艦隊これくしょん ~愛を込めて、花束を~   作:哀餓え男

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私が書く提督は基本的に変た……コンプレックス持ちです(*´ー`*)


第六十四話 僕のママになってくれ!

 

 

 

 突然だけど、朝潮型駆逐艦とは。

 正化21年末に実戦配備された量産型駆逐艦で、睦月型を皮切りに次々と建造された駆逐艦の中で最も高い性能を叩き出し、3年前に陽炎型が建造されるまでの長い間、最新鋭として扱われた艦型よ。

 他の艦型と建造時期はほぼ同じなのにね。

 朝潮型のほとんどが横須賀所属だったのは、姉さんたちにとって幸いだったわね。

 横須賀の提督がお姉ちゃんにベタ惚れだったのもあるけど、陽炎型が配備されようと姉さんたちの扱いが変わることはなかったそうだし。

 

 「私も、配属された当初は休む暇がなかったっけ」

 

 そんな横須賀と違って、陽炎型が大量に配備された呉は酷かった。

 司令官は性能重視の火力主義で、それまで前線を支えていた駆逐艦たちは陽炎型に役目を奪われるように近海任務ばかりになったわ。

 べつに陽炎型が悪いわけじゃないんだけど、少なくとも私のプライドはズタズタにされた。

 だって、今でも十八駆は呉のトップ駆逐隊と言われているものの、実際は名ばかりで出撃するのは陽炎と不知火だけなんだもの。

 

 「今思うと、単に反抗したいだけだったのかな」

 

 私は司令官や上位艦種にも、遠慮なく文句を言ってきた。

 そのせいで、前線に出る事もないのに作戦には口を出してくる生意気な駆逐艦と言われて、厄介者扱いされてるわ。

 

 「それでも、私は腐らずにやってきた」

 

 近海の哨戒任務だって最前線にいるつもりでやったし、訓練で手を抜いたこともない。 

 どうしようもなく辛い時は、霰姉さんが甘えさせてくれるから精神的にもどうにか堪えられた。

 もっとも、泣いてる私を膝枕して、寝付くまで頭を撫でてくれてた霰姉さんは寝不足になってただろうけど……。

 

 「それはご愁傷様。運がなかったわね」

 

 そんな愚痴を、私の秘密の場所に私より先に来てた神風さんに、ついこぼしちゃった。

 って言うか、どうしてこの場所を知ってるの?

 呉鎮守府名物である記念艦 大和にほど近いこの路地裏は、他の艦娘が知らない私の取って置きの場所なのに。

 それに……。

 

 「顎を包帯なんかで吊ってどうしたの?虫歯?」

 「んなわけないでしょ。朝潮の天才っぷりに驚きすぎて外れちゃったのよ」

 

 いや、そっちの方がないのでは?

 たしかに、朝潮の天才っぷりには私も驚かされたけど、顎が外れるほど驚きはしなかったわよ?

 

 「いやぁ、まさか紅備えを覚えるばかりか、その場で改良までしちゃうなんてねぇ。自信失くしちゃいそう」

 「ちょっと待って。今、覚えたって言った?」

 「あら、あなたは知らなかったの?あの子って一度か二度見ただけで、大抵の技術は覚えちゃうの。しかも、即再現できるってオマケつき」

 「んな……!」

 

 驚きすぎて開いた口が塞がらない。

 それどころか、危うく顎が外れるところだったわ。

 そう言えばアイツ、見様見真似とか試しにとか言ってたっけ。

 それで実際にやっちゃうなんて、私が思ってた以上の天才だったわ。

 

 「あ、この事は本人に言っちゃダメよ?あの子、自分が天才だって自覚がないんだから」

 「アレだけのことかましといて!?嘘でしょ!?」

 「それがマジなのよ。しかも自分のことを能無しって思い込んでるっぽくてさ。もしかしたら、自分が出来ることは他の人も出来るって考えてるかもしれないわ」

 「うわぁ……。バカなのか天才なのかわかんない子ね」

 「でしょ?だからお父……じゃない。先生もちょっと使いあぐねてるみたいでさ。今日の試合で、覚えた手札を組み合わせるなんてこともサラッとやっちゃうって確認できたから、今の時点でどのくらい強いのか余計に想像できなくなっちゃったわ」

 

 そりゃあそうでしょう。

 才能がどうこうじゃなくて、底がわからないくらい強い朝潮と艦隊が組める艦娘なんて限られるもの。

 それこそネームド艦娘かそれと同等。

 例えば神風さんや、八駆の姉さんたちくらいじゃなきゃ朝潮の邪魔になるだけだわ。

 

 「あ、先生で思い出した。あなた、横須賀に異動になるんだってね」

 「それ、何の話?」

 「あれ?聞いてないの?先生と呉提督が、私と雪風の試合で賭けをしてたらしくってさ。私が勝ったら、あなたと霰を横須賀が貰うことになってたそうよ」

 

 神風さんの言葉を頭が理解した途端、足元が崩れた気がした。

 私と霰姉さんが横須賀に異動?

 いくら賭けをしたって言っても、そんなことで異動が認められるとは思えない。

 思えないけど、今は海軍元帥が来てる。

 横須賀の提督なら、元帥を言いくるめて賭けの結果次第で異動を実現するくらい平気でやるわ。

 

 「ち、ちなみに、神風さんが負けた場合はどうなってたの?」

 「駆逐艦以外の艦種なら、欲しい奴を好きなだけ連れていけ。って、言ったそうよ」

 「それ……正気?」

 「正気よ。そんなとち狂ったことを平気で言えるのが、うちの提督様なのよ。でも良いじゃない。そこまでして欲してもらえるなんて、艦娘冥利に尽きるでしょ?」

 

 確かに、司令官から冷遇されるばかりか疎まれてた私からすれば、諸手を挙げて喜ぶべきことだわ。

 でも、喜べない。

 そこまで私を必要としてくれてる人がいるのに、何故か悲しくなった。

 司令官に要らないって言われた気がして、どうしようもなく泣きたくなった。

 

 「あなた、呉提督のことが好きなの?」

 「違っ……!」

 

 いいや、違わない。

 最初は金剛さんに手放しで誉められてデレデレする情けない男くらいにしか思ってなかったのに、いつの頃からかあの人の姿を探すようになってた。

 上位艦種の人たちに散々おこがましいって言われたけど、私が支えなきゃって思うようになってた。

 

 「私、おかしいのかな」

 「……おかしくないわよ。女だったら、この人!って決めた人に、無償で奉仕したくなっちゃうもん」

 「その台詞、フェミニストに聞かれたら袋叩きにされるわよ?」

 「良いじゃないの。フェミニストなんて輩が存在できるのは、国にも人にも余裕がある証拠。私たちの頑張りが報われてる証拠よ」

 

 などと、人差し指を立てて誇らしげに言ってるけどポジティブすぎない?

 この人、ネットとかで暴れまわってるフェミニストを見たことないのかしら……って、なんか表が騒がしいような……。

 

 「ねえ霞。表が騒がしくない?」

 「そう……みたいね。今は大会の打ち上げで、他の艦娘は食堂にいるはずなのに……」

 

 これは声援?

 内容的に、うちの司令官を艦娘たちが応援してるように聴こえるわね。

 いったい、何が起こって……クソ、人垣ができてるせいで見えない。

 あ、最後尾にいるのは……。

 

 「陽炎、これは何事?」

 「あ、霞!みんな!霞が来たから通してあげて!」

 「え?ちょ、ちょっと……!」

 

 陽炎に引っ張られて人垣を抜けたら、信じられない光景が広がっていた。

 どうして司令官が木刀を杖代わりについて、肩で息をしてるの?顔も痣だらけで鼻血まで出てるし、服もヨレヨレじゃない。

 そんな司令官と向かい合ってるのは、鞘に納めたままの日本刀を肩がけにして司令官を見下ろしている横須賀提督。

 これは喧嘩?

 いや、それなら、各提督や元帥までもが見ているだけなのが説明できない。

 まさかこれ……。

 

 「まだ、諦めんのか?」

 「諦めません!この決闘に勝って、賭けをなかったことにしてもらうまでは絶対に諦めない!」

 

 やっぱり決闘だった。

 でもどうして?

 賭けをなかったことにしてもらうとか言ってるけど、どうしてそんな事を?

 何もしなければ疎ましい私を追い払えるのに、どうして……。

 

 「やぁぁぁぁぁ!」

 「気合いと声だけで体捌きが出鱈目だな。貴様、本当に軍人か?」

 

 司令官の上段を横に軽く躱した横須賀提督は、鞘に納めたままの刀を司令官の喉に打ち付けた。

 あれ、もしかしなくても息ができないんじゃ……。

 あ、金剛さんが……。

 

 「もう我慢できまセン!Hey!My sisters!テートクを助け……」

 「外野は黙っていろ」

 

 姉妹艦を率いて乱入しようとした金剛さんが、横須賀提督が発した一言で、何かに握られてるような格好で動きを止めた。

 いや、金剛さんだけじゃないわね。

 乱入しようとした人は一人残らず。中には、気絶してる人までいるわ。

 これ、横須賀提督がやったの?

 

 「さて、腹も減ってきたし、そろそろ終わらせようではないか」

 「お、終わらせない。僕はまだやれます!」

 「立てもしないくせに意気がるな。だいたい、貴様は霞を疎んじていたはずだろう?それなのに何故、賭けを反故にしてまで霞を手元に残す気になったんだ?」

 「それは……」

 

 そう、それが私も一番気になる。

 大人しくしてたら、私はいなくなってたのよ?

 そうすれば司令官の作戦に口出ししたり、服装を注意したりする口うるさいだけの私がいなくなってたのに、なんで痛い目に遭ってまで私を残そうとしているの?

 

 「僕は、霞が言った通りの男です。誉められればどこまでも付け上がるし、作戦に穴があるとわかっていても、金剛が大丈夫と言うのを鵜呑みにして実行してしまうくらい意志が薄弱です。そんな僕を叱る霞が、大嫌いでした」

 

 大嫌い……か。

 そうだろうとは思ってたけど、実際に言われるとショックが大きいわね。

 動悸が激しいし足も震える。

 自分が立っているのか倒れているのかもわからないくらい、視界が揺らいでる。

 

 「しっかりしなさい霞。あなたの司令官から、目を離しちゃダメです」

 「朝……潮?」

 「そうだよ霞ちゃん、ちゃんと…見てあげて。立ってられないなら、霰たちが支えてあげるから」

 「霰姉さんまで……」

 

 いや、二人だけじゃない。

 大潮姉さんたちも、みんなで私を支えてくれてる。

 視線を外さないことだけに注力すれば良いようにしてくれてる。

 だったら、私も踏ん張らなきゃ。

 姉さんたちが支えてくれてるのに、支えられてる私が真っ先に折れてたまるものか。

 

 「僕は霞から注意されるまでは、服装がだらしなかった。シャツが出ているのなんて当たり前だったし、寝癖もついたままでした。それを毎日注意されるのが、堪らなく嫌だった。放って置いて欲しかった」

 

 そう、昔はそうだった。

 でもいつの頃からか、身嗜みに気を使うようになってくれた。見た目だけは、提督らしくなった。

 

 「最初、僕は霞に注意されたくないから、身嗜みを気にするようになりました。でも今では、気にしなくても身嗜みを正せますし、身嗜みを気にしない者を見たらイライラするようにもなりました。ああそうそう、女性にもモテるようになりましたね」

 

 あ~……確かにそうね。

 その前は金剛さん以外見向きもしなかったのに、その頃からやたらとモテるようになったっけ。

 ん?と言うことは、金剛さんがそれすら邪魔してたのは、ライバルを増やさないためだったのかしら。

 

 「作戦についてだってそうです。あなたも知っての通り、僕が立てる作戦は性能頼りの力押し。深海棲艦と大差ありません。でも、それで成功するんだから、それで良いじゃないかと思っていました。だから、ダメ出しをしてくる霞が疎ましかった。いっそ……!いっそ、解体してやろうと考えたのも、一度や二度じゃありません」

 「なら、どうしてそうしなかった?」

 「まあ、慌てずに聞いてください。身嗜みの件と同じで、僕はダメ出しされるのが嫌だった。だから、そうされないように細心の注意を払って作戦を練るようになりました。もっとも、結局はいつも通りにしていたのですから、同じですけどね」

 

 そうね。

 司令官はちゃんと作戦を練ってる。

 でもその通りにしないのは、金剛さんに言いくるめられるから。何故か駆逐艦を使いたがらない彼女の意見を、自分の意見より尊重するからよ。

 きっと司令官は、金剛さんを一人の女性として愛してるんでしょうね。

 だから、逆らえない。

 彼女の機嫌を損ねたくないから、言われた通りにしてしまう。

 要は、惚れた弱味ってやつよ。

 

 「雪風が負けた時、最初はホッとしました。これで霞から解放される。もう口うるさく言われない。やっと邪魔者がいなくなる。そう思って、安心しました。でも、その安心はすぐに不安に変わりました。霞がいなくて大丈夫か?霞の目がなくなったら、また昔の僕に戻ってしまうんじゃないか?霞がいなくなったら、今以上に酷い作戦を実行してしまうんじゃないか……と」

 

 そんな事はない。

 司令官はちゃんとやっていける。

 金剛さんに振り回されたりしなければ、立派にやっていける。

 それこそ横須賀提督並み……いえ、ずっと優れた提督になれるわ。

 少なくとも私は、そう信じてる。

 

 「僕には霞が必要なんです!霞に叱ってもらわなければ僕はダメになる!その霞には霰が必要です!だから、二人を連れていかないでください!この通りです!」

 「安い土下座だ。貴様の頭など、あの二人の価値には程遠い」

 「そんな事はわかってる!でも、僕にはもう、これくらいしかできません!だからどうか……!」

 

 司令官が土下座してる。

 あのプライドが高い司令官が、他の鎮守府の提督たちもいる人前で無様に土下座してる。

 正直、目の前の光景が信じられないわ。

 でもなんでだろう、今の司令官を見てたら、無性に誉めてあげたくなった。

 どうしようもなく、愛おしくなった。

 

 「霞。お前はどうしたい?」

 「え?わた……し?」

 

 いつから気づいてたのかはわからないけど、横須賀提督が私に選択権を投げてきた。

 それにつられて、司令官も私に視線を向けたわ。

 こっちは言われて初めて気づいたって感じね。

 どうしてここに?って顔してるもの。

 いや、そんな事より……。

 

 「私は……」

 

 どうしたい?

 司令官に、私はもう必要ない。

 それは司令官が横須賀提督に訴えかけた言葉を聞いて、良くわかった。

 なのに私は、ここにいたいと思ってる。

 横須賀に行ったら、きっと存分に戦わせてもらえる。

 艦娘の本分を全うさせてもらえるってわかってるのに、行きたくない。

 ここに残ったら、逆に司令官をダメにしちゃうかもしれないのに、そばにいたいと思ってる。

 でも、言葉が出てこない。

 行きたくない。ここにいさせてって、言うことができない。

 

 「霞、僕は今まで霞に……いや、霞だけじゃない。他の艦娘たちにも酷いことをしてきた」

 

 ええ、そうね。

 あなたは戦わせないと言う、艦娘にとって最も残酷な仕打ちをし続けてきた。

 あなたにそうされて艦娘を辞めた子だっているし、引きこもっちゃった人もいるわ。

 

 「謝って許して貰えるとは思っていない。だから、僕を導いて欲しい。僕が傷つけた子達に報いるためにも、僕はもっと提督らしくならなければいけない。そのために霞。僕の……」

 

 こんなに嬉しいことはない。

 涙腺と一緒に、感情まで爆発しそうなくらい嬉しいのは生まれて初めてだわ。

 このまま続きを言われたら、私は……。

 

 「僕のママになってくれ!」

 「は?」

 

 ん?今なんて?

 ママになってくれって聞こえた気がするけど、聞き間違いよね?

 

 「今、ママって言いませんでした?」

 「そ、そんなわけないじゃない朝潮。アンタの聞き間違いよ」

 「満潮の言う通りだよ。うちの変態とか他所の変態なら言っても不思議じゃないけど、呉提督に限ってそれは……」

 「でも大潮ちゃん。提督ってぇ、何かしらコンプレックスを抱えてる人ばかりだから、呉提督も知られてなかっただけでそうだったのかもよぉ?」

 

 こらこら姉さんたち?

 今、サラッっと自分とこの提督を変態呼ばわりしなかった?

 それに、三大変態と一緒くたにされた舞鶴提督が「私はコンプレックスなんて抱えてません!」って、誰ともなく抗議してるわよ?

 

 「駆逐艦に母性を求めるとは……。貴様、変態だったのか」

 

 駆逐艦を恋愛対象として見てるロリコンがほざくな。

 は、置いといて、今の言葉が癇に障ったのか、司令官が横須賀提督に向き直ったわ。

 まさか、今の状態で第二ラウンドを始める気じゃ……。

 

 「変態とは失敬な!女性に母性を求めて何が悪い!」

 「いや、その対象がだな?」

 「関係ありません!確かに霞は駆逐艦です。歳も今年でようやく13。ハッキリ言って駆逐艦です!ですが……!」

 

 そこは子供って言いなさいよ。

 いや、わかるのよ?

 駆逐艦くらいの子供をついつい駆逐艦って言っちゃうのは、海軍あるあるの一つだから理解はできるんだけど……。

 

 「霞は、甘やかされて育った僕にとって理想の母親そのものなんです!そりゃあ、金剛や浦風のように母性が服を着て歩いてるような女性に甘やかされるのは男冥利に尽きますよ?ええ、最高です。甘やかされればされるほど、童心に還ってしまいます。でも、それだけではダメだと気づかされました!僕には厳しくしてくれるママが要る!叱ってくれるママが要る!怒ってくれるママが要る!そう!霞ママが必要なんです!」

 

 そこまで一息で捲し立てて、司令官はそれまでに吐いた空気を取り戻すように息を荒げた。

 荒げたのは良いんだけど……。

 これ、どうするの?

 司令官の突然かつ予想外すぎるカミングアウトのせいで、場は騒然としてるわ。

 目立つとこだと、文字通り腹を抱えて爆笑してる神風さんと、「殴りすぎたか?」と言いながら冷や汗を流してる横須賀提督。

 現在進行系で司令官のママをしてるとバラされた金剛さんと浦風は、呉所属の艦娘に囲まれてやいやい言われてるわ。

 あとは、「僕、人を見る目がないのかなぁ。変態ばっかりじゃないか」と言ってる元帥に、「いや、閣下も変態です」と冷たく言い放ってるスケベスカートを履いた秘書艦っぽい人。

 さらに、「これで長倉少将がショタコンあたりなら完璧だな」とか言ってる佐世保提督と、「残念ながら、私は枯れ専です」なんて言ってる舞鶴提督くらいかしら。

 「あのオッパイを相手に赤ちゃんプレイだと!?」とか言ってる大湊提督は無視する。

 それに……。

 

 「で?返事はどうするの?霞ママ」

 「それはわかりきってるよ満潮。当然、NOだよね?霞。お姉ちゃんは認めませんよ」

 「あらぁ、いくら大潮ちゃんがお姉ちゃんでもぉ、妹の恋路を邪魔しちゃダメよぉ」

 「いやいや、ダメですよ荒潮さん。姉として、あんな変態に妹は任せられません」

 

 姉妹艦どもも好き勝手言ってくれてるわ。

 確かに普通に考えたら、30過ぎてマザコンを拗らせてる司令官は無しよ。

 ええ、無いわ。

 私が年頃の女で、かつ司令官を一人の男性として愛してたら一気に冷めてた。

 でも、私は司令官が言った通りまだ駆逐……もとい、子供。

 だから、大人の女性がマザコンをカミングアウトした司令官をどう思うかなんてわかんないし、まだ愛まで達してない恋だから冷めたりもしない。

 

 「もう一度言うよ霞。僕のママになってくれ!」

 

 この感情をどう表現したら良いんだろう。

 嬉しいのとは違う。

 喜んでるのとも違う。

 強いて言うなら慈しんでる。

 どうしようもなく、たまらなく司令官が愛おしい。私が育てなきゃって使命感に、心が支配されていく。

 そうよ。

 ()()()()私が育てなきゃ。ビシバシしごいて、私が立派な提督に育てなきゃ。

 そうと決めたら、答えなきゃダメよね。

 私の気持ちと決意を込めて、私は……。

 

 「ええ、良いわ。その代わりガンガン行くわよ。ついてらっしゃいな!」

 

 と、できるだけ胸を張って応えた。

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