姫は、姉さんが一人で追い込んだ相手。

 あの当時の姉さんより強い、今の私たち三人なら確実に討ち取れる。

 それなのに、無理にあの子を危険な目に遭わせなくたって良いんじゃない?

 

 「奴が当時と同じ強さとは限らん。それに、これは朝潮の今後を考えての結論だ」

 「朝潮の、今後?」

 「そうだ。多少荒療治だが、彼女には強くなってもらわないと困る」

 

 強くなってもらわないと困る?

 どうして?

 そりゃあ、あの子は司令官麾下の艦娘なんだから、強くなってもらいたいのはわかるわ。

 でも、違和感を覚える。

 この人は艦娘を娘みたいに想っている節があるけど、あの子の場合は違う気がする。

 

 「俺はようやく見つけたんだ。そう、やっと見つけた。彼の地へ赴こうとする俺を邪魔する者を、問答無用で斬り払ってくれる剣を」

 

 その台詞を聞いて、初めて司令官のことを怖いと思った。

 見てくれが怖いんじゃないわ。

 怖いのはこの人の内面。目には見えない部分。

 この人は作戦なんて眼中にない。ハワイ島の攻略だってオマケでしかない。きっと隻腕の戦艦棲姫討伐だって……姉さんの仇討ちだって、この人にとっては路傍の石ころ程度にすぎない。

 それが、なぜかわかってしまった。

 それでも、私は……。

 

 「わかった。司令官の剣は、私が鍛えあげる」

 「まるで、鍛冶師のセリフだな」

 「鍛冶師?私は艦娘よ。しかも歴戦のね!あの子が司令官の剣だって言うのなら、私はあの子の盾になる。あの子は、私が絶対に守るわ!」

 

 敵からはもちろん、司令官からも。

 だってあの子は、私の大切な妹なんだから。

 

 「そうか。なら、しっかり守ってやってくれ」

 

 察しの良いこの人のことだから、私がどんな想いで守るって言ったのかわかってるはず。

 それなのに「守ってやってくれ」なんて言ったのは、この人自身が自分の危うさに気づいているから。

 朝潮を、道具として使い潰そうとしている自分から、守ってほしいからだわ。

 でも、攻撃を防ぐだけが盾じゃない。

 盾で殴れば、下手な鈍器より痛い。しかも私は、性格通りトゲまみれ。

 

 「私は盾は盾でも、トゲ付きの盾よ。触ると怪我じゃ済まないんだから」

 

 さっきも言ったけど、あの子は私の妹。

 会ってからたった二週間だけど、そう想ってる。

 私の中ではもう、姉さんと同じくらい掛け替えのない存在になっているの。

 だから、絶対に失いたくない。

 

 「トゲ付きの盾か。お前らしいな」

 「そうよ。だから、司令官も扱いには注意しなさい?でないと、司令官にも刺さっちゃうんだから」

 「おお怖い。怖ぁて小便ちびりそうじゃ」

 「屁とも思って無い癖になに言ってんのよ。それと、食事中に下品なこと言わないで」

 「すまんすまん。あ、鳳翔さん。もう一本浸けて」

 

 はいはい。

 真面目な話は終わりってことね。

 まったく、本当にコロッとキャラが変わるから、相手する方は変化に対応するのが大変よ。

 

 「明日も早いんだから、ほどほどにしときなさいよ?」

 「わぁっちょるわぁっちょる」

 

 嘘つけ。

 その徳利(とっくり)って二合でしょ?

 たったそれだけの量で満足するなんて、何度も晩酌に付き合って司令官が飲む量を知ってる私には思えないわ。

 最低でも、その三倍は飲むでしょうが。

 

 「あらあら、なんだか提督の奥さんみたいね」

 「や、やめてよ鳳翔さん!こんなオッサンは守備範囲外よ!」

 「オッサンってお前……。ちょっと酷すぎじゃないか」

 

 酷くない。

 司令官の奥さん呼ばわりされて喜ぶのなんて、姉さんと朝潮くらいのものよ。

 鎮守府にいる時は私と同じことを言うあの人だって、奥さん呼ばわりされたら本気で嫌がるわ。

 

 「せめてお父さんとかどう?満潮ちゃん」

 「それもお断り」

 

 こんなガラの悪い父親は絶対に嫌。

 この人の見た目って、仁侠映画に出てくる893そのものなのよ!

 

 「いや、それはダメじゃな」

 「あら、そうなんですか?」

 「パパと呼んでくれにゃ嫌じゃ」

 「はあ!?意味わかんない!」

 

 何が「嫌じゃ!」よ。こっちが嫌じゃ!

 だいたい、司令官ってどう見てもパパって柄じゃないじゃない。パパ(意味深)よ。

 最上型の三女あたりに、無言で万札数枚出してる光景が目に浮かぶっての!

 

 「ええじゃないか一回くらい。な?」

 「な?じゃない。そういうのは荒潮に頼みなさいよ。あの子なら、悪ノリして呼んでくれるんじゃない?」

 

 一回千円とか言いそうだけどね。

 それにしても、司令官って変なコンプレックス抱えてるわよね。ロリコンってのは姉さん……と、同じ部屋で生活してるあの人のせいだけどもう一つ。

 先に言った気がするけど、司令官って横須賀に所属してる艦娘を娘みたいに想ってる節があるのよ。

 ちなみに、他の鎮守府の提督たちも一癖も二癖ある人ばかりよ。

 本当かどうかはわからいけど、佐世保提督はシスコンで、舞鶴の提督がスポ根。大湊の提督はオッパイ星人だったかな。呉は……色々あって、横須賀と呉は仲が悪いから良く知らないわね。

 

 「荒潮に頼んだら、一回五千円取られる」

 「高っ!あの子ってそんなにボッタクってんの!?って言うか、ボッタクられてんの!?」

 

 あ、恐る恐る徳利を鳳翔さんに渡している様子を見るに、このオッサンマジで払ったことあるわね。

 鳳翔さんも、何も言いはしなかったけど笑顔が怖い気がする。

 

 「あ、アイツには秘密にしちょってくれ」

 「言えるか!あの人がそれを知ったら大暴れ確定じゃない!」

 

 まったく。

 成り行きで知ってしまった敵中枢への殴り込み作戦に、横須賀鎮守府最強最悪のトラブルメーカーの帰還。

 あの子が着任してから、止まっていた物語が動き出したような気がするわ。

 波乱と言う名の、巻き込まれる側からしたら迷惑以外の何者でもない物語がね。

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