あれは嘘だ!
と、言うわけで次話から演習編突入( ・3・)ナガモンナガモンナガモンナガモンナガモンカスミチャンアッアッナガモンナガモンカスミチャンアッアッナガモンナガモンカスミチャンアッアッナガモンナガモンナガモンナガモンナガモンナガモンナガモンカスミチャン
私は司令官をお慕いしています。
その気持ちは今も、これからも変わることはないでしょう。
でも、いつの頃からか、あの人の気持ちより自分の気持ちを優先するようになった。
私がいなくなったらあの人が悲しむとわかっていたのに、私はあの人のためにって御旗を掲げて死んだ。
死んだ、はずだった。
「なのにどうして、こうして生きてるんでしょうね」
「知るか。人の体を勝手に使って勝手言ってんじゃないわよ」
独り言のつもりだったのに、いつの間にやら来ていた神風さんに聞かれちゃった。
しかも台詞的に、
だったら……。
「お久しぶりです。三年ぶり……でしたっけ?」
「二ヶ月ぶりでしょうが。その歳で呆けてんの?」
誤魔化されてくれない……か。
二ヶ月前と言ったら、神風さんが襲ってきたくらいだから、その時に気付いたのね。
「流石ですね。自分の気持ちには鈍感なクセに」
「言ってくれるじゃない。喧嘩売ってるなら、買ってあげるわよ」
「ご冗談を。今の私は、喧嘩ができるような状態じゃありません」
下半身が動かないし、ちょっと身動ぎしただけで背骨に激痛が走るような状態で喧嘩ができるわけないでしょ?
それにそもそも、私は神風さんと違って素手での殴り合いなんてしたことがないもの。
「あら、それは深読みしすぎたわね。てっきり、素手での喧嘩の仕方も覚えるつもりなんだと思ったわ」
「その口振りだと、この子の能力にも……」
「ええ。あの日に気づいた。それを、アンタが利用してることにもね」
敵わないわね。
本能だけで生きているような人なのに、神風さんは満潮並みに察しが良い。
きっと、私が最終的にこの子をどうしようとしているのかも、想像がついてるんじゃないかしら。
いや、神風さんは私の性格を良く知ってるから、誤解してる可能性の方が高いかも。
「もしかして、私がこの子を乗っ取るとか思ってます?」
「現在進行形で乗っ取ってるでしょうが。やっぱり呆けてんの?」
「呆けてません。そうじゃなくて、私がそのうち、この子の体を完全に奪うとか考えてません?」
「あら、違うの?」
やっぱり誤解してた。
そりゃあ、私がやってきたことを知っている神風さんならそう予想するでしょうが、実際は……。
「違う。と言うより、できません」
「そうなの?」
「はい。私には、時間がありません」
なぜなら、表に出る度に出ていられる時間が短くなってる。
表に出ると精神が削られるように疲れるのはわかっていたんだけど、それが魂とでも呼べるモノが磨耗しているからだと気付けなかった。
今だってそうよ。
今も、私の魂は磨り減ってる。
次に出た時は、今日よりも出ていられる時間が減ってるはず。
そして、表に出られなくなった時こそが……。
「私が、消える時です」
「……あと、何回出てこれるの?」
「出ている時間にも寄るんですが、平均で一回につき一分縮んでいます。回数にすると、24~5回ですね」
「なんだ。結構あるんじゃない」
いや、ないでしょ。
神風さんは一日が何時間か知ってる?
一年が何日か知ってる?
私が自由を得られるのは、一回につき30分足らず。しかも、回数を重ねるごとに一回あたりの時間が減っていくオマケつきよ?
それで満足できるほど、私は人間ができてないわ。
「何か、未練があるの?それがあるから、その子に取り憑いてるの?」
「未練は、山ほどあります。語っても?」
「お好きにどうぞ」
「では遠慮なく。まずはやっぱり、司令官に抱いてもらえなかったことです。言っておきますが、ハグではありません。セックスです。S・E・X!まぐわいでも可!あの人、婚約したのに籍を入れるまではって言って全く手を出さなかったんですよ?ロリコンのクセに!私はいつでもウェルカムだったんです!例え執務室だろうと人前だろうと、司令官が求めてくださるなら即全裸になる覚悟でした!この子と違って、当時の私はアレが来てましたから妊娠する気も満々でしたよ!それなのに、ああそれなのにそれなのに!小十郎さんは私を押し倒してくれなかったんです!」
「ヤりたかったのはわかったから、声のボリューム落とせ。今何時だと思ってるのよ」
知りませんよ。
でもそうね。私としたことが熱くなりすぎてしまったわ。反省反省……。
「してる場合じゃない!残り時間が少ないんだから最後まで聞いてください!いいですか?いいですね!?遺言だと思って、一字一句逃がさず聞いてください!」
「遺言なら死ぬ前に残しなさいよ。バカなの?」
「あの時はそんな暇なかったんですよ!だいたいバカって何ですかバカって!私、義理とは言え神風さんのお母さんになる予定だった女ですよ!?その私に対してバカってあなた……。小十郎さんは相変わらず甘やかしているようですね!私、言いませんでした?小十郎さんも若くないんだから、あんまり我が儘言って困らせては駄目ですよって言いませんでした?いいえ!言い訳は聞きたくありません。私は確かに言いました!あ、言ったで思い出した。ちゃんと私をお母さんって呼ぶ練習してました?ほら、神風さんがブルネイに行く前、私が死ぬ五日くらい前です。あ、その様子だとしてませんね。どうしてしなかったんです?私をお母さんと呼べるようになれば、小十郎さんのことも自然にお父さんちぇみょぶぃ!?なんで殴るんですか!痛いでしょ!」
「長いしうっさいのよ!尺でも稼いでんのかこの死に損ないが!」
いやまあ、確かにちょっとうるさいかなぁとか、感情に任せて言いたい放題言いすぎたかなぁとは思ったけど、けっして尺稼ぎじゃないわ。
「小十郎さんと神風さんの仲も、私の未練の一つなんです」
「ほう?私と先生の仲が、セックスのついでに未練だと」
「ち、違っ……!」
「いやぁ、気持ちは理解できるわよ?こんないつ死ぬかもわからない商売してたら、死ぬ前に経験しときたいって気持ちは痛いほどわかるわ。実際、私も角ちゃんと二人っきりの時はそんな気分になることが……ってぇ!何言わせんのよこのアホ!」
「どうして殴ったんですか!?神風さんが勝手に言ったんでしょ!?」
相変わらず理不尽な。
この体は借り物なんだから、もうちょっと丁寧に……って、下半身を壊した私が言うのも何なんですが。
「だいたい……!だいたい、私が覚悟を決める前に、アンタが死んじゃったんじゃない」
「そう……でしたね」
私は、小十郎さんだけでなく、神風さんの気持ちもないがしろにしてたのね。
それだけじゃない。
大潮と満潮、荒潮や他の姉妹たちのことも、私はないがしろにした。
数日前の作戦では、荒潮ごと窮奇を沈めようとした。
私は、最低の人間だわ……。
「今日……さ。ここに来るまで、満潮のとこにいたのね?」
「満潮のところに?神風さんがですか?」
意外だわ。
神風さんが満潮を気に入ってるのは知ってたけど、満潮は神風さんのことを天敵と思って敬遠してたはず。
その満潮が、神風さんと一緒にいたことが意外でしょうがないわ。
「それでさ。その……あの子、怪我で弱ってたせいか、私のことをお母さんって呼んだのよ」
「はぁ、そうですか」
え?何これ。
もしかして、神風さんお得意の無自覚愚痴風自慢?
おのれ、死人に鞭打つとは正にこのこと。
生前も、愚痴と見せかけた小十郎さんのプライベート自慢を歯噛みするほど聞かされたけど、満潮の可愛い面まで自慢するとは思ってなかったわ。
あ、でも、満潮にお母さんと呼ばれた云々は羨ましくない。
だって満潮は妹。
妹には、お姉ちゃんと呼んでもらうのが至高かつ究極でしょう!
「でさ。その時に、不覚にも嬉しく感じちゃったのよ。そしたらさ。先生の奥さんも、お母さんって呼んだら喜んでくれたのかなって考えちゃって……」
「小十郎さんも、お父さんって呼んだら喜んでくれる。そう、考えたんですね?」
「うん……」
二人の関係は、言ってしまえば孤児とその保護者。
でも、神風さんは誰よりも、私よりも小十郎さんを理解してる。小十郎さんも、誰よりも神風さんを理解してる。
恋人や夫婦なんて関係が陳腐に思えてしまうくらい、二人の心は交じわりあってる。
そんな二人の関係に嫉妬したのは、一度や二度じゃないわ。
「まだ、お父さんって呼べてなかったんですね」
「呼べないわよ。呼んじゃいけないの。だって私は……」
「赤の他人だから。ですか?相変わらず、神風さんはバカですね」
「うっさい!そんなの、私が一番わかってんのよ!」
「はいはい。そうでしたね」
いつものパターンになっちゃったわね。
私が生きていた頃は、今の問答を週に一度はしてたっけ。
でも、神風さんの気持ちも理解できる。
小十郎さんは神風さんを娘のように想ってる。もしかしたら、亡くなった娘さん以上に大切にしてる。
神風さんもそれをわかってるから、今もお父さんと呼べない。いえ、呼ばない。
きっと、お父さんって呼んだら、娘を死地に放り込むという十字架が余計に重くなると考えてるんでしょう。
「まったく。二人がそんなんじゃあ、おちおち死んでもいられませんね」
「余計なお世話よ。ホント、アンタら
「あ~……。そう言えば姉さんが……」
「何よ。アンタって、出てない時の記憶もあるの?」
「ええ。この子は私が出ている間の記憶がないようですが、私はこの子が見聞きした情報も把握してます」
「へぇ、そうなんだ」
何故かはわからないけどね。
他にも私と同じ事例があれば仮説くらいは立てられそうだけど、私が知る限りそんな事例はない。
そもそも、先代使用者が艤装を背負ったまま戦死した事例はいくつもあるのに、魂が艤装に残っていたなんて話も聞いたことがないわ。
私のように、未練を残して死んだ艦娘なんていくらでもいそうなものなのに。
「で?
「う~ん……。嫉妬はしますが、姉さんなら良いかな……と。神風さんよりはぜんぜん良いです」
「ちょっと待てこら。どうして私は駄目なのよ」
「だって、神風さんは娘じゃないですか。父親が娘に手を出すなんて、倫理的にアウトです」
「いやいや、そもそも見た目が完全に小学生の子供に手を出すほうがアウトでしょ」
「だぁかぁらぁ!手を出されてないんですよ!キスだってしてくれなかったんですよ!?」
話が振り出しに戻っちゃった。
それもこれも姉さんのせいね。
さっき言ったように、姉さんが相手なら我慢できるけど、それは姉さんが小十郎さんのことを愛してないから。体だけの関係以上にはならないとわかってるからよ。
そりゃあ、小十郎さんと姉さんは性格の相性も良いだろうなとか、二人の間に私が入ったら完全に親子ねとか考えたことはあるけど、それでも神風さんよりはマシ。
だって、小十郎さんと神風さんがくっついたらガチで結婚までしそうだもの。
だから、気持ちまで通じあってる神風さんはNGで、体だけの姉さんはOKなの。
私だったらなお良し!
「キスもしてなかったのは意外って言うか可哀想って言うか……哀れね」
「哀れむならせめて、ほくそ笑むのをやめてくれません?ざまぁって言われてる気分です」
「言ってあげようか?」
「けっこうです。それより、神風さんにお願いがあるのですが……」
「……内容による」
ですよね。
でもこれは、神風さんにしか頼めないこと。
満潮も私のことに気付いてるかもしれないけど、これは私のことを知っていて、かつ満潮たちより強い神風さんにしか頼めない。
「この子を、鍛えてくれませんか?」
「その心は?」
「私では、この子の性能を活かしきれないからです」
今回の窮奇との戦闘で思い知った。
私じゃあ、この子の体を使っても窮奇には勝てない。
この子は自分を思考型ととらえているようだけど、実際は感覚型に近い。いえ、そのハイブリット、複合型とでも言うべきね。
おそらくこの子は、咄嗟の判断力がずば抜けて高く、安易に考えたことでも実現できるだけの身体能力も兼ね備えている。
そんなこの子を鍛えられる人なんて、私が知る限り神風さんしかいないわ。
「窮奇を倒すのも、アンタの未練の一つってわけ?」
「はい。そのためには、この子自身に強くなってもらう必要があります」
腕を組んで何やら考えてるみたいだけど、引き受けてくれるかしら。
いや、神風さんならきっと引き受けてくれる。
だって、神風さんはこの子を気に入ってる。
それは、こんな時間と言うような時間にここにいることでわかるわ。
「この子を鍛えるかどうかは、少し考えさせて。でも……」
「でも?」
「アンタの未練を晴らす手伝いは……してあげる」
相変わらず、素直じゃないわね。
でも、安心した。
もしかしたら、神風さんは私をこの子から追い出そうとするかもって思ってたから。
それに……。
「何よ。ニヤニヤしちゃって」
「いえいえ、神風さんは相変わらず優しいな。と、思って」
「ふ、ふん!誉めたって何も出ないからね!だいたい、私が優しくて慈悲深いのは当たり前なんだから!」
「ええ、そうですね」
あなたは優しくて慈悲深い人。
普段の傍若無人な振る舞いは、本心を隠すための仮面。常に自信満々で過剰なのは、気弱な自分を奮い立たせるための演技、神風さんは、究極の照れ屋なの。
だから……。
「やはり、頼るべきは友達ですね」
「こっちは、いい迷惑だけどね」
顔を真っ赤にしてそっぽを向いてしまったあなたと友達になれたことを、死んだ今でも誇りに思ってるんです。
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