追記:なんか短編の方のランキング3位に載ってて草。修羅場好きすぎでも1つ草。
────人理継続保障機関フィニス・カルデア。
人理焼却を受けた世界を救う為に活動する、人類の希望。このカルデアに残された最後のマスターは、今日もまた、新たな英霊を呼び出した。
「あン⋯?俺かイ?そうだなァ⋯⋯。
ミュシアのバーサーカーとでも呼んでくれヤ。これからよろしく頼むゼ、マスター」
つい先程、カルデアの召喚サークルより現れた彼は人類最後のマスターである私、藤丸立香にそう名乗った。
見た目は筋骨隆々、という程ではないがかなり引き締まっている。所謂細マッチョと言うやつだ。かと言って
そんな彼は英霊としての本名である〝真名〟を明かさなかった。
当然の事だが、通常の聖杯戦争では真名は最重要機密である。英霊としての弱点を露呈する恐れがあるので基本的にバレてはいけないのだ。が、カルデアでは多方面から英霊が多数集まっているので真名を隠すまでもなく大抵バレる。そもそも隠してもメリットが無いので基本みんな真名で呼びあっているのだ。
⋯⋯ただまぁ、最近は真名隠しが流行っていて自分と何も関係ない変わった通り名を名乗る風潮があるのでその流行りに乗っかっただけなのかもしれないが。
そこの所を本人に聞いてみれば、
「真名ィ?ヤダよヤダヤダ。あんな小っ恥ずかしい名前なんぞ名乗れるかってノ。まぁ、アレダ。要するにきらきらねーむってヤツダ」
との事らしい。
どうやら彼は名前が恥ずかしくてで明かしたくないタイプらしい。曰く、『受け取る方によっちゃ笑うか微妙な気分になるかだナ』だそうだ。
まぁ人によれば本名の意味が別の地方では〘魂垂れ流してる人〙みたいな感じになるらしいし、地方によっては言葉の意味も変わってしまうのでその類の理由なのかな?
後輩兼私の初めてのサーヴァント(正確にはデミ・サーヴァントだが)であるマシュが言うには、彼が名乗った〝ミュシア〟はギリシャの地名らしい。そこから推測するに彼はギリシャ出身の英霊の様だ。
彼は『想像に任せル』と実質的なノーコメントだったが違うとも言わなかったので多分合っているのだろう。自分としてはぜひとも仲良くやっていきたいので彼の事をよく知りたいと思う。
さて、彼についての考察はこんな所だろうか。色々と聞きたいことはあるが今はいいかと思考を中断する。
これから行われるのは食堂での顔合わせだ。ここでは知り合い・友人・恋人との再会や、宿敵同士の殺し合いなどがちょくちょく発生し掛けるが、迷惑をかけると我がカルデアの
食堂に入れば多数の英霊達やカルデアの職員達が食事をとっているのが見える。相変わらずいつも通りの賑わいだ。
「ヘェ⋯、英霊連中もメシ食ってんのかイ?俺らにゃ食いモンは必要ねェハズだがねェ?」
彼の反応は見慣れたものだ。大抵の英霊───ストイックなタイプの英霊程───食事を必要としないサーヴァントが大勢でモノを食べている光景に驚くか訝しむ。当然この行為に必要性はあまり無い。魔力は雀の涙ほどしか回復しないし、そもそもサーヴァントは空腹を感じない。ただ単に娯楽として食事を楽しんでいるのだ。
というか、私としては彼らが羨ましい。こう⋯⋯乙女的に⋯⋯ね?体重とかの心配も無いしお通じに苦しむことも無い。なんだったら月のアレが無いので基本いつでも万全の状態。私の月のアレが来る度にドクター達は微妙な顔して『休んでいいよ』行ってくるし、某Pは訳の分からない薬で止めようとしてくるし気まずいったらない。人類最後のマスターの私の体調はそのまま人類の存亡に関わる。なのでここのスタッフ達は私の体調管理に人一倍気を使ってくれるのだが⋯⋯。
メインスタッフ達は基本男所帯。そのメンツに自身の周期まで把握されてるとか死にたくなる。乙女的に。
⋯⋯話が脱線した。てか途中から私の月のアレの話になってんじゃねーか。何やってんだ作者(メタいわ)。
と、まぁ大抵の魔術師はサーヴァントを顧みることなんてしないので食事をするサーヴァントは殆ど居ないらしい。カルデアに慣れた私からすれば違和感しか感じないのだが、彼の様な反応が普通らしい。
「確かに英霊の皆は食事を取らなくてもいいのかも知れないけど、どんな人でも美味しいもの食べれば元気が出るでしょ?肉体的には問題ないかもしれないけど精神的には余裕を持ってやって行きたいってのが1番大きな理由だね
どっかの皇帝も『兵站の確保は軍の基本』って言ってたし」
「はい。英霊の皆さんの中には
「待ってマシュそれ初耳なんだけど」
さりげなくとんでもないことぶちまけてやがるこの後輩⋯⋯!てか大丈夫なのかその料理。サーヴァントの霊器に影響与えるって割とヤバイ気がするんだけど。
「軍⋯⋯カ。カハハッ!わかりやすくて良いじゃねーのそいツ。士気向上は軍の基本、美味い飯食えるならやる気も出るってもんダ。生前味わえなかった美食も食えるってなら尚更、悪くないわナ」
1人内心でカルデア料理人達に戦慄していると彼は何処か納得した様な顔だ。軍を率いていた経験があるのかも知れない。受け入れるのはそこそこ早かった。
「そんじャ、オレも早速食っていいかマスター?座じゃ知り合い連中と酒か殴り合いしかしてなかったんでナ」
おぉっと?何気なくバイオレンスなカミングアウトが聞こえた気がする。これはまたそう遠くない内にカルデアで喧嘩という名の災害が発生しそうだ。マシュも不安そうな顔をしている。
そうなった時どう鎮圧しようかと悩んでいると、既に彼は食堂内に入ってしまっていた。慌てて追いかけると既に彼はここの主(と言われるほど馴染んでいる)であるエミヤの所にいた。
「む、マスターか。そこの彼は見ない顔だが新しい英霊か?」
「うん、さっき召喚されたばっかの人で名前は⋯」
「ミュシアのバーサーカーとでも呼んでくレ。本名は色々あって名乗りたくねェんダ」
「成程。まぁ理由は人それぞれだ。あまり詮索はしない事にしよう」
「ありがとヨ。あんちゃんなかなか話がわかるナ」
「あんちゃんはよしてくれ。そんな風に呼ばれた事がないからむず痒い。ああ、まだ名乗って無かったな。
私の真名はエミヤ。君達の様な人理に名を刻んだ英霊には及ばないが多少はやれると自負しているよ」
エミヤの自己紹介を聞き、くつくつとバーサーカーが笑いを漏らす。
「オイオイ、あんちゃんかなり〝やれる〟だロ?それで多少なんて嫌味だゼ?オレなんて知ってる奴ァ殆どいねェ様なマイナー英霊ダ。知名度補正もねェしあんちゃん相手にするのはかなり苦労するだろうサ」
「勝てない、とは言わないのだな?」
「やる前から勝ち捨てる様な負け犬にはなりたくないんでネ」
「ククッ、違いない」
「⋯⋯お二人とも、仲良くなるのが早いですね」
確かに、と思う。エミヤは割と周囲に壁を作る方だ。本人の出典故か自分を卑下する傾向が強く、本質に触れられたくないタイプの人間。真名も自分から明かす様なことは少ない。それが初対面の相手と割と親しげに話しているのは、正直違和感が凄い。どこか自分と通ずるものでも感じたのだろうか。
「んじゃマ、とりあえずなんか頼むゼ。オススメとがあるかイ?」
「この食堂の料理は大体がオススメのものさ。宗教的な理由で食べられないものなどはあるか?」
「いんヤ、特にはねぇナ。酒があるならなおイイガ。ワイン以外でナ」
「成程了解した。では今は丁度魚介系が豊富でな。アクアパッツァとシーフードパエリアでも用意しよう。昼からの酒はマスターやマシュの教育に悪いから遠慮してくれ」
「アッチに酒クセェのが集まってるガ?」
「………あれは例外だ」
そう言いながら食堂の一角を指さすバーサーカー。そこにたむろするのは酒好きな日本人組とフェルグス達を初めとするケルト勢。他にも荊軻やドレイク等のチーム飲兵衛共。遠目で子供のサーヴァント達が興味深々に見ているがブーディカを始めとする保護者会がシャットアウトしている。
……うん、控えめに言って教育に悪すぎる。令呪でしばらく禁酒してもらうべきかもしれない。
苦々しげな顔のエミヤに若干同情的な表情を浮かべるバーサーカー。この状況に自分が突っ込むのも悪いと思ったのだろう。酒についてそれ以上言う事は無かった。
「む、マスターにマシュではないか。そなた達も食事か?そちらは新人のサーヴァントの様だが」
「あ、
私達の後ろから別のサーヴァントが顔を出す。真名はアタランテ。ギリシャに名を轟かす麗しの狩人だ。本人曰く
___ピクリとバーサーカーの方が震える。たまたま彼を見ていたから気付けた程度の些細な揺れ。思わず彼の正面に回り込み、その顔を見てしまったのは幸か不幸か。
「はい、先程召喚された方でミュシアのバーサーカーさんです」
「ミュシアだと?ふむ……知り合いには
その表情は___限りなく憎悪に近い『殺意』。カルデアにいる
「エミヤッ!」
「分かっている!!」
反射的に叫んだ声に飛び出す赤い弓兵。瞬間的にバーサーカーとアタランテ達の間に入る。思わず固まってしまったマシュを庇いアタランテも戦闘態勢で前に出た。
周辺のサーヴァント達も食事の手を止め、いつでも動ける様に構える。英雄王や太陽王のような剛毅な方々はむしろ面白がって見物の体勢に入っているが、それでも万が一の時は動くのだろう。
そして、彼がゆっくりと振り返る。その顔はアタランテのみを真っ直ぐと見詰めている。
「なァアンタ。俺の聞き間違いならすまねぇんだがナ?今『アタランテ』っつったカ?」
「……あぁそうだ。お前の言うアタランテが何者かは知らんがギリシャのアタランテならば私以外におるまい」
「そうカそうカ、なるほどナ?………ようやく見つけたぞこのクソ
「んなっ!?」
「…?せ、先輩
どこか軽薄そうな雰囲気は也を潜め、乙女の口からはとても言えない言葉がアタランテに向かい吐き捨てられる。最初の喋り方等はあくまで外面であり、こちらが彼の本性の様だ。
その瞳はいつの間にか
「……誰だお前は?少なくとも私に求婚してきた相手にお前の様な戦士はいなかったハズだ」
「ハッ、テメェ見たいなアバズレクソビッチに求婚するような変人共と一緒にするんじゃねェよグズが。
テメェの穴に突っ込むくらいなら犬とファ○クした方が万倍マシだボケ」
「貴様……そろそろ口を閉じた方が身の為だぞ」
「知るかよ。幾多の聖杯戦争を巡って漸く会えたんだ。この程度で言いたい事を終わらせられるか」
恐らく、彼の口振りからアタランテ自身の生前の知り合いであるのだろう。彼女の関係者となると恋人疑惑のあったメレアグロスか、それとも父であるイアソスか、はたまた彼女は認めたがらないが夫のヒッポメネスだろうか。近くに居たイアソンとケイローン先生に確認の意味を込めて視線を送るが帰ってきたのは否定の意を込めた首振り。
では消去法でイアソスだろうか?だが自分が知る限り彼に英霊として召し上げられるほどの逸話があっただろうか?少なくとも彼よりも先程述べたメレアグロス達の方がまだ納得出来る。だが彼らでは無いという。
「……矢張り見覚えが無い。人違いではないのか?」
「……そうかい。まァ当然か」
知らないというアタランテの言葉を、寂しそうな表情を浮かべながら肯定するバーサーカー。
だが、次の瞬間には先程の憎悪の表情へと戻っていた。
「なァアタランテ。キュベレーの神域にてヒッポメネスと交わり獅子に姿を変えられた愚かなる女よ。
『パルテニオス山』という名前を聞いても思い出せないか?」
「知らん。お前が何を言いたいのかも分からんし、少なくとも私はヒッポメネスなどとと関係を持ったことなどない」
「………そうかい。テメェのくだらねぇ誓いを通す為にはテメェが産んだガキの事すら無かったことにするってか?
なァ………
「はっ?」
「へっ?」
「あ?」
『???』
上からアタランテ、私、バーサーカー、その他大勢。意味がわからないといった様子のアタランテ。まさかのカミングアウトに驚いている私。アタランテの反応が以外だったのか怪訝な顔のバーサーカー。???だらけの、そして状況を理解して興味を失ったり面白がって酒盛りを再開するサーヴァント達。
最も先に正気に戻ったのはアタランテだった。
「待て、待て待て待て待て待て!?息子!?誰の!?」
「テメェのだよ耄碌したか?」
「し、知らんぞ!?私は知らん!膜だってある!?なんなら見せるぞ!!?」
パニックになっているのかとんでもない事を気づかず叫ぶアタランテ。その際
「オイ、この期に及んでまだしらばっくれる気がテメェ……!
俺の真名は
座にもそういう英霊として定義されて存在している、正真正銘テメェの子だ!!」
「…………………………」
___なんじゃそりゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!?!?!?
カルデアに処女(疑惑)の悲鳴が響き渡る。どうやら、また血縁関係での揉め事が発生した様だった。
もしかしたら続くかも。