艦隊これくしょん ~愛を込めて、花束を~   作:哀餓え男

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決闘編ラストです!

次話から編成編を開始しまーす( ・ω・)


第九十一話 幕間 満潮と提督 (二)

 

 

 

 

 神風さんと司令官の情事を目撃した日からどれくらい経ったっけ。

 来週の霞の誕生日に合わせて行くことになった呉鎮守府へのお使いを前に、予てよりの約束だった晩酌の付き合いをすることにした私は、鳳翔さんが料理の下拵えをしている光景をカウンターから見ながら司令官を待ってるんだけど……。

 

 「先に何か出しましょうか?ボーッとしてるだけなのも退屈でしょう?」

 

 気遣われるほど暇そうにしてたかしら。

 鳳翔さんの仕事を見てるだけで、結構暇つぶしにはなってるんだけど……。

 でもまあ、鳳翔さんがそう言うなら何か頼もうかな。

 今日はこれがあるから夕食は少なめにしたし、代金は司令官持ちだし。

 

 「じゃあ、何か貰おうかしら。今日のお勧めは?」

 「ふふふ♪今日は良い物が入ってますよ♪なんと松茸!しかも純国産です!それに椎茸や舞茸等々、今日はキノコ尽くしですよ♪」

 

 鳳翔さんは、ザルいっぱいに載ったキノコの数々を嬉しそうに私に見せつけてくれた。

 くれたんだけど……これは嫌がらせかな?

 せっかくあの時の光景を忘れてきてたのに、そんなキノコばっかり見せられたら思い出しちゃうじゃない。

 別に司令官のキノコを直接見たわけじゃないわよ?

 でも、大体の形は知ってるの。

 だから、キノコなんか見ちゃったら連想しちゃうわけよ。

 松茸なんてモロじゃない。

 男の人って、コレをスライスされたり焼かれたり茹でられたりしてる光景を見て平気なのかしら。

 しかも食べるんでしょ?

 共食いみたいな感じにならないの?

 

 「どうしたの満潮ちゃん?キノコ、嫌い?」

 

 これは……なんて答えるべきだろう。

 正直、松茸は食べてみたい。

 別に意味深じゃないわよ?

 松茸なんて高級食材は今まで食べた事なんてないし、テレビで見る限り美味しいらしいから食べてみたいだけ。実際、香りは凄く良いし。

 でも、「キノコ大好き!」って言ったら淫乱だと思われない?形がまんま男の人のキノコであるキノコを大好きなんて言ったら、どっかの重巡姉妹の三女みたいにビッチ認定されない?

 そういえば、色もこんな感じなのかしら。

 駆逐艦の間で出回ってるオータムクラウドって人が描いてる本は白黒だから、色までは知らないのよね。

 

 「満潮ちゃんは、松茸を食べてみたくてしょうがないみたいね」

 

 鳳翔さんが「ふふふ♪」と笑いながら、とんでもない事を言いだした。

 それは下の口でとかそういう意味?

 無理無理無理!だってその松茸、軽く12センチ以上あるじゃない!

 そんなに大きいの絶対に無理だから!

 

 「五分ほど待っててね。塩を振ってホイル焼きにするから」

 

 あ、そっちの松茸の話?

 紛らわしすぎるわよ。私はてっきり、あっちの松茸の事かと思っちゃった……。

 

 「お、ええ匂いがしちょるのぉ。松茸か?」

 

 来たわね松茸……じゃない!

 そっちから離れなさい私!まさか、私って欲求不満なのかしら……。

 

 「いらっしゃい提督。知り合いの業者さんが安く分けてくださったんですよ。ほら、こんなに♪」

 

 再びザルに載ったキノコを見せる鳳翔さん。もの凄く幸せそうな笑顔ですね。

 もしかして、キノコ大好きですか?

 

 「こりゃ凄いって……って、ホンマに凄いな!これ『つぼみ』じゃないか!」

 

 『つぼみ』って何?

 キノコの一種かしら。

 でも、司令官は鳳翔さんが手に持った松茸を見てそう言ってるわね。

 松茸イコールつぼみ?松茸にも種類があるのかしら。

 

 「凄いでしょう?しかも岡山産です♪今年は採れる時期が少しズレたらしいんです。11月にこんなに立派な物にお目にかかれるとは思いませんでした♪」 

 

 エロい!

 松茸を片手に頬を染めてウットリとした表情が、女の私から見ても凄くエロい!

 これで松茸にキスでもしようものならモザイクがいるわ。完全に18禁よ!

 

 「本当に立派じゃのぉ。俺にも見せてくれ」

 

 いつも見てるんじゃないの?

 それとも形が違うのかしら。

 あの本じゃあ全体像はわかっても細かい所まではわからなかったし……。

 ん?親指と人差し指をL字に広げて何かしてる。

 まるで、サイズでも測ってるみたいだわ。

 

 「勝った」

 

 何に!?

 え、ちょ……。何よその勝ち誇った顔。

 サイズ?サイズを比べたの?司令官が持ってる松茸って15センチは有るように見えるわよ!?

 それに勝ったって言うことは、司令官自家製の松茸はそれより大きいの!?

 

 「提督、満潮ちゃんの前でそれはちょっと……」

 

 やっぱりそうなの!?

 鳳翔さんの「もう、提督ったら……」みたいな反応で確信しちゃったじゃない!

 

 「大丈夫じゃろ。なあ満潮。何しちょるかわかるか?」

 

 聞くな!

 わかるわよ。わかっちゃったわよ!

 司令官がソレよりデカイバケモノを股間にぶら下げてただなんて知りたくなかった!

 何なのよ男って。そういう物を見たら比べたくなっちゃうの?

 比べないと気が済まないの!?

 って言うかこれ、セクハラじゃないの!?

 

 「し、知らない……」

 

 ダメだぁぁぁぁ!

 今の反応は失敗だったぁぁぁぁ!

 羞恥心に負けて思わず目を逸らしちゃったし、声も掠れちゃった!

 これじゃあ、知ってるって言ってるようなもんじゃない!

 

 「あ、あ~すまんすまん……。そうだな。年頃だもんな……」

 

 やめて!

 その言い方じゃあ、エッチな事に興味がある年頃みたいじゃない!

 そりゃあ、興味はあるわよ?私くらいの年頃の子なら当然じゃない?

 そうよ。当たり前の事よ。

 だから私は全然おかしくないし、やらしい子でもない!

 

 「はい、満潮ちゃんお待たせ。熱いから気をつけて食べてね」

 

 と言って、鳳翔さんが差し出してきたのは皿にドンと置かれたアルミホイルの塊。

 これは……開ければ良いのかしら。食べ方がわかんないわ。

 

 「ゆっくりホイルを開けてみぃ。あ、顔は離しとけよ?火傷するかもしれんぞ」

 

 そんな危険物なのこれ!?

 え~、そう言われると開けるの怖いんだけど……。

 

 「俺が開けちゃろうか?」

 「お、お願い……」

 

 別にビビってる訳じゃないし、いつも爆発物を扱ってるんだからそれくらい平気だけど……。

 やっぱり初めて見る物は怖いじゃない?

 怖いわよね?

 

 「おおっと!湯気も凄いが、こりゃぁ香りも凄いのぉ」

 

 司令官がアルミホイルを開いた途端、雲かと言いたくなるくらい立派な湯気がモヤーっと立ちのぼり、同時に松茸のものと思われる芳醇な香りが辺りに立ち込めた。

 やばい……。

 匂いだけで涎が溢れて来ちゃう……。

 

 「味付けは塩と酒だけか。やっぱわかっちょるのぉ鳳翔さん。満潮、スダチかけて食うてみ?たまらんぞ」

 「う、うん……」

 

 私は司令官に言われた通り、縦に裂かれた松茸にスダチを一振りして、口に放り込んだ。

 何これ……。

 シャキシャキとした歯ごたえとスダチの強烈な清涼感。それと、塩によって引き出された松茸の旨味が口いっぱいに広がってもう幸せ♪

 

 「どれ、俺も一つ……。うん、美味い!これ、塩も普通のじゃないじゃろ」

 「はい、せっかくですので藻塩を使いました♪」 

 

 モジオ?喪女の仲間かしら。

 そんな事より箸が止まらない!ご飯が欲しくなっちゃうわ。

 

 「こりゃあ、今日は会計が怖いのぉ……。どうや満潮、美味いか?」

 「うん、美味しい!松茸がこんなに美味しいなんて知らなかった!」

 「まあ、単純に味だけなら、シメジのが美味いんじゃがの」

 「え?そうなの?」

 

 こんなに美味しいのに……。

 シメジは食べた事あるけど、ここまで美味しいと感じなかったけどなぁ……。

 

 「松茸が美味しいのはね、香りと一緒に食べるから美味しいのよ」

 

 へぇ、そうなんだ。

 まあ、シメジじゃあこの香りは出せそうにないもんね。

 

 「香り松茸、味シメジとは言うが。最近出回っとらんじゃろ、ホンシメジは」

 「そうですね。一部栽培品はありますが、ほとんどブナシメジです。でも、今日は本物のホンシメジがありますよ」

 「ん?じゃあ私たちが食べた事あるシメジって……。」

 「ブナシメジじゃろうなぁ。さっきのザルの中に、ホンシメジもあったっぽいぞ」

 

 ウッソだぁ~。

 シメジってアレでしょ?小っちゃくて茶色いキノコが束になってる奴でしょ?

 そんなキノコ無かったわよ?

 

 「ほら、これですよ」

 「私が知ってるシメジと違う……」

 

 いやいや鳳翔さん、それはないでしょ。

 それがシメジな訳ないじゃない。

 形はちょっと可愛い気がするけど、傘の部分とか8センチくらいあるわよ?

 

 「まあ、そうじゃろう。俺も数えるほどしか食うた事がない。鳳翔さん、それで何か適当に作ってくれんか?」

 「わかりました。じゃあ……天ぷらにしましょうか。ちょっと待っててくださいね」

 

 なんだか、晩御飯より豪華になりそうね。

 キノコしか食べてないのに。

 

 「そう言えば来週の呉行きじゃけど、何かプレゼントは買うたんか?」

 「一応ね。大潮がついでにお誕生会もやってやろうって、呉の駆逐艦と連絡も取ってたわ」

 「霞も喜びそうじゃな。なんなら一泊して帰るか?」

 「いいの?」

 

 さすがにとんぼ返りはきついと思ってたからありがたいわ。

 大潮と荒潮は、それでもお誕生会して帰るって言ってたからどうしようかと思ってたのよ。

 

 「ああ、楽しんで来い」

 

 ん?なんか含みがあるわね。何だろう……。

 

 「満潮、お前に聞きたい事がある」

 「何?」

 「例えばの話だ。鎮守府総出で敵棲地を攻めた場合、お前がくだんのネ級……鼬ならどう動く?」

 

 変な質問ね。

 でも、例えばの話を仕事モードで聞くとは思えない。

 だとしたら、近い内に鎮守府総出で挑む規模の作戦があるという事。それはおそらく、以前聴いたハワイ島中枢の攻略作戦だわ。

 司令官はその時に、タウイタウイから帰るなり報告した鼬がどう動くかを気にしてるんだと思う。

 

 「私が鼬なら……。艦隊の背後を突くよう窮奇を誘導するわ」

 

 作戦の概要すらわからない状態じゃあ大した事は言えないけど、私が鼬ならそう進言する。

 だって、その規模の作戦に私たちが組み込まれないはずはない。それは、鼬も想定するはず。

 なら鼬は、窮奇を棲地から離れた場所に隠れさせ、朝潮の存在を確認出来たら、艦隊同士が衝突した時点で背後を叩くふりをして朝潮を誘き出そうとするわ。

 

 「そうか、わかった。もし、これから先そのような作戦があった場合、第八駆逐隊は主力艦隊から外す」

 「うん、了解したわ」

 「……」

 

 え?何?私変な事言った?

 どうして、そんな意外そうな顔で見て来るのよ。

 

 「文句を言われるくらいは、覚悟してたんだがな」

 「言わないわよ。その必要があると司令官が判断したんでしょ?だったら、文句はないわ」

 

 きっと司令官は、第八駆逐隊(私達)を窮奇対策に使うつもりだ。

 いや、第八駆逐隊(私達)を回すのが精いっぱいなんだ。

 だって、司令官は鎮守府総出と言った。

 横須賀に所属している艦娘はたしか全艦娘の20%。それを、防衛に回す者以外全て投入するような規模の作戦で、それでも第八駆逐隊(私達)くらいしか窮奇対策に回せないくらい戦力がカツカツなのね。

 

 「助かる。察しが良くて気が利くお前に朝潮を任せたのは正解だった」

 

 浮き方すら知らないと知った時はどうしようかと思ったけどね。

 でもまあ、覚えだけは良かったから助かったわ。

 

 「最近は神風さんにベッタリみたいだけど?あの二人、何かあったの?」

 

 最近は夕食も一緒に食べてるみたいだから、大潮と荒潮が寂しがってるわ。

 私は別に……平気だけど。

 

 「神風に料理を習っちょる。学習能力の高さは、料理にも応用可能らしい」

 

 あの子が料理をねぇ。

 って事は、司令官と一緒に食べてるのか。

 意外と手が早いわねあの子。すでに、司令官の胃袋を掴みにいってるわけだ。

 

 「味はどうなの?美味しい?」

 「美味いぞ。あの子はキッチリとレシピ通り作るけぇ失敗がない……と、そうこう言っちょるうちに」

 「はい、お待ちどお様。キノコの天ぷら盛り合わせです。それと、提督にはお酒ですね」

 

 おお、キノコばっかり……。

 天ぷらなのに香りが漂って来るわ。

 え~と、どれがホンシメジだったっけ?

 

 「ここまでキノコ尽くしの天ぷらは初めてじゃのぉ。満潮も遠慮せず食え」

 「食べるけど……どれがホンシメジ?わかんなくなっちゃったんだけど」

 

 松茸はわかる。

 半分に切ってあると言っても形がまんまだもん。

 そういえば司令官、普通に松茸に齧り付いてるわね。と、言うことは共喰い意識はないんだ……。

 

 「ん?どうした?」

 「え?いや、何でもない……」

 

 しまった……。また意識しちゃった。

 なんで共喰いとか考えちゃったのよ私!もしかして、私ってムッツリスケベ?それとも溜まってる?

 私も神風さんみたいに、そのうち司令官を襲っちゃうのかしら!

 

 「満潮ちゃん……大丈夫?」

 

 だいじょばない!

 さっきから変な妄想で頭の中がいっぱいよ!

 ちょ!咥えるな!キノコを頭から咥えるのをやめて司令官!

 

 「満潮もいるか?」

 「むぐっ!」

 

 突っ込まれた!キノコを口に突っ込まれた!

 あ、でも美味しい……じゃなくって!

 

 「あらあら……。満潮ちゃんも、年頃なのね」

 

 バレてる?

 鳳翔さんには私が何考えてるかバレてるの!?

 

 「満潮、お前まさか……」

 

 気づかないで!

 なによ、そんなどう接していいかわからないみたいな反応は!

 こうなったらヤケだ!

 キノコを食いまくってやる!

 司令官が股間に幻肢痛を感じる程齧りまくってやるんだから! 

 と、悶々としながらキノコを食べまくったせいで、その日の夜は夢にまでキノコが出て来た。

 キノコに追いかけられ、終いには体からキノコが生えて来た。

 もう、キノコは……当分見たくないわ。

 

 

 

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