コロナのせいで私は家族から帰って来るなと言われてるにで、一人寂しく出張先でガキ使見て年越しですわ( ̄▽ ̄;)
「つまらないな」
敵が北方に攻め込んできたとの報を受け、『
このまま高練度の駆逐艦が出てこなければ、不貞腐れて帰ってしまうかもしれない。
「敵艦隊はまだ、聖地に攻撃を仕掛ける気がないようですね。周辺の艦隊から潰して、外堀から埋める算段のようです」
ここで帰られると、私が蛇のようにねちっこい渾沌様に怒られるから、なんとか思い直していただかないと。
そのためには……。
「後に主力艦隊で一気に聖地を落とすつもりでしょうから、窮奇様好みの駆逐艦がいるとすれば、その艦隊です」
「そんなことはわかっている。下らない解説などしていないで、お前も良さそうな艦娘を探せ」
「かしこまりました」
この方は私を嫌っている。
私が渾沌様の指揮下にあるから沈められずに済んでいるが、理由ができれば容赦なく沈められるだろう。
この方は、三年前に私が横槍を入れたのを許していない。
この方のためにやったのに、なぜか逆鱗に触れてしまった。
「そう言えば、渾沌の奴はまた
「はい。私も同行しました」
「どんな奴なんだ?駆逐艦とは、聞いた覚えがあるが」
「駆逐艦で間違いありません」
窮奇様が奴と呼ぶ者は我々の、と言うより渾沌様の協力者であり、渾沌様が提督と崇める人からのメッセンジャー。
と、本人は言っていたが、本当かどうかはわからない。
だが、興味はある。
もし、メッセンジャーと言うのが本当なら、奴の後ろには艦娘側の事情にも深く精通した人物がいる可能性が高い。
有力なのは、渾沌様が嬉々として見せてくださった写真に写っていた、黒い軍服に身を包み、日本刀を手にしていたあの男だろう。
「おい、『
「あの赤い奴でございますか?ええ、駆逐艦で間違いないかと」
ふむ、確かに人間どもがネ級と呼んでいる私の同型艦を沈めたあの赤い……奴を赤くしたような駆逐艦だけ、他と動きが違う。先頭を行く奴に、かろうじて付いて行けてるのは黒い戦艦くらいじゃないか。
「窮奇様好みですね」
敵が棲地を攻めてくる時は、必ずと言っていいほど窮奇様が気に入る駆逐艦がいる。
最近では、背中に連装砲を背負った奴だったか。
直前に邪魔が入ったせいで仕留めそこなってしまったが、奴は窮奇様がアサシオと呼ぶ駆逐艦よりも強かったそうだ。
なのに、窮奇様はあの時ほど楽しそうではなかった。
強い艦娘を沈めることを生き甲斐にしている窮奇様が、アサシオと戦って以来笑わなくなった。
楽しそうに、しなくなった。
だが、あの赤い駆逐艦ならもしかして……。
「動きが速いですね。駆逐艦の最高速度を超えてるように見えます」
「アサシオの跳び方に似ているな」
「跳び方?跳び方とはどういう……」
と、聞いてみたが、偵察機からの映像に集中しているようで、答えてくれる気はなさそうだ。
だが、改めて見るとたしかに跳んでいる。
砲弾を避ける瞬間……いや、着弾するよりも早く跳んで、回避と接近を同時に行っているように見える。
それに、左手に持っている棒状の艤装はなんだ?あれは、日本刀か?
見た限りでは火力は低いようだから、あの日本刀のような艤装で補うつもりなのか?
「ほう、相手の周りを小動物のようにちょこまかと……。駆逐艦とは、あのような動きもできるのか」
今回の獲物は決まった。
と、言いたげなお顔をしていらっしゃる。
おそらく、また私に釣って来いと命じるんじゃないだろうか。
「おい、お前は先行して、駆逐艦と艦隊を引き離せ」
「仰せのままに」
大当たり。
窮奇様は渾沌様や他のお二方と違って短絡的……。いや単純思考……。いやいや、素直な方だから考えが読みやすい。
だが、一つ気になることがある。
確かにあの駆逐艦は強い。
強き者が弱き者を率いるのが常識である我らからすれば、あの駆逐艦は旗艦たり得る。
しかし、不自然ではないか?
あの駆逐艦が速攻で前に出るせいで、空母や重巡が満足に攻撃できていない。
まるで、戦術や戦略など気にしない、他の同胞のような猪突猛進っぷりだ。
人間どもの配下である艦娘があんなことをするのか?
いや、するとは思えない。
だとすれば、アレは作戦だ。
空母や重巡に攻撃を控えさせ、あの駆逐艦が目立つようにしているのだろう。
ならば、目的はなんだ?
あのままでも聖地は攻略できるだろうが、おそらく、それは本来の目的ではない。
「そうか……。あの駆逐艦は餌か」
「餌?お前は何を言っている」
「いえ、独り言です」
奴らの本当の狙いは窮奇様だ。
窮奇様が強い駆逐艦を襲っているのに気づいた人間が、窮奇様を討ち取るために企てた作戦。
その囮作戦とも言えるのが、北方聖地への侵攻。
まず間違いなく、別動隊が近くで窮奇様が現れるの待っているはずだ。
「窮奇様。意見具申をしてよろしいですか?」
「……面白くなるのなら、許す」
「では、させていただきます」
ここからは慎重に言葉を選ばなければ。
なにせ、窮奇様は小難しいことを嫌う。シンプルなことが好きだ。ならば……。
「あの赤い駆逐艦と同程度。もしくは、準ずる者達が近くにいます」
「ほう?それは駆逐艦か?」
「はい。最大でも四隻。駆逐隊が潜んでいるはずです」
私たちがこの海域に着いて丸一日。
なのに、未だに仕掛けて来ないと言うことは、窮奇様を捕捉できていないことの証。
敵指揮官はおそらく、窮奇様が餌である赤い駆逐艦に噛みつくと同時に別動隊を出す気なのだろう。
ならば、編成は限られる。
後手でも、赤い駆逐艦が沈むまでに戦域へと辿り着ける速力。そして即応性を持った編成など、駆逐隊くらいのものだ。
そして、潜んでいるであろう場所にも見当が付く。
北方の聖地と私たちの中間点から、西に20~30kmの範囲だろう。
「もし、それが嘘だった場合は……」
「沈めていただいて構いません」
「ならば、乗ってやる。私はどうすれば良い?」
「この地点から北西、35kmへ砲撃を」
「そこにいると言うのか?だが、届きはするが、捕捉もしていないのに当てるのは私でも不可能だ」
「当てなくての良いのです。その砲撃は、ただの合図でしかありませんから」
そう説明すると、窮奇様は渋々ながらも撃ってくれた。
これで、あちらが間抜けでなければ発射元を特定し、こちらに向かって来るはず。
来るまで、窮奇様が我慢できるかどうかが問題だな。
「お前が言っていたのは、あの船か?」
「はい。おそらく、中に乗っているはずです」
窮奇様に砲撃して貰ってから約30分。偵察機が不審船を捉えた。
ギリギリ間に合ってくれた。
もし、あと10分遅かったら、私はイライラが頂点に達する寸前だった窮奇様に沈められていたかもしれない。
「……とりあえず、つついてみるか」
窮奇様が向かって来る小型船に砲撃を開始した。
だが、どういうことだ?
まだ15km程離れているとは言え、正確無比な窮奇様の砲撃が掠りもしない。しかも、速度が駆逐艦より速い。なんだ?あの船は。
「避けられたのは腹立たしいが、出てきたな」
「はい。予想通り、駆逐隊です」
窮奇様の砲撃を、不自然な急加速で回避した小型船の船尾から、駆逐艦が後ろ向きで四隻飛び出した。
飛び出したは良いのだが……前から三番目の艦娘は、窮奇様の左腕を奪った艦娘にそっくりではないか?
ん?そっくり?それはマズい気が……。
「アサ……シオ?」
「違います窮奇様!アレは、あの時の駆逐艦ではありません!」
マズいマズいマズい!非常にマズい!
あの駆逐艦にそっくりな艦娘がいるなど、さすがに予想外だ。
奴自体は、あの時の駆逐艦の艤装を使う別人だろうが、あまりにも似すぎている。
これでは、窮奇様が確実に暴走……。
「ああ……。アサシオ、アサシオ……。アサシオアサシオアサシオアサシオ!私のアサシオ!やっと会えた!もう一度会えた!私はあなたに、もう一度会いたかった!」
狂気を孕んだ台詞とは裏腹に、窮奇様の表情は乙女のように愛らしく、そして艶やかだ。
こんな窮奇様をみるのは久しぶりだが、私は嫌な予感がしてたまらない。
あの駆逐艦にあの時と同じことができるとは限らないが、奴は人間が窮奇様を討つために編成した隊にいるのだ。生半可な奴ではない。
「やっとわかったわ。アサシオ。私はあなたに惚れている。私はあなたに首ったけ。私はあなたを、愛している!」
なのに、私は窮奇様を止めたくないとも思っている。
この方の喜ぶ顔を見ていたい。
この方の笑顔を見続けたい。
この方に、幸せであって欲しい。
ならば……。
「他の3隻は私にお任せを。窮奇様は思う存分、あの駆逐艦との逢瀬をご堪能ください」
「ええ、任せるわ。ああそうだ。褒美は何が良い?今なら、一つだけお前の言うことを聞いてやってもいい気分よ」
「では……」
私がすべきことは、先ずは一隻だけ突出している、我らと似た姿をした駆逐艦を引き離すこと。
窮奇様が援護射撃してくださるのなら、他の二隻も楽に……。いや、問題ないか?
敵駆逐隊はおそらく、先頭の駆逐艦を窮奇様に纏わり付かせ、残りの三隻で遠巻きに攻撃する算段なのではないか?
ならば、窮奇様が褒美に一つだけ言うことを聞いてくださるとおっしゃっているから……。
「私が先頭の駆逐艦を砲撃します。後に、窮奇様の艤装で殴り飛ばしてください」
「あら、そんなことで良いの?」
「はい。それだけして頂ければ、あとは私が……」
他の二隻も引き付ける。
先頭の駆逐艦さえ窮奇様から離せば、それだけで敵の計画はご破算なのだから。
「じゃあ、始めましょうか」
「かしこまりました。この鼬、必ずや窮奇様の逢瀬を実現して見せましょう」
強さを絶対的な指標とする我らにとって、純粋に強さを求める窮奇様は正に理想。
私や渾沌様のように、小賢しく策を弄する者では絶対に成り得ない強者。
それが、私が崇める窮奇様。
私はあなたに付いていきます。
どんなに嫌われても、どんなに疎まれていても、私はあなたに尽くします。
あなたのために、あなたが嫌う行為をし続けます。
「さあ、奏でましょう。悲鳴と爆音の協奏曲を。愛でましょう。砲火と血潮の花束を。そして歌いましょう。あなたに捧ぐ、ラブソングを」
窮奇様は、渾沌様から聞いたと思われる、奴の台詞のオマージュを口にしながら航行を開始した。
そして……。
「フフフフフフフ……アハッ♪アハハハハ♪ああ!私の愛しいアサシオ!あなたが何度蘇ろうと、その度に私が沈めてあげる!そう!何度も何度も何度も何度も何度も!何度でも、沈めてあげる!」
と、歌うように叫んだ。
ちなみに、窮奇と鼬が棲地を聖地と呼んでいるのは変換ミスではなく、深海側が聖地と呼んだのを聴いた人類側が棲地と誤変換した設定のためです(*´ー`*)
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