艦隊これくしょん ~愛を込めて、花束を~   作:哀餓え男

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第八章 朝潮、編成
第九十三話 リボンで簀巻きにしてPresentするネー!


 

 

 神風さんのお料理教室としごき……もとい、訓練と第八駆逐隊の旗艦にもだいぶ慣れて来た11月18日。

 私達四人は、司令官から預けられた手紙を持って呉鎮守府まで来ていました。

 

「で?何をしにわざわざ、横須賀から呉まで来たの?」

 

 司令官から私たちが来る事が伝わっていたのか、桟橋に着いた私たちを出迎えてくれたのは霞でした。

 出迎えてくれたのは良いのですが……ラインでは別人みたいに可愛いのに、実物は相変わらずツンツンした態度ですね。

 スマホ一台通さなかっただけでここまで変わりますか。って、感じです。

 だったら素直に手紙を届けに来たと言わずに、お仕置きを兼ねて少しからかってあげましょう。

 

 「霞に会いに来たんです。そろそろ、寂しくなってると思って」

 「は、はぁ!?そんな訳ないでしょ!?」

 

 一瞬で湯気がでそうなほど赤面しましたね。

 言葉とは裏腹に、よほど嬉しかったのかスカートの裾や髪を弄ったりしてオロオロしています。

 あ、そういえばスマホは動画も撮れましたね。どうやるんでしたっけ。

 

 「大丈夫よ朝潮。バッチリ録画したから」

 

 私の考えを察してくれた満潮さんが、スマホを構えたまま親指を立てて、動画撮影の成功を告げてくれました。

 流石です!

 後で私のスマホに送ってください!

 

 「な!何撮影してんのよ!消してったら!」

 「ちょっとやめなさい霞!スマホが落ちる!落ちるから!あ……」

 

 おお……。

 スマホが霞のオデコに直撃しました。けっこう良い音がしましたが、スマホは大丈夫でしょうか。

 

 「くうぅぅ角が……。角が直撃……」

 

 痛そうですね。

 オデコを押さえてうずくまって、うっすらと涙まで浮かべてます。

 それより、スマホは大丈夫ですか?動画が消えたりしてません?

 

 「満潮、スマホは大丈夫!?壊れてない!?」

 「見た目は大丈夫そうだけどぉ……。中身は大丈夫ぅ?さっきの動画、消えてない?」

 「平気みたいよ。ホントよかったわ」

 

 本当によかった。

 霞は最悪、高速修復材(バケツ)をぶっかければどうにでもなりますが、スマホはそうはいきません。

 霞が動揺してるシーンは貴重ですから、絶対に失うわけにはいきません。

 

 「アンタ達、私の心配をしなさいよ!あ、なんか膨らんできた……。コブになってない?コレ!」

 「霞、アンタの犠牲は無駄にはしないわ」

 「ねぇ、この動画売れないかしらぁ?お小遣い稼ぎになるかもよぉ?」

 「呉でなら売れるかもしれないけど、横須賀だと微妙だね……。買いそうなのは司令官くらいだよ?」

 

 なんだかよからぬ事を考えてますね。

 呉で売るのは見ないふりしますが、司令官に売りつけるのは看過できません!

 司令官には私の動画を差し上げます!

 

 「売るな!ホント、何しに来たのよアンタ達!」

 「「「霞に会いに♪」」」

 

 うん、三人ともすごくいい笑顔です。

 声までそろえちゃってます。愛されてますね霞。私も嬉しいです。

 

 「だから!それはもういいったら!」

 

 無駄ですよ霞。

 この三人はイジる時はとことんイジります。

 涙を浮かべてやめてと懇願しようが、ふて寝しようが攻撃の手を緩めません。私は普段、よくイジられてますから詳しいんです。

 

 「でもぉ、こうして私たちが並ぶとぉ、満潮ちゃんが浮いちゃうわねぇ」

 

 お、荒潮さんが満潮さんイジりにシフトしました。

 でも、どうして満潮さんだけ浮くんでしょう。ツンデレだからですか?いやでも、霞もツンデレですからそれは違う気が……。

 

 「そうね。満潮姉さんだけ贔屓されてるわ」

 

 霞が、ここぞとばかりにニヤァっとして満潮さんに反撃を始めました。

 う~ん……。

 私には、満潮さんと私たちの違いがわかりません。

 

 「しょ、しょうがないじゃない!私だって、()()を着たくて着てるんじゃないわ!」

 

 あ、そういうことですか。

 確かに満潮さんだけ(正確には朝雲さんと山雲さんもですが)冬服を着ています。

 それはいいのですが、満潮さんは左手で両目を覆い、棒読みという言葉がこれほどまで当てはまる嘘泣きがあるだろうか。いや、無い。

 と、断言できるほど酷い嘘泣きを始めました。

 

 「あ~あ、霞ちゃんが満潮を泣かせちゃった」

 「私のせい!?いや、私のせいか……でも元はと言えば荒潮姉さんが!」

 「霞ちゃん、人のせいにするのはよくないわぁ。満潮ちゃん大丈夫ぅ?」

 

 大潮さんと荒潮さんは、サラッと霞に罪を擦り付けました。

 と言うか、霞はアレが嘘泣きだと気付けないんですか?あの満潮さんが感情のこもってない声で「うえ~ん」って言ってるんですよ?

 ですが、満潮さんの大根役者っぷりで、三人の思惑はわかりました。

 つまり荒潮さんの満潮さんイジりも、霞イジりの一環だったんです。

 実際、満潮さんの手に目薬が握られているのが……もろバレですね。もう少し隠す努力をしてください。

 

 「ご、ごめん……。え、どうしよ……。泣かせるつもりなんてなかったのに……」

 

 霞が、今度は顔を真っ青にしてオロオロし始めました。赤くしたり青くしたり器用ですね。血圧、大丈夫ですか?

 いえ、そもそも、幼稚園のお遊戯より酷い……かどうかは幼稚園に通ったことがない私にはわかりませんが、そう思ってしまうほど酷い満潮さんの演技に何故気付けないのですか?

 

 「満潮、撮った?」

 「バッチリよ。抜かりはないわ」

 「さしずめ、赤霞と青霞かしらぁ。お酒でありそうな名前ねぇ」

 

 イタズラが成功した三人はイエ~イ♪と、頭上でハイタッチをしていますが、被害者である霞は再び顔を赤く染めて怒り心頭です。

 そろそろ、本題に入った方がいいかもしれません。

 

 「アンタら……。喧嘩を売りに来たんならそう言いなさいよ。買ってやるから!」

 「まあまあ、落ち着いて霞。アレは三人なりの愛情表現ですから」

 「あれが!?おちょくってるようにしか思えないんだけど!?」

 

 否定はしません。

 ですがおちょくりたくなる程、霞が可愛いと言う事でここは収めてもらえないでしょうか。

 

 「それより霞。司令官からの手紙を預かって来ているので、執務室に案内してもらえないですか?」

 「手紙って、このご時世に?メールか電話でいいじゃない」

 「情報を漏らさず、かつ確実に内容を伝えるためだと思います」

 

 軍の専用チャンネルくらいありそうですが、それすら使えな程の物なのでしょう。

 と言う事は、預かってる手紙には相当重要な情報が詰まっているはずです。

 

 「わかった、ついて来て。大潮姉さんたちはどうする?」

 「部屋の場所を教えてくれたらそっちで待機しとくよ。ゾロゾロ行っても仕方ないからね」

 「そう、わかったわ。部屋は大会の時の部屋を空けてるから、そっちに行ってちょうだい。あ、工廠の場所はわかるわよね?」

 「うん、大丈夫だよ。朝潮ちゃんの艤装も貸して、ついでに持って行くから」

 「あ、お願いします」

 

 工廠に向かう三人と別れた私は、霞に連れられて庁舎の方へ歩きだしました。

 左手に戦艦大和が見えますね。

 中はどうなってるのでしょう。

 

 「大和が気になるの?」

 「え?ええ、少しだけ」

 「ここだけの話だけど、アレってまだ動くらしいわ」

 「ほ、本当ですか!?」

 

 70年以上前の代物ですよね。

 それが動くなんて、にわかには信じられないんですけど……。

 

 「噂だけどね。本当に動いたとしても、呉の象徴みたいなポジションだから、動かすのは無理だと思うわ」

 「へぇ……」

 

 少し残念です。

 動いてる所を見られるなら、見てみたい気もするんですよね。

 

 「それと、解体すれば、艦娘の大和が建造できるんじゃないかって意見もいまだにあってね。軍も扱いに困ってるらしいわ」

 

 動かそうとしても、解体しようとしても反対意見が出る過去の遺物ですか。確かに、扱いに困りますね。

 維持費も凄いでしょうし。

 

 「そう言えば、旗艦には慣れた?あの三人が相手じゃあ、大変でしょう?」

 「そんな事ないですよ?三人ともとっても素直に言う事を聞いてくれます」

 

 実際ビックリしてます。

 私のような未熟者の指示で、歴戦の三人が動くなんていまだに信じられません。

 まあ、戻った後にダメ出しはされるのですが……。

 

 「ふぅん、あの三人がねぇ……」

 「霞も少し見習った方がいいと思いますよ?普段もラインみたいに素直なら、変な軋轢を生まなくて済みます」

 「じょ、冗談やめてよ!アレは相手の顔が見えないから出来るの!面と向かっては……無理」

 

 満潮さーーん!動画の取り方を今すぐ教えてください!

 霞がデレてます!

 赤面してうつむいてモジモジしています!

 ここ?このカメラのマークを押せば撮れるのでしょうか。

 あ、カメラは起動した。これで撮れるのかな?

 

 「ちょ!何しようとしてるのよ!やめなさいったら!」

 

 チッ、気づかれました。

 自分の無知をここまで悔しいと思った事は今までありません。なんで私は、カメラの使い方を勉強しなかったの!?

 

 「や、やめなさい霞!操作中に奪い取ろうなんて卑怯よ!」

 「知るか!勝手に撮影しようとするアンタが悪い!」

 

 く、撮影は断念するしかないようですね。完全に警戒されてしまいました。

 警戒してる霞もネコみたいで可愛いいのですが……この様子じゃあスマホを取り出しただけで叩き落とされそうです。

 フシャー!!って言いそうですもの。

 

 「着いたわ。ここが執務室よ」

 「見た目は、横須賀とそんなに変わらないのですね」

 

 横須賀の執務室のドアと似たような洋風のドア。こっちの方が年季が入ってる感じはしますが、外見にそれ以外の差異はありません。

 

 「霞よ。朝潮を連れて来たわ。入るわよ」

 「失礼します」

 

 と言って、執務室に入ったのはいいのですが……。

 アレ?部屋を間違ったのでしょうか。

 執務机の前に設えられた洋風のテーブルで、呉提督と巫女服を魔改造したような服を着た女性がお茶を飲んでます。

 あふたぬーんてぃーと言うやつでしょうか。

 

 「金剛さん……。何してるの?」

 「Hi! 霞、見てわかりませんか?Afternoon tea デース」

 「んな事はわかってるわよ!どうしてこんな所でやってるかって聞いてるの!」

 

 激昂する霞に、金剛さんはあくまで余裕そうに答えました。

 毎日こんななのでしょうか。

 霞の血圧が心配になってしまいます。

 

 「提督が望まれたからデース。霞もどうデスカ?そっちのあなたも」

 

 ご馳走になるデース。

 じゃない。

 私まで参加したら、霞の血管が切れてしまうかもしれませんからご遠慮しときます。

 

 「司令官も!仕事はどうしたのよ仕事は!」

 「大丈夫だママ。金剛がやってくれたから」

 

 今、ママって言いましたか?

 ママになってくれと霞に言ったのは覚えていますが、まさか本当にママって呼んでるとは思いませんでしたよ。

 

 「はぁ!?金剛さん!司令官を甘やかさないでって、前にも言ったわよね!?」

 「霞、仕事はやればいいというものではありまセン。提督自らやらなくてもいい事は下の者に任せる。それが一番デース」

 

 なるほど、これがラインで霞が愚痴っていた金剛さんですか。

 金剛さんの考えも否定はしませんが、今は霞が秘書艦なんですから立場を考えてあげないと。

 ラインで「ちゃんと仕事が出来て偉いわね。って褒めてあげたいのに邪魔される」って言ってたのは、こういう事だったんですね。

 

 「私は必要な事しかやらせてないの!この子は知らない事が多すぎるんだから!」

 

 ん?今、この子って言いました?

 いい歳した大人に向かって、この子呼ばわりはどうなんでしょうか……。

 

 「まぁまぁ二人とも、お客さんも居るんだしその辺で……」

 

 こういう場面をどこかで見た事がありますね、どこでしたっけ?

 

 「提督が気にする事ないデス。霞が大袈裟に騒いでるだけネー」

 

 金剛さんは意地でもお茶を飲むのを止めようとしませんね。悪い人ではないのでしょうが、霞とは相性が悪そうです。

 

 「ふぅん、あくまで私の方針にケチつけようってのね」

 

 霞と金剛さんが見えない火花を散らして、段々と嫁姑戦争の様相を呈してきました。

 嫁と姑の年齢が逆な気もしますが。

 いえ、けっして金剛さんがお年を召されていると言うわけじゃありませんよ?

 あ、でも思い出しました。

 満潮さんが録画してるお昼のドラマで似たような場面を見た事があるんです。

 動画に撮っておいたら、満潮さん喜ぶかもしれません。

 

 「だったら、どうしマス?」

 

 金剛さんが椅子から立ち上がり、霞も望む所だと戦闘態勢に入りました。

 まさか、ここで喧嘩をする気ですか?

 呉提督は止めないのでしょうか。

 

 「あ……ちょっと二人と……も……」

 

 ダメですね。

 二人の迫力に圧されて、完全に腰が引けてます。

 霞はこんな人のどこがいいのでしょう。私の司令官と違って、頼りがいが皆無です。

 となると、私が止めた方がいいのでしょうか。

 でも私は部外者ですし……そもそも巻き込まれたくないし……。

 ん?まるでタイミングを計ったように、執務机の電話が鳴り始めましたね。

 

 「あ、電話……。ぼ、僕が出るよ!」

 

 固定電話の呼び出し音に気勢を削がれた二人は動きを止め、呉提督は慌てて電話に応対しました。

 誰だか知りませんがナイスタイミングです。

 おかげで、ここが戦場にならなくて済みました。

 

 「あ、暮石中将。え?ええ、今執務室に着いたところで……ええ、はい……いえいえ!そんな事は……はい、はい、では失礼します」

 

 司令官!

 さすが司令官です!まるで今の状況を察したかのようなタイミングでの電話、お見事です!

 それに比べて、呉の提督の受話器を大事そうに抱えてお辞儀をしながら話す様は小物感が凄いですね。

 本当に提督ですか?この人。

 

 「横須賀の提督からだったの?」 

 「あ、ああ。朝潮さん達が着いたかどうかの確認だったよ」

 「他にも、何か言われてたみたいだけど?」 

 「いや、そのぉ……」

 

 霞の質問に、呉提督は頭をポリポリしながら困ったように私へと視線を移しました。

 私に関する事を、何か言われたんでしょうか。

 

 「朝潮さんに手を出したら、鎮守府ごと潰すと脅された……」

 「what!? そんな事で鎮守府を潰すとか、横須賀の提督はCrazyデース!」

 

 Crazyじゃなくて暮石ですよ、金剛さん。

 それに、司令官ならそれくらい平気でやります。

 その証拠に、霞と呉提督だって「本当にやりそう……」って感じで、苦笑いしてるじゃないですか。

 

 「あ、あと、霞を今日は上がりにしてやってくれと」

 「は?何で?朝潮たちが来てるから?」

 

 それだけじゃありませんよ霞。

 今日はあなたの誕生日です。

 今頃、大潮さん達があなたを祝う準備を進めている事でしょう。

 

 「それは……」

 

 呉提督が「言ってもいい?」と言いたそうに私を見て来たので、私は口元で人差し指を立て、ジェスチャーだけで言わない様に促しました。

 言っちゃダメです。サプライズなんですから。

 

 「後で朝潮さんに聞いてくれ」

 「朝潮に、ねぇ……」

 

 なんですか、その疑わしそうな眼差しは。

 別に、霞が嫌がるような事はしませんよ?

 呉の駆逐艦も巻き込んで、霞をお祝いしようとしてるだけです。

 

 「それより朝潮さん、手紙を預かっていると聞いたけど……。見せてもらえるかな?」

 「はい、こちらです」

 

 私は懐から、司令官に預けられた手紙を取り出して手渡しました。金剛さんのテーブルが邪魔ですね……。霞が怒りたくなる気持ちもわかる気がします。

 

 「なるほど……。他の鎮守府にも、同じ知らせが行ってるのかい?」

 「詳しくは私も伺っていませんが、佐世保、舞鶴、大湊にも駆逐隊が向かっています」

 「わかりました。暮石中将には一言、了解したとお伝えください」

 「はい、わかりました」

 

 そう言って、呉提督は手紙に火をつけ燃やしてしまいました。

 おそらく司令官の直筆と思われる手紙を……です。

 なんと勿体ない。燃やすくらいなら私にくれれば……。

 

 

 「何が書いてあったんデスか?提督」

 「その場で燃やすほどの内容よ?軽々しく言えるわけないでしょうが」

 

 ないですよね。

 いえ、わかってましたよ?

 わかってましたが、好きな人の物はどんな些細な物でも欲しくなるのが、恋する乙女と言うやつでして……。

 

 「すまない金剛、それはまだ言えない。時が来たら必ず話すから、それまで我慢してくれ」

 

 さっきまで二人に翻弄されるがままだったのに、今度はハッキリと切り捨てましたね。

 いつもそうなら、霞の心労も減るのでは?

 

 「うー……提督がそう言うなら我慢しマース」

 

 どうしましょう。

 霞のドヤ顔が凄いです。

 この子、私が育てたんです!と言わんばかりのドヤ顔を、金剛さんと私に向けています。

 

 「じゃあ霞、今日の仕事はこれで終わりでいいから、朝潮さん達と一緒にご飯でも食べて来なさい。明日には帰ってしまうからね」

 「え……アンタ達、明日帰るの?」

 

 満潮さぁぁぁぁん!!カメラを!カメラの使い方を今すぐ私に教えてください!

 霞が寂しそうな上目遣いで私を見つめています!

 シャッターチャンスです!

 

 「あ、あの……呉提督」

 「ん?なんだい朝潮さん」

 「霞を横須賀にお持ち帰りしてよろしいでしょうか!」

 「は?いや、何言ってんの?」

 

 何をキョトンとした顔をしてるんですか霞。

 やっぱりあなたは、横須賀に来るべきです!

 こんなダメ男や、男を甘やかすことしか知らない戦艦のそばに居ちゃダメです!

 

 「Yes!リボンで簀巻きにしてPresentするネー!」

 「ほら、金剛さんもこう言ってくれてます!だから、一緒に横須賀に行きましょう!」

 「いやいやいや!それは困るよ朝潮さん!僕のママを連れて行かないでくれ!」

 

 何がママですかこのマザコン!

 少しは私の司令官を見習ってください!

 駆逐艦に母性を求めるなんて恥ずかしくないんですか!?

 

 「提督、心配しなくてもNo problem ネー!私がいるじゃない!」

 「どっかの駆逐艦が言いそうなセリフ言ってんじゃないわよ色呆け戦艦!私が横須賀に行くわけないでしょ!」

 

 あれ?また二人に火が点いちゃいましたよ?

 どうしてこうなったんでしょう。

 私はただ、霞を横須賀に連れ帰りたかっただけなのですが。

 

 「誰が色呆けネー!時間と場所はわきまえてマース!」

 「わきまえてないでしょ!暇さえあれば司令官にすり寄ってるじゃない!」

 

 これは当分収まりそうにないですね。困ったものです。

 仕方ない。巻き込まれて怪我とかしたくないですから、先に戻って大潮さん達のお手伝いをしましょう。

 

 「え?ちょっと朝潮さん、どこに……?」

 「いつ終わるかわかりませんので、先に部屋に戻ってます」

 「焚きつけておいて!?せめて、止めるのを手伝ってくれませんか!?」

 

 え?私が焚きつけた?人のせいにしてはいけません、私は何もしていませんよ?

 

 「提督は私のものネー!」

 「誰がやるか!少なくとも、アンタの所にはお婿にやらないから!」

 

 ほら、二人とも呉提督の事で喧嘩してます。

 だからけっして、私のせいじゃありませんので……。

 

 「失礼します」

 「ちょ、待って!朝潮さん待って!」

 

 私は霞と金剛さんの罵り合いをBGMにして、執務室を退室しました。

 さて、霞に気づかれない様にパーティの準備をしないと。

 

 『やめて!やめて二人とも!せめて外で……あーーー!』

 

 室内から、呉提督の悲痛な叫び声が聞こえて来ますが……。まあ、呉鎮守府の問題なので私には関係ありませんね。

 

 「え~と、どうやって部屋に行けばいいんでしたっけ」

 

 私は、騒ぎを聞きつけて集まって来た呉の職員や艦娘達をかき分けながら、部屋に向かって歩き出しました。

 

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