俺の幼馴染は俺の存在をなかったことにする。   作:胡椒こしょこしょ

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ある程度付けるタグを絞れてきました。
他作品ネタや淫夢語録は苦手な人も多くいるでしょうし、付けておいた方が良いでしょうからね。
こちらの作品ではタグにシリアスもやりたいとは書きましたが、大体ギャグにしたいと思います。


金髪少女は、優秀らしいが、傲慢不遜。

チャイムが鳴り、授業が終わる。

 

湊はなぜか分かるにも関わらず、千冬とのマンツーマンレッスンを放課後に受けなければいけなくなり、憂鬱な気分で机に突っ伏した。

 

確かに千冬と放課後、二人きりで個人授業なんてそういうビデオの導入みたいでドキドキはする。

密室で男女二人だけ、なにも起きないはずもなく・・・・・って奴だ。

 

だがそれも過程が良ければの話だ。

授業中にあんな風に脅迫紛いに迫られれば、この後の個人レッスンは体育会系のノリでいう可愛がり(意味深)であることは容易に想像できる。

 

どうしたんだ千冬、なにか嫌なことでもあったのかな・・・・?

 

湊が千冬を心配していると、授業が終わったことから一夏が背中を伸ばした後、席を立つ。

 

「どうした一夏。トイレか、俺も付いていく。」

 

「え、い、いやただちょっと視線が気になるから屋上とか行こうかなって。・・・ていうか湊兄はさっきトイレ行ってなかったっけ?」

 

確かに行ったし、めっちゃうんこした。

だがそれとこれとは話が別だ。

 

女子たちがまるで俺たち男性操縦者を某上野の動物園のパンダ並みにずっと注目しているのだ。

そんな中に一人で残されてみろ。

一瞬でメンタルが削り切れる自信が俺にはある。

見るくらいなら話しかけてきて欲しいものである。

 

ん?さっきの休み時間一夏を置いて、教室を離れたじゃないかって?

あれは箒ちゃんを支援したみたいなもんだし、なんなら一夏も異性とはいえ年齢の近い幼馴染と話せたのだから本望だろうし、ノーカンだ。

 

年の近い幼馴染というのは良い。

この世界でそれ以上に大切な存在が親を除いて居るだろうか?

いや、居ない。

そのくらい幼馴染というのは尊い存在だ。

どのくらい尊いかと言えば、今さっき授業中に脅迫?されたにも関わらず、なにか嫌なことがあったのかと心配してしまう程だ。

 

「じゃあ俺も混ぜろよ。こんなところに俺を置いていくのか・・・?俺はそんな薄情な男に育てた覚えはないぞ・・・・。」

 

「わかったよ!だからそんな目で見ないでくれ!湊兄も一緒に行こうぜ!!」

 

一夏が堪忍したかのように声を上げて、湊を誘う。

 

「そうだ・・・それでいい。」

 

湊は満足げに頷く。

すると視界の隅で箒がもじもじしているのを目にとめる。

しょうがねぇなぁ~。

 

「どうした箒ちゃん、お前も来いよ。」

 

「い、良いんですか?二人だけでなにか話でもあるんじゃ・・・?」

 

箒ちゃんに声を掛けると、箒はあたふたと慌てながら答える。

そんな箒を見て、一夏は笑う。

 

「別に元々は一人で行くつもりだったし、人数が増えたほうが楽しいだろうしな。お前も来いよ箒!」

 

「わ、わかった!」

 

一夏に同行を許可されて箒は嬉しそうな表情をする。

その顔を見て、湊はご満悦層に頷く。

そうだ。いいぞ箒ちゃん。

一緒に居る時間が増えるほど、親密度は上がる。

絶対に一夏とのイベントを逃してはダメだ。

 

そう箒に対して思っていると後ろから予期せぬ人から話しかけられる。

 

「ちょっとよろしくて?」

 

振り返るとそこには金髪美少女。

束ほどではないが可愛いと思う。

ま、束に可愛さで勝てる人間なんていないんですけどねっ!

確かセシリア・オルコットさんと自己紹介の時に言っていたか?

 

「へ?」

 

一夏も突然声を掛けられて困惑する。

なんかどことなく高貴な感じがする。

そういう雰囲気は一朝一夕では手に入るものではないし、きっとどこかの貴族的な、そうでなくてもいい家の生まれの子なのだろう。

 

「聞いてます?ご返事?」

 

「あ、ああ。いやすまんな。ちょっといきなり声かけられてびっくりして・・・・」

 

湊は返事を求められて、言い訳のようにそう続けた。

しかしオルコットは口元に手を当てて、まるであり得ないと言わんばかりに大仰に驚く。

 

「まぁ!なんですの、そのお返事は!わたくしに話しかけられるだけでも光栄なのですから、それ相応の態度という物があるではないかしら?」

 

「「「・・・・・」」」

 

それ相応の態度とはどういうことなのだろうか?

なにかまずいことでもしてしまったか?

いや、でもこの子とは初めて話したしな~

 

湊が首を捻って考えているとオルコットはずっと黙っている湊に噛み付くように話しかける。

 

「わたくしあなたに言っていますのよ!黙ってないでなにか言ったらどうですの!?」

 

ぴゃっ!?なんかすごい怒ってんだけど・・・・

もうなんかわかんなくなってきた・・・どうすりゃいいんだ????

 

湊が受け答えに窮していると一夏がセシリアに言う。

 

「悪いな、湊兄も俺も君が誰かを知らないんだ。」

 

いや、俺は誰かは知っているけどね?

 

するとこれまたオルコットさんは釣り目でまるで俺たちを見下すかのような口調で続けた。

 

「わたくしを知らない…? このセシリア・オルコットを? イギリスの代表候補生にして! 入試主席の! このわたくしを!?」

 

なんだこの子。

そんなに自分を知らないことが驚きなのだろうか?

・・・・いや、入試主席というし、優秀な子にありがちな自意識過剰という奴だろうか?

 

自分自身そんなに優秀な子ではなかったし、隣にいつもクッソ優秀な束や千冬が居たし、そんなに自慢げに自分を誇示することなんてなかったしなぁ。

でもそういう態度を取る子はあんまり周囲に馴染めなくなっちゃうしなぁ~。

オルコットさんはそこらへん気づいてないのかなぁ?

 

その言葉を聞いて一夏が神妙な顔をする。

 

「代表候補生・・・・ってなんだ?」

 

その言葉を聞いた瞬間、目の前のオルコットや箒、俺だけでなく密かに聞き耳を立てていたクラスメイト達もずっこける。

ていうか聞いてたのかよ、油断も隙も無いな。

ただ一夏に関してはしょうがない気がする。

だって予習してないもん。

 

「代表候補生ってのはなんか国家代表未満みたいな感じの選ばれた人達のことだぞ。」

 

「ほえ~、エリート様って奴か。」

 

なんだその感心の仕方。

馬鹿っぽく見えるからやめた方がいいぞ。

 

するとオルコットの声も一際大きくなる。

 

「そうなのですわ!!わたくし、エリィィイイトなのですわ!!」

 

なんだこの子うるさっ!

歩くスピーカかよ、話している途中で急に大きな声を出すなよびっくりするだろ。

 

そう思った瞬間、はっとする。

もしやこの子は友達がいなくて俺たちに話しかけてきたのではないか?

 

優秀な子にありがちな自分を自慢ばかりする自分語りモード入ってるし、それに話している途中で急に大きな声上げているしコミュ障なのだろう。

 

しかしこのままの態度ではいずれクラスメイトと衝突してしまうだろう。

ならば俺が仲を取り持ってやらねば・・・・。

千冬が取り持っているクラスで不和なんか起こさせるわけにはいかないからな。

そう決心を新たにする湊。

 

しかしそんな決意を露知らず、オルコットは口を開く。

 

「本来ならわたくしのような選ばれた存在とは、クラスを同じくする事だけでも奇跡…! まさに奇跡! そしてなんたる幸運! その素晴らしさをもう少し理解していただけるかしら?」

 

傲慢不遜にもそう言い放つオルコット。

クラスメイトは呆れた顔でオルコットを見つめる。

 

そりゃそうだ。

確かにオルコットは優秀で国の中でも代表候補生に選ばれた凄い生徒なのかもしれない。

だが同じクラスになれたことが奇跡と言っても、目の前に男性適合者という更にレアケースがいるのでは彼女のような代表候補生と一緒になれることが奇跡や幸運といった図式は成り立たないだろう。

 

一夏が口を開こうとする。

しかし、一夏に発言させるわけにはいかない。

一夏は鈍感ななので、こんな風にいい気になっている女の子の逆鱗に触れてしまいかねない。

一夏よりも先に口を開いた。

 

「さすがだぞ!自分の価値をばっちりわかっているんだな!」

 

「・・・・バカにしてますの?」

 

あっるぇぇ~?

なんでキレられているんだ?

普通に褒めたつもりなんだが・・・・・。

 

「湊兄が人を馬鹿にするわけないだろっ!いい加減にしろっ!!」

 

一夏が湊を睨み付けるオルコットを睨む。

自分にとっては親しみ深い兄のような存在がよく知らない女の子に噛み付かれて困っていれば、湊の援護をしようとするのは当然だろう。

 

しかしその行動は湊にとっては不都合である。

湊はあくまでオルコットと仲良くなり、ひいては一夏とも仲良くしてほしいのだ。

しかしこれでは男性適合者二人とオルコットという対立構造が出来上がってしまう。

 

「なんですのその態度は・・・これだから男は・・・・。」

 

オルコットは呆れたような態度でやれやれと肩をすくめる。

 

「・・・男だなんだと性別で人を判断するような人間が上等であるなどといい気になっていることの方がお笑い草だと私は思うがな。」

 

箒がぼそりと呟く。

 

「・・・なんですの?そこのあなた。」

 

オルコットが箒ちゃんを睨み付ける。

しかし箒もオルコットを睨み返す。

ふえぇ・・・俺たちの時とは比べ物にならないくらい空気が重いよぉ・・・・・

箒ちゃんまで・・・これじゃオルコットの仲を取り持つなんて無理だろ・・・・。

女子同士の対立とやらは結構えぐいものだと言う。

そうなる前になんとか俺がしようと思ったんだが・・・・。

 

オルコットは箒から目を外して、一夏と俺を見る。

 

「ふ、ふん!ま、まぁ?わたくしはとても慈悲深いですから。泣いて頼めばISのことを教えて差し上げてもよくってよ?なにせわたくしは入試で唯一教官を倒した正真正銘のエリートですから!!」

 

胸を張って誇らしげに言うオルコット。

 

まぁ代表候補生なわけだし、それもそうかと納得できる。

そもそも選ばれる時点でその国の中での試験に合格したようなもんだろうし。

 

・・俺?

 

俺は普通に負けましたよ。

使ったこともないような物に乗っても勝てるわけないってそれ一番言われてるからな。

 

すると何を思ったのか一夏が口を開く。

 

「入試ってもしかしてISを動かして戦った奴か?」

 

「それ以外ありませんわ。」

 

オルコットがそう答えると一夏が首を傾げる。

 

「え、でも俺も教官を倒したぞ?」

 

え・・・。

 

えぇぇぇぇええええええええぇええええ!!!?????

 

俺は驚きの余り目を見開き一夏を見つめる。

 

周りの生徒たちも「なんだこれはたまげたなぁ・・・」や、「ファッ!?」など思い思いの反応で驚愕している。

なんか全体的に反応が汚いなぁ。

 

「マジかぁぁ!?マジなら本当すげぇよ一夏!流石千冬の弟だわぁぁぁあああ!!」

 

「ちょっ、ちょっとそんなに褒められると照れるな・・・。」

 

湊はすごいテンションで一夏の肩を掴んで揺らす。

一夏は甘んじて揺らされながらもどこか嬉しそうだ。

 

「すごいな一夏。さすがだ。」

 

箒は湊に褒められている一夏を自分も嬉しそうな表情で見る。

 

しかしそんな中、理解不能といった顔をしているオルコット。

 

「そ、そんな・・・わたくしだけと聞きましたが?」

 

「女子だけではってことじゃないか?現に一夏は勝ったって言ってるし。」

 

正直もうオルコットよりも一夏が教官に勝ったという偉業を成し遂げたことに意識が向いているので、どこかどうでもよさげに答える。

 

「あ、あなた・・・わたくしに嘘を『キーンコーンカーンコーン』ッ!!また来ますわ!逃げないことですわねっ!よろしくて!!」

 

そう言い捨てて、オルコットは自分の席に戻っていった。

それにしてもアイツ今、一夏が嘘を吐いていると言おうとしやがったな・・・。

それは看過できない。

一夏はすごく素直ないい子だ。

それに千冬の弟だぞ、そんなことするわけないだろ。

 

オルコットに少しイラつきを覚えていると、席に着いた瞬間、一夏が湊に思いついたかのように質問する。

 

「あっ。そういえば湊兄はどうだった?入試、勝ったのか?」

 

一夏の問いに動きを急停止させて、そしてゆっくりと答える。

 

「・・・・負けたよ。普通にな。」

 

「・・あっ、ご、ごめん湊兄。」

 

一夏は哀愁漂わせて答える湊を見て、申し訳なさげに謝る。 

 

笑え・・・笑えよ。

笑ってくれ・・・・。

自身の情けなさに内心少し凹みつつ、席について大人しく授業を受けるのだった。

 

《私の幼馴染は頼りになる。》

 

昼下がり

 

私達姉弟の親と呼べる人達は未だに帰ってこない。

・・・というより帰って来ることの方が稀だ。

私には幼い弟がいる。

だからこそ私が家の家事やら弟である一夏の世話やらを一人でしなければいけない。

 

だが、私は家事が得意ではない。

親は自分にやってくれたこともなく、やり方も教わっていない。

だからいつも、失敗して依然散らかったままの部屋や、味のないご飯を見てなぜ自分には一夏にしてやれないのか。

いつもそう自責していたと思う。

 

だが、今日はいつもとは真逆で楽しい。

それは私の幼馴染である加坂部湊が居るからだろう。

何も彼には言っていないにも関わらず、偶に家に来ては基本的な家事すらができていなかった私を見兼ねて教えてくれる。

 

「一夏くん、今日はこんなものも持ってきたよー。」

 

そう言って絵本やらなにやらを持ってくる。

一夏の御守すら彼に任せてしまっている現状に情けなさを感じる。

彼と話している時から、一夏は驚くほど活発な子供になっていった。

 

彼はこの家に初めて来たときから、幼児が居るのに絵本とかおもちゃはないんだなっと珍しいそうに眺めていた。

私からしてみればそれが普通だったのだが、普通はそうではないのだろうか?

 

彼は束とは違い、難しいことは知らないが、私が知らない社会の常識とやらを教えてくれる。

私の知らない世界を見せてくれる。

それが私には堪らなく楽しかった。

 

「・・ああ!!千冬焦げてるって!!」

 

一夏と遊んでいた湊が不審そうに周りを見渡した後、慌てた様子でこちらに走ってくる。

手元に目線をやると野菜炒めが本来の色とは程遠い黒炭のような色をしていた。

 

「火を消して・・・」

 

湊がこちらにやってきてコンロの火を消す。

後に残るのは私自体の不注意でダメになってしまった野菜炒め。

 

「す、すまない・・・せっかく教えてくれたのに・・・・。」

 

咄嗟に湊に謝る。

せっかく教えてくれたのに、失敗してしまった。

私のことを嫌いになったかもしれない。

私は生まれながらに失敗は許されない。

だから・・・・・

 

恐れつつも顔を上げると、湊は首を傾げていた。

 

「い、いやそこまで真剣に謝らなくても・・・もう一回作り直せばいいし、大丈夫だよ。それに・・・こっちこそごめんな?一回教えただけじゃわからないかもしれないのにキッチンに一人にしちゃって。」

 

「・・お、怒らないのか?なぜできないのかって。」

 

私がそう問うと湊が殊更おかしそうに笑う。

 

「え?そりゃやったことないなら完璧にできなくて普通だし。なんなら教えるとか言って途中で一夏くんにつきっきりになっちゃって目を離した俺も悪いだろうし。・・・だから一緒に作ろう?」

 

湊はそう言う。

コイツはこれだ。

 

私は今まで勉強、スポーツなど大体のことは人には負けてはいけない。

完璧でなければ価値がないと教えられてきた。

・・だが、コイツは失敗しようがしまいが私を肯定する。

それに・・・私は甘えてしまう。

 

「・・・そうだ、これはちゃんと見ないお前にも責任がある。・・・だから責任を取れ。」

 

そう言うと湊は当然と言わんばかりに答える。

 

「分かってるよ。じゃあ作りながら教えるからね。」

 

そう言って冷蔵庫を漁る。

そんな彼の袖を何故か後ろからちょっと摘まむ。

 

「?なに?」

 

湊は急に袖を掴まれて、振り返り首を傾げる

 

「・・・バーカ。なんでもない。」

 

そう答えると湊は一層首を傾げて、材料を出す。

 

 

料理に関しては湊が居たからか、普通に上手く出来上がった。

彼と共に囲む食卓は美味しい。

途中彼は青い顔をしながら、「夕食入るかな・・・・」と言っていた。

 

そして奴が家に帰る時間になる。

 

「すまないな。いつもお前に迷惑を掛けてしまって・・・」

 

湊は笑う。

 

「別に迷惑とか思ってないよ。また来るわ。」

 

「みなとにぃ!またね!」

 

一夏が湊に手を振って見送る。

そんな一夏を見て、笑う。

 

「おぉ、一夏くん。次はガンダムかライダーでも持ってきてやるからな。じゃ、そゆことでじゃあな。」

 

「ああ。また明日。」

 

私も手を振った。

 

こんな日々が、ずっと続けばいいな・・・

そう思わずにはいられなかった。

 




というわけで湊の思惑も虚しく、原作通り一夏とオルコットが険悪になりました。
違う点と言えば、箒ちゃんもオルコットになんか言ってる点ですね。
好きな人や兄代わりが悪く言われて黙っていられなかったんですかね?

それと織斑さん所の闇が深い家庭事情はあまり大っぴらには出しません。
あくまで基本ギャグ作品の体で行くつもりなので。
ただ千冬のなにもかも完璧な中で唯一家庭に関連する家事が苦手であるとか、幼い一夏が居るのに玩具や本の類が全くないとこなどそれらしき匂わせはしてるんですけどね。

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