ここ一、二年のイベントで報酬艦以外をゲットしてなかったので咄嗟に反応できませんでした(*´ー`*)
神風さんの艦隊が駆け付けてくれたのは、窮奇が去って30分ほど経った頃だった。
結果は惨敗と言って良いわね。
大潮は大破。荒潮は中破プラス、深化の副作用で精神的に轟沈。朝潮も、足が筋断裂や肉離れとかして大破、入院中。
唯一軽傷と言えるのが私ね。
まあそれでも、無茶な攻撃をしたのと、窮奇の砲撃の余波に煽られたせいで中破したわ。
本当は私も入院してなきゃいけないんだけど、先に言った通り一番軽傷だから、神風さんに肩を貸してもらって大潮の代わりに報告しに来たってわけ。
「……以上が、対戦艦棲姫戦の報告よ。作戦失敗の責任は、すべて大潮が取るとか言ってたけど……」
「心配するな。責任があるとすれば、作戦を立てた私にある。むしろ、想定外のことが立て続けに起きたのに良く対応してくれた」
言うと思った。
自己弁護するわけじゃないけど、あの状況じゃあああするしかなかったものね。
全員生きて戻れたのがラッキーに思えるわよ。
「戦艦棲姫……窮奇、だったか?は取り逃がしたが、色々と有用な情報が得られたのは僥倖だな」
僥倖と言って良いのかしら。
むしろ
だって、朝潮から聞いた情報を併せて考えると、あのレベルの個体が他に三隻いるのが確定しちゃったのよ?
「ねえ先生。キュウキってなんなの?」
「私も詳しいわけではないんだが……。朝潮が聞いたシキョウと言う単語が四凶ならば、まず間違いなく古代中国の怪物の名前にあやかったんだろう」
怪物と言うよりは悪神ね。
代わりに説明してあげても良いんだけど、なんか辰見少佐が目をキラキラさせてせわしなくしてるのよねぇ。
もしかして、語りたいのかしら。
「あ、そうだ。天奈なら詳しいんじゃない?中二病だし」
「元、よ。今は違うけど、神風がどうしても知りたいって言うなら語って聞かせてあげるわよ?」
「いや、べつにいい」
「なんでよ!聞きたいって言いなさいよ!じゃないと、この昂りまくったテンションのやり場がなくなっちゃうでしょ!」
やっぱり語りたかったのか。
神風さんもここまでの剣幕で語らせろと迫られるとは思っていなかったらしく、気圧され気味に「じゃ、じゃあどうぞ」と言って折れたわ。
「では説明しよう!窮奇とは!」
以下、辰見少佐による説明よ。
窮奇は、古代中国の舜帝によって中原の四方に流された四凶の一柱で、残りの三柱の名前は『
四凶と混同されることもある四罪と呼ばれる悪神たちもいるそうなんだけど、今回は割愛するらしいわ。
で、この窮奇は、中国最古の地理書『山海経』ではハリネズミの毛が生えた牛で、
ちなみに、窮奇は人を害するという伝承がある反面、宮廷でおこなわれた
語りたがってただけあって、ウィキペディア先生並みに詳しいわ。
「満潮、窮奇と一緒にいたネ級は、鼬って名乗ったのよね?」
「名乗ってはないけど、窮奇がそう呼んでたのを朝潮が聞いたそうよ」
その名前にも何か由来があるのかしら。
私は単に鼬っぽい(か、どうかは微妙だけど)から、鼬って名付けられたんだろうくらいにしか思わなかったんだけど……。
「昔の日本には、中国にいるものは日本にもいるって考え方があってね。窮奇は風神と見なされていたから、日本の風の妖怪である
「どうして縮めたの?そんな理由があるなら、鎌鼬で良いじゃない」
「大方、語呂が悪いとかそんな理由じゃない?ほら、重巡洋艦 鎌鼬より、重巡洋艦 鼬の方が収まりがいい気がするし」
それに関しては同意できない。
きっと意味がある。
いや、意味と言うよりメッセージに近いかしら。
窮奇と名付けられた個体がいると知れば、何か意味があるんじゃないかと当然調べる。調べていけば、鎌鼬にも辿り着く。
なのに、鎌鼬ではなく鼬と名付けたのは、調べた者に
いえ、もっと言うなら、誤魔化しなんて浅知恵を働かせた者がいると気付かせるため。
それはおそらく、深海棲艦じゃない。
なぜなら深海棲艦は、開戦初期に無差別な空襲をしている。
当然、知的財産なども例外なくね。
そんな深海棲艦が、人間の文化や歴史、神話などに興味があるとは考えづらい。
だから、名付け親自体は深海棲艦の誰かでなんでしょうけど、神話について教え、そうしろとアドバイスなりした人間がいる。と、誰かに知らせるためのメッセージなんじゃないかと予想するわ。
「私的見解では、四凶を束ねているのは渾沌ね。渾沌は混沌とも書き、文字通りカオスを司るわ。犬みたいな姿で長い毛が生えた姿だったり、頭に目、鼻、耳、口の七孔が無くて、脚が六本と六枚の翼が生えた姿の場合もあったりで恰好いいの!」
「いや、気持ち悪いでしょ。ソレ……」
それは神風さんに同意。
正直気持ち悪いわ。
でも、辰見少佐の意見にも同意する。
混沌とは、区別が立たずに物事が入り混じっている状態。もしくは、天地創造以前の状態を指すわ。
つまり、全ての始まり。
名前を与えられた深海棲艦の始まり。
あえて対義語を用いるなら、
そんな回りくどいことを深海棲艦がする?
いいや。
楽観的かもしれないけど、するとは思えない。
人間特有の悪意を感じる。
「カオスを司ると偉いの?」
「だって強そうじゃん!如何にも悪の親玉って感じがして最高だなぁオイ!」
私が深読みし過ぎなだけかもしれないけど、二人は呑気なものね。辰見少佐なんか、天龍だった頃の口調になってるし。
でも、司令官は何時も以上に神妙な顔をしてる。
もしかして、私と似たようなことを考えているのかしら。
「はいはい、わかったからそろそろやめてくれない?飽きてきたし」
「ええー!オレまだ、全然語り足りねえんだけど!」
「口調が昔に戻ってる。それに、今は報告を聞く方が先でしょ?満潮も怪我してるんだから、さっさと終わらせて病院に送り帰してあげなきゃ」
私の具合を心配してくれるのはありがたいんだけど、言い方をもうちょっと考えてくれないかしら。
は、置いといて。
あと、報告するべきことって言ったら……。
「深化した荒潮が、窮奇の命令で機能を停止したわ」
「ふむ。初めて聞く事例だな」
私も聞いたことがない。
そもそも、そんなことができるんなら、艦娘は深海棲艦に太刀打ちできていない。
ならば、アレは深化した者にしか効果がないと考えるべきね。
でも、荒潮が深化して姫級と戦ったのは窮奇が初めてじゃない。姫級の命令で行動が停止したのは今回が初めてよ。
故に、窮奇がわざわざ「四凶の一角」とか「窮奇の名をもって」と付け加えたことから、あの命令権は四凶に分類されている上位個体にしかない可能性が高いわ。
「荒潮の意識は?」
「テンションは下がってたけど、意識はあったわ。艤装が動くかどうかはわからないけど、窮奇の命令は永続性がない。もしくは、深化した状態でしか影響がないと考えられるわね」
報告すべきことはあと二つ。
でも、内一つは報告したくない。
朝潮が姉さんみたいに……いえ、姉さんに乗っ取られていたかもしれないだなんて司令官に言ったら、どんな行動を起こすか予想ができないもの。
だからここは、もう一つの報告でお茶を濁すことにしましょう。
「最後に。どうやら窮奇は、朝潮に執着してる節があるわ。やっと会えたとか、ずっと逢いたかったなんて言ってたから」
「ほう?深海棲艦のクセに、朝潮の愛らしさがわかるとはなかなか見る目がある奴だ」
黙れロリコン。
本気で言ってるんでしょうけど、今の雰囲気で言っちゃ駄目でしょ。ほら、神風さんも「このロリコンが」とか言って呆れてるじゃない。
「冗談はともかく、三年前の窮奇は今回みたいな出鱈目はしなかった。と、言うことは、姉さんの戦い方に影響を受けた可能性があるわ」
見張り員妖精さんの目を通して見たアイツの戦い方は、艦娘からも深海棲艦からも逸脱していた。
しいて言うなら、神風さんの戦い方に近いわ。
常識にとらわれず、自分にできることを把握し、それを組み合わせて全く新しい戦闘法を考案して実践する思考の柔軟性こそが、窮奇の最も怖いところね。
「ねえ、満潮。あなた、先生に隠してることがあるでしょ」
報告が終わり、退院後に朝潮の改二改装を試す旨を伝えられた私は、神風さんにおんぶされて病院に向かってた。報告中はソファーに座らされてたからあまり苦にならなかったんだけど、それがかえって良くなかったのか立てなかったのよ。
だから、意外にも「私がつれて行く」と立候補した神風さんにおぶわれてるんだけど……本来の目的はその事を聞くことだったのね。
「うん。ある」
「アイツが、出てきたの?」
「お見通しか。そうよ。姉さんが出てきた」
察しのいい神風さんのことだから、私が隠した理由にも察しがついてるんでしょうね。
そして、隠しても無駄だってことにも。
「やっぱり、気付かれるよね」
「私との戦闘でもしかしてと思ってたのが、今回の戦闘で確信に変わるでしょうね」
艤装には、艦娘の行動を記録する機能……と言うより、妖精さんがいる。
それを映像に起したものを、提督やそれに準ずる人は見ることができるの。
だから私が隠したって、司令官に対しては意味がないわ。意味はないけど……。
「そんなオカルトじみたこと……って、信じないのを期待してるんだけど、やっぱ無理?」
「無理ね。そもそも、先生がオカルトそのものだし」
「あ、じゃあ、あの話って本当なんだ」
昔、姉さんに聞いたことがあるんだけど、司令官の家系を辿ると1000年以上前の陰陽師まで遡れるんだって。
しかも、ガチで呪いとか呪術なんてオカルトじみたモノが使えるらしい。
その術を利用して、百数十年前の明治維新の時代から暗殺業を始めたらしいわ。
「神風さんも使えるんだっけ?」
「一番初歩の、『
「やっぱ、血筋とかが関係するの?」
「血筋と言うか性格かしら。先生の話では、人間を辞めるレベルの我慢強さが必要なんだってさ」
「あぁ……。それじゃあ確かに、神風さんには無理ね」
「そうそう。私って我慢するの嫌いだから……っておい」
おっと、口が滑っちゃった。
怒ってはいないようだけど、あんまりイジルとこの場に放置されそうだからこれ以上はやめとこ。
「他のはどんな術なの?」
「基本的に同じ」
「同じ?他のは仮縫いの強化版ってこと?」
「そうとも言えるけど、先生が扱える術って実は一つしかないのよ」
「つまり出力を調整して、複数の術に仕立ててるってこと?」
「そんな感じかな。ちなみに、私が見たことあるのは四つだけ。名前だけしか知らないのを含めても七つかしら」
「ふぅん。なんて術なの?」
「一つは私も使える仮縫い。そして、その強化版の『
なんとも変なネーミングね。最後のなんて、どんなものなのか想像もつかないわ。
あ、術と言えばやっぱり……。
「呪文とか唱えるの?例えば、黄昏よりも昏きもの~以下略とか、カイザード・アルザード・キ・スク・ハンセ・グロス・シルク~以下略とか」
「漫画とかアニメの見すぎ。私は本気で術をかけたい時だけ呪文みたいなモノを唱えるけど、先生の術は基本的に呪文なんか唱えないし、派手に光ったりビームが出たりもしない。何かに例えるなら……催眠術が一番近いかしら」
催眠術……ねぇ。
そんなモノに、どうして我慢強さが必要なのかしら。
それに、昔の司令官の話は姉さんから嫌と言うほど聞かされてるけど、その話の中に、歩兵一個小隊を無傷で全滅させたって話があったっけ。
でも、催眠術でそんな芸当ができるとは思えないわね。
あ、芸と言えば……。
「そう言えば、神風さんは祝勝会に出ないの?四水戦がライブまでしてるらしいのに」
「一昨日から毎晩やってるやつ?出ないわよ。ああいう騒ぎ方は好きじゃないし……」
「自分がいると、他のメンツが気兼ねするし?」
「それも……なくもない」
神風さんも素直じゃないわね。
そんなこと気にしなくても、みんな普通に接してくれるわよ……って、私が言ったところで「お前が言うな」って返されるのが落ちだからやめとこ。
「今日は寝る時間になるまで一緒にいてあげるわ。どうせ暇だし」
「あら、怪我してる私で遊ぶ気なの?」
「怪我人相手に遊ぶか!話し相手になってあげるって言ってるんだから、素直に相手してもらいなさい!」
「はいはい、わかりました」
そこまで言ってくれるなら、今日は素直に甘えさせてもらうわ。
神風さんはやり過ぎるってとこに目を瞑れば、基本的に優しくて面倒見も良い人だから。
それに、これは気恥ずかしくて絶対に言えないけど、一緒にいると、微かに憶えてるお母さんみたいに感じることがあるから。
「あ、お母さん。お腹空いたから酒保に寄ってくれない?」
「だ、誰がお母さんよ!あなたみたいに大きい子供がいる歳でもないし、経験もないのよ!?」
へぇ、神風さんって経験なかったんだ……じゃない!
なんでお母さんなんて呼んじゃったの!?
いやそりゃあ、おんぶされてるからか妙に安心してるわよ?なんなら、このまま全体重を預けて寝ちゃいたいくらい安心してるわ。
でも、お母さんはない……ん?待てよ?
私にお母さんって呼ばれた神風さんは、耳まで真っ赤にして私より恥ずかしそうにしてる。
これは、チャンスなんじゃないかしら。
そう、チャンスよ!
普段、度を越したイジリで泣かされている私が、神風さんにリベンジするまたとないチャンスだわ!
ってことでさっそく……。
「良いじゃない今日くらい。ほら、私って今、歩けないくらい弱ってるじゃない?だから、お母さんみたいな神風さんに甘えたいのよ」
「だからお母さんって言うな!せめてお姉ちゃんにして!」
甘えるのは良いんだ。
しかも、お姉ちゃんって呼べとか自分で言ってるし。
まあ、歳的にもお母さんよりお姉ちゃんの方が妥当かつ適切なのはわかるけど、姉妹艦じゃない人をお姉ちゃんって呼ぶのは抵抗があるのよねぇ。
それに……。
「本当に駄目?今日だけで良いから……お母さんって呼びたい」
本当に呼びたくなった。
お母さんに甘えたくなった。
きっと怪我して弱ってるせいだろうけど、今だけは本当に呼びたいって思ってる。
それを察してくれたのか、神風さんは……。
「きょ、今日だけだからね」
と、消え入りそうな声で言ってくれたわ。
なんかゴトも出た(今までいなかった)ので、20時ごろに追加投稿しまーす( ・∋・)
投稿時間は何時くらいが良いですか?
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