艦隊これくしょん ~愛を込めて、花束を~   作:哀餓え男

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第五十五話 貴様に霞はもったいない

 

 

 

 

 私には姉妹艦がいないのでわかりませんが、初対面の姉妹艦に、いきなり「アンタが朝潮?休暇でもないのに、そんな格好で遊びまわるなんていいご身分ね」と、嫌味を言われたあの子はどんな気持ちなのでしょうか。

 キョトンとして首を傾げていますので、意味がわかっていないのかもしれませんね。

 ちなみに私こと大淀は、呉鎮守府庁舎に到着した朝潮ちゃんを観察しに……じゃない。横須賀提督御一行を出迎えに来たのです。

 そう、出迎えです。

 妹と瓜二つな朝潮ちゃんをこの目で実際に見てみたかった。なんてことは、けっしてありません。

 

 「大淀さんは、いったい誰に説明しているんですか?」

 「少なくとも、『九峰(ここみね)中将』にではありません」

 

 隣にいるので仕方なく、本当に仕方なく紹介しますが、眼鏡をかけた優男と言う言葉が服を着て歩いてるんじゃ?と、思わせる風貌をした彼は、ここ呉鎮守府の司令長官であらせられる九峰中将です。

 変換が面倒くさいので、必要がない限りは呉提督で通しますけどね。

 

 「変換とは?」

 「お気になさらず。それより、彼女を止めた方が良いのではないですか?」

 

 朝潮ちゃんと同じ朝潮型改二の制服に身を包んだ、オレンジに近い黄色の瞳を有して、灰色の髪を頭の右側でサイドテールに結った朝潮型十番艦の霞ちゃんは、今にも噛みつきそうなほど朝潮ちゃんを睨んでいます。

 妹に聞いた話ですと、甘えん坊でたまにお姉ちゃんではなくママと呼び間違える、讃えたくなるほど可愛い子のはずなんですが……。

 

 「朝潮は遊んでいた訳ではない。私の護衛として同行していただけだ」

 

 いや、庇ったのはわかりますが、どう頑張っても護衛は無理がありますよね?

 暮石中将は士官服姿ですが、朝潮ちゃんと神風さんは私服じゃないですか。

 だいたい、あなたに護衛なんて必要ないでしょう?

 それにほら、当の朝潮ちゃんが「思いっきり遊んでましたよ?色んな所に連れて行ってもらいましたし、美味しい物もいっぱい食べさせていただきました」とか考えてそうな顔してるじゃないですか。

 

 「陸上で、しかも艤装も背負ってない艦娘に護衛が務まるの?それとも、横須賀の提督さんはそんな役立たずに護衛されなきゃいけないほど弱いのかしら?」

 「朝潮は私の心のボディーガードだよ。霞も一緒にどうだ?」

 「冗談やめて。アンタのお守りなんてしてらんないったら」

 

 なぁにが心のボディーガードですか。

 歯が浮きそうですし背中も痒いです。お願いですから5~6回死んでください。

 は、置いといて。

 あの強面の暮石中将を恐れず、アンタ呼ばわりまでする霞ちゃんの気性は相当荒いですね。

 隣の呉提督も「相変わらず生意気な……」などと言いながら呆れています。

 

 「ふむ、フラれてしまった。後で朝潮に慰めてもらわねば」

 「私なら今からでもかまいません!さあ、頭を下げてください。よしよししてあげます!」

 「相変わらずバカな事言ってるわね。そんなんで、横須賀は大丈夫なの?」

 

 バカなことを言ってるのは同意しますが、さすがに不敬が過ぎます。

 その人って、一応は中将ですからね?

 上から数えた方が早いくらい偉いんです。

 そのくらいにしておかないと、「私の事はいくらバカにしても構いませんが、司令官を侮辱されるのは我慢なりません」と、考えてそうな朝潮ちゃんに噛みつかれますよ。

 ついでに、その横にいる神風さんにも……って、なぜか私を睨んでません?私のことは睨まなくて良いですから、霞ちゃんを睨んでください。

 

 「問題ない。優秀な提督補佐がいるから、私は暇なくらいだ」

 「うちと同じくらいのクズっぷりね。いや、うちより酷いかしら」

 

 ついにはクズ呼ばわりですか。

 いえ、同意はしますよ?

 その人が人間のクズなのは間違いないです。ええ、本当にとんでもないクズですよ。

 数ヶ月前の一件で体を重ねてからと言うもの、彼はことあるごとに責任を取るだなんてほざくんです。

 死なせた婚約者の姉である私にですよ?

 そりゃあ、私も女の端くれですからほんの少しだけ気持ちが揺らぎました。

 でも断りました!

 思い付く限りの罵詈雑言を浴びせかけてフってやりましたよ!さらに、自分をフった女を抱くという追撃までしてやりました。

 とまあ、私のことは取り敢えず置いといて、呉提督が動きましたから趨勢を見守るとしましょう。

 

 「その辺にしておきなさい霞。横須賀の提督に対して失礼すぎるだろう」

 

 止めるのが遅い。

 とは言いません。

 あの人のことですから、駆逐艦に罵られるのはご褒美だ。とも言いかねませんから、下手に止めると文句を言われますもの。

 ですが、もう少し遅かったら、朝潮ちゃんが霞ちゃんに飛びかかっていたかもしれません。

 

 「お久しぶりです暮石提督。今回は僕の我儘を聞いていただき、まことに感謝しています」

 「貴様の我儘は今に始まった事ではないだろう。3年前は、その我儘のおかげで横須賀が壊滅しかけたのだぞ?」

 

 それだけではありません。

 彼の致命的なミス……いえ、ミスと呼ぶのもおこがましいほどの大失態のせいで、私と彼は大切な人を亡くしました。

 そんな大失態を犯したら、普通は提督を続けるなど不可能なのですが……。

 呉提督の場合は、色々と特殊な事情があるんですよねぇ。

 

 「僕の我儘?ご冗談を。横須賀が陥落しかけたのは、単にあなたの采配ミスでしょう」

 「ほう……?」

 

 呉提督の増長しまくった一言で、場が凍りつきました。

 朝潮ちゃんと神風さんは勿論、暮石中将に食ってかかっていた霞ちゃんでさえ冷や汗を流して、二人を見上げています。

 このままでは暮石中将が呉提督を殺っちゃいそうなので、私が止めるとしましょう。

 

 「両提督。ここでは何ですので、とりあえず中へ入りませんか?元帥閣下もお待ちですし」

 「……閣下がお待ちなのなら仕方ありませんね。霞、そちらの駆逐艦二人を部屋に案内しなさい」

 「クズ司令官に言われるまでもないわ。ほらこっちよ。ついて来て」

 

 クズではなく、ドクズ司令官と呼んでも良いですよ。私が許可します。

 しますから、早く神風さんを連れていってください。

 暮石中将が呉提督を睨んでいた時以外、ずぅ~っと私を睨んでるんです。

 きっと気づいてるんですよ。

 私と暮石中将が肉体関係にあるのを、神風さんは気づいてるから睨んでるんです。

 

 「……何してるの朝潮。行くわよ」

 「あ、待ってください神風さん!では司令官、私はこれで!」

 「ああ、迷子にならないようにな」

 「はい!」

 

 助かった……かな?

 すれ違いざまに紙切れを渡されましたが、それ以外は何もせずに霞ちゃんについて行きました。

 それでは、私たちも会議室に移動するとしましょう。

 ちなみにここ、呉鎮守府は、外観こそ横須賀鎮守府庁舎と同じ……と言うより、横須賀鎮守府が呉鎮守府を模して造られたので似ています。

 ですが、横須賀鎮守府が司令部施設や司令長官執務室等の、戦略や戦術に関わる施設と艦娘寮を繋いで、上空から見ると『(こんな)』形をしているのに対し、呉鎮守府は二つが完全にわかれています。

 上空から見ると『(こんな)』形ですね。

 

 「説明ご苦労」

 「暮石中将に説明したのではありません。それより、今日は閣下もいらっしゃいますので、腰の物を抜くようなことは……」

 「せんよ。私よりも、君の方が心配だが?」

 「あなたで憂さを晴らしますので、ご心配なく」

 

 まったく、この人は……。

 私よりもよほど怒っているはずなのに、いつも私の心配をしてくれる。

 私はあなたの敵なんですよ?

 存在するだけであなたを苦しめる、悪魔のような女なんです。

 そんな私を気にしてくれるあなたの……。

 

 「そういうところが、大嫌いです」

 「知っているよ。それより、着いたようだぞ」

 

 そのようですね。

 呉提督が扉を開くなり敬礼した先には、元帥閣下を始めとした残りの三提督もいるはずです。

 

 「おお!やっとこられたか暮石中将!待ちわびましたぞ!」

 

 私たちが入室して、暮石中将が席につくなり声をかけて来たのは、佐世保鎮守府の司令長官。

 勇次(いさつぐ)大将こと、『イサジ提督』でした。

 彼は筋骨隆々とした体型の、一見するとホモのような人ですがシスコンです。顔立ちはまあ、通称から察してください。

 

 「お久しぶりです。相変わらず、良い体をしていますね。かなり鍛えてらっしゃる」

 「敬語はやめてくだされ!何の間違いか俺の方が先に昇進してしまいましたが、提督としても一軍人としても、貴殿の方が遥かに格上なのですから!」

 

 声がデカイ。

 鼓膜が破れそうなのでボリュームを落としてください。とは、口が裂けても言えません。

 なんせ本人は納得していないようですが、彼は大将様ですから。

 

 「勇次大将。そろそろ、僕にも挨拶させてくれませんか?」

 

 次いで名乗りを上げて挨拶を始めたのは、大湊警備府の黒馬(くろま)大将です。

 パッと見は病弱そうなオッパイ星人ですが、これでも元帥閣下自らがスカウトした逸材だそうです。

 あと、私が掴んだ情報によりますと、彼はその手の女性たちから『黒マグロ』と呼ばれているそうです。

 あれだけ色白のクセに一部分だけ黒くて、しかもマグロ呼ばわりされたら普通は自殺ものでしょう。

 とは言えません。

 だって、彼も大将様ですから。

 

 「やっと私の番ですか。両大将は話が長いです」

 「久しぶりだな、長倉少将。三年前の礼も満足にできずじまいで、すまないと思っている」

 「滅相もない!頭を上げてください!あなたが私に……いえ!舞鶴にしてくれたことに比べたら、大したことはしていません!むしろ、間に合わなかったことを謝罪させてください!」

 

 最後は舞鶴提督の長倉 良子(ながくらりょうこ)少将。

 彼女は国防海軍初である元艦娘の提督であり、妖精とコンタクトが取れない提督の一人でもあります。

 さらに彼女は、先の二人以上に暮石中将に心酔している提督でもあります。

 と言うのも、かつて舞鶴鎮守府が深海棲艦の艦隊に襲撃された折、当時は艦娘だった彼女が発した救援要請を聞いて真っ先に救援を送って窮地を救ったのが、暮石中将なのです。

 それだけに留まらず、暮石中将は彼女が提督になるのを後押ししたり、舞鶴が復興するまでの間物資の融通や艦娘の派遣をしたり、さらには奇兵隊を駐留させるなどして便宜を図ったそうです。女性だからですかね?

 

 「それじゃあ、全員集まったようだから、会議を始めようか」

 

 話が一段落ついたと判断した元帥閣下の一言で、和んでいた会議室の空気が張り詰めました。

 そう、これが本来の目的。

 ハッキリ言って、明日のD-1など余興でしかありません。

 今日この場で、大本営の老害どもに邪魔されないように元帥閣下の息のかかった提督のみで集まって、各鎮守府の戦果や戦況の擦り合わせをし、後の方針を決定するのがD-1本来の目的なのです。

 

 「まずは九峰君。()()の方は、引き続き任せるよ?」

 「はい!お任せください!」

 「黒馬君と長倉君も良いね?協力して、()()を維持してくれ」

 「了解しました」

 「同じく了解……。と言っても、うちは舞鶴の艦娘に衣食住を提供するだけですが」

 

 計画も今のところ順調ですね。

 強いて言うなら、呉提督に任せている件が不安ではありますが……。

 

 「小十郎君。タウイタウイにいる子の件はどうなっている?」

 「相変わらず、異動命令を無視し続けています」

 「それは困ったね。君はどうする気なんだい?」

 「幸いなことに、神風が彼女と面識があります。なので、沖田少将への異動命令を持たせて、近いうちに行かせます」

 「わかった。君に全て任せるよ。勇次君は、できる限り小十郎君を支援してあげてくれ」

 「言われずともこの勇次、喜んで暮石中将にお力添えいたしましょう!」

 

 喜んで……ですか。

 黒馬、長倉両提督も「うちもできる限り支援します!」と言っているのを見る限り、暮石中将はお三方から好かれているようですね。

 ただ一人、九峰中将を除いて。

 

 「計画のために奔走するのは結構ですが、気を取られ過ぎて鎮守府を落とされないでくださいよ?」

 「ちょっとまて九峰中将。それはどういう意味だ?」

 「どうもこうも。彼が三年前に鎮守府を陥落の危機に陥れた件は、勇次大将もご存知のはずでしょう?」

 

 ええ、勇次大将が呆気に取られているのを見るに知っているでしょうね。

 ただし、それが暮石中将によってではなく、無駄に対抗心を燃やしているあなたによって引き起こされた事態として。です。

 

 「九峰中将は、今のセリフを本気で言ったのかい?」

 「本気も何も、事実でしょう?黒馬大将」

 

 彼の馬鹿さ加減が酷すぎて、会議室に妙な沈黙が流れ始めました。

 もう駄目ですよこのドクズ。

 失態を失態と認識できていないばかりか、責任転嫁までしています。

 このような人が元帥閣下はお嫌いなはずなのに、どうして古巣である呉を任せているのですか?

 

 「聞き捨てなりません。暮石中将があの一件で何を失ったか、九峰中将はご存知ないのですか?」

 「秘書艦でしょう?長倉少将。だけど、彼の秘書艦は駆逐艦だったと聞いています。戦艦や空母ならともかく、替えがいくらでもいる駆逐艦だったんだからべつに良いじゃないですか」

 「替えがいくらでもいる?あなたも提督なら、秘書艦がどれだけ大切な存在かくらい……!」

 

 わかっているでしょう。

 と、長倉少将は続けようとしたのでしょう。

 ですが、それは叶いませんでした。

 部屋に満ちた……いえ、爆発したと錯覚するほどの何かが、暮石中将を中心として溢れ出たからです。

 

 「く、暮石中将。どうして貴殿は、あの時こんな身の程を知らない無能を庇ったのですか?貴殿が今も中将に甘んじているのは……」

 「勇次大将。それ以上はやめていただきたい」

 「しかし!こやつは貴殿が何をしたかも知らず、貴殿を貶めるようなことを平気で口走るクズですぞ!」

 

 勇次大将が先に激昂したからか、暮石中将から発せられていたと思われる不可視の圧力が急激に下がりました。

 で、くだんの九峰中将はと言いますと、冷や汗を拭いながら「何の話をしているんだ?」と言わんばかりに訝しんでいるだけです。

 

 「小十郎君。君が霞君との約束を守りたいと思っているのはわかるけど、彼のためにも言った方が良いんじゃないのかい?」

 「霞?霞とは、うちの霞のことですか?どうして閣下が、霞の名を……」

 「僕はここの初代提督だし、海軍元帥だよ?艦娘の名前くらい覚えているさ。特に、霞君は僕ですらそばに置きたいと思った艦娘だからね」

 「な……!正気ですか!?幼女趣味の暮石中将が欲しがるのなら理解できますが、閣下まで何故!?アレは、生意気で口うるさいだけの駆逐艦ですよ!?」

 

 この人って、喧嘩を売っている自覚がないのでしょうか。それとも、素でこんななのですか?

 黒馬大将が止めてはくれましたが、暮石中将を堂々と幼女趣味呼ばわりしたことで、勇次大将と長倉少将が殴りかかろうと席を立っちゃいましたよ?

 

 「九峰中将。三年前、横須賀への救援として呉を発った艦隊に、霞がいたのを覚えているか?」

 「ええ、霞が僕の指示など聞かず、空いていた駆逐艦を率いて勝手に出撃しましたから。ですが、結局は間に合わなかったと聞いていますが?」

 「ああ、間に合わなかった。霞たちが到着したのは敵艦隊が撤退し、事後処理が始まった頃だった。霞も、間に合わないのはわかっていたんだろうな。到着するなり艤装を投げ捨てて、私のところに来たよ」

 

 若干狼狽気味の九峰中将とは対照的に、暮石中将は不気味なほど冷静ですね。

 感情のこもっていない声で、淡々と話しています。

 

 「霞は私のところに来るなり、何をしたと思う?」

 「さあ?大方、そちらの哨戒プランに文句でもつけたんじゃ……」

 「土下座だ」

 「は?土下座……ですか?あの霞が?」

 「そうだ。そしてこう言った。敵艦隊を見逃したのは私の責任です。私が哨戒の手を抜いたから、艦隊を素通りさせてしまった。とな」

 「そ、それは違う!霞はあの日、僕が出した待機命令を無視して霰と共に哨戒に出ていたんです!敵艦隊を素通りさせてしまったのは……!」

 

 僕の采配ミスだ。ですか?

 なんだ、自覚はあったんじゃないですか。

 にもかかわらず、暮石中将に責任転嫁していたのは同じ中将故の対抗心故に。もしくは、誰かに()()()()()()()()()()と吹き込まれたから。でしょうね。

 

 「小十郎君は霞君の想いを汲んで、その時の功績を無しにする代わりに君の地位を守ったんだよ。それがなければ過去の功績と合わせて、彼は大将に昇進していた」

 「自分の昇進を蹴ってまで?なぜそこまで……」

 「なぜ?言っただろう?彼は霞君の想いを汲んで。と」

 

 理解できていないようですね。

 霞ちゃんはおそらく、九峰中将なら責任を取らされなければ挽回できると信じて、責任を負おうとしたのでしょう。

 ですが、あれは駆逐艦一人で負える責任ではありません。

 当時の彼女は10歳に満たなかったはずですから、そこまでは頭が回らなかったんでしょう。

 だから、彼が動いた。

 彼は自分の昇進を蹴ってまで、九峰中将を助けたんです。

 当時のことは良く憶えています。

 なにせ、彼を嫌う大本営の老害たちでさえ、彼の味方をして九峰中将を退陣させようとするほど責任の所在が明確だったのですから。

 もっとも彼らは、暮石中将が九峰中将を、その件を盾に傀儡にでもするつもりで擁護しているんだろう。と、邪推しただけかもしれませんが。

 

 「元帥殿。一つ、我儘を言っても構いませんか?」

 「一つと言わず、二つ三つ言っても良いよ」

 「なら遠慮なく。九峰中将との決闘を、容認していただきたい」

 「うん、良いよ」

 

 いや、良くないですよ。

 個人的には諸手を挙げて賛成しますが、どう考えても九峰中将に勝ち目が皆無ですから、見せ物としては最低です。

 そこの異常者が、軍関係者に何と呼ばれているのかご存知ないのですか?

 

 「じょ、冗談はやめていただきたい!僕と暮石中将が決闘?悪い冗談だ!悪夢と言っても良い!彼は、()()()()()()()()ですよ!?」

 

 そう。彼は、およそ人では無し得られるはずのない戦果を生身で打ち立てた人外。その一人。

 一人は現タウイタウイ泊地司令である、『不沈漢(ふちんかん)』こと沖田 重蔵。

 二人目は開戦初期に、レストアした旧軍の航空機のみで編成され、たった12機で奇兵隊並みの戦果をあげた国防空軍の第901航空隊。

 彼のペットネームにあやかってゴースト隊と呼ばれていましたか。の、隊長()()()『真昼の幽霊』こと矧上 金将(しんじょうかねまさ)

 そして彼は、上記の二人と並び称され、軍からは『周防(すおう)の狂人』と、民間人からは『嗤う黒鬼』と呼ばれて恐れられた化け物。

 艦娘が登場したことで、英雄になり損なった英雄の一人です。

 そんな彼と、デスクワークくらいしかしたことのない九峰中将では、役者が違いすぎます。

 

 「勘違いするな。何も、私と貴様が直接やり合う訳ではない」

 「ではどうやって……。まさか、明日のD-1で?」

 「そうだ。決勝前に行われるエキシビションマッチの勝敗で、白黒つけようではないか」

 「それならまあ、やぶさかではありません。それなら互角どころか、対戦する艦娘の性能を鑑みれば僕の方が有利ですから」

 「ならば決定だ。ついでに、賭けもしようではないか」

 「賭け……ですか?」

 「ああ。神風が勝った場合、霞をいただく。霞には霰が必要だから、霰も貰おうか」

 「なら、雪風が勝った場合は長門と陸奥をいただいても?」

 「好きにしろ。長門と陸奥だけなどと言わず、駆逐艦以外の好きな艦娘を好きなだけ連れていけ」

 

 正気じゃない。

 が、この場にいるほとんどの人が抱く感想でしょう。

 許可した元帥閣下すら、「相変わらず、頭がおかしいね」とぼやいているほどです。

 なにせ雪風は、どんな過酷な戦場からも生還し、戦艦だろうと空母だろうと無傷で沈める、常識では計り得ない規格外の艦娘です。

 ですが、暮石中将は神風さんが勝つと確信しているようです。

 そして締め括るように……。

 

 「貴様に霞はもったいない」

 

 と、九峰中将に言い放ちました。

 

 

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