「ねえ、グラーフ。いつまで読んでいるんですか?」
「まだ読み始めて十分しか経ってないぞ」
まだ五分の一も読めていない。
大規模作戦明け直後の休日、雨が降ったせいで潰れた時間を本を読むことで過ごそうと思ったのに、自分も本を読もうと言っていたアクィラは早速飽きて絡んできた。
ソファに座って、しかも私がひざ掛けを使っているのをいいことに太ももを枕にされる。
「グラーフほど読書家じゃないんですよ。暇なんでなにかしましょうよ」
「ん、ほら、これでも見ているといい。面白いやつだ」
アクィラを私の太ももから起して適当に本の山から一冊選んで渡す。多分アクィラでも簡単なやつだ。
「いやそうじゃなくてですね、料理とか、なにかすることあると思うんですよ」
「……何がしたいのかしっかり決めてからにしてくれ」
こういう時のアクィラはだいたい何も考えていない。そこが可愛いところで直して欲しいところなんだが、今は本を読みたい。そんなに厚くないから今日中にこれを読み切りたいんだ。
「んー、とりあえずイチャコラしたいですね」
「次イチャコラと言ったら暫くイチャつかないぞ」
「えー、なんでですか」
「本を読みたいからだ。せめて一時間は読ませてくれ」
むーと可愛らしく頬を膨らませたが、何も言い返しては来なかった。よし、これでいい。
これで集中出来ると思ってページを捲る為に本から手を離した。
するとアクィラに右手を掴まれてしまった。
「なあ」
「ん~」
抗議の視線を向けてもどこ吹く風だ。はぁ、もういい。仕方なく本を太ももの上に置いて片手で捲った。
アクィラは私の手にマッサージをしてくる。親指の付け根や掌の真ん中を揉んだり、指の薄い肉を揉んだり、曲げて遊んだりしてきた。
彼女の細い指が私の肌に触れる度にくすぐったくて堪らない。
「なあアクィラ」
「なーにー」
「やめてくれないか」
「ふふ、やーだ」
ちょっとだけ、本当に少しだけカチンと来た。
今度はアクィラが大切なものを撫でるように指先だけでゆっくりっと撫でさする。
なんとも言えない気持ちよさと、あまりにもくすぐったくて本を読んでいる場合じゃない。手を引こうと力を入れたがガッツリと握られてしまう。
「アクィラ、読書の邪魔をするならやめてくれ」
すると顔を耳元に近づけてきた。彼女の左手が回り込んでくて私の頭を抑える。何をしたいのか怪訝に思ってるとフッとと息を耳に掛けられる。体中に電撃が走ったような感覚が突き抜け、驚いて立ち上がろうとしたが押さえつけられる。アクィラは嬉しいそうに微笑むと更に口を耳に近づけた。
「い、や、で、す」
甘ったるい呟き声に背筋がざわついた。耳がとても熱い。
アクィラの手を振り切って立ち上がると、彼女はとても楽しそうに大笑いしている。
「あはは、グラーフったらもう……ふふ」
「お前なあ、いや、もういい。全くもう……」
どうせ怒っても無駄だろう。こいつは前からこういう事をしてきている。諦めよう。
深い溜息をついて、頭を抱える。座り直して本を読み続けようかと思ったがアクィラはまだ笑っているし、気分が高ぶってしまい集中できそうにない。
とりあえず膝を屈めて落ちたブランケットを拾おうとすると、いきなり部屋の照明が消えた。照明だけじゃなく、色々な電子機器の電源ランプも消えている。
外では雨が強まりながら降っているせいで部屋の中はとても暗くなった。
「あれ、停電?」
「そうみたいだ……ちょっと確認してくる」
攻撃や工作ではないと思うが、念の為、早く様子を見に行った方がいいだろう。
「え、ちょっと、待ってくださいよ」
アクィラに手を強く掴まれた。連れてって欲しいのか、私に残ってもらいたいのか。どちらにしても離して貰わないと困る。
「アクィラ、手を離して──」
お願いしようと振り向いた時にうっかり落ちたままのブランケットを踏んでしまう。床と摩擦の相性がよかったせいで体重を掛けた瞬間、一気に滑った。慌ててバランスを取ろうとするが、その時にはもう天井と私に向かってくるアクィラが見えていた。
「うわっ」
「きゃっ」
強い衝撃が来て目の奥で光が瞬いた。肺から空気が押し出されて呼吸ができない。上半身全体に重いものがのしかかっているような感じがして全く動けず何も見えない。柔らかい感覚が顔を……ん?
「いたた……グラーフ、大丈夫ですか?」
もしかしてと思い顔の上あたりに手を伸ばすと柔らかくでっかいのがあった。それを叩いて退けろと伝える。
「あれ、グラーフ? あ……」
ようやく気がついたアクィラは体を持ち上げてくれた。息ができるようになったので大きく深呼吸を行い酸素を体に行き渡らせる。
目を開くと予想通り彼女の胸が視界いっぱいに広がっていた。
流石に苛立ったので両手でそれを揉みほぐす。相変わらず凄くやわらかい。
「ん、やめてくださいよぉ。事故なんですから」
「半分はアクィラのせいだろう。っとこんなことをしている場合じゃないな」
早く様子を見てこないと。アクィラがもぞもぞと膝と手を着いたまま後ろに下がるが、私の上からどける様子はない。
「なあ、アクィラ。どいてくれないか?」
「えー、せっかくいい雰囲気になったのに?」
「いい雰囲気って、お前なあ」
いたずらっぽい表情をして胸を合わせてのしかかってきた。体重を掛けているせいで胸か潰れてまた息苦しい。さっきはあまり意識しなかった柔らかさが嫌にでも感じてしまう。
彼女が動く度にシャンプーの甘い匂いが漂ってくる。私と同じものを使っているはずなのに、どうも意識してしまう。
「ねえ、グラーフも本当はシたいんじゃなの?」
「そんなことはない。絶対に。だからどけろ」
目線を逸らしてできる限りアクィラを見ないように心掛ける。耳が熱いがどうでもいい。
「大規模作戦のせいでここ最近やっていなかったんですし、いいじゃないですか」
アクィラがゆっくりと私の内腿に手を沿わせていく。
抵抗して行かないと、と理性が訴えてくるが手を思うように動かせない。
「さあ、グラーフ。交わりましょう」
「や、やめてくれ……私は行かないと……」
首筋にアクィラの吐息が吹きかけられた。それが本当に気持ちよくて身体中が意志に反して震えてしまう。
もっと気持ちよさを求めたくなって、私のを触りたくなってしまうが僅かな理性で押し留める。
「ダメですよ我慢しちゃあ。このアクィラに身を任せて、ね」
妖美な声を耳元で呟かれた。
口の中が急速に乾いて、呼吸が荒くなってしまう。
もう、アクィラのが欲しくて堪らなかった。
「あれ、なんです? キスでもして欲しいんですか?」
私は必死で頷いてして欲しいと伝える。その間にもアクィラの手は私の太ももの付け根を撫でていく。決して私のは触らない。
「ふふ、グラーフは欲張りですねえ。よしよし」
早くして欲しい。
快感を求めて、我慢できずに私から口を開いて舌を出した。
「本当に、可愛いですね」
満面の笑みを浮かべたアクィラが首を振ると、目を細めて唇を近づけてきた。受け入れようと必死に舌を伸ばして……。
「はぁ、昼間っから何してるのよ」
いきなり別の声が頭上から聞こえた。視線を向けると少し離れた場所に誰かが入っていた。その人は見慣れた格好をして、苦虫を纏めて噛み潰したような顔をしたビスマルクのようで……。
「ビスマルク!?」
「ぐぇっ」
反射的にアクィラを突き飛ばして体を起こした。立ち上がろうともするが、膝が笑ってしまい全く立ち上がれない。
「停電について伝えようと思って、尋ねたらノックしても呼びかけても反応なし。鍵は空いていたから音を頼りにここまで来たら……このザマよ。せめて玄関の鍵くらい掛けたらどうなの?」
「あ、その、えーと……すまない。それで停電の理由は?」
「上で強制休暇を命じられた
一先ず、停電が仲間のせいだったことに安心した。敵や工作のせいよりずっといい。
「それで……はぁ。やる時は鍵ぐらい締めなさいよね。それじゃあ」
別れを言った後もビスマルクは不満たらたらに大股で去っていった。
「あ、そうだ、アクィラ。大丈夫か?」
思いっきり突き飛ばしてしまったのを思い出して、まだ蹲っているアクィラの顔をのぞき込む。
苦痛で歪んでいるという程じゃないが、痛そうな表情をしていた。
「うぅ、グラーフ、やりすぎですよ」
「すまない。あの時は……仕方がなかったんだ」
「うー。何がしたかないですかー。結構痛いんですよ。もうグラーフからキスしてくれないと許しませんから」
キスという言葉に、少しの間消えていた感情的が舞い戻ってきた。
アクィラに触って欲しい。が、肝心のアクィラは蹲ったまま。これを解消するためには……。
「アクィラ」
「むー。なんです、って、む」
返事をして上がったアクィラの頭を掴んで唇を合わせた。直ぐに唇を舌でこじ開けて彼女の口の中に入り込む。
一瞬、大きく目を見開いたアクィラは私が差し込んだ舌に蹂躙されかけたが復活して私の舌を舌で絡めとってきた。
私は唾液を彼女の口の中に押し込んで潤滑油のように使い、舐め回そうとするが舌使いはアクィラの方が美味かった。為す術もなく口の中で舌を蹂躙されて抜くことも叶わない。
永遠とも思えるような時間が続いたあと、満足したのかアクィラは舌を離してくれた。
舌を引っ込めるのも辛くなるほどの快感を受けてもう殆ど何も考えられない。唯一残っているのはアクィラに気持ちよくして欲しいということだけ。
「ベットに行きますか?」
声なんか出せなかったので頷きで返す。
「じゃあ、そうしましょう。立てる?」
無理だと首を振った。
「なら、よっと」
アクィラが私を担ぎ上げた。その衝撃だけでも達しそうになってしまう。
「今日は……寝かせませんよ」
どんなことが待っているのだろうか、そう考えると末恐ろしいが、待ち受ける快感が欲しい。
寝室へと向かう途中、玄関の鍵を締めないと行けないことを思い出した。だが、それをアクィラに伝えなかった。そんなことに時間を使うよりも、交わりたくて堪らなかった。
寝室に入るとほとんど何も見えない中で彼女はこう言った。
「さあ、始めましょうか」
後半はノリと勢いで書き上げた。反省も後悔もしていないからもっといちゃつけ