その日、俺は死んだ。そのはずだった。
けれど目を開くことができる。どういうことかと思ってみればそこにはただただ白いだけの空間が広がっている。
どういうことかと目を凝らしてみても別の物などまるで見えはしな――
「大変申し訳ございませんでしたぁぁぁ!!!」
そう思っていたら上から土下座した体制のままなんか爺さんが落ちてきた。
…………は? え? ちょ、は?
え、今上から降ってきた? でも上って何もないのになんでそんなとこまで土下座した体制でいられたの?
というか普通に不審者じゃん通報しなきゃ……。
「あー待って待って通報は止めて! そろそろ本気で上に怒られちゃう!!」
……え、なに。ほんとになに。
というか誰。ってか今の俺声に出してないはずなのになんで通報しようとしてるってわかったの?
テレパシー? 頭可笑しいんじゃねぇのこいつ。
「おぉう……急に沢山思考が流れてきてワシ酔っちゃいそう……ウプ」
マジで酔ってんじゃんやっぱ頭可笑しい……。
通報、通報用のスマホはどこ? 普段通りならケツポケットに入ってるはず……。
「だから通報はやめろって言っとろーが!!」
ヒェッ。急に怒り出すとかこれだから老人は……。
カルシウム足りてないのと違います? 骨粗しょう症なりますよ。ちゃんと牛乳飲みましょうね。
「だー、話が進まないぞい……」
話進めてくださいよ。じゃないと何にもわかんないじゃないですか。
「お主が思考逸らすせいで離し進まないんじゃがね?」
うるさいですね早くしてくださいよ。
「ひっど……。まぁよい。では話そう――」
この老人の回りくどくて長ったらしい話を纏めるとこうだ。
間違えて殺しちゃったから転生させてあげるよ。あ、なんか能力いる?
…………そんな軽いノリで人を殺して能力渡していいのだろうか。
「だってお主で57人目じゃし。さすがになれて面倒にもなってくるじゃろ」
まず人を間違えて殺す時点でアウトなんだよなぁ……。
「うるさいのう……。で、能力は何なのじゃ?」
能力……。
特殊能力であれば何でも構わないのでしょうか。
「なんじゃ急に敬語使いおってからに……。ああ、構わん。どんな能力であっても叶えてやろう」
ほほう、どんな能力でも。
「どんな能力でもじゃ。
なるほどなるほど……。
じゃあ『平穏な暮らしをする能力』でお願いします。
「…………マジ?」
マジです。
「冒険しようとか……」
思いません。
「もっとこう、夢とかないのか若人よ」
(夢なんて)ないです。
「えぇ……。なんじゃ、面白くなりそうだから転生させようとしとったのに……」
へッ、ざまぁみやがれ。
「口悪ぅ……。はぁ、お主の生活は見てもつまらなさそうじゃの。じゃあさっさと転生させてやるわい」
そう言われるとすぐに俺の後ろで何かが開く音がした。見てみればよくある木製のドアがいつの間にか出てきて開いている。
「そこに入れば転生できるぞい。……はぁ、次の人間探すの面倒じゃなぁ」
……そんなんでいいのか神様。
まぁ、いいか。じゃあ俺の平穏な暮らしの始まりだ。
俺、転生し終わったら普通の人生を謳歌するんだ……。
「フラグを立てても能力的に強制で穏やかな生活じゃぞいクソッたれ!!」
この後滅茶苦茶平穏な人生を謳歌した。