艦隊これくしょん ~愛を込めて、花束を~   作:哀餓え男

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第三十八話 これが、朝潮型駆逐艦の力なんです!

 

 

 

 

 4月も下旬に差しかかり、民間人ならゴールデンウィークをどうするか予定を立てている頃。

 横須賀鎮守府内は、司令官によって正式に発令された大規模作戦への準備で、上から下までてんてこ舞いです。

 

 「なのに、どうして私達はこんなに暇なんでしょう」

 

 そう、鎮守府がそんな状況なのにもかかわらず、私達第八駆逐隊は暇なのです。

 哨戒任務も訓練もしてはいるのですが、大きな作戦前なので訓練は最低限。哨戒も、大半はドローンに任せて一日数時間程度。

 神州丸さんを救助した日から、明らかに空き時間が増えています。

 忙しいのは、秘書艦をしている大潮さんだけですね。

 

 「疲れ切った状態で作戦に挑むよりはマシでしょ?それに、まったく何もしてないわけじゃないんだし」

 

 ええ、そうですね。

 退院したばかりの満潮さんと荒潮さんは忙しいでしょう。

 昼食を食べ終わった現在。

 演習場は作戦に参加する艦隊が訓練に使っていて使用できず。哨戒任務も、昼食前に交代したばかりなので明日まで予定はなし。

 なので筋トレに勤しもうとしたのですが、何故か私は二人に髪型を弄られまくっています。

 

 「八駆は作戦と直接関係ないからねぇ。あ、満潮ちゃん。次は縦ロールにしましょ♪きっと似合うわよぉ♪」

 「春風みたいな?この子に似合うわけないじゃない」

 

 春風さんとはたしか、第五駆逐隊の人ですよね。

 遠くからしか見たことがありませんが、神風さんと同型艦なのに神風さんと違ってお淑やかな大和撫子って感じでしたね。

 あ、そういえば神風さんって、同型艦の人達とどういう風に接してるんでしょう?

 一緒に居るところを見た記憶がありません。

 

 「朝潮なら、髪型をドリルみたいにするより両手に着けた方が喜ぶんじゃない?」

 

 ちょっ、両手にドリル!?髪型をいじって遊んでいたはずが、なぜ私を改造する話になってるんですか!?

 

 「それなら艦名も変えなきゃ!豪天号とかどう?」

 

 なんだか、人類最後の希望みたいな感じの良い艦名ですね。

 でも嫌です!

 私は、朝潮であることに誇りを持っていますので!

 

 「できた!今度は無難に、ポニーテールにしてみたわ!」

 「シンプルだけどいい感じねぇ。あ!そうだ満潮ちゃん、アレを着せましょうよぉ!」

 

 服まで着替えさせるんですか?

 他にすることもないのでかまいませんが、以前みたいにまた下着姿で正座なんて嫌ですよ?

 

 「黒とかピンクとか青とか色々あるけど、どれが良い?」

 「当然、黒!もちろん、オーソドックスなやつでぇ♪」

 「あ~はいはい、アレね。ちょっと待ってて」

 

 珍しく、二人とも意気投合してますね。

 いったい、私に何を着せるつもりですか?と言うか荒潮さん。「楽しみだわぁ♪」などと言いながら、慣れた手つきで私を脱がさないでください。

 まるで、しょっちゅう脱がしてるのでは?と思ってしまうくらい熟練した脱がし方です。

 

 「あった!さあ朝潮、コレを着なさい!アンタも着たがってたでしょ?」

 「黒のワンピースにフリルの付いた白いエプロンを組み合わせたエプロンドレスに同じく白いフリルの付いたカチューシャ。ポニーテールの朝潮ちゃんに良く似合ってるわぁ。どこからどうみても、立派なメイドさんよぉ♪」

 

 いや、何が起こったんですか?

 ありのまま、今起こったことを説明しますと。

 満潮さんが両手でこれ見よがしにメイド服を広げたと思ったら、私はメイド服を着せられていたんです。

 何を言っているかわからないでしょう?

 私も何をされたのかさっぱりわかりません。頭がどうにかなりそうです。

 だって、足を上げた覚えもないのに靴下と靴まで履かされてるんですよ?

 朝潮になってから希に記憶が飛ぶことがありますが、これはそんなちゃちな現象では断じてありません。

 もっと恐ろしい、服を着させられていると感じさせない、荒潮さんの熟練の技を味わいました。

 

 あ、でも、メイド服自体は良い感じですね。

 うん、駆逐艦としては良い仕上がりだと思います。今すぐお茶でも淹れたい気分です。

 でも以前、みんながコレで出歩くのはやめなさいと言った理由が少しわかりました。

 可愛いとは思うのですが……いえ、けっして自画自賛したわけではなく、あくまで服が可愛いんですよ?服が。

 ですが、この姿で歩き回るのはさすがに恥ずかしい気がします。

 

 「司令官が見たら昇天するわね。私も少しやばいわ」

 「満潮さん、鼻血が出てますよ?お任せください!私が拭いて差し上げます!」

 「もう、朝潮ちゃんはこれが制服でいいんじゃないかしらぁ。司令官に提案してみるぅ?」

 

 これを制服にですか!?さすがにそれはちょっと恥ずかしいです。

 で、でも、司令官が喜んでくださるなら喜んで……って、あら?誰かが激しくドアをノック……いや、殴っているのですが。

 

 「はいはぁい、どちら様ぁ?」

 

 来客に対応しようと思って立ち上がると、すでに荒潮さんが対応していました。

 ん?と言うことは、私はこの格好でお客様に会うのですか?

 それはまずい気が……。こんな格好を他の人に見られたら、第八駆逐隊は何をしてるんだ。と怒られたりしません?

 

 「邪魔するわ!ちょっと匿って!」

 「あらぁ、神風さんじゃなぁい。匿ってってぇ、また何かしたのぉ?」

 「いいから早く!どこかに隠れられるところは……。あ!ちょっと朝潮!そのまま立ってて!」

 「べつに構いませんが……って、え?ちょっとやめ……!どうしてスカートの中に入ろうとしてるんですか!」

 「いいからじっとしてて!」

 

 私の長いスカートにすっぽり隠れた神風さんは、私の両足をガシッ!と掴んで私を身動きできなくしてしまいました。

 いったい、何がどうなってこんなことに……。

 

 「ちょっと失礼!神風姉ぇ来なかった!?」

 

 神風さんが私のスカートの中に隠れてから、少しして現れたのは五駆の朝風さんでした。頭の両側についた蝶々みたいなリボンが特徴的な人です。あ、あとオデコが広い。

 

 「……来てないわ。何かあったの?」

 

 満潮さん。今一瞬、神風さんを突き出そうか迷いませんでした?だったら迷わなくて良かったんですよ?

 迷わず突き出しちゃえば良かったんです。

 なんなら、今からでも私が……。

 

 「そう、わかったわ。邪魔してごめんね!」

 

 部屋を一通り見渡した朝風さんは、一言謝るとダッ!と言う擬音が聞こえてきそうな勢いで部屋を出て行きました。

 神風さんは、あの人に何をしたんでしょう?

 それとも神風さんは、あの人のことが苦手だから逃げ回っていたのでしょうか。

 

 「行った?」

 「行きました。だから、そろそろスカートから出てきてくれませんか?」

 

 外からはスカートで見えないでしょうが、私の股の間には神風さんが居ます。

 つまり、今の私はガニ股状態。

 あまりしていたくない恰好なので、本当にさっさと出てください。

 

 「ふう、助かったわ。あの子達、しつこくて」

 「あの子達ぃ?五駆全員から追われてたのぉ?」

 「そうよ。と言うか、横須賀にいる間はずっとね」

 

 いったい、何をしたらそこまで追われ続けるんですか?私たちにしたように、帰投中のあの人たちを襲ったりでもしたんですか?

 と言うか、スカートを盛大に捲って出てこないでください!

 二人にがに股姿を見られちゃったじゃないですか!

 

 「毎度恒例のアレか。あの子たちは神風さんと話したいだけなんだから、ちょっとくらい付き合ってあげれば良いのに」

 「嫌だ」

 「どうして?姉妹艦じゃない」

 「そうだけど嫌なの!だいたい、まともに話したこともない子たちと何話せってのよ!」

 

 何でも良いんじゃないですか?

 ほら、今日は良い天気ね。とか、最近調子はどう?とか、儲かりまっか?とかから入れば良いじゃないですか。

 

 「満潮。そこのポンコツ黙らせて」

 「黙ってるのよ。それでも……」

 

 ええ、黙ってます。

 一っ言もしゃべっていません。

 なのにどうして、神風さんは私を睨むんですか?満潮さんも、どうして呆れてるんですか?

 

 「はぁ、まあ良いわ。しかも今回は、大規模作戦の総旗艦にされたじゃない?それのお祝いをしましょう!とか言って、ここのところずっと追いかけられてるのよ」

 「素直にお祝いされてあげればいいのにぃ」

 

 本当にその通りです荒潮さん。この人は何がそんなに嫌なんでしょう。

 お祝いされたら嬉しいじゃないですか。

 

 「私くらいになれば、総旗艦とか普通なの。別にお祝いされるほどの事じゃないわ。それに、今はそんな気分になれなくて……」

 

 はて?

 なんだか落ち込んでしまいましたね。

 もしかしてまた、司令官に怒られでもしたのでしょうか。

 

 「違う」

 「じゃあどうして?神風さんが落ち込むのなんて、司令官に怒られた時くらいのものじゃない」

 

 私の思考で話を繋がないでください。

 私、喋ってないんですよ?頭の中で考えただけなんです。

 それなのに、どうしてさも当然かのように会話を継続したんですか?荒潮さんも、何事もなかったかのように聞いてないでツッコンでください。

 三人で車座になって、本格的に話し合う体勢にならなくて良いですから。

 

 「先生から、他の女のにおいがしたの……」

 「ちょっ、それ本当!?」

 「にわかには信じられないわねぇ。気持ちが悪いくらい身持ちが堅い司令官に限ってぇ、そんなことあるのぉ?」

 

 べつに、あり得ないことではないのでは?

 ほら、庁舎内にも女性職員はいますし、艦娘だっているんです。

 ふとした拍子に寄りかかったりして、においが移っちゃうこともあるのでは?

 

 「朝潮は知らなくて当然だけど、司令官の場合はそれが無いのよ。ほとんど執務室から出ないし、艦娘の大半は用がない限り執務室に行かないからね」

 

 だから喋ってない。

 それなのに、どうして満潮さんは的確に私の疑問に答えられたんですか?

 私の思考が駄々漏れだからですか?

 それにしたって、表情や態度からそこまで読めるものですか?

 

 「心当たりはあるのぉ?」

 「あると言えば……ある。ついこの間、先生は大本営に行ってるのよ」

 「その帰りに風俗でも行ったっての?それこそ有り得ないでしょ」

 「ええ、その可能性はないわ。これは角千代から聞き出したんだけど、先生は大本営から帰る際、乗ってきた奇兵隊の車じゃなくて、元帥さんの秘書艦が運転する車で出たらしいの」

 

 つまり神風さんは、その秘書艦さんと司令官が夜戦(意味深)したとでもおっしゃるんですか?

 ですが、その秘書艦さんは運転していたんですよね?

 

 「どこかに、寄ったの?」

 「ええ、角千代には込み入った話があるとか言って、高そうなホテルに二人で入ったそうよ」

 

 なるほど。

 ホテルで夜戦(意味深)ですか。

 それなら……羨まけしからんですよ!

 私の司令官を誘惑し、あまつさえ行為にまで及んだその秘書艦さんは誰ですか!

 お仕置きしてやります!

 

 「ねぇ満潮ちゃん。元帥さんの秘書艦ってぇ、あの人よねぇ?」

 「ええ、変わってなければね。でも、それだとなおさら……」

 「有り得ない。って、言いたいんでしょ?それは私も同意見よ。アイツは、先生を恨んでいるはずだから」

 

 ふむ。

 つまり、司令官の敵ですね。

 司令官の敵は私が殲滅します。元帥さんの秘書艦だろうと関係ありません。

 

 「満潮」

 「声には出してないんだから、勘弁してあげて」

 

 ええ、そうです。

 私は口に出していませんので、元帥さんの秘書艦さんをどうするかとか考えても問題ありません。

 

 「ちょぉっと待ってぇ?神風さんはぁ、あの人が司令官を恨んでるって言ったわよねぇ?」

 「そうよ。荒潮は知らなかったの?」

 「そうなんじゃないかなぁって、思ってた程度よぉ。だってぇ、直接会ったのなんて一回だけだものぉ。姉さんが亡くなってからは一度も会ってないしねぇ」

 

 それはつまり、その人は先代のお知り合いと言うことですか?

 ですが、それが司令官と秘書艦さんが夜戦(意味深)したのとどう関係するのでしょう。

 いや、関係大有りですね。

 私には荒潮さんから教えられた知識くらいしかありませんが、あれは嫌いな人とするようなことだったはずです。実際、荒潮さんに見せて頂いた不自然に薄い本の女の子は嫌がってました。

 と、するならアレに逆バージョン。

 荒潮さんが教本と謳って見せてくれた、オータムクラウドさんとか言う人が描いた不自然に薄い本の内容とは逆で、秘書艦さんが嫌がる司令官を無理矢理犯したんです!

 

 「荒潮……。アンタって子は……」

 「ま、まぁ良いじゃなぁい!それより今はぁ、司令官があの人を抱いた謎を解く方が大切でしょう?」

 「そうだけど、アンタにはわかるの?」

 「ええ、ピーンと来たわぁ」

 

 許せませんね、その秘書艦さん。

 私に操を立てている司令官を力尽くで、もしかしたら縛ったりもして、司令官の身体をすみからすみまで舐め回し、撫で回して凌辱するなんて羨ましいにも程があります!

 

 「アンタの推理は100%間違ってるから黙ってろ」

 「いや、推理って言うより妄想でしょ。だいたい、先生はあなたに操を立ててない」

 

 だから喋って……はぁ、もう良いです。

 私は金輪際喋りません。私が言いたいことは思考を読んで察してください。

 

 「拗ねた朝潮はほっといて、荒潮の推理を聞こうじゃない」

 「そうね。朝潮は拗ねたついでにお茶でも淹れてちょうだい。神風さんの分の湯呑みは大潮のを使って良いから」

 

 はい。わかりました。

 熱々のお茶を淹れて差し上げます。

 荒潮さんと神風さんはどうか知りませんが、猫舌の満潮さんには確実にダメージを与えられるでしょうから。

 

 「あと、別に水もね」

 

 読まないでくださいよ。

 せっかく少しでも憂さ晴らしをしようとしたのに、考えを読まれやすいせいで先手を打たれました。

 はぁ、普通に淹れよ……。

 

 「司令官に抱かれる。それ自体が、あの人なりの復讐なのよぉ」

 「それがどう復讐に……。いや、司令官にとっては……」

 「ええ。考えうる限り最悪の方法だわ。先生にとって、惚れた女以外を抱くことは拷問と同じ。罪悪感が半端ないはずよ。クソっ!あの女、とんでもないことしてくれたわね!」

 

 あぁ……。お可哀想な司令官。

 きっと司令官は、それが自分への復讐だとわかっていて、あえてその人の気持ちを受け止めたんです。

 恐らくその人も、司令官ならそうすると考えてつけこんだのでしょう。

 

 「あ、それは合ってる気がする」

 「そうね。先生ならそうするわ」

 「ねぇ、二人とも?朝潮ちゃんは喋ってないのよぉ?」

 

 そうですよ。

 もう何度目か忘れましたが、私は一切しゃべっていません。

 これ以上私の思考を言い当てるなら、淹れたてのお茶をあげませんよ?

 

 「はいはい。わかったから早くちょうだい。あ、あと、私のタンスの奥に羊羹が隠してあるから、それも切り分けて出して」

 

 わかってない!

 と、抗議したところで、満潮さんが相手では言い負かされてしまいますので、私も甘いものが欲しくなって来ましたから大人しく羊羹を出すとしましょう。

 

 「はぁ……。先生のバカ」

 「司令官らしいじゃない。むしろ、欲望のままに抱いたんじゃないってわかって良かったんじゃない?」

 「嫌よ!だって先生から他の女のにおいがしたのよ!?その日は我慢したけど、イライラしてあんまり寝れなかったんだから!」

 「神風さんってぇ、まだ司令官と同じ布団で寝てるのぉ?」

 「そうよ?私、一人じゃ寝れないもん」

 

 子供ですか。

 いや、見た目は子供なんですが、神風さんっていい歳した大人ですよね?

 見た目プラス、艦娘の正式運用よりも前から艦娘をやっていると聞いたことがありますので、だいたい21~2歳ですよね。

 う~ん。外見とも中身とも乖離した年齢ですね。

 普段の言動を見てると、とても成人しているとは思えません。

 

 「そう言えば合法ロリか」

 「合法ロリって言うな!気にしてるのよこれでも!」

 「司令官もぉ、神風さんが相手ならロリコン呼ばわりされないのかしらぁ」

 

 それは聞き捨てなりません!

 一緒に住んでて、司令官の嗜好にも合っていて娘みたいに想われてて、しかもお互いがその気なら合法的に結婚も可能とか羨ましすぎますよ!

 

 「いやぁ、無理じゃない?神風さんって歳はともかく、見た目が完全にアウトだし」

 「歳はともかくとか言うな!それじゃあ、私が年増みたいじゃない!」

 「お婆ちゃん。お茶のおかわりはいかがですか?」

 「誰がお婆ちゃんだ!悪ノリしてんじゃないわよ朝潮!」

 

 せっかく、湯呑みが空になっていたから気を使ったのになんたる言い草ですか。

 でもまあ、お婆ちゃんは少し言い過ぎでしたね。憎らしい人ですが、一応は先輩ですから。

 おばちゃんくらいにしてあげればよかった。

 

 「ねえ、なんでこの子、こんなに私の事嫌ってるの?私、何か嫌われるような事した?」

 

 え?まさかの自覚なしですか?嘘でしょ!?

 この人、自分が私に何をしたか忘れちゃってるんですか!?

 

 「まぁ、初対面でアレだものねぇ……」

 「半分は、ただの嫉妬だと思うけどね」

 「嫉妬?なんで?」

 「この子って司令官の事が大好きだから、司令官と親しい神風さんが憎らしいんじゃない?」

 

 ちょぉ!どうしてこの人に言っちゃうんですか満潮さん!って言うか、いつ気づいたんです?

 私が司令官のことをお慕いしていることは言ってないですよね!?

 

 「はあ?あんなオッサンの何処が良いの?すぐ怒るし煙草臭くてついでに足も臭いし、最近加齢臭と額が後退してるのを気にしてる、人前で平気で屁をこくようなオッサンなのに」

 

 そうですか。

 そんなに自慢したいんですか。

 私はこんなに司令官の事を知っている。お前は知らないだろ?羨ましいか?と、そういう事ですか?

 なるほど、わかりました。

 工廠裏に行きましょう。久々にキレてしまいましたよ。

 いやダメです。

 工廠裏に行くまで待っていられません!

 

 「司令官のことをお慕いして何が悪いんですか!怒られるのは、神風さんが悪いことをするからでしょ!?ああ羨ましい!私は司令官の煙草の匂い好きですよ?足の匂いは嗅いだことないですけどいつか嗅ぎます!あと加齢臭最高じゃないですか!何がいけないんです!?それにハゲてたっていいじゃないですか!ハゲてるのを気にするなんて可愛いです!」

 「いや、神風さんはハゲとまでは言ってない」

 「願望出てるわねぇ……」

 「一番聞き捨てならないのはアレですよ!人前でオナラをする?それって、司令官にとっては平気でオナラができるくらい気心が知れてるってことじゃないですか!許せません!羨ましすぎます!私と交代してください!今すぐ!」

 「……」

 

 なんですか神風さん。そんなポカーンとした顔しちゃって。さらに口までパクパクさせて、まるで餌をねだる鯉みたいじゃないですか。

 そんな様でちゃんと聞いてるんですか?私の怒りは、まだこれ位じゃ収まらないんですよ?

 

 「私、神風さんのあんな顔初めて見たわ」

 「私もよぉ、満潮ちゃん。朝潮ちゃんってぇ、司令官の事になると人が変わるのねぇ」

 「これ位当然です!これが、朝潮型駆逐艦の力なんです!」

 「「それはない」」

 

 え?ちょっ、二人声を揃えて否定しないでくださいよ。

 そりゃあ、朝潮型としても艦娘としても未熟である私が朝潮型云々と語っても説得力などないでしょうが、今のは私なりの意気込みでして……。

 

 「でもさ、神風さんっていつまで司令官と同棲を続けるの?世話もしなきゃいけないし、プライベートも皆無でしょ?」

 「たしかに同棲って言えば同棲だけど、共同生活に近いわよ?それに先生って帰りが遅いから、見られて困るようなことはそれまでに終わらせればいいだけだし」

 

 うちの主人ったら、最近仕事が忙しくて帰りが遅いのよ~。って、感じに見えるんですが、気のせいですか?

 と言うか、語り草が奥さんみたいなんですが?女房気取りですか?

 妬ましい!

 

 「司令官って、部屋じゃあどんな感じなの?プライベートはキャラが変わるのは知ってるけど、部屋でも同じなの?」

 

 満潮さんは司令官のプライベートをご存知だったんですね。私は先代のプレゼントを渡した時に見たきりです。

 まさか、満潮さんも敵ですか?

 

 「聞きたいの?もう最悪よ!?部屋だと本当にただのオッサンでさ!靴は脱ぎっぱなしにするわフンドシ一丁で歩き回るわで、酷い時には全裸でコサックダンスするのよ!?傍から見たらマジで通報ものよ!?」

 

 司令官は踊りも嗜んでいらっしゃるのですね。

 さすがです!

 それに、こんな形で知りたくはありませんでしたが、司令官の下着がフンドシだと知れたのは大収穫です。

 一枚分けてもらえないでしょうか。

 

 「か、神風さん、その辺でやめてあげてくれないかしらぁ。朝潮ちゃんがやばいわぁ……」

 

 ええ、やばいです。

 どうして私は、司令官と神風さんの惚気話を聞かされているんですか?私は何も悪いことしていません。

 おかげで、胸にポッカリと穴が空いたような気分になっています。

 失恋するとこんな気分なのでしょうか。

 まだ告白すらしてないのにあんまりですよ。

 

 「まだ言い足りないからもうちょっと言わせて!あの人って、骨取ってあげなきゃ焼き魚食べれないのよ?いい歳した大人が情けないと思わない?まあ、焼き魚の時に明後日の方見ながら「んっ」って言って、皿を寄越してくるのがちょっと可愛いかなとか思う時もあるんだけどね」

 「もうやめたげてよぉ!朝潮ちゃんが息してないじゃない!」

 

 もう、いっそ殺して……。

 なんですかこの罰ゲームは。女房どころか古女房じゃないですか。

 もしかしたら、司令官も私の知らないところで「うちのカミさんがね?」とか某国の刑事さんみたいな事を言ってるのかもしれません。

 

 「朝潮、大丈夫!?神風さん!なんでこんな酷いことするのよ!」

 「え?私のせい!?私、満潮の質問に答えただけなんだけど!?」

 

 ああ……いつか司令官と添い遂げられると思っていました。

 結婚したら司令官の田舎に引っ越して、小さいけど昔ながらの趣がある和風の一軒家を建てて、犬を一頭飼って、毎日司令官とお散歩させて、そのうち司令官の子供を授かって、代わり映えしないけど幸せな家庭を築こう。なんて妄想をしていました。

 

 「朝潮!しっかりしなさい!今のは神風さんの冗談よ!」

 「いや?本当だけど?」

 「ちょっとぉ、空気読んでくれないかしらぁ!?」

 

 やっぱり事実なんじゃないですか。

 あ~もうダメです。意識が遠のきます。

 司令官申し訳ありません……。朝潮はここまでのようです。

 

  「ちょっとコレ、マジでやばくない?立ったまま白目剥いて泡吹き出したんだけど!」

 「やってくれたわねぇ神風さん。朝潮ちゃんに何か恨みでもあるのぉ!?」

 「いやいや!私悪くない!悪くないから!」

 

 三人が何か騒いでいますが、もうどうでもいいです。

 このまま寝てしまいましょう。

 せめて夢の中だけでも、司令官と添い遂げましょう……。

 

 

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