銀嶺が青むまで   作:小栗チカ

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二日目 午前

スライムもどきとの複数戦は、無事に討伐することはできました。

ただ内容は、頑張ったこと以外は、全く褒められたものではありませんでした。

案の定、石鎚さんが、私の指示を無視して足場の悪い斜面を突進、体勢を崩し、斜面を滑り落ちるハプニングがありました。

棘だの岩だの、眠っている堕鬼等にあたらなかったのは、まさに幸運以外の何者でもありません。

他の二人は指示に従ってくれたものの、普段通りの動きができなかったようで、かなり苦労していました。

 

「今その身をもって体験したと思いますが、山での戦いは平地とはまた違います。だから指示に従えと言ったのです。滑って転がり落ちた先が崖だったら死に戻り一直線、尖った障害物が心臓に刺さったら、比喩でも何でもなく木っ端微塵です」

 

戦いが終わったあと、息を切らし、土と泥で汚れて凹んでいる三人を前に、私は戦いの総評と注意点を告げます。

要はお説教です。

私は、ただのガイドのはずなのに。

 

「山での活動時間は、平地よりも限られています。時間と記憶のロスが何を意味するのか、よく考えて下さい。石鎚さん、あなたの武器はただでさえ重く範囲も狭い。周囲を確認し、どこで戦い、どのように動くか。どうすれば安全かつ最高のタイミングで、高いダメージを出せるのか、ちゃんと考えるように。あなたの武器は、そういう武器です」

「わーったよ」

 

不貞腐れながらも、彼は素直に頷きました。

本当にわかっていますかね、この人。

引き続き、要注意で監督することにします。

 

「他のお二人も、まず敵の動きと地形をよく観察するクセを身につけましょう」

「了解」

 

彼らの返事に私は頷きました。

 

「ここで少し休憩をします。その間に気持ちを切り替えておいてください。でも、切り替えるついでに、注意したことを忘れないでくださいね」

 

言って、私は彼らに背を向けると、周囲を確認するため歩を進めました。

石鎚さんが懸念していた堕鬼たちも来る様子はなく、それ以外の堕鬼もいません。

私は足を止め、地図、コンパス、手帳を取り出し、先程の戦いを記録します。

彼らの戦いを見た率直な感想は、想像以上に不慣れだったことでした。

恐らく、勢いと強運とを武器にして乗り越えてきたのでしょう。

まさに奇跡です。

そして意外にも、場馴れしているのが巻機さんだったことも発見の一つ。

指示の従い方や戦うタイミングを理解し、そこそこに動けていました。

それなりの教育を受け、数多の修羅場をくぐり抜けてきたのか。

にしては、普段三人でいる時の考えの浅はかさが気になるところです。

彼ら、まだ隠し球を持っていますね。

その隠し球を見ることは出来るのか。

地図とコンパスで現在地と目的地を確認し、私は彼らの元へ戻りました。

私も気を取り直していきましょう。

 

その後も、スライムやら猿やらウニと呼ばれる個体やらも集団で現れましたが、さすがに三人は反省したのか、指示通りに動いてくれたおかけで怪我ひとつなく突破出来ました。

それと、若さと根の素直さゆえか、教えたことに対する飲み込みも早く、足場の悪い斜面での動きに慣れたようです。

 

「皆さんいい調子でしたよ。あの数の敵を短時間で処理できたのは素晴らしいです。あともう少しで到着しますから、頑張って登りましょう」

「よっしゃあ!」

「よおーし! 頑張れ俺ーっ!」

 

気合いを入れて登る三人を、私は背後から見つめます。

さて、この先の光景を見て、あの三人はどんな反応をすることでしょう。

進むにつれて倒木すら姿を消し、石屑や岩屑だらけ斜面を登り続け、ついに目的地に到着しました。

そこは崖の手前の開けた場所。

左右は切り立った岩山が聳え、その間から吹く風は冷たく、温まった体を容赦なく冷やしていきます。

今までとは明らかに雰囲気が変わった光景に、三人は足を止めて周囲を見渡していました。

 

「すげえ場所だな」

「渓谷ってやつか? うおっ! 下、全く見えんぞ」

「うぅわあー、ヤベえよこれ。高所恐怖症でなくても足すくむわ」

「てか、行き止まりじゃん」

 

三人はこちらを向きます。

 

「血涙の泉はどこだ?」

「この先にありますよ」

「えっ? ……まさか、この崖の下か?!」

「はい。こちらへ」

 

私が右手の方に三人を案内し、巻機さんに双眼鏡を渡すと、左手の崖の下を指さします。

 

「わかりますか。あの左手の岩山の下、十時の方角です」

「……ああっ! あったあった! んだよアレ! 何であんなとこに生えちゃってんだよ!」

「シューちゃん見せろよ」

「オレも見たい!」

「順番にどうぞ」

 

こうして、三人は順番に双眼鏡で血涙の泉を確認し、揃って途方に暮れた目で互いを見ていました。

 

「なんだよアレ。嫌がらせかよ」

「ひでえ場所にあったもんだ」

「ああ。解釈違いもいいとこだ」

 

巻機さんが目に憂いを滲ませ、ため息を吐きます。

 

「血涙の泉ってさ、もっと洞窟の奥とか街の片隅とかに、ひっそりと慎ましく、可憐に健気に儚げに生えてるもんだろ。擬人化するなら、色素薄めの深窓のご令嬢とか、無菌室にいる薄幸の美少女とか」

「ああ、わかるっす。でもアレは、美人だけど年増で潔癖で、ちょっぴり婚期を気にする孤高の武人タイプっすよ。『フッ、私が欲しくば、貴様の全てをかけて取りに来い』ってな感じの」

「……それも、ありかな」

「えええっ!?」

 

何だかんだで、やっぱり元気な巻機さんと石鎚さん。

そんな二人に呆れたマナコを向けていた黒部さんですが、私に視線を移しました。

 

「あれが、二つ目の血涙の泉か」

「はい」

 

この周辺で確認できている、三つの血涙の泉のうちの一つが、この崖を下った先にあるものです。

切りつけるような冷たい風に晒されながらも、しっかりと岩肌に根をおろし実を貯える様は、彼らの言う孤高の武人のよう。

知識と技術と経験がなければ、滑落して記憶を代償に死に戻るか、問答無用で灰になるか、いずれかの未来を辿ることになります。

 

「あれ、どうやって取りに行くんだ?」

 

それをたずねる時点で、自力でここから先には進めませんと、表明しているようなものです。

 

「あの左手の岩山に、こう取り付いて、カニのように横ばいで進みます。でも単純に下ればいいのではなく、足場の都合で登ったり降りたりを繰り返しながら、徐々に下がっていくイメージです」

 

私は身振り手振りを交えて、三人に説明します。

そうして血涙をゲット出来たとしても、ここまでの工程にヤドリギがないことも含め、拠点に帰ることも考えなければなりません。

私はそこまで説明し、彼らに伺いをたてます。

 

「どうしますか? チャレンジしますか?」

 

三人は仲良く揃って首を横に振りました。

 

「行けるかよ、あんなとこ」

 

ですよね。

今のこの三人では絶対に無理です。

そうなると、ここであの疑問をたずねるべきでしょう。

 

「皆さんにお聞きしたいことがあるのですが」

 

そう前置きして、私は彼らに問いかけます。

ここへ来た最初の夜、いくつかの岩壁があったはずなのに、なぜ登れたのか。

すると彼らは互いの顔を見つめ、やがて巻機さんが腕を組んで私を見ました。

 

「本当はあんま教えたくはないけど、森山さんには血涙を分けてもらった上に、ガイドもお願いしているからな。ここは手の内をあかそう」

 

言って、彼は親指を立てると自分を指し示しました。

 

「それは! 俺の錬血『俺のリサイタル』と、二人のやる気と根性があったからだ!」

 

……はい?

 

「俺のリサイタル」

「そう! 俺のリサイタル!」

 

オウム返しをする私に、巻機さんは満足そうに頷きます。

その背後にいる黒部さんはマスク越しでもわかるほど苦笑し、石鎚さんは何故か胸を張って偉そうにしています。

私はさっぱり理解できません。

 

「その、俺のリサイタル、とはどのような錬血なのでしょう」

「百聞は一見に如かず。んー……よし! あの歌でいいか!」

 

あの歌?

すると、巻機さんは荷物と武器をおろして姿勢を整えると、腹式呼吸を繰り返して錬血発動。

 

「ソルス サルティス、エト ヴィートゥティス、ミヒ ナーク コントゥラリアー」

 

そして歌い出しました。

瞬間、体の奥から力が溢れる感覚が。

体の芯が熱くなり、細胞が火を吹いて、全ての感覚が研ぎ澄まされる激烈な感触。

 

「エスト アフェクトゥス、エト デフェクス、センパー イン アンガーリアー」

 

身体中から溢れる力に気を取られますが、彼自身の張りのある低音も、それが奏でるメロディも、マスク越しにも関わらず美しく力強く。

吹きすさぶ山の冷たい風をもろともせず、熱く高らかに歌い続けます。

 

「ハク イン ホラ、シネ モラ、コーデ プルスム ターンギーテー! 」

 

歌詞はさっぱりわかりませんが、でも曲自体は聞いたことのあるもの。

非常に有名な、クラシックの合唱曲です。

 

「クヴォド パー ソルテム、ステルニト フォルテム、メクム オームネス プラーンギテー!」

 

何故か伴奏まで歌い、華やかなフィナーレと共に彼は歌いきりました。

他の二人と共に、思わず拍手します。

 

「先輩やっぱすげー!」

「シューちゃん、歌だけは本っ当に凄いよなー。素人の耳からしても、ただ事じゃねーのわかるし」

「だけ言うな」

 

言いながらも、巻機さんの目は満足そうに笑っていました。

私はと言えば、久しぶりに触れた音楽に、呆気にとられました。

……ああ、生で音楽を聴くのは本当に久しぶりです。

冷たく固まった心が、ほんのりと温かくなり、その感覚に動揺しました。

この人、凄い人です。

生前はプロの歌手だったのでしょうか。

と、巻機さんがこちらを向きました。

 

「どうだ? 俺のリサイタル、ご理解頂けたかな?」

「ええ。これは補助錬血ですね。あなたの声の届く範囲の味方を対象とした、全ての能力を向上させるとても強力な」

「理解が早くて助かるぜ」

 

彼の歌そのものも素晴らしいですが、その錬血の力も恐ろしく有用なもの。

そして、彼らが崖を登ることができた理由と共に、彼らがここまで来れた奇跡の力がわかりました。

全ては巻機さんの、この錬血の賜物なのです。

 

「凄い錬血ですね」

「そうだろそうだろ」

 

再び満足そうに頷く彼の姿に、ふと疑問がよぎりました。

 

「あの、その力を今ここで使えばいいのでは?」

 

すると、巻機さんのテンションが明らかに落ちました。

 

「この錬血、オレもスゲーって思ってんだけど」

「自慢できますよ」

「うん。でも、欠点があって」

 

これだけ影響の大きな力です。

そのデメリットもまた、大きなものなのでしょう。

 

「冥血、大量に消費しそうですもんね」

「それもそうだけど、この錬血使ってる間、俺、動けんのよ」

「あ、そういう」

「こんな感じの、簡単な振り付けならできんだけどな」

 

言いながら彼は、拳を握って上下に動かし、右へ左へとテンポ良く動きました。

 

「あとこれ、一番大事なことだけど、動ける奴のやる気が必要だから」

 

振り付けしながら言う彼の後ろで、二人は目を逸らしました。

 

「こんな崖、シューちゃんの錬血でも無理に決まってんだろ」

「だってあん時の崖ー、こんな殺意マシマシのガチじゃなくて、ただ登るだけでよかったしー」

「そうですか」

 

ここしかもう取る所がない、ということであれば、私も彼らを奮起させ、できる限りのお手伝いをするところです。

しかし、血涙の泉はもう一箇所あり、ここよりは難易度も低め。

彼らには、そちらで頑張ってもらうことにしました。

 

「それでは一度戻って仕切り直します。しっかり休憩をとって、次の場所で血涙を手に入れましょう」

 

こうして、私たちは来た道を戻りました。

登りよりも楽そうに見えて、怪我をする頻度が多いのは下りです。

先を行く三人はお気楽な様子で山道を下っていき、私は気を引き締めて彼らの監督を続けました。

 

「先輩、さっきの歌なんすか? メロディは聞いたことあるんすけど」

「ああ、オルフのカルミナ・ブラーナだ」

 

石鎚さんの問いかけに、巻機さんが答えます。

歌詞はラテン語。

希望に満ち溢れた若き修道士たちが、腐敗した教会の現実に失望。

やさぐれた彼らは、そんな教会の教えに反するような世俗のありふれた営みを活き活きと記録した、というのが歌詞の背景にあるのだとか。

 

「中世ヨーロッパのごく普通の生活が、いい意味でえげつなく描かれてんだよ。俺らくらいの連中が、恋をしたり世間に怒ったり、酒を飲んだりギャグ言ったり。なんつーか、人の欲望って今も昔も変わんねーなって。曲自体も緩急メリハリあって歌って楽しいし、俺の好きな歌の一つなんだ」

「へー」

「それで、歌った歌詞ってどんなんだ?」

「ああ、それはな」

 

巻機さんの語った歌詞の内容は、どんなに素晴らしい人々の営みも、結局は運命の女神の手のひらの上、定められた運命から逃れられないというもの。

栄枯盛衰、諸行無常。

さあ、ためらわずに弦をかき鳴らせ。

運命は、どんな強者をも打倒するのだから、私と共に嘆いてくれ、と。

 

「何か、メロディとは真逆だな」

「すよね。曲はなんつーか、これからラスボス戦だ、行くぞーオラー! って感じなのに」

「だから俺は、こう解釈をしている」

 

運命の女神からは、決して逃れられない。

だから何なのだと。

俺たちは運命を嘆きながら、弦をかき鳴らし歌い続ける。

それしかできないし、そうしたいから。

今出来ることを、やりたいことをやり遂げる。

それこそが、運命に対する反逆であり解放なのだと。

それすらも、定められた運命だったとしても。

そう語った巻機さんに、二人はびっくりした様子で彼を見ていました。

 

「先輩スッゲー、カッケー!」

「お前、本当にシューちゃんか?」

「ゴロちゃーん、イッシー見習え。ここは素直に褒めるところだぞ」

 

賑やかに話しながら山道を下る三人の後ろ姿を、私は動揺しながら見つめます。

冷たく凝った心の奥底が、再び揺さぶられる感覚をまた味わうことになろうとは。

素敵な解釈ではないですか。

揺さぶられた心の奥底に呼応するように、堆積し圧縮された地層のような記憶の向こうで、誰かが頷く気配を感じました。

……お父さん。

 

「あ! あの温泉だ!」

「ああ。人工物見ると何かホッとするな」

「あともう少し、頑張れー俺らー!」

 

元気な三人の声に私は意識を切り替えます。

ゴールに着くまで、集中しましょう。

そして無事に家に着くと、ベティさんとフランチェスカが出迎えてくれました。

 

「お疲れ様。首尾はどうだった?」

「予定通り、この後が本番になります」

「やっぱりそうかね」

 

ベティさんは苦笑しました。

 

「無理もないさ。あんなとこ、普通だったら行けるとは思わないもの。行こうともしない。先へ進もうと技術を生み出して、後世に伝えた先人の熱意って凄かったんだね」

 

私とベティさんが話している間、三人は窓から外に出てきた猫たちに構っていました。

 

「にゃもにゃもー! 戻ってきたぞー」

「にゃむにゃむんにゃも」

「おう。次の場所で必ず取ってくるからな」

 

この拠点の営業部長━━勝手に私が任命しました━━は、よく喋る上にとても愛想がいいのです。

そんな三人に見向きもせず、ポイントさんは真っ直ぐこちらにやって来ました。

私は手袋をはずすと、しゃがんで彼の体に触れます。

 

「ただいま戻りましたよ。お留守番、ありがとう」

 

彼はそれに応じるように、私の手に顔を擦りつけました。

私は家に戻ると、用意していたお昼ご飯をもって再び外へ。

天気もいいので、外で食べることにしました。

 

「皆さんはお食事をされますか?」

「飯」

 

三人はマジマジとこちらを見ます。

 

「あんた、飯食うのか?」

「食べますよ」

「この子、こんな顔と性格してるけど、食い意地の張り方は筋金入りだよ」

 

肩をすくめてベティさんは言いました。

人間の食事はあくまでも嗜好品。

極端な話、吸血鬼は血涙や人の血を摂取すれば、食費ゼロでもいけるローコストな存在です。

それが手に入りづらいから、困ったことになっている昨今なのですが。

私や前職にいた雑食吸血鬼たちは、人の血や血涙を摂取しなくても、人の食事を摂ることで多少は存在を保てる特性があるようですが、無駄にコストのかかるなり損ないとも言えます。

 

「そこはハイブリッドって言えよ。液体燃料ならなんでもいける、この爆音箱ストーブみたいなもんだ」

 

食い意地の張った前職の上司が、この山に来た時に言っていた言葉です。

 

「飯って、何食うんだ?」

「ごま塩のおにぎりです。具なしとサツマイモ入りがあります。それと野菜スープです」

 

言いながら、可愛いゾウが1匹ドンと描かれたタッパーの蓋をオープン。

 

「おー、紛れもなくおにぎり!」

「久しぶりに見たな」

「オレ、食おうかな」

 

中身を覗き込む三人に頷きます。

 

「どうぞ。飲み物は紅茶でいいですか」

「ああ。せっかくの和食だし緑茶がいいけどな」

「烏龍茶でもいい」

「贅沢言うなよ。紅茶で十分だ」

「じゃ、私がいれるよ」

 

そして、五人でテーブルを囲んでお昼を頂くことになりました。

おにぎりと野菜スープは、好評のようで一安心。

ベティさんは食事にさほど興味がない普通の吸血鬼です。

なので基本ソロ飯の私は、こうして誰かとご飯を食べるのは久しぶりのことになります。

おこぼれに預かれるかも、と期待するワンとニャンは無視し、ベティさんのいれたお茶を飲みながら、食事の話をしました。

おにぎりの具のこととか、日本食の必需品ともいえる調味料の入手難易度の高さとか。

 

「味噌と醤油とみりんがあれば、ここでもう少し頑張って生きていけそうなんだけどな」

 

黒部さんのボヤキに、巻機さんが大きく頷きます

 

「味噌と醤油はジャスティス。大事。間違いなく大事」

「オレはマヨも欲しいな」

「マヨな。欲しいよな」

 

久しぶりに日本食を食べたことで刺激を受けたのか、三人が楽しそうに話すのを聞いて、内心で目頭を抑えます。

ああ、味噌、醤油、みりん、マヨネーズ。

これら調味料があれば、食がどれだけ彩り豊かになることか。

私としては、バターと出汁とワサビ、焼肉のタレも欲しいところです。

 

「あんたらの国は本当にショーユが好きだね」

 

呆れたように言うベティさんに、石鎚さんが顔を彼女に向けました。

 

「オバサンとこの、紅茶とビネガーとマーマイトみたいなもんだ。無くなったらメチャ凹むだろ」

「凹むし乾きが加速するね。想像もしたくないよ」

「だろ。オレらにとって醤油ってのはそういうもんなの」

「はいはい、失礼しました。あ、ちなみに私、マーマイトは苦手なんだ」

「えっ、そうなの」

「あんたらのとこの、ナットーみたいなもんだよ」

 

こんな調子でお話をし、改めて、調味料の大切さを知る昼食となりました。

そして食事休憩後、血涙を今度こそゲットすべく、私たちは行動を再開しました。

 

「今度の場所、崖よりも難易度は低いけど、気をつけて行ってきなさいね」

「へいへーい」

「ういっす」

「ベティさん、後しばらくお願いします」

「了解。あんたも気をつけて」

 

ベティさんとフランチェスカに見送られ、私たちは西側の山道へと入りました。

 




ここまでお読み頂き、ありがとうございます。
誤字脱字言い回し等、修正がありましたら都度修正します。
こちらでお知らせなどを語っておりますので、よろしければご覧下さい。
https://syosetu.org/?mode=kappo_view_list&uid=68614
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