艦隊これくしょん ~愛を込めて、花束を~   作:哀餓え男

48 / 125
ぶっちゃけ、艦これの神風って見た目は好みですけど、思い入れは朝潮ほどありませんでした。

なのに書いてる内に一番動かしやすいキャラになって、今では、キャラ的には朝潮より好きなキャラになってます。


第四十八話 私とお父さんの、初めての親子喧嘩

 

 

 「って事で、明日から朝潮の訓練に付き合うから」

 

 先生が仕事を終わらせて部屋に帰ってきてすぐに、私は朝潮の訓練に付き合う旨を伝えた。

 着流しを着ながら私の方を見る先生は、珍獣でも見たかのように口をあんぐりと開けて驚いているわ。

 いや、そこまで驚かなくてもよくない?

 

 「どうしたんや急に。明日は雪か?」

 

 蒸し暑いより寒い方が私は好みだけど、残念ながら明日から一週間くらいは晴れよ。

 よかったわね。てるてる坊主の効果が早速出て。

 

 「まあ、お前がその気になったんはええことじゃけど……。泣かせるなよ?」

 

 いや、泣かせる気でやる。

 二度と私に生意気な事が言えないようにするのはもちろん、最低でも私の次くらいに強くしてやるんだから。

 

 「それでなんだけど、長門を借りていい?」

 「別に構わんが、対窮奇戦でも想定した訓練をする気か?」

 

 お、仕事モードになった。

 変な話だけど、着流し姿の方が士官服の時より様になってるじゃない。ちゃぶ台の上の湯飲みから湯気まで上がって、その前に胡座をかく様は頑固親父そのものね……は、置いといて。

 

 「私の脚技は本来、大型艦を相手にするために考えたものよ。大型艦を相手に訓練しなきゃ意味がないの。それに、飛魚も使えてるだけで使いこなせてるとは言い難いわ。だから、その辺も煮詰めてあげる」

 

 大サービスよ?感謝しなさい。

 本当はそこまでしてあげる義理はないんだけど、私が考えた技を半端に使われるのは沽券にかかわるからね。

 

 「なるほど、稲妻と紅備(あかぞな)えも教えるのか?」

 「それはまだ早いわ。その二つは最悪、私と雪風がやり合ってる時に見ればいい。雪風が私にソレを使わせられれば、だけど」

 「わかった。長門には私から言っておこう。哨戒任務も午前中で終わるよう調整してやる。しかし、どういった風の吹き回しだ?お前からそんな事を言って来るとは夢にも思わなかったぞ」

 「私が気まぐれなのは、先生も知ってるでしょ?単に、そういう気分になったってだけよ。」

 

 朝潮に諭してもらったお礼なんて、恥ずかしくて言えるか。

 それに、これはアイツから頼まれた事でもある。

 朝潮に恩も返せて、アイツの未練を晴らすことにも繋がって正に一石二鳥よ。

 

 「そうか、お前がそう言うんならそれでええ」

 「改二になって、性格が大人びたわねあの子。生意気にも、私に説教してきたわ。」

 「ははははは、お前に説教するとはたいしたもんじゃのぉ。で?なんて説教されたんや?」

 「それは秘密。ところでさ、先生は娘さんが悪さしたら叱ってたの?」

 「……叱ったことはない」

 「私のことは叱るのに?」

 「お、お前がガキくさいことばっかするけぇいや。あの子はそんなこと……」

 「いや、してたでしょ。あの子は私より、よっぽどヤンチャだったわよ?」

 

 あ、背中丸めてお茶を啜って誤魔化そうとしてる。

 これは叱らなかったんじゃなくて、叱れなかったのね。

 実際、先生って娘さんの前じゃデレデレしっぱなしだったし。

 

 「そう言やぁ、お前を家に連れて帰った時は女房も娘も喜んじょったな。娘は同い年の妹ができた!って」

 「私の方が、誕生日は早かったはずだけど?」

 「今のお前並みに勝気な子じゃったけぇなぁ。逆に、あの頃のお前は気が弱かったろうが」

 「せめて、お淑やかと言ってくれない?」

 

 なるほど。

 当時、やたらと私に構って来てたのはお姉さんぶってたのか。てっきり、家族を亡くした私を哀れんでるんだと思ってたわ。

 う~ん……。

 お墓参り、本当に行ってみようかな。

 なんだか朝潮に乗せられたみたいで悔しいけど、あの頃のお礼を言いたくなってきちゃった。

 

 「あの……お墓参りの事なんだけど……」

 「ん?行く気になったのか?」

 

 う……すっごい意外そうな顔だわ。

 やっぱやめようかな。気まずいし、どんな顔していいかもわからないし。

 でも、一応確認を……。

 

 「本当に、私も行っていいの?邪魔じゃない?ほら、家族水入らず的な……その……」

 

 うわ!めちゃくちゃ呆れた顔してる!やっぱ言わなきゃよかったかしら。

 

 「何言うちょる。お前は俺の娘じゃろうが。俺の女房は血が繋がっちょらにゃ家族じゃないって言うほど、狭量じゃないぞ?」

 「でも……」

 「お前が俺に気ぃ使っちょったのは知っちょる。実際、女房と娘が亡くなった当初はその気遣いに助けられた。それに……」

 「それに……何?」

 「恨まれちょると思っちょった。お前に血生臭い生活をさせたんは俺じゃし、お前が夜一人で寝れんようなるトラウマ植え付けたんも俺じゃし……」

 

 別に恨んでなんかない。

 そりゃあ、死にそうになったこともあるけど、私は先生からそれに対抗する術を教えてもらった。

 先生が居てくれたから私は今こうして生きていられるのよ?それに……。

 

 「私が夜、一人で寝れないのは先生のせいじゃないでしょ?あの頃は夜襲なんて、当たり前だったじゃない」

 

 深海棲艦の夜襲ならまだよかった。

 あの頃は、野盗化した兵隊に襲われる方が圧倒的に多かったのよ。

 私が初めて殺したのは、そんな野盗の一人。

 テントで一人で寝てるところを襲われて、反射的に枕元に置いていた拳銃で撃ち殺したの。

 当時は艦娘になる前だったから、12歳だったかな。

 撃ったところが良すぎたのか、私は相手の胸から噴き出した血で全身血まみれになった。

 銃声を聞いて、先生が駆けつけてくれるまでずっと泣いてたっけ。

 それがきっかけで、私は一人で寝れなくなっちゃったんだけど、間抜けと言うかなんと言うか、艦娘になるまで()()()()()()って気付かなかったのよねぇ。

 

 「そうかもしれんが、責任は感じちょる。じゃけえあの時、泣いちょるお前を見て決めた。お前は誰が何と言おうと俺の娘じゃ。お前がバカやれば叱るし泣けば慰める。お前が嫁に行くまで、俺が親代わりになるって決めた」

 

 そんな風に、思ってくれてたのか。

 先生も物好きね。

 自分のせいでもないのに、面倒な事背負いこんじゃってさ。それなのに……。

 

 「……私は、あの話を聞いて勝手に部隊を離れて艦娘になっちゃった」

 「ああ、あの時はどうしてええか本当にわからんかった。艦娘になれば前線行きは免れん。かと言って、陸軍の俺じゃあお前の配属をどうこうする事も出来ん」

 「先生の部隊に配属されたのは、本当に奇跡だったわよね」

 

 配属先が先生の部隊だって知った時は、本当に驚いた。

 もう二度と会えないと思ってたのに、私は力を手に入れて先生やみんなのところに戻れた。

 それまでの人生で、一番嬉しかったっけ。

 

 「そうじゃのぉ。元帥殿に土下座したかいがあったわい」

 「ちょ、ちょっと待って!そんな話、初めて聞いたわよ!?」

 「誰にも言うちょらんけぇなぁ。当時の大本営……今の呉鎮守府の門前で、半日ほど土下座し続けた。婆様のお得意様じゃったんもあるんじゃろうが、元帥殿が話のわかる人で助かったわい」

 

 なんで平気な顔してお茶啜ってるのよ。

 赤の他人だった私のために、そこまでする義理なんてなかったじゃない。

 いくら親代わりになると決めたって言っても、義務はないのよ?

 今もだけど、陸軍と海軍は仲が悪かったのに、その親玉に土下座した?

 メンツがどうこうなんてレベルじゃない。

 そんな事が知れれば、陸軍内でも立場が悪くなったでしょうに……あ、だからか。

 だからろくな補給も受けさせてもらえずに、先生の部隊は最前線をたらい回しにされてたんだわ。

 うん、間違いない。

 今思い出しても、海軍に異動になる前の先生の部隊に対する陸軍の扱いは酷かった。

 陸軍は、最前線で竹槍まで自作して戦う先生の部隊を後回しにして後方の補給を優先し、あまつさえ先生の部隊諸共、深海棲艦を砲撃したりもした。

 そんな目に遭わされてまで先生は私を……。

 

 「ごめ、んなさい……」

 

 まただ。

 私が勝手な事をしたせいで、助けるつもりが逆に迷惑をかけてしまった。

 ホント、私って余計なことばかりしてるわね。

 

 「俺が勝手にやった事じゃけぇ、気にするな」

 「だけどそのせいで……」

 「神風、こっちに来い」

 

 先生が私の言葉を遮って手招きしてる。

 私から先生のそばに行くことは多々あったけど、先生がそばに来いだなんて言うのは珍しいわね。

 

 「言うたじゃろ?気にするな」

 

 そう言って、先生は横に座った私の頭を優しく撫でてくれた。

 久しぶりだな……。

 昔は辛いことがあるたびに、こうしてもらったっけ。

 

 「昔はお前が泣くたびに、こうしちょったな」

 「そうね……」

 

 相変わらず、剣ダコまみれのゴツゴツした大きな手。

 私はずっと、この手に守られてきた。泣いてる時も、怒ってる時も、私がどれだけバカやっても、先生はこの手で守ってくれてた。

 

 「お墓参り……行くわ。私も連れて行って」

 「そうか、きっと喜ぶ……」

 

 そう言って私の頭を撫で続ける先生の目は、あの時の朝潮と同じように慈愛に満ちていて、私を心の底から安心させてくれた。

 先生って、そんな目もできたのね。

 いや、私が気づかなかっただけか。

 先生はずっと、その目で私を見てくれてた。

 この機会に、お父さんって呼んでみようかな。この流れなら言えそうな気がするし……。

 

 「お………」

 「お?」

 「お酒!そろそろ飲みたくなったんじゃない!?」

 「まあ、ボチボチ飲みたいっちゃあ飲みたいが」

 

 駄目だった!

 いいや。まだよ!

 まだチャンスはいくらでもある。ここで退いたら駆逐艦の名折れよ!

 ってことで……。

 

 「お……」

 「お?」

 「お酌!ほら、お酌してあげるから!ほら!ほら!」

 

 やっぱり駄目だったぁぁぁ!

 いやいや、今のは逃げたわけじゃないわ。そう、戦略的撤退よ!

 次こそビシッと言ってやるわ!

 

 「お……」

 「お?」

 「お摘み!お摘みいるでしょ?いるよね!ってことで用意してくる!」

 

 二度あることは三度ある……じゃない!

 このヘタレが!

 どうしてたった一言が言えないの?

 簡単なことじゃない。たった一言、お父さんって呼ぶだけ。時間にすれば二秒もかからないでしょ!

 

 「お~い、バカ娘。摘まみ程度じゃ足らんけぇ、それなりに腹に溜まるもん作ってくれ」

 

 は?バ、バカ娘!?

 こんなに可愛くて性格も良い娘を前にして何たる暴言!せっかく勇気を振り絞ったっていうのに、たった一言で雰囲気がぶち壊しになっちゃったじゃない!

 

 「自分で作れこのクソ親父!なによ!せっかく言えそうだったのに!」

 「何を?」

 

 うっわ。何よその「ほれ、言うてみぃ」と言わんばかりのムカつく笑顔。

 まさかワザと?

 この親父、私が何を言おうとしたかわかってて雰囲気をぶち壊しにしたわね!

 

 「ほれ、何を言おうとしたんや?言うてみぃ」

 「う、うるさい!クソ親父!絶対言ってあげないんだから!」

 

 ふと、喧嘩に最中に、部屋の窓に取っ組み合いをする私と先生が映ってるのが見えた。

 何度やったかも覚えてないくらいやった、普段の私たちの喧嘩だわ。

 でも、いつもと違う気がする。

 朝潮のお説教で、私が勝手に抱えてたわだかまりが少しは晴れたからか、前よりも先生を近くに感じる。

 

 「痛っ!ええ加減にせぇ神風!ぐっほ!」

 「うっさい!5~6回死ね!バカ親父!」

 

 怒っているはずなのに、なぜか二人とも笑ってる。

 このまま騒いでたら、両脇の部屋にいる天奈か左門兄が止めに来そうだわ。

 でも、まあいいか。

 だったら、それまで存分に楽しむとしましょう。

 私とお父さんの、初めての親子喧嘩を。

投稿時間は何時くらいが良いですか?

  • 朝 6:00~7:00
  • 昼 11:00~12:00
  • 夜 19:00~20:00
  • 何時でも良い
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。