艦隊これくしょん ~愛を込めて、花束を~   作:哀餓え男

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今日、仕事中にスマホが折れました。
比喩でも何でもなく、くの字に折れました( ;∀;)

携帯ショップのお姉さんに「こんな壊れ方は初めて見た」と驚かれたくらい、見事に折れました( ;∀;)


第九十五話 さあ?どっちかしらね

 

 

 前回から引き続き登場したのは、大本営付艦娘筆頭、ついでに元帥秘書艦の私こと大淀です。

 あ、前回って何のこと?なんて無粋な疑問は、思考の海にでも投げ捨ててください。

 ええ、全力投球でお願いします。

 

 「前置きはいいから、さっさと本題に入りなさい」

 

 と、誰がどう見ても不機嫌という態度で私が座るボックス席の対面で胡座をかいているのは、私を幼くしたような声をしている神風さんです。

 会うのはD-1以来ですが、相変わらず色が派手ですね。

 頭のリボン以外を赤系統の色で固めたその出で立ちは、戦隊物のリーダー然としています。

 神風型の四人を加えて、水雷戦隊カミレンジャーでも結成しません?

 

 「喧嘩を売ってるならそう言いなさい。こちとらあなたのために、わざわざ時間を作ってあげたのよ?」

 

 ほう?

 私が喫茶 猫の目(ここ)に到着するまで、カウンターに頬杖をついて、お客さんを捌くモヒカンをボケーッと眺めていたのに暇ではなかったと?

 そもそも数日前、暮石中将と朝潮ちゃんが大本営を訪れた日に、神風さんにアポイントメントを取ってくれと暮石中将にお願いしたら、彼が「アイツは四六時中暇人だから、君の都合が良い日で大丈夫だ」とおっしゃったから今日この時間を指定したんですが?

 

 「あのクソ親父……。愛娘を暇人呼ばわりとはどういう了見よ」

 「ちなみに、私と会う予定がなかったら、何をする予定だったんですか?」

 「……角ちゃんの部屋で漫画読むか、執務室で昼寝」

 

 暇人じゃないですか。

 真っ昼間から漫画を読むか昼寝するしかやることがないなんて、押しも押されぬ正真正銘の暇人ですよ。

 艦娘で、しかも大規模作戦の前なんですから訓練でもしたらどうなんです?

 

 「私はもう充分強いから、訓練なんて必要ないの」

 「動かなければ筋力は落ちますし、訓練をしないと戦闘の勘も薄れます。いくら強くなっても、訓練は必要だと思いますが?」

 「あなたに言われなくたってわかってるわよ。心配してくれなくても、やることはちゃんとやってるわ」

 

 いつ?

 私が把握している神風さんの1日のスケジュールは、06:00(まるろくまるまる)から09:00(まるきゅうまるまる)まで家事全般をこなし、それから一時間ほどのインターバルを挟んでから暮石中将のお弁当作りを始めます。

 そして12:00(ひとふたまるまる)に執務室に向かい、暮石中将と朝潮ちゃんを交えて昼食を済ませてからは、夕飯の買い出しをする16:00(ひとろくまるまる)頃までここで暇を潰すか朝潮ちゃんの訓練に付き合っています。

 16:00(ひとろくまるまる)以降、最近は料理教室と言うていで朝潮ちゃんに夕飯の支度を押し付けているようですが、その後に朝潮ちゃんを交えて暮石中将との食事。それが終われば、あとはテレビを見るなり暮石中将と喧嘩するなりして時間を潰し、だいたい21:00(ふたひとまるまる)くらいから入浴して寝る。

 この日常サイクルの中で訓練をするとしたら、最初のインターバルか昼食後の数時間のどちらかですね……って、どうしてドン引きしたような顔で私を見ているのですか?

 

 「ど、どうやって調べたのよ。ストーキングでもしたの?」

 「失礼なことを言わないでください。暮石中将の行動を監視する過程で、神風さんのスケジュールを把握してしまっただけです」

 「ちょっ!はぁ!?あなた、お父さんをストーキングしてたの!?どうやって!?お父さんって、そういうのにすごく敏感なのよ!?」

 「だからストーキングではありません。私なりの、復讐の一環です」

 

 彼が視線などに敏感なのは知っていましたから、当然ながら普通の手段での監視は不可能です。

 ただし、彼は私に負い目がある。

 私が一言言うだけで、彼の監視は可能になるんです。

 

 「あなたが逃げないようにするための用心。そう言っただけで、彼は監視を受け入れました」

 

 監視を受け入れたことで、彼に隙ができる。

 もし、私以外に彼を監視しようとする者がいれば、判別がつかない限りその監視すら受け入れざるをえない。

 そうすれば、誰かしらが画策してくれるかもしれない暗殺も成功する可能性が上がる。

 そう考えて、私は彼を監視することにしたんです。

 まあ監視とは言っても、私がしたのは盗聴器の設置と横須賀鎮守府の警備システムへのハッキング程度なんですが。

 

 「やっぱ、斬っとくべきだったかしら。いや、今からでも遅くは……」

 「遅いです。私にはもう、死ぬ理由がありませんから」

 「へぇ?ガチでビビりながら斬ってとか言ってたあなたが、随分な心境の変化じゃない。何かあったの?」

 「語っても?」

 

 私がお伺いを立てると、「嫌な予感がするなぁ……」と考えてそうな顔をしつつも、どうぞと右手を差し出してくれたので語らせていただきます。

 

 「私が死ねなくなった最大の理由。それは朝潮ちゃんです!暮石中将が不意打ちで連れてきたので心の準備ができてなかったですが、なんとかチラ見する程度で自分を抑えられました。ですが、頭はテンパりっぱなしでしたよ!だってD-1の際に一度見ましたが、近くで見ると一層可愛く、さらに愛おしく感じてしまったんですもの!元帥閣下が並ぶと親子に見えるとおっしゃった時には、「それなら、この異常者と結婚するのも有りかな?」などと本気で考えてしまいました。さらに!閣下に掴みかかった彼に私が銃を向けた時のあの子の戸惑いながらも敵意を剥き出しにした目!ハッキリ言ってたまりませんでした!妹に生き写しレベルでソックリなあの子にあんな目で見られた私の背中には電気が走り、愛しさと切なさがない交ぜになった感情に心が支配されて顔がひきつってしまいましたよ!できることなら今すぐ執務室に突撃し、汚物でも見るような瞳であの子にみらりゅらばぁ!?痛いじゃないですか!なんで殴ったんです!?」

 「なっがいのよ!文字数稼ぎかバカ淀!」

 「文字数稼ぎとは心外です。私は語って良いと言われたから語ったまででして……」

 

 いやまあ、私も少し、ほんのちょっぴりヒートアップしすぎたかなぁ~とは思いましたが、アレでも抑えた方なんです。

 本当ならもっと、それこそ夜が明けるまで語りたいのに……。

 

 「あなたたちって、やっぱり姉妹ね。アイツも、そんな感じで語ってたわ」

 「何についてですか?」

 「要約すると、セックスしたかった」

 「ちょっと待ってください。それって、あの堅物で融通が利かない妹が言ったんですか?」

 「そうよ?どうもお父さんったら、一切と言って良いほど手を付けてなかったみたい」

 

 信じられない……。

 彼が妹に一切手を出さなかったのもですが、妹が語るほどセックスに興味があったなんて意外すぎます。

 

 「で?妹ソックリの朝潮に蔑まれる手伝いを頼むために、私のまったりタイムを侵害したの?」

 「馬鹿ですか?私にそんな特殊な性癖はありませ……すみません。馬鹿は言いすぎましたから、笑顔で刀に手を掛けるのをやめてください」

 「じゃあ何よ。もしかして、お父さんとの仲を取り持って、とか?」

 「ええまあ、簡単に言うとそうです……ってぇ!だから刀に手を掛けないでください!冗談ですから!」

 

 自分でもたちの悪い冗談だったとは思いますが、すぐに斬りかかろうとするのはいかがなものかと思います。

 まあ、神風さんの育ての親はあの異常者ですから、事あるごとに刃傷沙汰を起こすような短絡思考に育ったのも仕方がないとは思います。

 

 「やっぱ、喧嘩売ってるよね?」

 「売ってません。それで本題ですが、彼からあることを頼まれました」

 「あなたに?大抵の事なら、あなたより奇兵隊を使った方が早くて確実だと思うんだけど……」

 「私もそう思い、そう言いました。ですが内容を聞いて、私じゃないと不可能な案件だと納得しました」

 

 あれは、四人での雑談が一区切り付き、そろそろ帰ろうと言う段に入った直後。朝潮ちゃんを先に車へと向かわせた彼は、おもむろにこう言いました。

 

 「現存している全艤装、その在処(ありか)を確認してくれ。と」

 「艤装の在処?そんなの、鎮守府や泊地に問い合わせればすぐに……」

 

 言いよどんだ様子を見るに、気づいたようですね。

 そう、問い合わせただけでは、全艤装の在処は確認できません。

 その理由は多々あるのですが、軍の暗部で使用されている艤装が存在するのが最も大きな理由です。

 具体的な例を挙げると、奇兵隊に所属している秋津洲。

 彼女は所属こそ海軍になっていますが、海軍の指揮系統からは外れています。

 仮にどこかの提督が「秋津洲はどこにいる?」と、問い合わせても、所在を知ることはできません。

 だから彼は、所属の枠組みを越えて所在確認ができる唯一の存在、元帥閣下の威光を使うことができる私に、調査を依頼し、私も了承したんですが……。

 

 「目的がわかりません」

 「なるほど。だから、私に相談しに来たわけね」

 「はい。調査自体は既に開始していますが、彼の目的がわからないのがどうも……」

 

 気持ち悪いんです。

 私は何の片棒を担がされている?彼はその情報を何に使うつもり?その情報を基に、何を成そうとしている?

 湧いてしまったそれらの疑問が、私をどうしようもなく不安にさせるんです。

 

 「心当たりがないわけでも……ない」

 「私に話しても問題ないなら、是非教えてほしいのですが」

 「……少し待って。角ちゃん」

 

 神風さんに呼ばれたモヒカンは、「了解っす」とだけ言って、レジカウンターの中で仁王立ちしいているレオタード姿の変態三人に消えるよう命じ、入り口に鍵をかけて窓際へ移動して、壁に隠すように設置してあったボタンを押しました。すると、シャッターが降りて右手にあった窓を覆ってしまいました。

 あれ?これってもしかしなくても、逃げ場が完全になくなりました?

 

 「何もしないから安心しなさい。万が一にでも外部に漏らせない話だから、念には念を入れただけ」

 「なるほど、納得しました。では、お聞かせください」

 「わかった。じゃあまず質問から入るけど、あなたってアクアリウムは知ってる?」

 「水生生物の飼育設備……なわけないですね。反政府組織の方ですか?」

 「そう、反政府組織。もしくは、カルト宗教団体アクアリウム」

 

 ふむふむ。

 その名前が出たことで、暮石中将の目的がなんとなくわかりました。

 ちなみに反政府組織アクアリウムとは、今から六年前の正化二十三年末頃から活発に活動し始めたテロリスト集団です。

 彼等は「深海棲艦は自然を汚染し続けて来た人類への断罪。神そのもの。人類は、深海棲艦に全てを明け渡し、管理されるべきだ」と宣い、それを唯一の教義として今も信者を増やし続けています。

 ですが、彼等の活動は宗教活動とはかけ離れ、軍施設どころか民間施設、街中での破壊活動も平気で行う狂信者の集団です。

 当然、軍は事あるごとに制圧していますが、表立って行動するのは下位の信者に煽動された一般市民たちなので、幹部や『マザー』と呼ばれている最高指導者には辿り着けていないのが現状です。

 そしてマザーには、とある噂があるんです。

 

 「我らが母は神の化身。神と同じく海を駆け、神と同じく人の行いを一笑に伏し、神と同じく姿が変わらない。でしたね」

 「そう。信者どもが狂ったように繰り返すその言葉から、マザーは艦娘なんじゃないかと疑われてるの。お父さんがあなたに艤装の在処を調べろと頼んだって事は、マザーを特定して本気でアクアリウムを潰す気になったって事よ」

 

 やはりそうでしたか。

 今までそれをしなかったのは、私との不仲が原因で……いや、今でも仲は良くないんですが、私に負い目があったから頼むことができなかったんでしょう。

 なのに、今になってそれを頼んだのは、私とのわだかまりが多少なり解消されたから。

 大本営に朝潮ちゃんを連れて来たのは報酬の前払い、もしくは手付金と言ったところでしょう。

 

 「これは、護衛を頼まなくてはいけませんね」

 「心配しなくても、お父さんの事だから護衛を付けてると思うわ。ね?角ちゃん」

 「ええ、影が一個分隊ほど、24時間体制で大淀さんの護衛に付いてるっすよ」

 

 ならば安心して、調査に励めますね。

 おそらく彼は私の調査結果を見て、私でさえ在処が把握できない艤装があった場合、その使用者をマザーと断定するつもりなのでしょう。

 

 「で?その調査報酬は何なの?まさか、一晩中相手しろとかじゃないわよね?」

 「それも考えましたが、私がお願いした報酬は違います」

 

 D-1の前日に釘を刺されて以降、彼に抱かれていないので欲求不満気味ではあります。

 実際、自分で自分を慰める回数も多くなっています。

 ですが私は、別の欲求を解消してもらうことにしました。

 私の復讐を成就させるために、ある意味、彼を最も苦しめる事を報酬として要求したんです。

 私は彼に……。

 

 「幸せになってください。そう、お願いしました」

 「そりゃまた……とんでもない復讐だわ」

 

 そう、これが私の復讐。

 降って湧いた最終手段。

 私や他の不幸にしてきた人たちを差し置いて幸せになることは、彼を死ぬまで苦しめてくれる。

 幸せになった彼を見ることで、私も苦しむことができる一石二鳥の妙案なのです。

 

 「お父さんも大概だけど、あなたの狂いっぷりも相当ね」

 「それ、誉めてるんですか?それとも貶してるんですか?」

 

 あまりの言いように、ふて腐れ気味に抗議した私に、神風さんはクスッと笑ってから……。

 

 「さあ?どっちかしらね」

 

 と、なぜか嬉しそうに言いました。

 

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