無数にある世界、時には担当外の世界の不条理や理不尽展開にモヤモヤしてる神様も居るに違いない。
これは、そんな神様の無茶ぶりに全力で答える転生者?のお話。

五月十一日、匿名解除

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神様転生杯として大急ぎでプロット拵えて仕上げました。
ノリと勢いだけの作品ですが、宜しければどうぞ。

五月十一日匿名解除


ソレは紛れもなくヤツさ

 

 その空間は母なる海の深淵か、はたまた遥かなる蒼穹の果てにある虚空の深淵か。

 無数の光の粒が煌めいては消えていくだけの空間に、一人の『白』と称すべき女性が瞑目して佇んでいる。

 その女性は芸術的とも言える体つきをしていながら、その体を覆うモノは透けて見えるような薄絹が如き羽衣のみで。

 だがそれでも、女性が纏う空気は厳粛で神秘的なものであり、淫猥な気配を滲ませることはなかった。

 

 

「……──」

 

 

 名目していた女性が、何かの名前と思しき単語を諳んじると共に空間に漂う煌めきの中から、まるで呼びかけられて微睡から目覚めたかのような様子で。

 一つの煌めきがゆっくりと浮き上がり、女性の前でうすぼんやりとした人型の輪郭を創り出す。

 

 

「急な魂の呼びかけ、申し訳ありません」

 

『何、構わんさ。女神様と私の仲だからな』

 

 

 女性がゆっくりと口を開き、目の前に顕現した人型の存在へ目を伏せながら謝意を示し。

 人型の輪郭を持つ何かは、肩を竦めるかのような動きを見せながら男性とも女性ともとれないくぐもったかのような声で応じる。

 

 

「幾度も危機を退け、幾度も世界を救った貴方に頼みたいのです」

 

『女神様に請われては断れまい、詳しい話を聞かせて頂こう』

 

 

 女神が指を鳴らすと共に空間に床と机、そして向かい合う二つの椅子が創り出され。

 女神が腰掛けると共に、輪郭もまた向かいの椅子へと腰掛ける。

 

 

「貴方に頼みたい事、それは世界の救済です」

 

『ふむ、いつものヤツか』

 

「はい、いつものヤツです」

 

 

 輪郭が腕を組むような動きをしながら漏らした呟きに、女神は応じながらまた指を鳴らすと。

 机の上に半透明の映像が映し出される。

 

 

「但し本来の流れでも、現地住民の手によって世界は救済されます」

 

『しかし救済されない者がいる、そう言う事だね?』

 

「御明察の通りです、一人の勇者と言われる存在が己の幸せも絆もなげうって世界は救われ、めでたしめでたしと言うのが本来の流れとなっています」

 

『なるほど理解した、いつもの女神様の病気が出たというワケか』

 

 

 慈悲深く公平さと善性を尊ぶ付き合いの永い女神の無茶ぶりの内容を理解し、輪郭はやれやれと言った様子で肩を竦める。

 だが、彼なのか彼女なのかはともかくとして輪郭は女神の頼みを断る気は欠片もなかった。 

 

 

『それで装備や力の支給はあるかね?』

 

「申し訳ありません、現地の神に気取られる恐れがある為こちらから渡す事はできません」

 

『現地調達という事か、いつも通りだな』

 

「ええ、いつも通りです。現地の神は人と魔の争いを嗾けては潰える命を見て喜ぶ邪神です、警戒をするに越した事はありません」

 

 

 外から勝手に干渉しようとしているという面だけ切り取ってみれば、女神と呼ばれる存在もまた大概であるが。

 その事を指摘できる輪郭体は長い付き合いから言うだけ無駄であると考えているが故に、指摘する存在は誰も居ない状態であった。

 

 

『そうなると現地の存在に転生ないし憑依する形か、対象の指定はできるかね?』

 

「ええ、対象の目録はこちらとなります」

 

『ふむ、なるほど』

 

 

 女神が軽く手を振れば彼女の手の中に厚い辞典じみた書籍が現れ、それを軽く輪郭へと放り投げ。

 輪郭は事も無げにそれを受け取ると、村人の子から貴族の嫡男はては現地の野生生物や魔物まで収められた項目が書かれた辞典を捲っていく。

 

 

『良い物があるな、コレにしよう』

 

「……本当にコレで、よろしいのですか?」

 

『こちらの方が動き易そうなのでな』

 

 

 やがて輪郭は一つの頁で捲る手を止め、その頁を開いたまま女神へ辞典を返せば。

 そこに描かれていた存在に女神はその端正な眉を歪め、本当に良いのかと輪郭へ念押しするも輪郭は事も無げに言い切る。

 コレは翻意させるのは難しいと女神は判断したのか、小さく溜息を吐くと指を鳴らして今までそこに存在したテーブルと椅子を消し去り。

 

 両腕に燐光を集めて、目的の世界へ輪郭を飛ばすべくその光を輪郭へとゆっくりと注ぎ始める。

 

 

「御武運を」

 

『パーティの準備をしておいてくれ』

 

 

 そしてゆっくりと輪郭は光に包まれて空間から飛びあがっていき。

 やがて、その光を空間から消した。

 

 

 

 

 

 鬱蒼と茂った山林の中。

 剣を腰に提げた赤毛の少女が、仕立てのよいドレスに身を包んだ少女よりも幼い金髪の幼女の手を引いて必死に足を動かしており。

 その後ろを、薄汚い格好に身を包んだ男達が手に粗悪な剣や斧を持って二人を追いかけている。

 

 

「もう少しで、もう少しで森を抜けられるから……頑張って!」

 

「はぁっ、はぁっ……はい……!」

 

 

 時折足を縺れさせながらも、必死にその小さな足を動かす幼女へ声をかけながら少女は走る。

 赤毛の少女は幼いころから正義感が強く、魔物に苦しむ人達を何とかしたいという想いから故郷を飛び出したのだが。

 その道中で、怪我を負った裕福な身なりの夫婦が……娘が攫われてしまったと嘆いていた事から、正義感と義憤に駆られるまま救出に動いたのである。

 

 その結果、迅速に動いたおかげもあって山中で男に担がれている幼女を救い出す事に赤毛少女は成功したのだが。

 男が大声で仲間を呼んだ事により、多勢に無勢の状態となった事で逃げの一手を打って今に至る。

 

 

「きゃぁっ!?」

 

「っ、大丈夫?!」

 

 

 息も絶え絶えになりながら手を引かれて走り続けた幼女であるが、元来体力に乏しかったのかふらつき転んでしまい。

 赤毛少女は慌てて振り向いて幼女を助け起こそうとするが……。

 

 

「へへへ、随分と逃げ回ってくれたなぁ」

 

「ガキ攫うだけだからお楽しみ出来ないかと思ってたが、お嬢ちゃんイイ体してんじゃねぇか」

 

「……逃げられそうにないか」

 

 

 二人が走り出すよりも早く男達が二人へと追いつき、舌なめずりしながら武器を手にゆっくりと滲み寄る。

 その様子に幼女は小さく悲鳴を上げて赤毛少女の背中へと隠れ、赤毛少女は覚悟を決めて腰に提げていた長剣を引き抜いた両手で構えて男達と対峙する。

 

 

「このまま真っすぐ逃げて、その先に貴方のお父さんとお母さんがいる筈だから」

 

「は、はい……!」

 

 

 幼女の足音が遠ざかるのを確認すると、赤毛少女は男達の中へ剣を振り上げながら飛び込んでいく。

 当然男達もまた迎え撃とうとするが、少女の剣捌きは男達よりも高い次元にあるのか……数が多い筈の男達が、少女の剣閃が閃くたびに一人また一人と呻き声を漏らしながら地面へと倒れ伏していく。

 

 これならば逃げるよりも迎撃に回ったほうが良かったかなどと赤毛少女が考えながら、最後の一人を斬り倒そうと剣を構えたその瞬間。

 幼女が逃げた方角から、甲高い悲鳴が上がった。

 

 

「えっ、今のは……」

 

「へへ、隙ありだぁ!」

 

「きゃぁぁ!」

 

 

 思わずそちらへ振り向いてしまった赤毛少女の様子に、今にも戦意喪失寸前だった男は赤毛少女へと掴みかかり。

 戦闘中に気を逸らしてしまった事を焦った少女が態勢を整えるよりも早く、少女に組み付いてその自由を封じる。

 

 

「全くお前達はガキ一人の確保もできやしないのか」

 

「へへへ、旦那……申し訳ありやせん」

 

 

 少女に斬られ幾人もの破落戸が地面に転がり呻き声を上げる中、ローブを着込み無精ひげを生やした男が現れる。

 男の手には魔術の使い手の証である杖が握られており、反対側の腕では気を失った幼女が抱えられていた。

 

 

「っ、お前ぇ!!」

 

「おっと動くなよお嬢ちゃん」

 

 

 正義感が導くまま、激高し赤毛少女はもがくが体格的に負けている関係で男の拘束から逃れる事は出来ない。

 

 『本来の流れ』ならば、幼女は身代金要求の為の人質に使われた末にごろつき達に心身を弄ばれて命を落とし。

 赤毛の少女もまた男達に囚われ、冒険者達に救い出されるまで凌辱の日々を送る事になる。

 

 

「お前達なんか!騎士様や冒険者がすぐにやっつけられてしまうぞ!」

 

「おお怖い怖い、だが今この場には居ないのだよ。お前達を救うような存在はな」

 

 

 もがき暴れ、負け惜しみにも似た事を赤毛の少女は叫ぶが魔術師の男は相手にすることなく。

 下品な笑みを浮かべている男達に、その娘は好きにしてよいと告げる。

 

 そう、救い出されるまで少女は心と体に消えない傷を負う目に遭う……その『筈』であった。 

 

 

「居るさ!ここに一人な!!」

 

 

 拘束された赤毛の少女と拘束している男、そして幼女を小脇に抱えた魔術師の頭上から声が響く。

 思わず見上げた男達と少女、その視線の先にいたのは……。

 

 均整の取れた、まるで彫刻のようなシルエット……否、彫刻そのものとも言える体つきをした存在であった。

 大樹の枝の上に立つソレに木漏れ日が差し掛かり、その体を光が突き抜けて幻想的な光の乱反射を生み出しながらソレは勢いよく枝から飛び降り。

 

 人間や生半可な魔物であれば地面に叩きつけられて即死不可避な高さを、両足と片手の3点を地面へつける事によって衝撃を分散させ大地を陥没させながら着地する。

 

 

「クリスタルゴーレムだと、なんでこんな所に……!」

 

 

 幼女を小脇に抱えた魔術師が呻くように呟く。

 そう、飛び降りてきた人影は人間ではなかった。

 一糸纏わぬ精密な彫刻じみたその体は全身が透き通っており、と一つの芸術作品とも言える形をしていた。

 

 

「ゴーレムなどと言う、自意識を持たぬものと同一視してほしくないものだな」

 

「あべし」

 

 

 驚愕のままに呟かれた魔術師の言葉、しかしその言葉に不服だとでも言いたげな様子で言葉を放ちながら赤毛の少女を拘束している男を一撃で昏倒させ。

 紳士的な動作で少女を抱きとめると、自身の背後へと少女を隠す。

 

 その後の流れを簡潔に述べるなれば、一言でいうならば。

 『蹂躙』もしくは『虐殺』と称するのが妥当と言える光景が繰り広げられた。

 

 そして。

 

 

「あ、あの、アナタは一体……?」

 

「何、通りすがりのクリスタルガイさ。 レディ達に傷がつかなかったのならば何よりだ」

 

 

 魔物であるはずのクリスタルゴーレムが、自分達を襲うどころか助けたという状況に赤毛の少女は困惑しながらも。

 今も気を失っている幼女を庇いながら、魔物へと頭を下げて感謝を示すが水晶の彫像は満足げに頷くと、少女達へ背を向けて歩き去ろうとする。

 

 そんな、聊か気障すぎる存在の背中へ向けて赤毛の少女は声を張り上げた。

 

 

「ありがとうございました! また、会えますか!?」

 

「……レディが、その歩みを止めないなら必ず会えるさ」

 

 

 呼びかけられた声に、水晶の彫像は振り向くことなく答えると。

 少女には理解できない、右手の親指を立てる仕草を見せて森の奥深くへと消えていくのであった。

 

 

 その後、少女が正義の旅路を続ける最中……少女が危機に陥る度にどこからともなく水晶の彫像が現れて危機を救い。

 時には少女関係なく、水晶の彫像が世界の歪みと悪意を真正面から粉砕したり激戦の最中で右手を喪い、金色の魔法金属で鉤爪を装着して復活する事となったりする。

 

 しかしそんな事は、消えていく背中へ大きく手を振る赤毛の少女は知る由もない事であった。

 

 




コブラじゃ……誰だお前?!

今思うと、ネタぶち込んでるのに中途半端な出来で滑り倒した感

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