私は、人の食事も必要とする食い意地の張った吸血鬼です。
私の所属する部隊にはそんな吸血鬼が数名いて、小隊長と中隊長もその仲間でした。
食い意地の張ったみんなで集まり、インスタント麺やら缶詰やらを持ち込んで、人目を忍びながらコソコソと食べるのです。
そんな私たちを当然揶揄る人もいて、『雑食中隊』『ハイエナ中隊』などと呼ぶ人もいました。
そのトップに立つ中隊長といえば、
「俺の部隊にいい仕事をさせたければ、ハイカロリーで温かくて美味いメシを用意してくれ。あ、豚肉とアルコールは抜きで頼む」
開き直って他部隊から食料やら、それに必要な燃料やらをせびる始末でした。
ある日、ご飯を食べながらその中隊長から聞いた話です。
この戦いが始まってから少しして、シルヴァ司令が私たちの部隊を視察に来た時、築いた塹壕を見てこう言ったそうです。
「気合い、という言葉は生温い。鬼気迫る塹壕だな。お前ら、いつまで戦争をする気だ?」
「閣下、未来永劫にです」
笑いながら言う彼に対し、大隊長は真面目にこう答えたそうです。
「閣下が退却の命じない限り、バケモノがそこにある限り、この星が滅びるその日まで、我々はここで戦い続けます。それが、自然の理と人道に背いた
うちとこの大隊長殿は真面目で、全方位に向けてあたりも柔らかいし優しいが、滅法厳しくもある。
おまけに、人に仕事を押し付けることに関しては天才的ときた。
おかげで俺らの苦労は天井知らずだ。
お前ら、この先覚悟しとけよ。
苦笑いをしながら、中隊長が言っていたものです。
そんな司令も褒めた塹壕ですが、つい先程、複数の大型のバケモノによる遠距離攻撃で潰れた箇所が発生しました。
攻撃が止んでいる間、潰れた箇所を修復し塹壕自体の防御力をさらに上げるため、土木作業を行うことになります。
「土、硬いし冷たいし、もうしーんどーいーっ!」
「何で死んで甦って土木作業してんの、オレら」
「みんな、ちゃんとやろうよ。隊長に怒られちゃうよ」
先程の戦いで、多少の死に戻りの兵士は出ましたが、私の所属する小隊は少数の負傷者が出ただけでした。
ぼやく元気のある新入りさんたちに、私は期待通り、鋭く声を上げます。
「無駄口叩く暇があったら手を動かして! 手を動かせばそれだけ生き残れますよ」
言って、私も掘った土を袋に詰めます。
こんな作業をしていると、兵隊と言うより土木作業員になった気がします。
入隊して間もない頃は、キツい、汚い、危険の三拍子揃った仕事内容に、同期で入隊した友人共々愚痴と不満を零し、当時教官だったロート隊長にこっぴどく怒鳴られていました。
おっかなくて厳しくて、たまに理不尽で、当時は彼女のことを好きになれませんでした。
ですが、あの理不尽さも含めた厳しさは、彼女の教えであったと今は思います。
彼女以上に理不尽で、過酷な現実に直面しても、挫けずに戦い、生き延びる強さを身につけるために。
好きか嫌いかは別にして、彼女は良い教官であり、良い隊長だったと思うのです。
「小隊長の指示は、そこの補強が済んだら休憩だったよな」
隣にいる彼が作業の手を止め、私の方を向きました。
「はい」
「じゃあ、それがすんだら隊長も適当なところで休んでくれ。見張りは俺と、連中の中で一番活きのいい奴とやる」
「了解です。私のオススメは彼でしょうか」
言って、やけくそ気味に作業を進める男の新入りさんに視線を飛ばします。
彼は頷きました。
「ああ。表向きはチャラいが意外に根性あるよ、アイツ」
作業を終えた皆さんに休憩するよう指示を出し、彼と元気の有り余っていた新入りさんは見張りの任務に、私は彼らの行った作業の確認を行うことにしました。
時間はお昼を過ぎたあたり。
部隊で出した予報では、天気は午後から下り坂と聞いています。
自然と錬血が発動し、私の目に風景を背景にして『脈』を捉えました。
風脈に沿って流れる風は、湿りを帯び雲をドンドン運んできています。
予報は大当たり、また雪が降りますね。
そのまま地面を見れば、交通壕とは関係なく後方に向かって伸びる地脈が━━。
……あれ? 何か、昨日より細くなっているような。
気のせい、かな?
嫌な予感が背筋を這い上がり、ちゃんと確認しようと目をこらそうとして、突然顔に何かが被さりました。
布、いや、これ毛皮!?
息はできるけど、何も見えません。
とにかく顔からはがそうと、毛皮に触れた途端、
「にゃも」
はい?
声と共に手に伝わる感触は、毛皮ではなく、まだ生きている動物でした。
えっ、ええっ、動物が何故顔に?!
いやあれ、手袋は?!
動揺する私に追い打ちをかけるように、首筋にひんやりとしたものが触れました。
氷でも雪でもない、何この、柔らかくてひんやりしたの?!
フード被っているのに何で?!
「みゃあ」
猫。
猫が二匹。
……ああ、これ、夢か。
途端、周囲の凍てつく空気も、湿った土臭さも、そして人の気配も一斉に遠のき、そして目を開けました。
そして、今の自分の状況を確認します。
ここは祖父母の終の住処で、祖父の仕事部屋だった場所。
私は寝ていて、そして茶トラさんが私の顔に抱きつき、毎朝恒例の毛繕いをしてくれていると。
首筋というか、後頭部に張り付いているのはポイントさん。
私の首筋に肉球を当てて暖を取っていたようです。
人間ヒーターならぬ吸血鬼ヒーター扱いですか。
「茶トラさん、時計が見えませんよ」
言いながら彼を顔からはがし、サイドテーブルの時計を見れば、時間はまだまだ深夜。
しかし、今日はガイドのお仕事があります。
「起きますけど、朝ごはんはまだですからね」
なのに、さっさと起き出す猫たち。
全くもってゲンキンです。
ランタンを手にし、頭の中で朝の仕事の整理をしながら台所へ。
猫たちがあまりに喚くので仕方なくご飯をあげて、自分のご飯も準備。
昨日の夜に用意したご飯を炊いて、缶詰スープをいただきます。
余ったご飯は、おにぎりにしてお昼にいただくことにし、念のため、彼らも分も作っておくことにしました。
そうだ、出発前にベティさんに猫たちのこと頼まないと。
一通りの仕事を済ませ、彼らを起こしに客室へ向かいます。
「おはようございます、皆さん」
ノックをしてから客室に入り窓を開けると、暗闇と微睡みに満ちた空間に清々しい空気が満たしました。
夜明けまでまだもう少し時間があるため、室内はまだほんのりと暗いままです。
ランタンをつけると、彼らはそれぞれに挨拶をしましたが、布団から出てこようとしません。
「あー、布団から出たくねー」
「右に同じ」
「オレもー」
「お気持ちはわかりますが、今日は皆さんの大切な目的、血涙の泉へ行く日ですよ」
「……そうだったー」
自分の存在に関わる一大イベントです。
彼らは未練タラタラではありましたが、布団から起き上がりました。
「皆さんの服はこちらに置いておきます。洗面道具とお水を用意しましたから、洗顔はこちらで。一通りの準備を済ませたら、リビングへお越しください」
言って、私は客室を出ました。
また寝ちゃわないかと心配しましたが、彼らはちゃんと起きてリビングへやって来ました。
用意したコーヒーを飲みながら、注意事項を伝えます。
「探索中は、私の指示に必ず従ってください。最悪灰になります」
「堕鬼じゃなくて?」
「予備の血涙は持っていきますが、最悪の場合は殺します。これ以上この山に、瘴気を発生させる堕鬼を増やしたくありませんので」
言い切ると、三人の顔が揃って引きつりました。
それに構わず、私は言葉を続けます。
「指示に従っていれば、その確率はぐんと減りますのでご安心を。巻機さんと石鎚さん、あなた方は特に、肝に銘じておいてください。皆さんの前で、介錯をする事態にさせないでくださいね」
「……ああ」
「わかったよ」
さすがに昨日の今日だからでしょう。
二人は神妙に頷きました。
でも、私は信用していません。
無鉄砲で勢い任せな彼らです。
言っても土壇場になれば突っ走る行動力があるからこそ、保護区を出て、放浪生活の果てにこの山にたどり着けたとも言えるのです。
ガイドとして、ちゃんと監督することをを心に誓いました。
「それでは、コーヒーを飲み終わったら荷物をまとめて出発しましょう。玄関にあなた方のアイテムを用意しましたので、忘れずに持ってくださいね」
「……あの、ヘイズが」
苦い表情で言う黒部さん。
ヘイズとは、この地での通貨のこと。
その正体は、吸血鬼や堕鬼が霧散する際に現れる力や意志の塊です。
体に取り込んで、自らの力にすることも出来ますが、通貨としても流通しています。
生前は考えられなかった経済事情です。
「要救助者に無料で差し上げているものです。ただし、玄関に置いてあるものだけですので、大切に使ってくださいね」
三人はホッとした表情を見せました。
「森山さん、ありがとうな」
「礼には及びません。要救助者をサポートすることも、私の仕事の一つですから」
巻機さんのさんお礼の言葉に、私は定型文となりつつある言葉で返しました。
そして一通りの準備を終えた私は荷物と装備を外に出すと、日が昇り始めていました。
今日という日の始まりです。
軒先のヤドリギに挨拶をし、私はベティさんに無線で連絡をすることにしました。
間を置かず、相手は応じます。
「おはようございます、ベティさん。さすがに起きてましたか」
≪おはよう、ネーネ。フランが散歩を急かすからね。そろそろ出る?≫
「はい。お昼頃、休憩に一度戻ります」
≪了解。お茶道具出しといて。お茶しながら、レース編みの続きしてるから≫
「優雅ですね」
≪肩はこるけど、留守番にはもってこいだよ≫
通信を終えて、いつものテーブルと椅子、お茶道具を外へ出します。
リビングで準備していた彼らが、ゾロゾロと外へ出てきました。
巻機さんが窓辺の猫たちに近付きます。
「じゃあお前ら、行ってくっからな」
「にゃんも」
「にゃもにゃもー! お前は愛想がいいな! あ、しゃもしゃももわかってるぞ。俺たちを応援してくれてるってな!」
はしゃぐ巻機さんを見向きもせず、ポイントさんは私を見ました。
『この人うるさい』
青い目は如実にそう語っていました。
はいはい、すぐに出かけますよ。
私は家に戻って火の元を確認し、貴重な物品の揃う私室を錬血で施錠します。
そして外に出ました。
「ちょっと肌寒いな」
「な。眠気が冷めるよ。てかここ、本当に山の中なんだな」
「昨日は目の前のことで精一杯で、周囲をよく見れなかったからな」
「あっ、あの山凄くねっすか。 形、超カッケー!」
「おおー、いかにも登山家のミナサンが好きそうな山だよな」
三人は周囲を見渡し、家のさらに向こうに見える、この周辺でも一際高く雪の被った山に歓声を上げています。
青い空を背景に、鋭く、しかし悠々と天に向かって伸びる、峻厳かつ美しいその偉容。
夏の一時期を除いて年中ほぼ冠雪している、いわく付きの山です。
黒部さんが目を細め、顎に指をあてます。
「何かあの山、故郷の山にちょい似ているな」
「え、ゴロちゃん先輩の故郷、あんな山あるんすか?」
「それっぽいのがな」
黒部さん、貴方もそれを言いますか。
「てか、見ろよ、山の真ん中らへん。壁じゃなくて板だろ。洗濯板だって、もっとデコボコしてるってーの」
「登山家ってあんな山も登るんすよね。先輩のばーちゃんも、ガチでそんな感じなんすか?」
「さすがにそこまでガチじゃねーよ。ガチ登山家ってーのは、単独だの無酸素だので、あれに登ろうとする連中だ」
「やべえ、ガチ登山家。マジ頭おかしーわ」
朝からはしゃぎ笑い合う元気な三人。
明日は我が身かもしれないのに、呑気なものです。
牙装を装備し、荷物を背負いながら私は口を開きます。
「あの山がこの周辺の最高峰の山です。サーベラスの測量士によれば、標高は六千メートルを超えるとか」
「六千?!」
「富士山よりたけーじゃん!」
私は銃剣を肩に背負い、驚く彼らに歩み寄りました。
「ええ。そしてあの山が、一つ目の血涙の泉のある場所です」
「えっ」
三人は固まりました。
私は構わず説明を続けます。
「あの山の八合目付近に洞穴があって、そこに生息しているんです」
「あんた、あの山登ったのか?!」
「はい。調査のためサーベラスの人と一緒に」
再び驚く三人に、私は身振り手振りでその時の様子を伝えます。
「こう、枝がしなるほどワサワサ実っていまして。まるでシャンデリアみたいでしたよ」
「……ああ、そう」
呆然と黒部さんが呟きました。
三人は改めてかの山を眺めます。
「なあ、ベリーイージールートはねーの?」
「あの山に登ったのは、私が知る限り、私とサーベラスの部隊しかいないです。しかも、今年の夏に初めて登頂に成功して、正式なルートも何も無いですね」
「森山さんって、ガチ登山家なのか?」
「いえ。前職が山絡みだっただけです」
話がそれそうな予感がして、私は山に視線を向けました。
「あの山に正式な名前はありません。ですが、あの山は年間を通して、とにかく天候が異次元レベルでおかしくて」
私は当時のことを思い出しながら、説明を続けます。
「天候に恵まれたとしても、山を目指す間も、山に入ってからも、登山と山での戦闘の知識と技術が必要になります。ヤドリギも、入口手前と中腹にあるだけで極めて難易度の高い探索地です」
すると、石鎚さんが頭を抱えました。
「何だよもう! いきなりウルトラインフェルノルートすぎんだろ!」
ウルトラインフェルノ?
口を噤む私に、巻機さんが引きつった表情で私を見ました。
「あの山にも堕鬼いんのか?」
「はい」
「……何で奴ら、好き好んでそんな異次元の山ん中に分け入っちゃってんの?」
「それはわかりません。推測では山のいずこに深層があって、そこから湧き出したものか、チャレンジ精神旺盛な吸血鬼が遭難して、堕鬼化したのではないかと」
説明している間にも、かの山は雲のヴェールをしっかりとまとい始めていました。
この天候の移り変わりの早さ、普通の山と比べてもやはり異常です。
「昨日の今日であそこに行くのは無理ですから、今日は他の二箇所の泉にご案内します」
「わかった」
かの山の異様さに呑まれたのか、三人は素直に頷きました。
この素直さで、残りの二箇所もすんなりいけばいいのですが。
「では、浄化マスクのチェックをして出発しましょう」
浄化マスク、正式名は対瘴気被甲と言います。
堕鬼等が放つ瘴気から身を守る大切な装備で、このマスクも吸血牙装と同じくクイーン計画から生み出されたものです。
すると、石鎚さんが首を傾げます。
「チェックってどうやんの?」
「え?!」
黒部さんが思わず石鎚さんを凝視します。
何とまあ、そこからですか。
すると、巻機さんが眉を寄せました。
「イッシー、前に説明したろ。もう忘れちまったのか」
「すんません」
「ほら、教えてやっから、今度こそちゃんと覚えろよ」
「ウッス」
こうして、石鎚さんは巻機さんにチェックの仕方を教えてもらい、マスクを身につけて出発です。
家の東側、水場や温泉がある道を通り進路を北へ。
倒木した木々の合間、緩やかな勾配の坂を登ります。
今は見通しが良いものの、ガスが出ると途端に転倒の危険が伴う道です。
前方を歩く彼らは至って元気。
お喋りはもちろん、元気よく倒木した木や岩に飛び乗ったり、斜面を走ってショートカットしようとしたり、それ以外にも無駄な動きがとても多いです。
そんな彼らを注意したり、雑談を聞いたりしている内に、土の多かった山肌に石屑や岩屑の割合が増えました。
勾配もきつくなり、さすがの三人も口数が減ります。
「急に歩きにくくなったな」
「何か石ころ多くね? めっちゃ歩きづれー」
「てか、単純に斜面がキッチーっす」
「汗をかくと冷えて体力を消耗します。大丈夫。足場を確かめながら、ゆっくり歩いてください」
息を切らして登る彼らのペースに合わせて、道無き道を進みます。
そうして登る彼らを観察して、気付いたことがあります。
元気なのはともかく、登山の技術は皆無であること、そして移動の錬血を使おうとしないことです。
温存しているのか、そういう錬血を持っていないのか。
ならば何故、あの岩壁を登れたのでしょう。
ますます謎です。
小休憩をして現在地を確認しながら、アップダウンを繰り返す足場の悪い道を順調に進んでいた時でした。
「止まって」
「え」
「そのまま静かに待機して、呼吸を整えおいてください」
言いつけ、私は彼らの前に進み、右手の斜面を覗きこみます。
風が伝える情報は、斜面の下の岩場の窪みから、冥血の臭いと咀嚼音。
立ち位置を変えると、その発生源である不穏な影が見えました。
大きさは中型。
大きな特徴になっている、背から放射状に伸びる棘のような骨。
忘れられた悪鬼と呼ばれる個体です。
さらに目を凝らせば、石や岩と同化している纏泥衆と呼ばれるスライムもどきが二匹、いや五匹います。
体勢を戻して彼らの方をむくと、困惑した様子で私を見ていました。
「どうしたんだ?」
「堕鬼がいます」
途端、彼らは目元を強ばらせました。
「えっ、どこに?!」
「この斜面先、岩場の影に六体。別の堕鬼を食らっているようですね」
「六体?!」
彼らは斜面を覗き込みました。
「……マジだ」
「一昨日の夜は例の広場以外は出てこなかったけど、やっぱこの山もいるんだな」
麓から拠点周辺は、ベティさんと定期的に山狩りをするため出現頻度は低いのですが、二人だけでは当然限界があります。
「サーベラスの訓練を兼ねた、大規模な山狩りも行っていますが、前回から時間が経っていて、そろそろ起き出す個体も出てきているようです」
「どーすんだ? 倒すのか?」
戦鎚を構える石鎚さんですが、私は首を振ります。
「わざわざ斜面を下って、足場の悪い場所で戦う理由はありません。幸い向こうは私たちに気づいていませんから、ここは無視して先に進みます」
言いながら、私は地図とコンパス、手帳を取り出して、ここの場所を記録します。
山狩りの時の参考にするためです。
「大丈夫なのか? 後ろから襲ってくるとか」
「ならば道中、後方に気を配ればいいだけのお話です」
言い募る石鎚さんに、私は冷静に答えつつ、彼の様子を観察します。
元気で体力が豊富にあり、血気盛んな性格のせいでしょうが、不安の裏返しのようにも思えました。
「石鎚さん、貴方の目的は何ですか?」
「……血涙を取ること」
「ならばここで、わざわざ火中の栗を拾う必要はありません。それに」
不満そうな彼から顔を逸らします。
気まずくなったとかではなく、錬血が自動で発動したからです。
迂回ルートの先に見える脈に、堕鬼の脈。
倒木の影に複数隠れています。
「迂回ルートの先に堕鬼がいます。スライムもどきが四体。なので、この先で存分に戦ってください」
私は銃剣を肩から下ろして剣をつけ、両手で構えます。
再び顔を引きつらせながら三人も、それぞれの武器を構えました。
「では皆さん行きますよ。くれぐれも指示に従うように」
「ウッス!」
「了解だ」
こうして私たちは、慎重に迂回ルートを進み始めました。
彼らのお手並み拝見です。
ここまでお読み頂き、ありがとうございます。
誤字脱字言い回し等、修正がありましたら都度修正します。
こちらでお知らせなどを語っておりますので、よろしければご覧下さい。
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