艦隊これくしょん ~愛を込めて、花束を~   作:哀餓え男

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この時期は湯豆腐と熱燗。
これだけで乗り越えられます(私基準)


第五十一話 よし!突撃する!

 

 

 

 今日から7月。

 梅雨が明けたら、本格的な夏の始まりです。

 海開きもあり、学生なら夏休みがスタートする季節ですね。

 残念ながら、艦娘には海開きも夏休みもありません。だって軍人ですし。

 それに、季節に関係なく海の上に居るので海開きと言われても今さらですし、学校と言うものに通ったことがない私には夏休みがどういう物なのか想像もつきません。

 養成所を学校と言えなくもないですが、あそこはあくまで養成所ですし、長期休暇はありましたけど、帰る場所がない私にとっては無用の長物でした。

 

 『そろそろ戻りなさい。時間も丁度いいし、今日は終わりにしましょう』

 

 長門さんを()()()()()()した感傷に浸っていたら、通信で神風さんが訓練の終了を告げました。

 神風さんの指導を受け始めてもう一か月近くになりますね。

 最初の頃は足腰が立たなくなっていましたが、今は慣れてきたのか自分の足で歩いて寮に帰ることくらいは出来るようになりました。

 

 「だいぶ稲妻にも慣れたみたいね。そろそろ、実戦形式で演習してみる?」

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()浜辺に戻った私に、神風さんが唐突にそう告げました。

 長門さんと決闘じみた事をしている今の訓練は、十分実戦形式だと思うのですが……。

 

 「ゴム弾を使ってる今でも、十分実戦的じゃない?まさか、実弾でも使おうって言うの?」

 

 私の考えを代弁するかのように、満潮さんが尋ねてくれました。

 そうですね。

 爆発するだけの模擬弾から、装甲を抜きさえすればダメージを与えられるゴム弾以上に実戦的にするとなると実弾くらいしか思い浮かびません。

 でもさすがに、実弾は使わせてもらえないのでは?

 

 「さすがに無理よ。実弾を持ち出したのがバレたら、先生が激怒するわ」

 

 激怒した司令官ですか。

 あの時、長門さんに手籠めにされそうになっていた私の元へ颯爽と駆けつけてくれた司令官はカッコよかったなぁ……。

 鬼のような形相で日本刀を振り回し、陸上とは言え長門さんをノックアウトしちゃいましたし。

 

 「長門、明日の演習は本気でやりなさい。お遊びはなしよ」

 「おいおい神風。私の今の状態を見て、遊んでいるように見えるのか?」

 

 ええ、本気でしょうとも。

 訳の分からないことを口走りながら私を追いかけまわす長門さんは、本気で気持ち悪いです。

 だから容赦なく、ここ最近はゴム弾で滅多打ちにしています。

 

 「わざと当たって、しかも装甲まで薄くしてるクセにほざくな。もし本気でやらなかったら、あなたのコレクションを全て燃やしていいって許可を()()()()()から貰ってるわ」

 「ちょっ……!なんでお前が私のコレクションのことを知ってるんだ!しかも、陸奥が許可を出しただと!?」

 

 どうせ、ろくでもないコレクションなんでしょうね。駆逐艦の写真とか物品をコレクションしてるんですか?

 

 「それが嫌なら本気でやりなさい。朝潮のためでもあるんだから」

 「う……。朝潮のためか。朝潮のためなら仕方がないな……」

 

 なぜ私を上目づかいで見るんですか?やめてください。背中の悪寒が止まりません。

 まだ撃たれ足りないんですか?

 

 「朝潮って、一回嫌うととことん嫌うわよね」

 「まあ、しょうがないんじゃなぁい?あんな追いかけられ方したらぁ、私だって嫌だものぉ」

 

 その通りです満潮さん、荒潮さん。あんな風に歪んだ愛情を向けてくるのは窮奇だけで十分です。

 

 「朝潮は、私を嫌っているのか?」

 

 口には出しませんが嫌いです。 

 長門さんの本性を知るまでは尊敬していたのに、実は窮奇と実の姉妹なんじゃないですか?と疑いたくなるくらい気持ち悪いです。

 容姿もどことなく似てる気がしますから、本当に姉妹だったりしませんか?

 

 「朝潮……。あ、痛っ!」

 

 おっと、私としたことが、長門さんが私に向けて手を伸ばしてきたので撃っちゃいました。

 それでも諦めていないようですので、とりあえず満潮さんの後ろにでも隠れましょう。

 もし、それでも諦めないなら満潮さんを生け贄に差し出して私はエスケープです。

 

 「フられたわね長門。ご愁傷様」

 「そ、そんな……」

 

 背中にガックシという文字が見えそうなくらい打ちひしがれてますね。

 でも同情なんてしませんよ。

 ざまぁってヤツです。

 

 「じゃあ、とっととお風呂に行きましょ。立ってるだけで汗だくよ」

 

 立ってるだけ?ビーチパラソルにビーチチェア、クーラーボックスにはよく冷えたラムネ。さらに、神風さん達三人は水着姿。

 完全にリゾート気分じゃないですか。

 こっちは変態に一日中追いかけられていたって言うのに、三人だけで海水浴ですか?

 

 「風呂!よし風呂に行くぞ朝潮!ともに今日の汗を洗い流そう!」

 「嫌です。長門さんは一人で入浴してください」

 「長門は大型艦用の浴場でしょ?先生が新設してくれたんだから、そっちに入りなさい」

 

 そうですよ。

 司令官がわざわざ、私のために駆逐艦用と大型艦用の二つに分けてくれたんです。

 だから大人しく、そっちで入浴してください。

 

 「くぅ、本当に嫌われている。私の何がいけなかったと言うんだ朝潮!」

 

 え?自覚なしですか?

 アレでどうやって長門さんを好きになれと?迫ってきてるのは司令官だと自分に言い聞かせて、なんとか我慢してるんですよ?

 

 「神風!提案がある!」

 

 うなだれていた長門さんが、目を輝かせています。

 ですが、神風さんに話しかけておきながら視線はその後ろに居る私に注がれていますね。

 

 「だいたい想像つくけど、一応聞いてあげる。何?」

 

 やめてください。

 嫌な予感しかしません。きっとろくでもない事です!

 

 「明日の演習。私が勝ったら朝潮と一晩を過ごす権利をくれ!」

 「一晩って……あなたの部屋で?同室のむっちゃんはどうするのよ」

 「神風にやる。最近、陸奥を抱いてないから久々に抱きたいだろ?」

 「言い方考えなさいよ!それじゃあ、私とむっちゃんがそういう仲みたいじゃない!」

 

 ろくでもないどころじゃありませんでした!

 完全に私の貞操の危機です!

 絶対断ってくださいよ!?

 あ……さっきまで抗議してた神風さんが、「あ、でも……」とか言いながら私の方を見てニヤァってしてます。これ、まさか許可する気なんじゃ……。

 

 「わかった。ただし、後で先生に何されても、責任は一切取らないわよ」

 

 許可しちゃった!

 私に拒否権はないんですか!?この人と一晩一緒だなんて何されるかわかったもんじゃないですよ!

 

 「頑張って朝潮。勝てばいいのよ」

 「朝潮ちゃんならぁ、きっと大丈夫よぉ」

 

 応援するなら、せめて私の方を見てしてください!

 なんで二人とも目を逸らしながら言うんですか!?

 と言うか普通に考えてください!

 この人、こんなでも戦艦ですよ!?しかも高練度で、本気でやってる私を相手に遊べるレベルの!

 そんな人にどうやって勝てと!?

 

 「まあ、勝敗に関してはそれなりにハンデはつけるから安心しなさい。それでも厳しいとは思うけど……」

 

 だったらあんな提案を許可しないでくださいよ!

 あ、そうだ実弾……。

 私には実弾を使わせてください!ヤられる前に殺ります!

 

 「フフフフ……。明日が楽しみだ!覚悟しろ朝潮!ビッグセブンの力、とくと見せてやる!」

 

 そういうのは深海棲艦に見せてください!

 あ、まさかとは思いますが、他のビッグセブンの人たちも、長門さんみたいな変態じゃないですよね!?

 

 「では私は先に戻るぞ。色々用意しておかねばいかんのでな!フフフフ……アーッハッハッハッハ!」

 

 ものすごく気持ち悪い笑顔で高笑いをしながら、長門さんが去って行きました。スキップまでしてるのが、余計にでも私を苛立たせます。

 どうして私は実弾を装填していないの?今なら、確実に始末できるのに!

 

 「神風さんの指導を受けるようになって、朝潮の性格が歪んだ気がするわ」

 「いや、私悪くないから。悪いのは長門よ」

 「昔の朝潮ちゃんは、どこへ行っちゃったのかしらぁ……」

 

 私の性格は歪んでませんしどこへも行っていません。

 満潮さんと荒潮さんだって、アレに追い掛け回されれば私の気持ちがわかるはずです。

 

 「じゃあ、私たちも戻るわよ。角!飛車!」

 「呼んだっすかお嬢」

 「待ちくたびれたぞお嬢」

 

 神風さんが呼ぶと、どこからともなくモヒカンさんと金髪さんが現れました。

 いったいどこに居たんでしょう?

 一面砂浜で、隠れる所なんてないのですが。

 

 「パラソルとか片づけといて。あと、クーラーボックスにラムネも補充ね」

 

 パシリをさせるんですか!?

 この炎天下に、どこかに身を潜めて待機していたお二人になんて酷い仕打ち!

 

 「了解っす。他にはないっすか?」

 「用はないけど、隠してるカメラを出しなさい」

 「……カメラなんて持ってないっす」

 

 カメラ?

 司令官の指示で、私と長門さんの演習を撮影してたのかしら。

 

 「ちょ!私たちの水着姿を撮影してたの!?」

 「あらあら、お仕置きしなきゃねぇ」

 

 ああそっちですか。

 たしかに、胸元にそれぞれ「みちしお」「あらしお」と書かれた司令官指定の水着姿の満潮さんと荒潮さんは可愛いから、撮影したくなる気持ちはわかります。

 神風さんは、荒潮さん曰くモノキニと呼ばれるタイプの赤い水着で、前から見るとワンピース、後ろから見るとビキニに見える不思議な水着です。

 

 「やっべ!相棒逃げるっすよ!」

 「おうよ!こんなところで死んでたまるか!」

 

 あ、逃げた。

 でもちゃんと、パラソルとかを片付けて行くのは偉いです。よく訓練されていますね。

 

 「逃がすか!荒潮!追うわよ!」

 「この格好でぇ?」

 

 その恰好で鎮守府を走り回れば、憲兵さんに怒られるかもしれませんからやめるのをお薦めします。

 と言うか、あの二人は満潮さん達の水着を撮影してどうするのでしょう?

 

 「先生に言っとくから安心しなさい。出回ることはないと思うわ」

 

 神風さんは余裕そうですね。

 満潮さんみたいに激怒するのかと思いましたが、意外と冷静……。

 

 「あいつら、後でなますにしてやる。特に角ちゃんは念入りに」

 

 ではありませんでした。

 メチャクチャ怒ってます。

 もう、あの二人には二度と会えないかもしれませんね。

 そんな一幕のあと、怒れる三人をなだめて浴場に着いた私が服を脱ぎだすと、お尻のあたりに妙な視線を感じました。

 まさか、長門さんがどこかに隠れて見てる!?

 

 「あれ?ないじゃない」

 

 なんだ、神風さんでしたか。

 いや待って。

 まさか、神風さんも長門さんみたいな異常性癖の持ち主なんですか?

 だから、私のお尻を……。

 

 「もしかして蒙古斑?改二になったら消えたわよね」

 

 満潮さんが言った通り、私の蒙古斑は成長痛と引き換えに消えました。

 でもなぜ、神風さんが私の蒙古斑を気にするんですか?と言うか、なぜ知ってるんです!?

 

 「神風さんってぇ、朝潮ちゃんとお風呂に入ったことあったっけぇ?なんで蒙古斑の事を知ってるのぉ」

 「いや、ないけど噂で聞いた」

 「それってまさか、お尻に痣がある駆逐艦の霊の噂?」

 「そうそう、噂が出回りだした時期を考えたら朝潮しかいなくてさ。蒙古斑は予想でしかなかったけど、当たってたみたいね」

 

 なぜそのような噂が……。

 しかもその話では、私は幽霊にされちゃってるじゃないですか。

 

 「じぃ~~~」

 

 お湯に浸かってもまだ見てきます。

 じぃ~~~って言ってますし。

 まだ何かあるんですか?

 今は体にコンプレックスはありませんが、ジロジロ見られるのはあまりいい気がしません。

 

 「改二になっても、胸が大きくなるわけじゃないのね。満潮と良い勝負じゃない」

 「ほっといてください。確かに今はどっこいですが、私はB程度には育つと大湊のオッパイ星人からお墨付きを頂いてますから気にしません」

 「おいこら。アンタ、お風呂から上がったら覚えときなさいよ」

 

 おっと、私の負け惜しみが、大湊提督に死刑宣告をされた満潮さんの逆鱗に触れてしまったみたい……って、うおぉ!?

 怒れる満潮さんから目をそらしたら、神風さんの見事な双丘が目の前に!

 巨乳と言うほどではありませんが、手のひらから確実にはみ出す程度の大きさがあり、水滴が滴り落ちる張りのある見事な二つの小山は、神風さんの幼いながらもメリハリの利いた体に違和感なく収まっています。

 大湊提督がおっしゃってた通り、Cはありますね。

 水着姿の時でさえ大して目立ってなかったのに、実際はこのボリューム。着痩せするにも程があるでしょ……。

 

 「大丈夫よ朝潮ちゃん。司令官はロリコンだから」

 

 だから、なんですか荒潮さん!

 司令官だって、無いよりは有る方が好みかも知れないじゃないですか!

 横須賀には潮さんって言う化けロリ巨乳駆逐艦だって居るんですよ!?

 

 「先生は並乳が好みよ。昔、聞いた覚えがあるわ」

 

 私は並と言えるほどないのですが?

 と言うか、並乳って具体的にどれくらいの大きさですか?

 Bですか?それともCですか?

 Cだったらそれをください!神風さんのそのオッパイを私にください!

 

 「ありきたりだけど、男に揉まれると大きくなるらしいから先生に揉んで貰えば?」

 

 なんですと?

 では、体を綺麗にしたらさっそくお願いしてみましょう。司令官好みの大きさになるまで揉んでもらいます!

 

 「やめて神風さん。この子、本当に行きそうだから」

 

 ええ、行きますとも。

 お風呂から上がったら執務室へ突撃します!

 

 「やめときなさい朝潮ちゃん。司令官が憲兵さんに捕まってもいいのぉ?」

 

 司令官は憲兵さんに捕まるような事はしません!だけど、もし憲兵さんが邪魔をするようなら……。

 

 「私と司令官の邪魔をするなら、私が憲兵さんを排除します!」

 「やっぱ、この子からかうの面白いわ」

 

 何をケラケラ笑ってるんですか。

 私は真剣です!真剣に、司令官に胸を揉んでほしいんです!

 

 「暴走しちゃってるじゃない!どうすんのよコレ!」

 

 この人たちと話してる時間が惜しいです。一刻も早く、司令官の元へ向かわなければ!

 

 「よし!突撃する!」

 「すんな!神風さんも止めてよ!」

 「しょうがないなぁ……」

 

 早く着替えなければ!

 下着が少し子供っぽすぎる気がしますが、ロリコンである司令官なら気にしない。

 いえむしろ、好みである可能性がたかぁぅい!?

 何!?誰が首を……。

 着替え中に首を絞めるなんて卑怯よ!

 

 「えい」

 

 首のあたりで、キュッと音が鳴ったような気がします。

 背中には、なにか柔らかい感触もありますし……。

 

 「大丈夫?コレ。白目剥いてるわよ?」

 

 大丈夫じゃないです。意識が遠ざかっていきます……。

 

 「暴走して不祥事起こすよりいいでしょ?って言うか、暴走の仕方が長門に似てない?やっぱり姉妹なんじゃないの?」

 

 やめてください、アレと姉妹だなんて死んでもご免です。

 

 「窮奇とも似てる気がするわぁ。朝潮ちゃんも、将来ああなっちゃうのかしらぁ……」

 

 あの人のは完全に片思いです。

 私と司令官は相思相愛だから違います。

 年の差があるから、皆さん止めるんですか?

 たしかに司令官と私は倍以上歳が違いますが、それは些細な問題です!

 よく言うじゃないですか、愛があれば年の差なんてって!

 それか、戦時特例的なものでどうにかなりませんか?

 なりませんか、そうですか……。

 では、あと三年半我慢します。三年半後には、私も16歳なので合法的に司令官と結婚できます!

 その新たな決意を胸に、私はかすかに残っていた意識を手放しました。

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