俺の幼馴染は俺の存在をなかったことにする。   作:胡椒こしょこしょ

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千冬を出しただけでは不十分かと思って束や千冬を掘り下げる形になりました。
また一夏や箒の描写もあります。
未だにどんなタグを付けるべきかわかりません。
どうすべきか・・・んにゃぴ、よくわかんないですね。


また対魔忍を更新したら続きを書くと思います。


俺の幼馴染は、世界一綺麗だが、話を聞かない。

「・・・・終わってた。」

 

千冬に気絶させられて起きると既にHRは終わっていた。

湊は起き上がる。

 

「お、起きたのか!湊兄!よかった・・・死んだかと思った・・・・。」

 

一夏は起き上がった湊を見て、本当に安堵した顔をする。

その顔を見て、周りの生徒は千冬お姉さまはこの弟にどう思われているか首を傾げるのだった。

 

「あ、ああ・・・・おはよう一夏。聞いてくれよさっきお爺ちゃんが来てさ・・・・夢に向かって跳べ、湊って。」 

 

「湊兄のお爺ちゃんは既に死んでるだろ!しっかりしてくれ!!」

 

虚ろな目で自身の死んだ祖父の話をし始める湊の肩を揺らす一夏。

 

そんな中、湊が教室の外にこれまた虚ろな目を向ける。

 

「おお・・・・これすげぇな。全部お迎えか?」

 

一夏はこれまた肩を揺する力を強めて声を掛ける。

 

「しっかりしてくれ!他のクラスか学年から来た人達だよ!!」

 

1-1は異例の男子生徒が二人いることもあってか、他のクラス、学年から女子生徒が噂の男子生徒を見ようと集まってきて、廊下の人口密度が半端ないことになっている。

 

そして教室の外に居るうら若き少女達は噂の男子候補生がこれまた年上の男子候補生の方を強く掴んで見つめ合っている状況に色めき立つ。

 

(ファッ!?なんだこのBL的展開たまげたなぁ・・・・)

(ここにキマシタワーできるんすか?建設予定地なんすか?やったぁぁぁぁ!!)

(生んでくれてありがとうお母さん!今度から母の日に道端のタンポポでも摘んで来てあげるからねっ!!)

 

噂の男子操縦者が戯れる様は、学校中のお姉様方にこれからの学校生活における生きがいの出現を予感させたのだった。

 

そして・・・・・

 

(一夏にいつ話しかければ良いんだ・・・・今は湊さんと話しているし、邪魔しちゃ悪いだろう・・・いや湊さんも幼馴染というか昔馴染みではあるのだから別に話しても問題ないのか?でも・・・・)

 

箒は教室の外の生徒たちと同じく一夏と湊を眺めて、いつ一夏に話しかけるか機会を窺っていた。

 

 

1時限目は今後の一年の流れや学園の規則などこの先IS学園で過ごしていくのに必要なことを教えられる。

2時限目からは普通に授業が始まるそうだ。

通常の高校のカリキュラムにISについても入ってるからか進度が早くなるのは致し方ない。

 

どちらにせよ教鞭を振るう千冬が眺められるのだから好都合だ。

 

湊はそう思いながらも授業中もずっと千冬を目で追っていた。

千冬は目が合うとどこか迷惑そうにしながらも、呆れた顔で目を逸らして湊を咎めることはなかった。

 

「・・・久しぶりだな。一夏。・・・湊さんも、どうも。」

 

一時限目の後の休憩時間。

箒が一夏に話しかけてくる。

 

「ああ、久しぶり、箒!俺と箒が会うのは六年ぶりかぁ・・・、元気にしてたか?」

 

「ま、まぁ・・・・ぼちぼちだな。その・・・・・・。」

箒はもじもじとしている。

 

その様子を見て湊ははっとした。

 

(なるほど、箒。俺が邪魔だということだな。それもそうだ。箒はずっと一夏の事が好きだったからな。気の利かないお兄さんでごめんな・・・・・それにしても六年前から変わらず好きっぽいのってちょっと一途のレベル超えてないか・・・?)

 

湊は若干箒の一途さに疑問や心配など複雑な感情を抱くも、箒の意図を理解する。

正直、幼稚園から束や千冬に付きまとっている湊は箒のことを言えないし、なんなら箒よりも年月が長い分、異常であると言える。

 

「・・・お腹痛くなってきたわ。ちょっとトイレに行く。」

 

「大丈夫か、湊兄?」

 

急に腹を抑えて、立ち上がった湊を心配そうに見つめる一夏。

そんな一夏に笑いかける湊。

 

「気にすんな俺の問題だ。とにかくお前は箒ちゃんと話してろ。いいな?」

 

「い、いや・・・言われなくてもそうするけど・・・・・・」

 

一夏がなぜそこで箒の名前を態々出すのだろうと不思議に思っているのを尻目に、湊は教室の外に走り出した。

 

(頑張れ箒ちゃん・・・・・俺は応援しとるぞ。・・・・・・・鈴ちゃんも応援してるけど。)

 

走りながら箒と、彼女と入れ替わりで一夏の学校に来た二番目に一夏と付き合いの長い女の子を思い浮かべる。

 

いやー一夏はモテモテで羨ましいなぁと思いながらも、教室に出て、行く手を遮る女子生徒たちに君たちトイレにいっても良いですか!と大声で叫び、モーゼの如く開けられた道を全速力で走っていく。

 

そんな湊を見ながら、箒は湊に感謝の念を心中で伝える。

 

(湊さん・・・私の為に。・・・・・・・・・・ありがとうございます。)

 

 

そうして一夏と箒はやれ新聞で箒が優勝したの見ただの色々を話す・・・が、肝心の一夏に対してアプローチをすることが出来ない。

 

(ま、まずい・・・・話が続かないぞ。このままでは急に姉さんから送られてきたツンデレは負けのヒロインの法則みたいな啓発本の通りになってしまうぞ・・・・・・。)

 

箒は思うように距離が縮まらないことに焦る。

しかしぶっちゃけ六年間も離れていたら、話すことなどあまりないもの。

距離が縮まらないのも普通である。

なんなら剣道の大会優勝などの話題で話は持っている方だろう。

 

しかし箒にとってみれば最愛の男性との6年越しの再会。

なんというかもっとこう、ロマンチックになるかもしれないと淡く期待していただけあってこの状況に対して過剰に反応してしまう。

 

(こ、このままでは・・・・そうだ!幸い休みはすぐ来る。その日にショッピングに付き合ってくれないかと誘えば更に距離も縮まるはず!)

 

「そ、その一夏?」

 

「ん?なんだよ箒?」

 

一夏は急に顔を赤くしてモジモジしだす箒を見て首を傾げる。

 

「そ、そのだな・・・つ、次の休みの日・・・」

 

(誘えっ!誘えっ!!後は言うだけだぞ何を戸惑う必要がある!!ここで誘わなくていつ誘うと言うんだ!!)

 

箒は心中で自分に発破をかける。

 

「そ、そのっ・・・あのだな・・・・・」

 

「?おう。」

 

箒はモジモジとするどころか、顔を伏せてしまう。

 

(言うんだ!!口にしない言葉はないのと同じ!このまま言えなければいずれ姉さんのようになってしまうぞ!!)

 

未だに自身の思い人にツンケンしている姉さんを頭に思い浮かべる。

あんな風にはならないと一夏がこの学園に来ることを知ってから思い、必死に恋愛本を読み漁った日々。

 

今こそその日々を実らせる!!

 

一夏は優しいしカッコいい。

このまま年月が経てば、必ず一夏の良さに気づく女も居るはず。

 

だからこそ幼馴染のアドバンテージを活かしつつ、この初めの時期に周りと差を付けるんだ!!

 

「次の休みにっ!私のっ!・・か、かいも『キーンコーンカーンコーン』あっ・・・・」

 

「お、もう授業始まるな。千冬姉厳しいだろうし、一応念の為に席についておこうぜ!その話は授業が終わった後でいいか?」

 

「・・・・もういい。(わ、私は今この時に覚悟を決めて言おうとしてたんだぞっ!?このタイミングを逃してもう一度言えるわけないだろっ一夏のバカ!!)」

 

箒はどこか不機嫌になりながらも自分の席に戻る。

 

「・・・?どうしたんだ箒の奴。」

 

「いやーわりぃわりぃ。結構デカいブツがゲートオブバビロン(隠喩)しちゃってさぁ~」

 

へらへらと笑いながら席に戻る湊。

箒のアプローチが成功している物と思い込んでいるのでお気楽な物である。

 

「お、おう・・・なんか湊兄はテンション高いなぁ。」

 

何も事情を知らない一夏はそんな湊を見て、ただ茫然とそう呟くだけであった。

 

 

「―――であるからして、ISの基本的な運用は現時点で国家の認証が必要であり・・・・」

 

ほんわかとした見た目に反して、教師らしくすらすらと教科書を読んでいく山田先生。

 

ISの話は束に作る前からちょいちょい聞いていたがやはり難しい。

正直、自分はあまり頭がよくないので分からない。

昔、束にもわからないなら分かった振りすんな、私は君に理解を求めているわけじゃないって一度怒られたっけ?

 

あの時のジト目は格別だった。

正直あのままパンツの匂いを嗅がせてもらうことが出来れば最高だっただろう。

まぁ不可能なんだが。

 

まあでも山田先生が言っているのはまぁ世界的なISの原則だろう。

監視員付きで予習用のテキストを無理やり解かされたのもあって理解はできた。

 

「織斑君、加坂部君、どこか分からないところはありますか?」

 

山田先生が教科書を読み終えると、俺たちに笑顔で聞いてくる。

なるほど、男性操縦者である分、俺たちが遅れないように配慮し

てくれているのか。

 

山田先生は良い教師だなぁ。

 

「先生!」

 

一夏が手を上げる。

まぁ予習テキストをやっていたとは言え、分からないところくらいは出てくる。

聞くことは恥ずかしいことじゃ決してない。

 

「はい!織斑君どうぞ!」

 

山田先生が笑顔で一夏を当てる

すると一夏が息を吸って、覚悟を決めて目をする。

 

「先生・・・・全部わかりません!!」

 

「えっ・・・・」

 

一夏の発言に山田先生が固まる、・・いや山田先生だけでなく、クラスメイト、そして果ては俺まで固まった。

なんで予習テキスト読んだのに全部分かんないの?

流石に全部分かんないことはないよ。

なにか一つくらいわかるだろ。

 

まさか・・・あれか!?ネタで言ってるのか!!??

そうだよね一夏!俺は嫌だぞ!片割れがガガイのガイは流石にこの先の学園生活思い悩まれるぞ!!

千冬は呆れた顔をすると、一夏の頭を出席簿で叩く。

殺気のトラウマか、出席簿を見ると身構えてしまう。

 

「いったぁ~痛ぇよ千冬姉!!」

 

「織斑先生だ。・・・・織斑、お前にも加坂部と同じようにテキストが配れていたはずだ。それはどうした。」

すると目の前で一夏が頭を抱える。

 

「テキスト・・・・?・・・・あっ!間違えて捨てちゃいました!!」

 

再度千冬に殴られる一夏。

いやーよかった。

予習テキスト見てて。

ていうかアレタウンページくらいの厚さあったよね?

間違えて捨てるなんてないと思うんだが・・・・・。

 

「まったく・・・お前には追加の教材を出す。明日までにやってこい。・・・・まさか、お前は分からないなんてことはないよな。」

 

千冬が一夏に対して嘆息すると、今度は矛先がこちらに向く。

だが、なにも心配はいらない。

俺は予習を終わらせているので分かっている。

湊は胸を張って答える。

 

「もちろん予習は終わらせているんでわか「なるほど、分からないか。」ファッ!?」

 

分かると言おうとしたのにも関わらず千冬は話を聞かずに分からないと言い切る。

 

「い、いや予習してるって言ってるじゃないか、ちゃんと分かって「そうだな分からないな。」は?だから分かるって言ってんじゃん。」

 

言葉を被せられて若干不機嫌になる湊。

 

「強がるな。分からないことは恥ずかしいことじゃない。織斑先生にマンツーマンで教えてほしいって顔しているぞ。」

 

千冬はそう言いながら肩に手を置く。

 

「あのさ、分かるって言ってるのになんで分からないって「可哀相に・・・分からないところがわからないのか。一夏よりも深刻だな。」そうじゃなくて!!」

 

可哀相なものを見る目で見てくる千冬に声を張り上げると、急に肩を万力のような強い力で握られる。

 

「・・・これで最後だ。分からない・・・・よな?」

 

目の据わった千冬。

 

言外に同意しないとどうなるか分かるな?とでも言いたげな顔。

そんな顔で見られるので、湊は縮み上がり、

 

「は、はい・・・わかりま、せん。」

 

ゆっくりたどたどしく同意した。

 

「ふっ、ふふ・・・しょうがないやつだな。貴様のわからないところを分かるのは私だけのようだし、放課後に私が教えてやろう。本当にしょうがない奴だ。」

 

ご満悦そうな顔でそう言うと湊の肩をポンポンと軽く叩き、持ち場に戻る。

周りの生徒は急に様子が豹変した千冬に対して恐れの念を籠めた視線を送り、湊をまるで肉食獣に捕らえられた哀れな草食獣を見るかのような目で見ていた。

 

そして教壇では真耶が先輩である千冬の奇行に顔を青くしている。

 

(な、ど、どうして・・・先輩、いきなりどうしちゃったんでしょう・・・・・・・まさか!!)

 

真耶の頭に電流が走る。

思い出すのは湊たちが来る前に話したこと。

 

『同じ学校でしかも教師なら禁断の恋みたいな感じで燃え上がること間違いないですよ!!』

 

『教師なら・・・』

 

(まさか先輩は教師というアイデンティティを活かし、個人レッスンというまるで心躍るようなシチュエーションで加坂部君にアプローチを掛けようとしている!?でもそうだとすれば持っていく過程が強引すぎます!加坂部君怯えてますよ!これじゃただのパワハラです!!どんだけ不器用なんですか!!)

 

真耶は自身のアドバイスを活かそうとして、却って自分の首を絞め、それに気づかず意気揚々と持ち場に戻る千冬を見やる。

 

(長い間話を聞くのになんでくっつかないんだろうって思ってたけど、先輩が不器用すぎるだけだったんですね。) 

 

真耶は千冬に哀れみの目線を送る。

しかし千冬はそんな視線に気づくことはない。

 

(授業中に強引すぎたか?・・・いや多少強引なくらいがいいだろう。そう恋愛書にも書いてあったしな。ふふ・・・放課後の個人レッスン。女教師を前にそんなイベントが待っていたら流石のアイツも私に手を出してくるに違いない・・・・ふっ、私の勝ちだな。束。おっといけない、今は授業中、にやけていては不審がられるかもしれないからな。) 

 

千冬はこの先の展開と結果に妄想を膨らませて、束に心中で勝利宣言をする。

そしてにやけないよう取り繕おうとしている。

・・・だが、正直さっきの湊に対する詰め寄りは十分周りの生徒に不審がられており、もはや手遅れであると言ってもよい。

 

目先の欲求に目を奪われて、もっと重要なことを見落とすのだった。

 

《目覚め》

かなり昔、小学生くらいの時に私はアイツの用事に付き合って片田舎のアイツのお爺ちゃんとやらの家に遊びに行ったことがある。

 

その頃には既になんというかアイツと仲良く?いや、今のような腐れ縁が作られており、またちーちゃんが夏休みの間は家の都合で家に居ることが少なく、アイツがいないとどことなく退屈なので渋々ついて行った。

 

まぁ親に着させられたワンピースや麦わら帽子を褒められた時は、なんというかこの馬鹿にも見る目はあるんだなって思ったけどさ。

 

アイツの祖父はコメ農家をやっていて、アイツはその手伝い。

私は手伝わせるのは悪いということでアイツをずっと見ていた。

気まぐれに水を差しだしてやると笑顔でお礼を言ってくる。

 

なんかむかつく。

 

 

仕事が終わった後、アイツの祖父にスイカを差し出されてアイツと一緒に食べる。

 

アイツはスイカが好物なのでとても喜んでた。

 

「じいちゃん、またイナゴ居たよ。」

 

アイツは何を思ったかイナゴが居たと祖父に言い出す。

するとアイツの祖父は笑う。

 

「なんだ湊はイナゴが嫌いだなぁ~。」

 

祖父が答えると、アイツは返答が納得できないのか膨れ面で前を向く。

私の前ではただ笑っているだけなので、私にとっては目新しい表情だ。

 

「当たり前じゃん・・・じいちゃんの米食べるんだ。嫌い。」

 

思えばアイツがなにかを嫌いと言うのを聞くのは、その時が初めてかもしれない。

アイツの祖父はそんなアイツを笑顔で見ていた。

 

「なんだよ。じいちゃんは嫌いじゃないのかよ。」

 

アイツがそう言うと、アイツの祖父は笑う。

 

「確かにイナゴはわしの米を食う、だがな、ワシは嫌いになれんのだよ。」

 

「なんでだよ。」

 

「イナゴはな、たくさんのイナゴが群れになって飛ぶ。・・・ワシは昔、誰とも、婆さんとすら一緒にいることが出来なかった。だからこそ今はこんな田舎で米を作っておるんじゃ。・・・まぁそのおかげか、子供やその家族とようやくまともに向き合えるようになってきたのじゃが。」

 

アイツの祖父はどこか遠くを見ていた。

まるで苦い思い出を噛みしめて泣き笑いしてるかのような表情だった。

 

「じいちゃん・・・・」

 

アイツはそんな祖父の顔を窺い、表情を曇らせる。

私にとってはアイツの祖父がなんだろうがどうだっていい。

でもこの人の元気がないと、アイツの顔も曇ってしまう。

だから時々、こんなふうになにかを思い出してアイツを心配させるジジイを煩わしく思った。

 

「だからワシは次生まれ変わるなら最初からあんなふうに生きたいもんじゃ。・・・願わくばお前は、誰か大切な人、みんな連れて一緒にいられるような、そんな男になれ。いいな。」

 

「・・・・うんっ!じいちゃんが言うような男になれるように頑張るよ!!」

 

目をキラキラと輝かせて自分の祖父を見上げるアイツ。

なんとなく気に食わない。

 

「でもイナゴって群れている他のイナゴと共食いしたりする野蛮な虫じゃん。訳わかんない。」

 

私はボソリと水を差すように呟く。

するとアイツはすぐ私の方へ向き直り、えっマジで!と驚いている。

口元にスイカの種が付いていて滑稽だったので取ってやった。

するとアイツの祖父は目を丸くした後、笑う。

 

「ふ・・・あっははは!賢いお嬢さんじゃないか!いい嫁さん連れてきたな湊!」

 

笑いながらとんでもないことを口走るジジイ。

私がコイツの嫁・・・・?

 

「は、はぁ!?!?私とコイツはそういうのじゃない!お前も笑ってないでなんとか言えよ!!」

 

束は激昂して笑う爺さんと、隣にいる笑顔の湊に食ってかかる。

 

日差しが沈み、辺りは暗くなってくる・・・・・。

 

 

 

アイツの祖父が死んだ。

 

夏休みらへんに私は一度会っただけだが、その後もアイツは会っていたらしい。

 

死因は脳梗塞。

 

一人で暮らしていたので発見が遅れて、見つかったころには既に死んでいたらしい。

 

その法事に居る。

 

唯一の血縁がアイツの家族だけだったらしく、アイツと爺さんの知り合いを招いて葬式を行うそうだ。

・・・一応私も大好きな爺さんが死んだアイツが心配だったから付いてきた。

私自身一度爺さんにアイツと一緒に会ったことがあるので、参加してもいいらしい。

 

アイツの隣で手を合わせる。

横目でアイツを見ると、アイツは無表情だった。

笑っても泣いてもいない顔。

アイツは自分の祖父が死んだのを理解していないと言われたらそうだと納得できるほど無の表情。

 

私は、初めてアイツを見ていて怖いと思った。

 

そして骨を燃やして、遺骨を骨壺に収める。

そして葬式がひと段落したところで食事を知り合いに振る舞っていた。

 

宴会みたいな物。

 

大人たちは、やれあの人はこんな人だったなど思い出話に花を咲かせて、酒を飲み、泣いたり笑ったりしていた。

正直死んだ人間は死んだのだからいくら追いすがるかのように思い出を語ったところで無意味だと思う。

・・・私がまだ身近な大事な人を失っていないからかもしれないが。

 

ご飯をあらかた食べたアイツは席を外してどこかに行ったので、私も追うように食事を終わらせる。

 

付いていくと縁側に居た。

ただ茫然と縁側を眺めていた。

声を掛けようとした。

 

その時・・・・・・・

 

「・・・いつも夜はここで一緒に話をしてた。」

 

まるで独り言のような声の大きさでぼそりとアイツは呟く。

それは自分自身に言っているかのようだ。

 

「いつもここで色んなことを教えてくれた。・・・色んなこと。もっと教えて欲しい事がたくさんあって、話したいことだって・・・・・でも、もう・・・・・・・・。」

 

拳を握りしめて歯を食いしばる。

瞳に涙が溜まる。

 

「俺は泣いちゃダメなんだ。・・・最後に約束したことが男なら簡単に泣くなって。だけど・・・・・・そんなの、無理だよぉ・・・・・。」

 

こらえきれずに泣き出すアイツ。

その言葉を聞いて初めて私は理解する。

 

アイツは葬式の時から無表情だったんじゃなくて、無表情“であろう”としたのだ。

最後に教えられたことを律儀に守ろうとして、必死に泣くのを我慢していた。

それでもアイツは今、こらえきれずに涙を流している。

 

私の傍にいるアイツはいつも笑っていて、泣いている表情なんて見たことなかった。

そんな私が見たこともない表情のアイツを見た時に、私はふと思ったのだ。

 

 

_____もっと私の知らない顔が見たいと。

 

 

だからこそ、自然と体が動いていた。

 

「なに我慢してんの・・・良いんだよ泣いても。」

 

いつもはそんなこと決してしないのに私は奴を抱いて耳元で囁く。

 

「で、でも・・・・・・」 

 

「あの爺さんはお前が自分の言ったことを気にして苦しんでいる方が、悲しむんじゃないの?」

 

知らないけど、と心の中で付け加える。

本当にあの爺さんがどうとかは毛ほども興味がない。

今言った言葉も親が見ていたどっかの名前も覚えていないようなドラマとかの受け売りだ。

 

しかし、アイツは顔を大きく歪ませる。

 

「うぅぅ・・・うううぅうぅ束!束!」

 

アイツは情けない程にぐちゃぐちゃの顔で私に縋りつく、大きな声を上げて泣き出す。

 

コイツは好きだった祖父が死んで誰かに縋りついてこんな風に泣くのだと、それを知っているのは今目の前で縋りつかれている自分しか知らないのだ。

 

そう感じると、ゾクゾクと背筋に快楽が走るのを感じる。

不思議と口元に笑みが浮かぶ。

 

もっと私の知らない顔を見せろ。

 

もっと私の知らない顔を晒せ。 

 

止まぬ欲求が心中を渦巻く。 

 

もはや涙や鼻水で服が汚れることすら微塵も気にならなかった。

 

 

そう思うのと同じく、私は自分が目の前のコイツの爺さんとの泣かないという誓いを悲しみに付け込み、ぐちゃぐちゃに絆した挙句に踏みつけにしたのと同義だ。

 

対して悲しみを共有しても居ないくせに、自分の知的欲求の為にコイツを欺き、約束を完全に放棄させた。

本当に怖いのは欲求の為に躊躇なく目の前の人間に付け込める自分自身だった。

これでは・・・ただの化け物だと自嘲する。

 

「お、俺、頑張る!絶対!・・・じいちゃんの言ってた人みたいになれるように頑張るからっ!母さんや父さん、束や千冬・・・みんな一緒に笑わせられるように、頑張るからっ!!」

 

自嘲する束をよそに湊が決意を新たにする。

夜は深まり、されど綺麗に満月が出て、周囲を朧げに照らしていた。

 

 

そして今、束はそんな在りし日の頃を思い出しながら、アイツに渡したISのデータをディスプレイで見ていた。

 

寸分たがわずアイツに相応しい機体を作った、その自負が自分にはある。

アイツに察されないように身体データを集めるなどかなり苦労したが、その完成度は高いと言える。

 

変わってて捉えどころのない彼。

それに合う機体といえばその機体自体もアイツに合わせて成長しなくてはいけない。

 

アイツはみんなを連れて一緒に居たい。

 

でもちーちゃんやいっくん、箒ちゃんや自分と一緒に居るならISと関わるしかない。

 

だからこそそのための翼を渡したつもりだ。

 

「お前は、・・・・その翼を持って、どんな表情をするんだ。」

 

その表情を・・・感情を私に見せてほしい。

 

束はディスプレイ越しに湊を星を眺めるかの如く、ずっと眺めているのだった。




今回は千冬さんに焦点を絞った分、束さんについては過去編で視点を書くことで束さん成分を補填しました。
湊が気絶した後、じいちゃんがどうのこうの言っていたのはこの過去編を書くためでした。

湊のISは一夏や箒ちゃんよりも弱くします。
二人は3.5世代や4世代を使いますが、湊には第3世代以下しか使わせる気はありません。
ただ渡す際に寄せ集めだの言っていたのはただの照れ隠しです。
ばりばり前もって準備して設計してます。

束さんは小学生時代からちょっと新しい扉に目覚めつつあります。
まぁ気になる子についてもっと知りたいって思うのは普通だから、多少はね?

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