本当に申し訳ありません!
今週は梅雨の中休み。
よく晴れて日差しが強く、もう夏かと思えるほど気温が高くて汗が滝のように流れていますが、ずっとジメジメしていたので気分は爽快です。
いえ、だったのですが……。
「ああ!いいぞ朝潮!もっと!もっとだ!もっと私に撃ち込んでこい!」
気持ちの悪いセリフを浴びせかけられて最悪になりました。
しかも、哨戒任務が終われば神風さんに足腰立たなくなるまでしごかれるというオマケ付きです。
入院中に見つけた、誰かが「神風さんに師事しなさい」と書いたメモに従ったのですが、かなり後悔しています。
もっとも神風さんのしごきにではなく、神風さんが訓練相手だと言って連れて来た、横須賀最強の呼び声高い長門型戦艦一番艦の長門さんによる精神攻撃に、ですが。
「おお!これも躱すのか!さすが朝潮だ!」
私の中では、長門さんは全ての艦娘の模範。
戦場に於いては、立っているだけで旗下の艦娘を奮い立たせる完全無欠の武人。そう思っていました。
なのに……。
「もう我慢できない!今すぐその小さくて可愛らしいお尻に頬擦りさせろ!」
実際はこれです。
ええ、ドン引きしましたし幻滅しました。しかも気持ち悪いです。吐きそうです。
これなら、窮奇の方がはるかにマシだった気がしますよ。
『ねぇ満潮ちゃん。窮奇ってあんな感じぃ?』
『あそこまで酷くなかったかな』
浜辺に座って観戦している、満潮さんと荒潮さんが通信を通して呑気なことを言っていますが、それが本当なら私は窮奇より気持ちが悪い人と対峙してるんですか?
と言うかそもそも、あまり話した事はないはずなのに、どうして長門さんに気に入られてるのでしょう。
「ふおぉぉぉぉ!!砲撃を躱すお前の動きは優雅すぎる!まるで、一緒にダンスを踊っているような気分だ!」
本当に窮奇みたいな事を言い出しちゃいました。
長門さんの砲撃は窮奇ほど精密ではない分、下手に避けたら当たりそうになるから窮奇より厄介……ん?私、窮奇の砲撃を見たことはありますが、砲撃されたことはないはずですが……。
『ボケっとするな!模擬弾じゃ真剣になれないって言うなら実弾に替えるわよ!』
おっと、考え事をしてたら神風さんに怒られてしまいました。
神風さんが言った通り、模擬弾だからと言って気を抜いてはいけません。
神風さん曰く、長門さんが撃つ模擬弾を要所要所で脚技を使ってひたすら避け、隙を見て反撃するコレは対窮奇戦を想定した訓練の初歩という話ですから。
『初日に言ったけどもう一度言うわよ。あなたは脚技を使えるだけで使いこなせてない。限界使用回数も把握していない。だからまずは、脚技で出来ることと自分の限界を見極めなさい』
ご説明、痛み入ります。
補足しますと、脚技の限界使用回数は体力だけではありません。
燃料的な限界もあるのです。
いくら駆逐艦は燃費がいいと言っても、脚のオンオフを連続で行う脚技を何度も使えば燃料の消費は激しくなります。
自動車のエンジンに例えれば良いのでしょうか。
信号待ちでアイドリングストップをする程度なら話は別ですが、無駄にエンジンを切ったり入れたりを続ければガソリンの消費は増えます。
艤装でも、それは同じなんです。
脚技で回避以外に出来ることが何なのかはまだわかりませんが、この数日で限界使用回数は概ね把握出来ました。
その日の体調にもよりますが、飛魚で20回が今の私の限界です。
『そろそろ補給に戻りなさい。それと長門!なんで手加減してるのよ!殺す気で撃てって何度も言ってるでしょ!』
「い、いや、しかしだな神風……」
アレで手加減されてたのですか?
だったら、手加減なしで撃たれたらどうなるのでしょう。今だって、ギリギリで避けてるんですよ?
「朝潮ちゃんお疲れ様ぁ♪燃料入れてあげるから、艤装を下ろしてぇ♪」
荒潮さんに言われるまま艤装を下ろすと、荒潮さんが浜辺に置かれたドラム缶からホースを伸ばして艤装に繋いで燃料を補給し始めました。
毎回思いますが、この光景が不思議でしょうがないです。
だって、艤装より少し大きめのドラム缶の中身が、一回の補給で全部無くなるんですから。
「朝潮ぉぉぉぉ!」
「ぐえっ……」
補給の光景を眺めていると、後ろから長門さんに抱きかかえられて、オマケに肺の空気が押し出されて変な声が出ちゃいました。
「あ-!長門さんずるいぃ。それは私の役目なのにぃ!」
「いいではないか荒潮。こんな機会でもなければ、朝潮とはなかなか会えないんだ。実の姉妹なのにな……。朝潮もきっと寂しがっているはずだ!」
いえ、私は一人っ子です。
姉が居た記憶なんてありませんし、八駆のみんなが居るので寂しくもありません。
戦艦の人は思い込みが激しいのでしょうか。
「な、長門さん。そろそろ離していただけないでしょうか」
荒潮さんより豊満な体つきではありますが、長門さんは硬いんです。まったく柔らかくないわけではないんですが、荒潮さんの感触を知ってるとどうしても硬く感じてしまうんです。
だから離してください。
「嫌だ!訓練再開までこのままがいい!」
「長門の胸板が硬くて痛いんだってさ。だから離してあげなさい」
さすが神風さんですね。
私が遠慮して言えない事をズケズケと言ってのけるとは。もっとも、痺れも憧れもしませんが。
「か、硬いのか?私の胸は硬いのか!?」
「……」
察してください。
私は人より感情が顔に出やすいみたいですから、表情から察してください。
私には、神風さんのようにズケズケと遠慮なしに言うことができないんです。
「そ、そんな……」
ズシャア!
っという擬音とともに、長門さんが砂浜に崩れ落ちました。当然、抱きかかえられていた私も砂浜に激突です。
「朝潮、大丈夫?」
大丈夫じゃないです満潮さん。
口の中にまで砂が入ってきましたし、不気味に顔を歪めてハアハア言ってる長門さんに押し倒されたような格好です。
押し倒されるなら司令官が良かった……。
「飛魚を使うタイミングはだいぶ良くなったけど、問題は使い方ね」
「使い方?今の使い方は、本来の使い方と違うんですか?」
「うん、違う。満潮たちもそうだけど、飛魚を回避するための技だと思ってない?」
「そう思ってましたけど……」
瞬間的な加速で砲弾を回避したり、出足の速度をカバーするものだと思っていましたが……。
「アレは本来、射程の短い駆逐艦が大型艦に接近するための技なの。攻撃の回避は、あくまで副産物よ」
「でも、駆逐艦は大型艦に比べて速力は速いですよね?わざわざ飛魚を使わなくても、接近は出来るのでは?」
「それが簡単にできないから、私は飛魚を考えたの。夜戦ならともかく、昼戦じゃ捕捉されれば基本的に捕捉されっぱなしでしょ?接近するためには、攻撃の合間を縫うしかない。その合間を縫う一瞬で、一気に距離を縮めるための技なのよ」
なるほど。
通常航行で攻撃を回避すれば若干ながら速度は落ちますし、針路も変わります。
それを補いつつ接近するのが本来の目的なのですね。
「そういえば、朝潮と演習していて気づいたんだが、神風と朝潮では飛魚での飛距離が違うのだな。朝潮の跳ぶ距離は一定だが、神風のは距離がバラバラだ」
「あ~、それもそろそろ指摘しとこうと思ってたのよ」
「え?飛魚って、跳ぶ距離を調整できるんですか?」
「当り前じゃない。陸でジャンプする時でも調整できるでしょ?その要領で、飛魚の飛距離も調節可能よ」
なるほど、それは盲点でした。
でも、よくよく考えればそうですよね。
飛魚はジャンプする動作と、脚の再発生によって急激に生じる浮力をシンクロさせる技術です。
つまり私は、全力でジャンプし続けてたんですね。
「それと注意事項。飛魚は瞬間的な加速と移動に優れる分、海面から十数センチ浮いてるだけとは言え跳んでる間は回避不可能。短期戦ならともかく、長期戦になると対応されて跳んでる間に撃ち落とされるわよ。長門も、やろうと思えばできたんじゃない?」
「う……いや、まあ……」
それが手加減と言う事ですか。
言われてみれば、一定の距離しか跳ばない私など恰好の的ですね。
「次からは少々当たってもいいから、飛距離の調整と接近する事を意識してやってみなさい。あと6,7回くらいは飛べるでしょ?」
「はい!」
「普段からこうなら、司令官に叱られることもないでしょうに」
「戦闘に関して
それに関しては、満潮さんと荒潮さんに激しく同意します。普段の神風さんは尊敬できるところが皆無です。
「そこの二人、うるさいわよ」
神風さんの睨みを利かせた一言で、二人が黙ってしまいました。こういうのを、鶴の一声って言うんでしたっけ?。
「良い機会だから、ついでに飛魚の欠点を教えておくわ。よく聞きなさい」
容姿が幼いせいで、子供がお姉さんぶってる感はありますけど、左手を腰に当てて片目を瞑り、右手の人差し指を顔の前で立てて説明を始めようとしてる神風さんは、古風な恰好も相まってかなり様になっていますね。
「飛魚の欠点は直進しか出来ないことと、使用中は方向転換が出来ないこと。前に飛ぼうが横に飛ぼうが、これは変わらないわ。燃料や体への負担は割愛するわね」
逆に、メリットは瞬間的な加速と移動距離。
10メートル前後とは言え、接近はもちろん咄嗟の回避や初速の遅さをカバーするにはもってこいですね。
「さらに、飛魚に限らず、脚技は一瞬とは言え海面から脚が離れる。それはイコール、力場の源である
私が飛魚を使うと知っていれば、相手も当然それに合わせて攻撃してくる。本当のデメリットはこっちですね。
相手に見せれば見せるほど使いづらくなるどころか、致命的な隙になるわけです。
正に、諸刃の剣ですね。
「神風さんは、そういう相手にはどう対応してたんですか?」
「相手の砲撃に合わせて、水切りを間に交ぜたりして跳ぶタイミングをズラしてたわ」
なるほど。
跳ぶと見せかけて、先に攻撃させるわけですね。
と言うか神風さんにも、私で言うところの窮奇みたいな相手がいたんですね。
「水切り一回の燃料的な消耗はトビウオの三分の一程度だから、適度に交ぜてやるといいわ」
「そんなに消耗が少ないんですか?」
「戦舞台と呼べるほど動き回れば消耗は飛魚以上だけど、一回の消耗はそんなものよ。あなたの場合だと、近づくまでに飛魚を限界回数近くまで使っちゃうだろうから、相手に接近した後で使えるのは精々2、3回でしょうね」
たしかに、今の私では接近するまでにガス欠寸前になってしまいそうです。
ですが、改めて解説してくれたことで選択肢が増えました。
上手くやれるかどうかはわかりませんが、フェイントで水切りを数回交ぜる程度ならなんとかなりそうです。
「神風さんが何度もやり合ったのってぇ、あの時の駆逐古鬼ぃ?」
「そうだけど……。あの時ってどの時?」
「舞鶴が襲われた時よぉ。ほらぁ、神風さんが顔面をメチャクチャにされた時ぃ」
「あ~……。その時の八駆って、もうあなたたちだったんだっけ」
舞鶴が襲われたと言いますと……正化24年の舞鶴襲撃ですか。
その時に顔面をメチャクチャにされたから、神風さんは駆逐古鬼を追い回して倒したのでしょうか。
「あの時は、さすがに駄目かと思ったな」
「あら、そうなの?」
「そりゃあ、あれだけ酷かったらな。私と鳳翔など、最期を看取ってやってくれと提督に直談判したほどだ」
砂の上に胡座をかいた長門さんが、神風さんを見上げながら懐かしそうに語りました。
対する神風さんは、ばつが悪そうに頭をポリポリ掻いてますね。
「でも、先生は仕事が忙しい!とか言って来なかったでしょ」
「ああ。鳳翔など、それを聞いてガチギレしてたよ」
鳳翔さんと言いますと、たまに変な1人乗りの車に乗ってうろうろしている軽空母の人ですよね?
私は遠目から見たことがあるだけですが、怒りなどの感情とは無縁そうな人でしたが……。
「私の話なんてどうでもいいでしょ。ほら、二人ともさっさと海に出なさい!朝潮は、次の演習では長門を沈める気でやるのよ!」
「こら神風!朝潮を蹴るな!蹴るなら私に蹴らせろ!」
蹴らせません。
長門さんに蹴られたらお尻が割れてしまいそうです。
と、心の中で文句を言いつつ、神風さんにゲシゲシとお尻を蹴られながら海に出て、浜から50メートルほどの浅瀬に仁王立ちする長門さんから1000メートルほど距離を取りました。
『準備はいいか?朝潮』
「はい。いつでもどうぞ」
長門さんを沈めるつもりでやるには、とにもかくにも近づかなければなりません。
ですが、今の私が飛魚で飛べる回数は多くてあと7回。初速のカバーには使えません。
ならばと、私は通常航行で速力を上げていき、長門さんの砲撃に備えましたが……。
「1000メートルの距離も、戦艦にとっては無いのと同じですか」
100メートルも進まないうちに、私の速度と針路に合わせた砲撃がはじまりました。
これくらいなら、まだ速度の増減と舵操作で回避出来ます。問題は……。
「回避先への砲撃。さすがは横須賀きっての
でも、この砲撃も艦首を上げて水圧ブレーキでどうにか回避。
次弾を防ぐために、こちらも目眩ましを兼ねて頭部より下、胸の辺りを狙って砲撃。
模擬弾なのでダメージは皆無ですが、それでも爆発はしますので長門さんの胸部から顔のあたりに広がって視界を奪ってくれます。
『今度は目隠し鬼か?可愛い奴め!すぐに捕まえてやるからな!』
また、長門さんの変なスイッチが入ってしまいました。
さっきもこれで追い回されたんですよね。
戦艦と駆逐艦では駆逐艦の方が速いですから、単なる追いかけっこなら追い付かれることはありません。
ですが、今は追いかけっこではなく演習。
私も接近したいのです。
だから、長門さんの方から来てくれるのは好都合。
被弾を無視して真っ直ぐ突っ込んで来られるのは少し怖いですが、これで脚技を節約できます。
『おお!今回はお前の方から向かって来てくれるのだな!さあ来い!お前を抱きしめる準備はできている!』
残念ながら、抱きしめられるつもりはありません。
なので、長門さんの砲撃を神風さんから言われた通り、飛魚で跳ぶと見せかけてそのまま航行すると、10メートルほど前方に砲弾が着弾しました。
このまま、速度を保ったまま水柱を左目の端に見ながら右へ迂回です。
『右か?左か?左だーーー!』
長門さんが、私が水柱の後ろから出て来た地点に砲撃。これは飛魚で前方へ。
残り500メートルで、飛魚で飛べる回数はあと6回
お次の砲撃の着弾点は……。
このままの針路と速度で航行して到達する地点に1。飛魚で飛んだ場合の地点に1。その中間に1ですね。
「ならば!」
私は水切りで、右へ3歩サイドステップしてその位置から近い二つの着弾点の間に向けて飛魚で跳躍し、二つの着弾点の間に着水しました。
そこからさらに飛魚を使用し、着弾点の間から再び右方向へとくの字を描くように移動しました。
対して長門さんは、私がそのまま左の水柱を抜けると踏んだのか、砲塔をそちらに向けています。
『うお!そっちか!これはしてやられた!ハハハハハ!』
私は必死だと言うのに、長門さんは楽しそうですね。
長門さんとの距離は残り300メートルほどですか。
長門さんが最大戦速でこちらに向かってるせいもあって、距離が縮まるのが早いです。
『これなら……どうだ!』
今度は両舷の三連装砲を同時に発射。
着弾点はすべてバラバラですね。
私が移動可能な場所をすべて潰されています。
さて、どうしましょう。
飛魚の距離を調整する?
駄目ですね。
残り3回の飛魚を使い切って回避したとしても、途中で力尽きてしまいます。
ならば、水切りで駆け抜ける?
これも駄目です。
水切りで移動できる距離では避けられません。
水切りの消耗と機動力で、飛魚並みの飛距離が出せれば……。
「できないので……しょうか」
水切り一回が飛魚一回より消耗が少ないのは、おそらく片足づつ脚を小規模に発生させるからです。
飛魚の機動力が低いのは、飛んだ後は着水まで脚を発生させっぱなしのせいで自由が利かないからです。
故に、跳躍中の再使用ができません。
ならば、片足づつ飛魚を使えばどうでしょう。
水切りと同等とはいかずとも、それに近い機動力を得られるのでは?
それができるのなら都合6回分。
相対速度を考えれば、弾幕突破後は長門さんとの距離は100メートルを切ってるはずです。
そうと決まれば実践です。
4回で回避して、残りの2回で長門さんの後ろを取ります!
イメージしなさい。
脚を作るのは利き足である右足。跳ぶまでの体の動きは飛魚と同じ。
飛魚と同じように前傾姿勢を取り、体の動きに合わせて脚を消去。
踏み切る動作と同時に、右足のみに脚を再形成。これで跳べるはずです。
いえ、跳びます!
『なんだと!?おまっ、それは……!』
出来ました!
でも、飛魚より飛距離が若干短いですね。8メートルくらいでしょうか。
でも、充分です、
私は目の前に降ってきた砲弾を左に回避し、跳んだ先に降ってきた砲弾を、今度は左足から脚を発生させ再び回避。
うん、良いわ。
これなら、跳躍中だとしても方向を変えられます。
この調子でジグザグに4回跳躍して弾幕を抜け、長門さんの眼前80メートルほどまで距離を詰めます。
「な!?」
長門さんも、私が飛魚で跳べる回数は知っています。
なのに、知っている回数より多く跳べば驚くのは当然ですよね。
私は再度長門さんの視界を砲撃で塞ぎ、距離を残り20メートルまで詰めました。
ここまで近づけば、長門さんは余波を恐れて主砲を使えないはずです。
装填しているのが模擬弾ですから、撃ってくる可能性もゼロではないですが、そんな暇は与えません!
さらに長門さんの右真横へ向け跳躍。
着水と同時に、捻り駒で反転して長門さんの背後を取りました。
これで……。
「私の勝ちです!」
「こ、これは参った。降参だ」
浮いていられる程度の力は残していますが、これが実戦だったら距離が近すぎて魚雷は使えないですね。
主砲でもダメージは与えられますが、長門さんの装甲厚を考えると心許ないです。
それに……。
「いえ、長門さんが私に向かってこなければ、こう上手くはいきませんでした。それに、もう膝が笑っています」
よく考えなくても、飛魚でかかる体への負担を片足だけで受けたんですから当然ですよね。
正直、立ってるのがやっとです。
「もしかして立ってるのがやっとか?」
あ、まずい……。
長門さんがすごく気持ち悪い笑顔をしています。
まさかとは思いますが……。
「きゃっ!」
「ああ……朝潮をお姫様抱っこ。朝潮をお姫様抱っこ。朝潮をお姫様抱っこ。もう死んでもいいや」
だったら死んでください。
実弾を装填してないのを今初めて後悔しました。
初めてお姫様抱っこされる相手が長門さんだなんて、今までされた中で最大級の精神攻撃ですよ。
私の初めてを返してください!
「あ、あれ?」
長門さんにお姫様抱っこされたまま浜辺に戻ると、神風さんと満潮さんと荒潮さんが目をまん丸に見開き、口をあんぐりと開けた状態で出迎えてくれました。
三人を驚かせるような何かがあったんでしょうか
「ね、ねえ、神風さん」
「言いたいことはわかるわ満潮。私は見せたことがない」
「じゃあぁ、どうして朝潮ちゃんが『稲妻』を使ったのぉ?アレってぇ、私たちでさえできないのよぉ?」
イナズマとは何ですか?
六駆の電さんのことですか?それとも、片足で飛魚を使ったことでしょうか。
「あ、朝潮。さっきのアレ、どこかで見たことあるの?」
「いえ、ないですけど……。片足で飛魚を使えば、消耗も半分くらいになって、水切りみたいに自由も利くかなと思って……」
「思い付きで実践したの?私が半年がかりで開発した稲妻を!?アレの脚操作の難易度は、飛魚の比じゃないのよ!?」
神風さんが半年がかり?そんなに難易度が高い技だったんですか!?
そう言われると、思い付きでやったことが悪いことのように思えてきました。
「さすが私の妹だ。神風とはものが違うな!」
いえ、私は長門さんの妹ではありません。
と言うか、そろそろ降ろしていただけませんか?艤装を背負ったままですから重いでしょう?
「黙ってろロリコン。朝潮も、今日はもう限界でしょ?」
「ええ、すみません……」
初めて飛魚を使った時より体が痛みます。
それでも一晩寝れば平気だと思いますが、今は長門さんを振り払いたいのにそれも出来ないくらい消耗しています。
「よし!ならば風呂だな!」
ん?なんだか嫌な予感がしますね。もしかして、このままお風呂に連れて行かれるのでは?
「安心しろ朝潮!服は私が脱がすし、体も隅々まで私が舐めてやる!」
予感的中どころか、予想の斜め上を行ってました!
私の貞操が危険です!
「結構です!それくらい自分でできます!」
「無理をするな朝潮。疲れているだろう?マッサージもしてやるから安心しろ!」
ぜんぜん安心できません!激しく身の危険を感じますよ!
ですが、今の私には長門さんに抗う術がありません。
ここは三人に助けを求めるしか……って、なんで三人とも目を逸らしてるんですか?
まさか、助けてくれないんですか?助けてくださいよ!このままじゃ私……。
「いくら私でも、丸腰じゃあどうにもできないわ。このゴリラ、力だけはあるし」
「アンタの事は忘れないわ」
「純潔を失う事はぁ、ないと思うからぁ。たぶん……」
見捨てられた!
三人に見捨てられました!
だったらせめて、司令官にこの危機を伝えるとか憲兵さんに知らせるとかしてくださいよ!
揃って手なんか振らなくていいですから!
「さあ行こう朝潮!浴場に勝利を刻みに行くぞ!」
嫌ですよ!
鼻血のみならず涎まで垂らして欲情している長門さんと浴場に行ったら、私は大敗北です!
「うひひ♪朝潮とおっ風呂♪朝潮とおっ風呂♪」
長門さんのキャラが、演習の時より崩壊しています。
正直、気持ち悪いです。身の毛がよだちます。
ああ……私は浴場で、長門さんに好き放題されちゃうのでしょうか。
私は司令官のものなのに、欲情した長門さんに私は……私は……。
「そんなの嫌ぁぁぁぁ!司令かぁぁぁん!司令官助けてぇぇぇぇぇ!!」
浴場に連れ込まれる寸前に、私は残った体力を全て使って叫びました。
いくら叫んでも、ここから執務室まで声が届くわけがないのに、それでも叫ばずにはいられませんでした。
ですが、そのおかげで奇跡が起きたんです。
たまたま近くにいたのか、それとも三人の誰かが知らせたのかはわかりませんが……。
「もう大丈夫だ朝潮。何故って?私が来た!」
と、どこかの平和の象徴みたいなセリフと共に、天井を突き破って司令官が助けに来てくれたのです。
投稿時間は何時くらいが良いですか?
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朝 6:00~7:00
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昼 11:00~12:00
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夜 19:00~20:00
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何時でも良い