銀嶺が青むまで   作:小栗チカ

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季節は暦の上では初冬に入り、私が住むこの山も朝晩の気温が氷点下を下回ることが多くなりました。

大崩壊で文明は概ね崩壊し、女王討伐戦で止めを刺されそうになってどうにか踏みとどまった現在。

水道電気等のライフラインの復旧は、この地にわずかに存在する人間の保護施設に回されており、吸血鬼の対応は手をつけられていません。

実に不公平な状況ですが、何もかもが不足している現状では致し方のないお話。

そのため私たちが暖をとるためには、原始的な方法を使うことになります。

それは、この山や周辺の倒木をかき集めて薪にし、それを燃料に暖を取ること。

平地とは違い、この山は真冬になれば連日氷点下を下回り、春が来るのも平地よりも遅いため、暖をとることは生死に関わります。

吸血鬼は、致命傷を負って霧散した時に記憶を無くす欠陥があり、嫌な記憶ならまだしも、生きるために必要な記憶を無くしたら堕鬼へ至る悪循環が発生しかねません。

ですから、薪割りはこの山で冬を越すために必須のスキル。

そういう訳で、今日は薪割り初心者の皆さんをお招きし薪割り教室を開いていました。

 

「結構大変だな。薪割り」

「ああ。めっちゃ背筋使うわこれ。普段、あんまり使えてないんかね」

 

汗を拭きながら言う二十代前半頃の男の人二人は、先程まで薪割りに悪戦苦闘していました。

 

「シューちゃんの得物、片手剣だもんな。両手武器とはそもそも重さが違うし、使う筋肉も違うんじゃね?」

「……なあ、ゴロちゃんよ」

「ん?」

「俺、戦斧使いに転職しよっかな。そしたら薪割りもスムーズにいけんじゃね?」

「それは止めねーけど、薪割りのために戦斧使いになるって動機としてどうよ?」

 

すると、その横でやはりお疲れ気味の十代前半あたりの少年が、両手を頭の後ろにあててボヤきました。

 

「あーあ、早く薪割りタイボクダン使えるようになりてーなあ」

 

薪割りタイボクダンとは何なのでしょう。

彼の開花していない錬血か何かでしょうか。

この三人、二ヶ月ほど前から将来この地を旅するべく、知識と技術を習得するためにこの山で修行をしています。

戦斧使いへ転職を考えているシューちゃんと呼ばれた男の人は巻機(まきはた)さん。

明るく陽気で猫好きな、歌のとても上手い三人組のリーダーです。

その彼と会話をしているのは、ゴロちゃんこと黒部さん。

三人組の冷静沈着なブレーキ役で、日々ご苦労が絶えない分、周囲の人の評価と信頼はお高めです。

そして、最年少のイッシーこと石鎚(いしづち)さん。

三人組のアクセル役で、生前はゲームが大好きだったらしくそれらしき言葉をよく使います。

一休みしている彼らに、私は声をかけました。

 

「休憩はそろそろおしまいにして、作業を続けましょう。真夜中に凍えて過ごすことになりますよ」

「わーってるよ」

 

反抗的な態度で石鎚さんは言い、立ち上がると斧を手に取って丸太をセットします。

姿勢を整えて、大きく振りかぶり、

 

「おおおらっしゃああああっ!!」

 

叫んで、斧を丸太に叩きつけました。

しかし割れません。

 

「ああっ! また食いこんじゃったよ、チクショウが!」

「頑張れ、イッシー!」

「戦鎚使いの意地、見せてやれ」

 

賑やかに薪割りをする彼らを横目で見つつ、私は山小屋風の家に目を向けます。

この家は、元々は祖父母の終の住処でした。

大崩壊時に祖父母は亡くなり、ライフラインは全滅、窓ガラスも全損。

家具もいくつか倒壊し、今は修復できていますが壁の一部も崩れました。

それでもその形は奇跡のように綺麗に保たれています。

その軒先には、瘴気を浄化し輝き続けるヤドリギが生えていました。

ここが、この山と周辺の山の管理を任された私の拠点です。

そして日の当たる窓辺には、ポイント柄と茶トラ柄の猫が二匹、寄り添ってお昼寝をしていました。

私の飼う大切な猫たち、ポイントさんと茶トラさんです。

風は冷たいですが、日の光がたっぷり注ぐこの窓辺は彼らの最近の定位置になっていました。

今年の春先に拾われた彼らにとっても、この山で過ごす最初の冬になります。

快適に過ごしてもらうため、私も頑張らないと。

そうして三人の薪割りを監督しながら、私も薪割りを含めた家事を行い、日は山の向こうへと隠れ、周囲は薄暗くなってきました。

三人は苦労しつつも賑やかに薪割りを続け、用意していた丸太を全て薪にすることができました。

 

「お疲れ様でした。これが薪割りの一連の作業になります」

 

汗を拭き、水を飲む三人に私は声をかけました。

 

「しばらくは私とベティさんで監督しますが、貴方がたの仮住まい、避難小屋の薪は皆さんで計画をたてて調達できるようになりましょう。それが最終目標です」

「ウッス」

 

ベティさんとは、集落跡地に住むエリザベスさんのこと。

彼らの生活をサポートしてくれています。

三人は頷いたものの、自分たちの割った薪の量に表情を暗くしました。

 

「薪スト、大食いなんだよな」

「この量じゃ数日持つかどうか」

「そうだ! 省エネ対策として、太陽が出ている間だけ活動するってどっすか?」

「なるほどな、賢い!」

「賢くねーよ。もっと寒くなって連日雪降ったらどうするんだ? 冬眠するしかなくなるぞ」

「あー、そーだったー」

 

黒部さんの指摘に、頭を抱える巻機さんと石鎚さん。

私はさらに注文をつけました。

 

「それと斧ですが、お早めにご自身で見つけるか商人の方から購入するようにして下さい」

「はい! 質問!」

 

巻機さんが元気良く手をあげてたずねてきたので頷きました。

 

「どうぞ」

「戦斧でもいっすか!」

「大木を切るならともかく、大きすぎて扱いが難しいと思いますよ」

 

私はいつもの調子で答えます。

 

「先ほど勢いをつけすぎて、割れた薪が足に当たりましたよね。慣れない上に威力が大きすぎると、怪我をする可能性があります。戦斧使いになるのは構いませんが、最初のうちは普通の斧でやることをお勧めします」

 

すると巻機さんは空笑いの表情で肩を落としました。

 

「やっぱそう上手い話はないかー」

「ありませんね。地道に頑張りましょう」

「ウーッス」

 

明日の予定を告げ、三人は薪を抱えるとヤドリギで集落跡地へと戻っていきました。

昨日は血涙集め、今日は倒木集めからの薪割り。

そして明日以降は山道の整備と堕鬼の駆逐と、これから厳しさを増す冬に向けて彼らの忙しい日々は続きます。

 

道具の片付けをしながらふと窓辺を見れば、茶トラさんとポイントさんがそろって姿勢よく、ちょこんと座って何処を見ていました。

ジッと西の山道に顔を向け、耳を済ませている様子。

嗅覚こそ犬に劣るものの、聴覚においては犬の二倍はあるとされる猫。

なにか聞こえているのでしょうか。

片付けを続けようとした時、土間にある無線機から呼出音が鳴りました。

ベティさんですかね。

家に入り、インカムに手を伸ばしました。

 

≪ネーネ、緊急事態だよ≫

 

予想通りベティさんでしたが、いつもの朗らかで落ち着いた声は緊張を帯びたものになっていました。

 

「どうかされましたか?」

≪フランの散歩中に要救を三人見つけた。その内の一人、人間の子どもだよ≫

 

背後で尻尾を膨らませ、様子見をしている猫たちの視線を感じながら、この山の平穏が一瞬にして破られたことを悟ります。

人間の子ども。

その存在が、この山に初冬の嵐が訪れたことを告げたのでした。

 

■■■

 

ベティさんから情報を聞き出し、ここへ案内するように告げて一度無線を切りました。

その後すぐ、この地域を管轄する治安維持部隊へ通報します。

ベティさんの話では、人間の子どもの他にも、三人ほどの人間が囚われているとのこと。

そこで治安維持部隊は、今こちらへ来ている人間の保護は私に任せ、取り急ぎ他の人間の保護のため動くことになりました。

 

≪恐らく奴さんら、俺らが動くことを予想して人間を連れて移動しているだろう≫

 

応じたのは前職でお世話になった、リーヴァさんです。

 

≪でも、軟禁状態だった人間を連れての移動距離なんざたかが知れている。おおまかなスタート地点はわかっているんだ。周辺のヤドリギを抑えておけば網にかかるだろうよ。人間連れで日も暮れている中、夕飯を探す堕鬼やヤンチャな吸血鬼を相手にしたくねーだろうしな≫

 

女の子とマンマのご飯があればどこでも生きていけると豪語し、的確で素早い判断とどんな時も陽気な態度で私たちを率いていた、前職の小隊長。

私の射撃の先生でもありました。

 

≪また動きがあったら連絡する。そちらも落ち着いたら話を聞いておいてくれ。それと、追っ手が来ているかもしれんから念のため備えとけよ≫

「了解しました」

 

報告と連絡を終えて後ろを見れば、尻尾をふくらませた猫たちが寄り添って私を見ていました。

 

「こんな時間ですけど、お客様が来ますよ。しかも人のお子さんもいます。快く迎え入れてあげましょうね」

「にゃも、にゃーも」

 

独特の鳴き声を上げる茶トラさん。

何を言っているのかは不明ですが、そろそろ猫たちのご飯の時間です。

 

『わかったー、ご飯まだー?』

 

こんな感じのことを言ったのではないかと。

なので私はインカムを置くと、靴を脱いで部屋に上がりました。

 

「ええ。戸締りしたら、ご飯をあげますよ」

 

ご飯という言葉に反応し、茶トラさんは鳴きながら、ポイントさんは黙って私の後についてきます。

 

『ごはーん、ごはーん、ご飯何かなー。ボクね、お魚食べたい。ブリ! ブリがいい! あ、でもアジもサンマもマグロも好きだよー。ねーねー早くご飯ちょうだーい』

 

なーんて。

ああ、食べたいですね、ブリ。

窓を閉めてランタンを灯しながら、私はブリに思いを馳せます。

大崩壊が起こる前なら、私の故郷があった国はブリが旬の季節になっていたことでしょう。

刺身、煮物、蒸し物、焼き物、揚げ物、鍋。

代表的な料理といえば、ブリ照り、ブリ大根、ブリから、ブリしゃぶ。

洋風に、チーズとトマトと一緒にオーブンで焼いてもいいですね。

ブリはどんな料理でも活躍する、冬の主人公格のお魚です。

しかし、海が干上がったことで正真正銘の海産物は全滅同然。

ブリはあまたのお魚同様、今となっては幻の存在となっています。

ああ、お魚が恋しい。

戸締りを終え、猫の夕飯の用意。

茶トラさんの鳴く声とポイントさんの強い視線を感じながら手を動かし、ご飯をすぐさま提供。

一心不乱に食べる猫たちを見届け、すぐに来客準備を始めました。

 

部屋をセットし、お茶道具や着替え、タオル大小などを用意。

食事は人の子どもの状態を見てから取り掛かることにしました。

アレルギーとか怖いですし。

そもそも動物アレルギーがあった場合、家には入れませんのでお庭に薪ストーブを設置できるテントを設営し、そこで宿泊することになります。

テントはファミリー用の大型、寝具等は家に勝るとも劣らないグランピングレベルです。

手間はとってもかかりますが、要救助者にひと時の安心と安全を与えることが、この拠点の在り方の一つなのです。

着々と準備を進めていると、ポイントさんがご飯から目を離してリビングを見つめていました。

また何かの音を聞いているのでしょうか。

腕時計を見れば、そろそろベティさんたちが到着するお時間。

綿のジャケットを羽織ると、宿泊セット一式を詰めたカゴとランタンを持って外に出ました。

 

日はすっかり落ち、玄関脇に生えているヤドリギがおとずれた闇夜の中で煌々と輝いています。

日が落ちて気温が一気に下がった上に、風も吹いているため、じっとしていると心までも冷え込むような気がしました。

さらに冷え込んで雪が降ったら、あの時のように。

あの討伐戦の時のように。

周囲が暗くなり、吹雪く闇夜の雪山が迫ってきている気配を感じ、深呼吸で心を落ち着かせます。

心の傷が反応しかけていました。

ですが。

こんなこともあろうかと、私には対抗策を用意していました。

片付け損なっていたテーブルにランタンとカゴを置くと、一斗缶の焚き火台で焚き火をすることにしました。

風で火付けに手間取りましたが、無事に火はつき良い感じに育ってくれました。

暖かい。

ちょっと危うかったけど、自力で現実に留まれました、私。

赤にオレンジに揺れながら輝く光と熱に手をかざし、思わずホッとしました。

いつもの空色のハードシェルではなく、綿ジャケットにしたのもこのため。

化繊の天敵でありちょっと煙臭くなるのが難点ですが、この温かさは得がたいもの。

これでいいのです。

私は目を閉じます。

危うくとも踏みとどまることが大事。

この調子で心のバランスを保ちながらこの冬を乗り越えたいものです。

 

そうして暖まっていると、犬の吠える声が聞こえてきました。

間違いようもありません。

この山唯一の犬にして最強の生物、フランチェスカの登場です。

彼女は私を見ると、走る速度を落としてこちらへとやって来ました。

赤ちゃんなら丸呑みできるのでは? と思えるほど大きな口を開け、尻尾をガシガシと振り、ヤドリギと焚き火の光で照らされた目はキラキラしていました。

私は手を伸ばし、彼女の顎と耳の後ろを撫でます。

その表情は、その体躯や目付きからは想像もできないほど、明るく愛嬌のあるもの。

お座りをしたフランチェスカは、真っ直ぐに私を見ました。

 

『こんばんは! フランチェスカ、ただいま到着しました! ご主人たちはもう少しで着きます! 私、堕鬼に気をつけながら頑張って走ってご主人たちをご案内しました! さあ、褒めてください! そして水をください!』

 

とでも訴えているんでしょうか。

 

「お疲れ様です。ちょっと待っていてください」

 

律儀にお座りのまま待つ彼女に用意していたお水を与えると、彼女は大喜びで水を飲み始めました。

体が大きく運動量も多いので、水や食事の量は猫たちとは比較になりません。

稼いだヘイズの大半はフランのためにあっという間に消えていくと、ベティさんは眉を下げながらも楽しそうに話していました。

一心不乱に水を飲んでいたフランチェスカですが、不意に顔を上げると、尻尾を激しく振って今来た山道へ体を向けます。

見れば、ヤドリギに負けじと輝くLEDライトがこちらに向かってきていました。

闇のベールから抜け出した影は四体。

先頭を歩く女の人がマスクを取り、片手を軽く上げました。

 

「ハーイ、ネーネ。連れてきたよ」

「こんばんは。お疲れ様です、ベティさん」

 

この方が、ここから少し下ったところにある集落跡地の拠点の主、エリザベスさん。

ちょっと皮肉屋ではありますが、明るく面倒見の良い、温かい血の通ったリアリストです。

フランチェスカが喜んでご主人の元へと駆け寄りました。

 

「フラーン、お疲れ様。ネーネから水は貰った? そうかいそうかい。良かったねえ、頑張ったもんねえ」

 

ベティさんの足元に体をグイグイくっつけるフランチェスカに、ベティさんは笑って屈み、彼女の身体を撫で回しました。

仲良しで大変に結構なことです。

その後ろで三人の人影が、呆気に取られた様子で周囲を見渡し、そして私を見ました。

ベティさんと同年代くらいの女性と、十代前半あたりの女の子と男の子。

自動的に錬血が発動し、三人の脈を捉えます。

……どうやら、あの男の子が人のようです。

三人の視線の集中砲火を浴び、私は三人の前に進み出ました。

姿勢を正し、三人を見据えます。

 

「お疲れ様です。そして初めまして。私はネネ・モリヤマ。ここと周辺の山の管理をしている吸血鬼です。ようこそ、ヴェインの果てへ」

 

お決まりの挨拶で、呆然と私を見つめる三人を迎え入れました。

そして、目の前の三人もマスクを取り自己紹介をしてくれました。

大人の女性がシーハン・リンさん──林诗涵さん──で、白味が強い灰色の髪をした女の子はシーハンさんの娘クゥシン・ワンさん──汪可馨さん──。

名前からして、私の故郷の近くにある大国のご出身であることを察しました。

そして人間のウィリアムさん。

金髪に青い目をした、少しぽっちゃり体型の男の子です。

ただウィリアムさんは、心因性の失声症を患っており、筆記でやり取りをしているとのこと。

大体の事情はベティさんからうかがっているので必要な情報をまず聞き出し、三名様に温泉に行くよう申し伝えます。

冷え込みの厳しくなっている山道を歩いてお疲れでしょうし、そこそこに皆さんばっちくなっていましたので。

しかし。

 

「わ、私、ばっちくないですっ!」

 

何故か憤慨するクゥシンさんに、母親のシーハンさんは呆れた表情を浮かべました。

 

「昼間に走って滝汗かいてたし、地面に転がってたでしょ。今さら見栄張らなくても」

「マーマは黙ってて。ねっ、リアム、私ばっちくないよねっ?! 臭くないよねっ?! ねっ! ねっ?!」

「落ち着きなさい。リアムを困らせないの」

 

気圧されるウィリアムさんを庇うように、シーハンさんが娘さんをなだめます。

乙女心と冷静さを保とうとする心のせめぎ合いで、挙動不審になるクゥシンさん。

何となくベティさんと目線が合います。

感情が希薄かつ振幅が乏しくなっている私でも、三人の関係性を察することが出来ました。

ベティさんがニヤリと笑います。

 

「ネーネ、そうすると混浴ってことになるんだけどいいの?」

「こっ!! ここここんよ」

「カゴの中にブルーシートとロープを用意しました。それで温泉内を区切れば問題はないでしょう」

 

顔を赤らめてテンションフルスロットルのクゥシンさんを遮り、私は答えます。

 

「ベティさん、温泉までの案内をお願いしてもいいですか。私はここの片付けと荷物の消毒、その他諸々行いますので」

「オーケイ」

「では皆さん、荷物は全てこちらに置き、貴重品とこちらのカゴを持ってベティさんに続いてください。道中に明かりはないので足元には十分にお気をつけて」

 

そして、私はウィリアムさんに目を向けます。

 

「ウィリアムさん、あなたは特に注意を払ってください。転んで血の一滴でも流したら、ここにいるあなたを含めた全員の努力が水泡に帰します。あなた以外の全員、人の血を主食にする吸血鬼です」

 

ウィリアムさんの表情が強ばりました。

私はその顔を見つめながら気負うことなく、しかし努めて冷静に言葉を続けました。

 

「それが何を意味するか、よく分かっているはずです。シーハンさんたちの尽力で信頼関係が築かれ、あなたはここまでお越しになられた。私達もその信頼に応えられるよう努力はしますが、あなたにも引き続き協力をして頂きたいのです。シェルターに保護されるまでは、決して油断をしないように」

「しません!  大丈夫です!」

 

身を乗り出しムキになって言うクゥシンさんに、すかさずシーハンさんのチョップが娘さんの頭に炸裂しました。

 

「マーマ?!」

「だから落ち着きなさいって。あんたが答えてどうすんの」

「だってえ」

 

頭をおさえるクゥシンさんの横で圧倒されているウィリアムさんでしたが、こちらにしっかりとした視線を向けて頷きました。

すると、クゥシンさんが腕を組んで胸を張り、私に向けて得意げな笑みを浮かべました。

 

「ほらっ! リアムはしっかりしてるんだから! 大丈夫ですからっ!」

「何で偉そうにしてんのよ」

 

何とも、元気いっぱいなお嬢さんです。

石鎚さんや黒部さんにも感じられる、健康的で湿気を感じさせない呑気な明るさ。

第三世代の子ですかね。

ベティさんも苦笑し、そして手を叩きました。

 

「はいはーい、それじゃ決意も新たに、気をつけて温泉に行こうかね。案内するからついておいで」

「はーい」

「フランもおいで」

 

こうして四人と一匹は、賑やかに温泉へと向かいました。

温泉へ向かう皆さんを見送りながら、ふと、クゥシンさんとウィリアムさんを見て気づきました。

クゥシンさん、ウィリアムさんとの間隔を意識して開けているように見えました。

疑問に思いつつ、私もやるべき作業を開始しました。

 




ここまでお読み頂き、ありがとうございます。
誤字脱字言い回し等、修正がありましたら都度修正します。
こちらでお知らせなどを語っておりますので、よろしければご覧下さい。
https://syosetu.org/?mode=kappo_view_list&uid=68614
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