ライヒワインは海軍本部の真っ暗な廊下を歩いて自分を呼び出した相手のいる部屋に向かっている。途中ですれ違う海兵たちは、皆、彼に敬礼する。
ライヒワインは3mを超す大柄な男である。白髪で眉が太く、深い緑色の眸をしている。黒のスーツで身を包み、その下には、はち切れんばかりの筋肉が詰まっている。背中には、『正義』の二文字が書かれた海軍コートを羽織っており、腰には日本刀を差している。
偉大なる航路でこの男のことを知らない者はいない。海賊にとっては恐怖の対象。海兵にとっては尊敬の対象。それがライヒワインである。
自分を呼び出した相手の部屋の前につくとノックをして部屋に入る。
「おれが最後か」
ライヒワインは笑いながら言った。部屋にはライヒワイン以外に2人いた。
「時間ぴったり。早速始めるぞ」
2人のうち、アフロヘアーと三つ編みにした髭が特徴の男が資料をライヒワインに渡しながら言った。
「今回の任務はアーサー海賊団の壊滅だ。知ってると思うがアーサー海賊団は6年前に起きた政府高官の殺害事件の犯人で、そこからだんだん警戒されるようになった非常に凶悪な海賊団だ。今年の海賊危険度ランキングでは5位で四皇を除けばトップクラスの危険度を誇る。これまで多くの海兵たちが討伐に向かい、返り討ちに遭っている。これ以上犠牲者がでるのは望ましくない。だが、生半可な実力では奴らには敵わん。そこでお前たちにこの仕事がきたというわけだ。受けてくれるな?ライヒワイン、ピトック」
「もちろんだ」
「奴らは危険すぎる。今の内に排除するべきだ」
「お前たちなら受けてくれると思っていた。アーサー海賊団はシャボンディ諸島付近の海にいる。気を付けろよ。奴らを狙っているのは海軍だけじゃない。賞金稼ぎどもも狙っているからな」
「まぁ、死なないように頑張るよ」
「では、任せたぞ」
翌日
ライヒワイン率いる特別部隊はピトックと共にアーサー海賊団のアジトに向かった。アーサー海賊団は300人で構成されている。個々の能力が高く一般の海賊や海兵では歯が立たないらしい。
特別部隊はライヒワインを隊長に40名で構成されている。人数こそ少ないが一人一人が一騎当千の手練れ揃い。たとえ、相手が四皇だとしても簡単には負けない。
特別部隊に入るには2つの条件をクリアしなければならない。
1つ目は特別部隊の隊長に認められること。
これは実力だけではなく人格も認められなければならない。
2つ目は特別部隊の訓練を最後まで受けること。
特別部隊の軍事訓練は地獄といわれるほど過酷で過去には受けたもの全員が脱落したことがあったほどだ。
これらをクリアした者だけが特別部隊に入ることができる。また、今回は強力な助っ人としてガープやセンゴクと同期で『一人軍隊』とあだ名されたピトックが参加している。油断しなければ敗北はしないだろう。
アーサー海賊団との戦いを前に隊員たちの様子を見る。皆、自信に満ち溢れた顔をしている。中には、不敵な笑みを浮かべている者もいる。
「よし。行くぞ」
隊員たちは銃器や剣など自分の得意な武器を手にライヒワインとピトックに続いた。
アーサー海賊団のアジトで2人の海賊が暇そうにしていた。
「今日も暇だなぁ。何か面白いことないか?」
「そんなことより仕事しろ。まぁ、確かに最近はあまり暴れてないから侵入者の1人や2人来てほしい。海賊でも海軍でもいいから」
「おい、そんなこと言って本当に来たらどうするんだ?」
「大丈夫だよ。並大抵の敵なら返り討ちに遭うさ。さすがにカイドウとか白ひげみたいな怪物クラスが来たら終わるけどな」
「確かに四皇は強すぎる。いくらアーサーさんが強くてもあいつらには敵わん。まぁ、おれたちを襲う確率は低いだろうけどな。多少の警戒ぐらいしとくか」
プルプルプルプルプルプル・・・ガチャ
『た、大変だ!海軍だ!海軍が襲撃して来たぞ!すぐに船長に伝えろ!』
「おいおい、マジかよ。本当に来ちゃったな。それも海軍が」
「おれは応援にいってくる。お前は船長にこの事を伝えろ!」
「わかった。気を付けろよ」
ライヒワインはアジトのある島に上陸すると、腰に差した刀を使わず海軍やCPで採用されている格闘術『六式』の指銃で海賊たちを次々と倒していった。
特別部隊は1人も欠けることなく順調にアーサーのもとまで進んでいた。これは特別部隊だけでなく助っ人のピトックの能力のおかげでもある。ピトックは超人系ツチツチの実を食べた能力者で、この実の能力を駆使し今まで数々の武功をあげてきた。ピトックは特にゴーレムを作り、それらを使役することに長けていた。ピトックの作ったゴーレムはパワー、攻撃範囲、スピード、耐久力などに優れており新世界で大きく名を馳せる実力者でも1体壊すのがやっとで、苦労して壊してもピトックによってまた作りだされるため、多くの海賊の心をへし折った。また、このゴーレムには覇気を纏わせることができ、そうすることでより強力になる。しかも、ゴーレムは一度に10体作り出すことができ、10体全てのゴーレムを合体させ巨人族に匹敵する巨大ゴーレムを作ることもできる。また、能力を抜いた基礎戦闘力も高く、年老いた現在でも海軍一の体術使いとして知られている。
襲撃から10分ほど経った。アーサー海賊団は最後まで残った5人を除いて全滅した。しかし、敵も強く、特別部隊側も実戦慣れしていない若い隊員が数人ほど怪我をしており一旦軍艦で治療を受けている。残りの5人を仕留めるために残った者もライヒワインとピトックを除いて疲れた顔をしている。それほど敵が強かったのだ。
「アーサーはおれが相手をする。ピトックさん達は残りの4人をやってくれ」
ライヒワインはそう言い終えると刀を抜いた。アーサーはさっきまで戦っていたやつらと違い相当な実力者だ。手を抜いて勝てる相手ではない。しかもアーサーの武器は巨大なサーベルなので素手だと腕を切り落とされる可能性がある。なので、ライヒワインは本気を出すために刀を使うことにした。
互いに武器を構えしばらく睨み合っているとアーサーが切り込んできた。ライヒワインは後ろに飛び何とかかわした。今度はライヒワインから攻撃をした。ライヒワインは俊敏な刀遣いで相手に反撃の隙を与えないように攻めた。アーサーは防ぐことに必死になっていた。今まで数多の強豪と戦ってきたがこんなに追い込まれることは初めてだった。気付けばライヒワインの攻撃を防ぎきれず手や足に切り傷ができていた。だが、アーサーはその程度であきらめるほど弱くない。アーサーは覇気を纏った左手でライヒワインの刀を握り止めると武装硬化した足でライヒワインを蹴り飛ばした。大きく吹っ飛んだライヒワインだが、すぐに起き上がり、凄まじいスピードで迫ってきたアーサーの鋭い一撃を受け止めた。2人は同時に大きく後ろに下がり体勢を整えた。ライヒワインが下段に構えると、アーサーが武装硬化したサーベルを大上段から降り下ろしてきた。ライヒワインは身体を沈め、掬い上げるように刀を振るった。アーサーの身体は吹っ飛んでいった。起き上がるかと思ったが、傷が深く立てないようだった。
ピトック達の方を見るとすでに終わっていて、怪我人の治療をしているようだった。安心すると同時に右肩に痛みを感じた。肩の傷に手をあてると激痛が走った。ライヒワインはアーサーを治療するため医療班のところへ連れていこうと近付くと、アーサーが素早く立ち上がり隠し持っていたナイフでライヒワインに迫った。ライヒワインはアーサーの攻撃をギリギリで避け、振り返ると同時にナイフを握った右手めがけて刀を振るった。アーサーの右手がボトリと重い音を立て地面に落ちた。アーサーが叫び声を上げる前にライヒワインの刀が一閃して、アーサーが倒れた。凄まじい剣の冴えである。
ライヒワインはアーサーが事切れたのを確認すると静かに軍艦に帰っていった。
アーサー海賊団壊滅の任務を終えたライヒワインは電伝虫でセンゴク元帥に報告をしていた。
『今回もご苦労だったな。帰ったらしばらく休暇だと皆にも伝えておけ。お前も報告書を提出したらゆっくり休め。たまには旅行でも行ったらどうだ?』
「そうだな。旅行でもしてストレス発散するよ」
『うむ。では、帰りを待っているぞ』
翌日の新聞でアーサー海賊団壊滅の記事が載り、特別部隊の名は世界中に広がり、海軍内でも特別部隊を志望する者が以前の倍に増え、ライヒワインの休暇が短くなった。