荒野に轟くねじり金棒の凪払い(仮)   作:刀馬鹿

2 / 46
久しぶりすぎて投稿の仕方がわからん

間違ってたら申し訳ない

別の趣味に夢中になりすぎて、執筆がかなり久しぶりです

ぶっちゃけめっちゃへたくそになってます

書き方

元々うまいわけでもなかったと思うけど、それでも下手になった実感がある

あと説明にも書きましたが遅筆ですのであしからず

だからそれを許してくれる心が広い人に読んで欲しいです



這い出る人

誰もが気づかなかった

 

否、気づかなかったというよりも気づけなかったのだろう。

 

地獄の釜がまさに口を開けようとした地底。

 

地獄の釜を閉じようとした二人。

 

恐らく気づくことが出来たとすれば二人だけだった。

 

地の底よりも遙かに深く、深い、暗闇の中。

 

地に伏し、倒れたある男の最期。

 

自らの命題を果たすことも叶わず、仮初めの生に終止符を打つはずだった。

 

まさに地獄の釜が蓋を開けようとしたその瞬間……

 

 

 

地獄すらも生ぬるい……想像を絶するほどの何かが、地底の世界に出現した。

 

 

 

圧倒的なまでの圧力と質量。

 

 

 

純粋な怨念の……圧倒的数と種類が積み重ねてきた憎悪。

 

 

 

その憎悪全てを司った煌黒。

 

 

 

それらが一部とはいえ解放されて……驚くべき事に地獄の釜の中身を全て食らいつくした。

 

 

 

そう……地獄の釜に類する全てを……。

 

 

 

そして今まで地下に満ちていた、物ではなく、心胆寒からしめる全ての怨念は、消えていった。

 

赤黒く激しく明滅していた超野太刀が全てを喰らい……後にはただ静けさだけが残されており……

 

 

 

全てが終わったと誰もが思っていた。

 

 

 

超野太刀を持つ……その存在さえも思っていた。

 

 

 

 

 

 

そして終わった。

 

 

 

 

 

 

血ではなく

 

 

 

 

 

 

全ての憎悪を注がれ器に満ちていた黒き全てを飲み干して……

 

 

 

 

 

 

その地底に……実に数百年ぶりの静けさが、取り戻されていた。

 

 

 

 

 

 

 

そこは、途方もない巨大な大陸であり、貧しい時代だった。

そしてその巨大さと貧しさが故に……この大陸は貧困と腐敗、そして戦が各地で起こっていた。

 

世はまさに乱世。

 

弱者が虐げられ、強者が跋扈する。

力が支配していた大陸だった。

その大陸に一人の男が……流星のごとく現れた。

 

天の御遣い。

 

乱世を沈める存在であると、数人の著名な呪い師が予言した、光り輝く純白の衣服をまとう一人の男。

誰もがその男を捜していた。

この乱世を……救うために。

自らの土地を取り戻すために。

 

自らが天を握るために。

 

しかしそれとは別に、誰にも知られず、そしていつの間にか地より顕れ、光すらも吸うかのような漆黒の衣装を身にまとった男が……この地へと

 

 

 

足をおろしていた。

 

 

 

 

 

 

それは……果てしない荒野だった。

見渡す限りの荒野で……遙か彼方に山々が列なっているのが見える。

最後に聞こえた声があったからまぁ予想通りと言うべきなのか……

 

「またか……」

 

わかっていたとはいえ、現実に起これば落胆もする。

見渡す限りの荒野故に、単に荒野に俺が降り立っただけとも考えられなくもないが……それはあまりにも楽観視しすぎというものだろう。

用意していた装備が無駄にならなかったということだけが、不幸中の幸いというべきか……心の慰めになったのかもしれない。

 

……下手すっとそれすらも奪われていた可能性もあるわけだしな

 

どういうことなのか未だに理解はできないし、想像もしたことはなかったが……二度も現実に起これば認めざるを得ないというものだろう。

あの二人……俺の祖父と親父は

 

俺を異世界へと飛ばしている……

 

荒唐無稽すぎるし、実際に口にするのもはばかれる内容だが、しかし二度も世界を渡っている際に声が聞こえた……しかも結構むかつく言葉だった……以上、ほぼ間違いないと考えていいだろう。

異世界に飛ばすというあまりにも現実離れしたことをしている力というのが気になるが……それは今考えてもどうしようもないことだ。

飛ばしている力がどういうものなのか不明だが、異世界に飛ばしている理由ははっきりしていた。

 

修行……ということなんだろうな

 

おそらく間違いない。

モンスターワールドに聖杯戦争。

どちらも現実世界では考えられないほどに刺激的であり、何よりもより身になったという自覚がある。

となるとこの世界に飛ばしたのも修行のためであるという予測はつく。

 

しかし修行のためとはいえ異世界に飛ばすとか……どういう考え方をしてるのやら

 

自分の肉親の阿呆さ加減にあきれつつも、しかし目の前に問いただすべき相手がいないのでは、これ以上荒唐無稽なことを考えていても無駄だった。

故に俺は異世界に飛ばされた時の最初の行動として……自らの体調の確認と、装備の確認を行い始めた。

 

心身ともに……とりあえずは異常なし

 

体については全く問題がない。

心についてはあまりにも複雑な思いがあったがそこはもう割愛する。

ともかく心が壊れそうとかそんな問題ではないためとりあえず放置。

次に前回の現代日本で購入し運搬した装備をすべて確認した。

担いでいる大きなリュックにバッグ。

さらに台車に積んだ大量のリュックサックやバッグ。

中身についてもそのすべてを確認し、何事もないことを確認した。

 

ここがどこかわからないが……ある意味で一番過酷な環境だしなぁ

 

モンスターワールドでは水源がすぐそばにあった。

現代社会の前回では言わずもがな。

食料と何よりも水の調達には一切事欠かなかった。

だが……見渡す限りの荒野では、水源すらも発見するのは難しいだろう。

サバイバル技術はきちんと身につけているので、特段問題はないがそれでも装備があるのならそれに越したことはない。

最終手段もいくつかあるにはあるが、使いたくない手段もある。

 

さて最後に……俺の相棒たちだな

 

細長い四角い金属製の刀入れを『気』で解錠し、己の得物を取り出した。

 

打刀 夜月

打刀 雷月

打刀 蒼月

脇差し 花月

 

の四本が、刀入れに収納されている。

短刀の水月。

さらに双剣の封龍剣【超絶一門】。

そして忘れようにも忘れることなどできるはずもない狩竜。

それら全てを鞘から……封絶は黒のシース……抜き放ち、状態を確認した。

 

全て問題なしだな。封絶も問題ないか?

 

『特段問題はない』

 

封絶へと話しかけるとどうやら問題ないらしい。

意志を持った魔剣、封龍剣【超絶一門】。

元はモンスターワールドの竜人族という亜人種だったが、龍に復讐するために魔剣へと成った、鍛冶師としてはある意味尊敬できる存在だった。

全ての装備に問題がいないことを確認し終えると、今度は自らの装備を変更した。

 

ここがどこだかはわからないため、派手な装備は控えるが

 

まず刀入れに入れられる刀は収納。

ただし夜月だけはすぐに使用できるように刀袋に入れておく。

さらに上着の内ポケットにリボルバーを装備する。

 

しかし現代社会の日本の一都市で、よくもこんな銃が密売されてたなぁ……

 

俺が冬木の新都で調達したのはなんとニューナンブM60だった。

日本警察……特に交番や町のお巡りさんが使用している回転式拳銃といえばイメージがつきやすいだろう。

ニューナンブM60は生産そのものが終了している。

だが俺が手にしているのは真新しい感が半端ない。

おそらくコピー品だろう。

小型、そして回転式故の扱いやすさから、違法組織が持つにはうってつけといえる。

コピー品の癖して実に忠実に模倣されており、さわった感じ全く問題がなさそうだった。

 

違法組織……恐るべし……

 

俺はそれを数丁に、弾丸を結構な量がめて警察に通報した。

この世界がどういったところかわからないので……下手をすれば現代社会である可能性もあり、その場合見つかったら逮捕対象になる可能性がある……とりあえずすぐに見えないところに隠して装備しておく。

 

まぁ銃なんぞなくとも、別段肉体だけでどうとでもなるとは……思うが

 

気と魔力の併用運用。

これを体得した故に俺の戦闘能力は、間違いなく自分の世界にいた頃とは比べものにならない。

仮に今モンスターワールドに舞い戻ったとしても、おそらく魔力を使用する龍種であっても、すっぽんぽんの体一つで対応できるだろう。

その相手が古龍であったとしても。

しかしその場合は勝てるかどうか微妙なところだが、決して負けることはないだろう。

 

まぁ油断は禁物だし、あらゆる事態を想定しつつ……最大限の装備をしておくのは決して間違いじゃない

 

現代社会故の違法性を考慮しつつ、とっさの際に対応できる装備を調える。

そして次に自らの体に魔力を宿して……左手に力を集中させる。

 

「磁波鍍装、蒐窮」

 

そう小さくつぶやいて左手の平を開くと……手のひらにいくつもの稲光が宿った。

その力を宿したまま左手を地面に向かって振るうと……閃光が瞬き地面に焦げた後が出来る。

そしてさらに魔力を灯すとなんと驚くべきことに、紅炎の膂力強化、紫炎の火炎使役、

風翔の気圧操作に風使役、霞皮の腐食能力、さらには荒天神龍の風雲の羽衣まで使用可能……ただしこいつは浮遊能力がある程度で、地上高さ5mほどの高さで停止して水平移動が出来る程度……だった。

おそらく現代社会よりも魔力が濃い故の恩恵だろう。

 

ふむ……とりあえずおおむね問題なしか

 

そうして心身の確認、装備の確認を終えて、俺は頭上へと……空へと目を向けた。

 

……別段普通な感じの空だな

 

俺が知りうる限りの普通の青色をした晴天。

周囲にはマジで何もなく、ただただ荒れた大地があるだけだ。

だが遠くを見れば小高い丘というべきか、山というべきか……隆起した大地があり、その上には緑があった。

 

遠すぎて当然わからんが……それでも俺が知りうる普通の植物に見えるな

 

モンスターワールドのようなある意味で奇想天外な植物は今のところ見受けられない。

またモンスターというようなものもいない。

というよりも周囲に何もないため生息できないのだろう。

そして重要なことの一つとして、左腕の力がうずいているのが感じられるので、魔力も多いようだ。

 

といっても、モンスターワールドほどではないのだが……

 

空気の質感、不純物……化学的なガス、つまりは車の排気等……が含まれてない。

以上のことから考えるに、少なくとも現代ではなく、近代ですらないだろう。

そこらを考えつつ、俺は再度空を見上げて……太陽の位置を確認した。

 

日が真上に来ていることから察するに……真昼かな?

 

とりあえず雨風がしのげる場所には行かなければいけない。

おそらくではあるが、真昼であるためいずれは夜になる。

これがこの星のどの緯度に位置しているのかわからないが、それでも革ジャン上着を着て寒いとは感じられなかった。

しかし夜に冷える可能性はある。

また冷えないにしても雨が降ったときのことを考慮すれば、雨露に風がしのげる場所にいなければならない。

この何もわかってない状況下で体力を消耗するのは愚の骨頂だからだ。

準備を終えると、俺はまず気力と魔力を併用して真上に飛び上がった。

そして首を巡らせて休めそうな場所を探して遙か上空で周りを見ると、遙か先ではあるがここから俺の速度で夕方までにたどり着く距離に、森らしきものを見つけた。

 

といっても山の麓あたりだからだいぶ遠いが……

 

しかしあてどなく走り回るのは精神的にもよろしくない。

無駄な体力の消耗を避けるために、俺はその森へと向かうことにした。

道々で小型の昆虫や植物をみたが、見覚えのある植物や昆虫に似た生態だった。

 

モンスターワールドほど隔絶した世界ではなさそうだな

 

そんな感想を抱きつつ、俺はほとんど休憩を入れずに走った。

その際も動物や人に会うこともなく、俺は何とか夕方になるまえに、先ほど飛び上がって見つけた森へとたどり着いていた。

そしてこの森が目視で確認できたあたりから、ようやく人とおぼしき気配を感じ取っていた。

 

森の中で、山の中腹部に……十数名か

 

舗装などされてない完全な獣道を歩き、重たい台車を引きずりながら、俺は気配の数を明確に把握しつつ、臨戦態勢をとっていた。

人であればまだいいが、亜人種ということもあり得るし、また相手がこちらと友好的な存在かどうかはわからないからだ。

いつでも得物を抜ける状態を保ちつつ……俺はその気配がある場所の近くまで歩く。

そしてそう時間をかけずに、それなりの大きさの小屋を見つけた。

ある程度離れた距離から俺はその小屋を油断なく観察。

 

気配に変化なしだが……気配にずいぶん強弱があるな

 

男女を完全に気配だけで察知するのは難しいが、それでも生命力というよりも体力のある男の方が気配は強大なことは多い。

一般常識的な成人男性が割合的に多いのは察せられた。

そして弱い方が女という可能性が高いが……

 

あまりにも脆弱すぎる……

 

弱すぎる気配はあまりにも弱々しすぎた。

子供という可能性もあり得たが、その場合は小さくとも気配の波動に大人にはない幼さが宿る。

幼さを感じる気配も多少あるが、それでも弱い気配の方が、数が多い。

 

そして見張りの格好……

 

すでに夕暮れであり、さらには森の中だったが、夜目が利くので問題なく、見張りの格好を観察できた。

見張りの男を見る限り、身体的特徴は至って普通の成人男性だった。

亜人種でないことは喜ばしかったが……それを補ってあまりある悪い知らせがあった。

 

むき出しの剣を手にしてるんだが……

 

刃渡りはおよそ二尺(60cm)といったところだろう。

湾刀というべきか……斬るのに特化した実に反りの深い刀を持っている。

厚みもなさそうなので振りやすいだろう。

だが実に粗悪な作りだった。

粗悪な作りの上に手荒い扱いしかしていないのか、はっきり言って壊れる寸前といえる。

そしてさすがに距離があるこの状況で見る限りなので断言できないが……それでも鍛造士である俺は、その剣の製鉄技術があまりにも稚拙であることを見抜けた。

さらに悪い知らせが……

 

なんかあまりにもぼろい衣服をまとってるんだが……

 

ぼろいというのはむろんみすぼらしいという意味もあったが、それ以上に元々の作りもずいぶん適当というか、しっかりしていないというか……あまりにも作り方が古すぎる。

編み目が粗く、とてもまともな縫製もされていない。

近代どころか……それこそ博物館でみた覚えのあるような衣装を身にまとっている。

そして見張りは二人のようだったが……どちらも頭に黄色い布を巻き付けていた。

 

……うーん、なんかあの黄色い布、いやな予感がするなぁ

 

製鉄技術が未熟と見受けられる湾刀。

骨董品よりもさらに古い感じの衣服。

黄色の布。

一つ一つならまだぼろいや古いなんかで片付けられたが……これらの三つの要素がそろうと、俺の頭の中に実にいやな推理を導き出させる。

 

だがまだみたのは二人のみ……キットダイジョウブニチガイナイ

 

心の中ですら棒読みになるほど、俺の推理が真実だと内心思っていたが……俺は自ら淡い希望を打ち砕くために、やむなく男たちへと近づいていった。

 

「なんだお前は?」

「どこから来たんだ?」

 

んあ? 意外や意外……言葉は通じるのか?

 

またぞろ言語が通じないのだろうなぁと、面倒くさいと思いつつ男たちに近づくと驚いたことに相手の言葉がするりと俺の中へと入ってきていた。

問題の一つがなくなって本来であれば喜ぶところだが……小屋に近づくにつれて小屋の内部の状況が気配でわかった。

 

衰弱している人が何人かいるな……しかもこの気配の弱々しさでは……

 

想像に難くない未来を予想して俺はため息をつくことしかできなかった。

そんな俺の態度が実に気にくわなかった……突然目の前に現れた男がため息をつけば当然ともいえるが……らしく、手前の男が抜剣した。

 

「変な恰好の奴だが……おもしろい物を引いているな? 銀に輝く荷車?」

 

この言葉で、アルミニウム製の台車をみたことがないということがはっきりと理解できた。

そして向けられた剣を間近で見てさらに……その製鉄の稚拙さに絶句する。

 

推理が正しければ稚拙というよりも……技術がまだ確立されてないということだろう……

 

もうこの時点で俺の推理が正しいと、半ば確定しているようなものだった。

その事実に俺は膝から崩れ落ちるような絶望感を味わっていたが……そんな場合でもなかった。

目の前の男たちではなく……小屋の中の弱々しい気配を慮ってのことだ。

 

「金になりそうだな。おい小僧。命が惜しけりゃ身ぐるみ全部おいてきな」

 

こってこての盗賊だぁ

 

見た目からいって話が通じると思ってなかったが、実際にどうしようもないことを理解して……俺はさらにため息をつく。

先ほどと違い、すでに二人組の意志が俺の身ぐるみをはぐことで一致しているのと、二人という数的優位で、相手は油断している様子だった。

はっきり言って……怖くも何ともなかった。

だが当然こちらも何もしないわけにはいかないので、刀袋に入れていた夜月の柄を出して、柄を握って抜刀しようとした。

 

 

 

そのときだった……

 

 

 

……なに?

 

夜月に違和感を覚え、そしてその違和感はすぐに結果となって訪れた。

見た目に全く変化がなく、先ほどの得物チェックでは全く問題がないはずだった夜月が、押しても引いても……

 

抜けない……だと?

 

「なんだ? おまえの得物は飾りか?」

「やる気がなくても関係ねぇ。殺してでももらってやるよ!」

 

そして二人組が驚く俺をよそに襲いかかってきた。

 

おい、封絶。なぜか夜月が抜けないんだが……どう思う?

 

『――』

 

? 封絶?

 

襲ってくる男連中には目もくれず、俺は封絶へと呼びかけたが反応がなかった。

飛び上がりつつ襲ってきた男の剣を、俺は目も向けずにその剣をつかみ取って、そのまま破断させた。

 

「!?」

 

俺に剣を破断させられた男が驚愕に目を剥いていることだろう。

だがそんな男のことなど知ったことではないので、俺は逆の手で男のあごを軽く殴り、脳を揺さぶり行動不能にする。

 

「なっ?」

 

相方が一瞬にして行動不能にされてもう一人が驚いていたが、そんなことなど知ったことではない。

俺は破断させた剣の柄側を奪い取って、その柄をもう一人の男の頭へと投げつける。

結構な速度で投げつけたため、相手の男は失神した。

 

正直殺したかったが……な

 

突然抜けなくなった得物に、意識を失った封絶。

何となく別の意味でいやな予感がよぎり……俺は全力で投擲するのをやめたのだ。

そして当然のように……こんな騒ぎをしていれば小屋の中の連中が気づかないはずもなく……。

 

「何の騒ぎだ?」

 

中から数名が表へと出てきて……見張りの二名が倒れていることに気づく。

 

「て、てめえは!」

 

もちろん、こんなごろつきにやられてやるほど俺は柔ではない。

速攻出てきた男たちの頭に手を当てて気を送り込む。

 

「お!?」

「ぐあ?」

「あ!?」

 

秒速で敵を無力化し……俺は急ぎ小屋の中へと足を踏み入れる。

当然中にいた連中は全て一瞬にして無力化していく。

そして俺は……想像通りの光景を目にして怒りに顔をゆがめた。

 

 

 

 

 

 

 

おなかすいた……

 

いたい……

 

くるしい……

 

 

 

しにたくない……

 

 

 

おなかがすいてつらかった

 

しっぱいしてなぐられたのがいたかった

 

さむくてきずがいたんでくるしかった

 

 

 

おかあさんがしんでしまったのがくるしいのに、かなしいのに……ないていたらおこられてなぐられた

 

ほとんどごはんもたべさせてくれなくて

 

もううごくのもつらくて……

 

そんなときだった……

 

 

 

「……大丈夫か?」

 

 

 

あったかいなにかが、わたしをおこしてくれた

 

 

 

 

 

 

~数時間前~

 

 

森の奥の小屋から離れた場所。

そこに実に寂れた小さな村があった。

そしてその小さな村の奥に……少しだけ他よりもまともな家があった。

その家の中で、一人の老人が、対面した三人の旅の者に話をしている。

 

「ここから東に三里ほど行ったところの山を越えた森に、ごろつき共が棲み着いて、数日おきに訪れて、女や食料を奪われて困っております」

「なるほど、盗賊の退治を私たちにお願いしたい……ということなんですね?」

 

三人組の一番前……三人は老人に三角形の形で対面に座っている……の者が、確認をとるように言葉を口にする。

老人はそれに対して、力なく頷いていた。

年を差し引いても、だいぶやせこけている様子だった。

食料を奪われているために、満足に食事を出来ていないのかも知れない。

その様子を見て、確認をとった者が元気よく頷いた。

その様は、見る者を明るくさせるような、元気溢れる所作だった。

 

「お任せください! この劉玄徳が、皆さんの力になります!」

 

元気よく明るく紡がれたその言葉に呼応するように……その豊かな胸元が弾んでいた。

頭の後ろで二つに束ねた髪が美しく、その淡い桃色の髪が満面の笑みによく似合っていた。

 

「だよね! 愛沙ちゃん! 鈴々ちゃん!」

 

少女は満面の笑みを浮かべて振り向き、そう声をかける。

後方の名を呼んだ二人に、全幅の信頼を寄せているのがわかる仕草だった。

 

「はい、もちろんです」

「悪い奴は、鈴々が全員ぶっ飛ばしてやるのだ!」

 

そんな笑みを浮かべた少女に答えた二人もまた、年若い少女だった。

一人は絹のような黒い髪を左後ろで一つに束ねており、その目は鋭く、流麗な武人を思わせるたたずまいだった。

もう一人は小柄な体格で、短かな髪が元気よくはねている。

だがその小柄に見合わぬ長槍を、狭い部屋の中で他者にぶつけぬように注意しながら軽々扱っている。

さらにそのあどけない幼さの残る瞳の中に、確かな燃える闘志をたぎらせており、間違いなく武人であると主張していた。

 

「ありがとうございます。これで村は救われます。助けはいりますか?」

「十数人程度の盗賊など、私と鈴々で十分です」

 

龍の形を模した長槍を手にした少女、愛紗はむべもなくそう言葉を返した。

そのたたずまいから相当の実力を持っていることが伺えた。

故に、素人の男など邪魔でしかないのだろう。

老人……村長もそれを察したのだろう。

気を悪くするでもなくただただ静かにお辞儀をするだけだった。

 

「さて、いくか鈴々」

「おうなのだ!」

「私もいくよ!」

「……桃香様」

 

元気よく返事した幼子ともとれる体躯の鈴々にうなずきつつも、村長と話をしていた少女……桃香の返事には、愛紗は顔を曇らせた。

愛紗は桃香が優しいことは知っていたし、そのことを尊敬もしていた。

故に鈴々とともに義姉妹として、三人で誓い合った仲でもある。

しかし、戦力として見ると……

 

「桃香お姉ちゃんがくると危ないから村にいた方がいいのだ」

「……鈴々」

 

鈴々のいうとおり、危なっかしい人だった。

というよりも率直に言ってしまって何の武術も学んでいない素人が、先祖より伝わる宝剣を携えているだけの、完全な戦力外の少女でしかなかった。

それはわかっているが、人を助けたいと奮い立った桃香が、さらわれた村人を助けにいくという状況でじっとしているわけがないとわかっていた。

だが危ないことも事実なので何とか穏便に話そうとしたのだが、鈴々がそれを一刀両断してしまった。

 

「うぐ。そうだよね……。私が言っても足手まといだよね」

「桃香様」

 

落ち込む桃香をフォローしたかったが、しかし愛紗にも言葉が思い浮かばず、ただ鈴々の方を少しにらむことしかできなかった。

鈴々も言い過ぎたと思ったのか、気まずそうに顔をそらしていた。

おそらく悪気はないのだろう。

故に愛紗も強くいうことはできず、ただただため息をつくことしかできなかった。

 

まぁ賊も十数名。私だけでもどうにかなるか……

 

正直に言って邪魔であることは事実だが、義理とはいえ自らの姉の思いをむげにはしたくなかったため、愛紗は鈴々を護衛につけることで三人で賊のいるという小屋へと向かうことにした。

夕暮れということもあり、盗賊たちが油断していると考えてのことだった。

だが結果をいえばそれは無駄に終わった。

山を越え、日が暮れ始めた時間だ。

警戒しつつ小屋へと近づくが、近づくにつれて見張りすらもいない様子に、さすがの三人もおかしいと考えた。

警戒しつつ小屋に突入しようとしたそのとき……

 

「え?」

 

桃香の惚けた声が三人の耳朶を打った。

潜入しようとしている状況で声を上げるなど言語道断以外のなにものでもないが、二人も桃香の視線の先を見て声こそ上げないものの、同じように驚いた。

 

光っている?

 

すでに薄暗くなってきている夕暮れ時。

しかも三人がいるのは森の中だ。

すでに近くを見るのすらも困難なほどにあたりは暗かった。

そんな状況で小屋の窓から暖かい光があふれているのに気がついたのだ。

松明の明かりではない。

暖かく、見る人を安心させるようなそんな柔らかな光があふれていた。

だがそれも長くは続かず、やがて収まった。

 

「今のは……」

「何なのだ?」

 

愛紗に鈴々が口々に小さな声で疑問を口にする。

まだ多少の距離があり、窓より漏れ出ていた光のため当然中の様子をうかがうことはできなかった。

 

「もしかして天の御遣い様かな!?」

 

声こそ小さいものの、今にも叫び出しそうなほどに嬉しそうな顔で桃香がそう口にする。

聞いた瞬間に愛紗は否定しようとしたが、しかし先ほど漏れ出てきた光は自然のものではあり得なかった。

そういいたくなることもわかった。

しかし

 

「桃香様、すでに天の御遣い様は曹操殿が自らの陣営に迎え入れたと話があったではないですか」

 

天の御遣いといわれた存在を、三人は自らの悲願のために探していた。

だが願いかなわず天の御遣いは曹操が保護し、自らの陣営に迎えたとつい先日都で話を入手したばかりだった。

噂ということもあり得たが、話に聞く曹操の性格から考えるに、嘘の話を流れるのをよしとしないと愛紗は分析していた。

 

「そうだよねぇ~~」

 

どうやらそのことを忘れていたらしく、桃香が愛紗の言葉に愕然とうなだれた。

だが天の御遣いでなければ先ほどの光がなんなのか?

そして先ほどから愛紗としても気になっているものがあった。

 

あの光を放つ荷車は何だ?

 

小屋の入り口の手前、普通の荷車とは違う周りのわずかな光を反射して光っている奇怪な存在があったのだ。

形状からして荷車であることはすぐに理解できたが、しかしそれでも見たことのないものだ。

光を反射するということもあり、あまりにも現実離れした存在だった。

入り口前にある光る荷車の存在もあり、桃香も先ほどの天の御遣い様という発言につながったのだと納得はできた。

だがそもそも

 

天の御遣いとして……そいつは信用できるのか?

 

愛紗の正直な気持ちは、それが本音だった。

呪い師が占った、大陸を救うという天の御遣い。

それが自らと同じ存在であるのかわからなかった。

桃香はただ大陸を救うということで必死になって探していたが、愛紗は半信半疑だった。

故に曹操が召し抱えたという言葉を噂に聞いて、桃香に悪いと思いつつも少しほっとしていたのも事実だった。

 

……いや、今はそんなことはどうでもいい

 

自らの思考が脱線していることに気づいて、愛紗は一度目を閉じて頭をふるって余計な思考を振り払った。

 

まずはとらわれた人の救済だが……

 

村長の話では何人かの若い娘がとらえられているという。

なんとしても救いたいと、そう思い油断なく小屋へと目を向けたそのとき……

 

「大丈夫か? 無理しなくていいからな」

 

一人の男がそういいながら小屋の入り口から出てきたのだ。

そして遅れるようにして、ぼろぼろの様子の少女が男の後からついてきた。

愛紗と鈴々は男が出てきたことで、すぐさま臨戦態勢へと移行した。

飛び出す愚行こそしなかったが、それでもいつでも戦える状況へとシフトしたのだ。

桃香も武人ではないが、すぐさま気を引き締めて、剣を握る手に力がこもった。

そして少々距離があるまま、愛紗はその男のことを観察した。

 

……なんだあの格好は?

 

すでに暗くなってきた森の中であっても尚黒いと判断できる上着。

下の履き物の見たことがなく、また着ているもの全てが上等だということがすぐにわかった。

 

「とりあえず水を飲もうか?」

 

幼女を安心させようと膝を折り、同じ目の高さで優しく笑いかけている。

だがそれでも少女は男が怖いのか、おびえているようだった。

男は離れすぎず、かといって自分からは決して近づかないようにしつつ、光り輝く荷車から荷物をあさっている。

その様子から荷車の所有者であることが察せられた。

 

「あの子、捕らえられていた子かな?」

「……おそらく」

 

その様子から幼女を助けたのだと判断できる。

遠目で横顔しか見えず、しかもすでにあたりは暗い。

謎の衣服を身にまとった男がどのような存在かわかりかねた。

だが、男が不可思議な容器をあけて一口飲み安全なことを示すと、その容器を幼女の前の地面において再度距離をとった。

 

「いつまで隠れているんだそこの三人組? やる気がないなら出てきたらどうだ?」

「「「!?」」」

 

気づかれていたことに三人は身を固くした。

優に20mは離れているにも関わらず、暗いこの状況でこちらの位置を把握したのだ。

顔を向けることもなく。

しかもこちらの人数を正確に把握していることに驚きを隠せなかった。

 

「愛紗?」

「鈴々、桃香様から離れるな。私が先に行く」

 

すでに発見されているのに先制してこず、やる気がないなら出てこいという言葉。

どうやら争う気がないらしい。

油断する訳にはいかないが、それでもこの男が悪党でないことは判断できなくはなかったので、愛紗は立ち上がりゆっくりと男へと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

ありゃま。結構な強さの気を感じ取ったがどちらも女人とは……

 

気配で近寄ってきたことはとっくに察せており、さらに警戒しつつ近寄ってきていたので盗賊の仲間でもないことは理解していた。

そして近づいてきたことで気の強さもはっきりと感じ取れた。

気の感じからいって女人とは思っていたが……全員がおなごとは思わなかった。

見もせずに発見されたことで警戒しているのだろう。

だがこちらとしては争う気はない。

念のため保護した幼女をいつでもカバーできるように体で隠した。

新たな三人の人物が怖いようで、幼女はさらに身を固くして、目を強くつむってしまった。

 

まぁ警戒しているのだろうが、先頭の片側ポニーがずいぶんと闘志むき出しだからなぁ……しょうがないか

 

「愛紗……このお兄ちゃん、強いのだ」

「無駄口をたたくな鈴々」

 

聞こえてるんだが……まぁ俺は耳がいい上に、風翔龍の力もあるからなぁ……

 

小さな声で意思疎通を図っていたが、正直丸聞こえだった。

仮に聞こえてなくてもここまで警戒されるのは困りものだったが。

そんなことを考えながら俺は三人組のことを観察した。

 

どちらも槍使い、奥の女の子は剣を手にしているが……確実に素人だな

 

片側ポニーと幼女と見まがうほど小柄な少女は二人とも槍を手にしていた。

振り回しやすいサイズの槍だが、小柄な少女……ちみっこの方は自らよりも遙かに長い槍を軽々と持っている。

片側ポニーについても同様だ。

それなりにできるようだ。

さらに……

 

気を自然と発しているな

 

二人とも自然と気を発している。

それもかなり強力な気の圧力。

相当できると見ていいだろう。

そうでもなければ片側ポニーはともかく、ちみっこが自らよりも遙かに長い槍を振り回せるわけもない。

この圧力であれば相当できると見ていいだろう。

しかし……気になるところがあった。

 

……なんか浮いてるなぁ

 

なんというか……実に珍妙な格好をしていた。

いや、俺の推理が正しければ間違いなく俺がもっとも珍妙な格好をしているのは事実なのだろうが、しかしなんというかこう……

 

だめだ……俺の脳みそでは言語化できない

 

先ほどの盗賊とは全く異なる実に丁寧に作られた衣装を身にまとっている。

しかし幼女と見まごう幼き少女をのぞいてどちらもミニスカートを履いている。

少しでも動けば中が見えそうな感じの丈の長さ。

片側ポニーはストッキング、剣を持った素人娘はロングブーツを履いているため、太もも丸出しという訳ではないが……なんというか、実に男に襲われそうな格好をしている。

肩もどちらも露出しており、さらにまぁ胸元が実にふくよかだ。

片側ポニーはなんか知らんがカラフルなネクタイを締めている。

ちみっこに至ってはもう意味がわからん。

素足はまだわかるがスパッツにスポーツブラみたいな衣装に半袖の上着をまとっているだけだ。

声を大にしていいたい。

 

……珍妙

 

まぁ俺の感想はどうでもいいことだろう。

ともかくこちらに敵意がないことは理解しているだろう。

だがそれでもこちらが怪しいことに代わりはない。

故に俺は両手を挙げて戦意がないことをさらにアピールしつつ、声をかけた。

 

「その、あいしゃさん? こち――」

 

全ての言葉を言い終えることはできず、俺は動かざるを得なかった。

名前を呼んだとたんに激情を露わにして、片側ポニーが俺に問答無用で斬りかかってきたのだから。

斬られるつもりは毛頭ないので、俺はすぐさま行動した。

 

 

 

 

 

 

「その、あいしゃさん? こち――」

 

その言葉を耳にした瞬間に斬りかかっていた。

よもや信頼していない相手からいきなり真名を呼ばれるとは思っていなかった。

激情が身を焦がしその怒りに逆らわずに私は相手に斬りかかった。

その刹那。

 

!?

 

青龍円月刀を振りかざし、一歩を踏み出した。

二歩目を踏み出す前に、なんと男が私の前に踏み込み振りかざした青龍円月刀の石突きをつかんでいた。

 

!? 馬鹿な!?

 

踏み出すにも相手が邪魔であり、また石突きを捕まれている状況ではどうあっても槍がふれない。

しかもこの組み合ったわずかな感触で、この男相手に力で絶対に勝てないとすぐに理解できた。

私は武人として己に絶対の自信を持っている。

その私が怒りにまみれていたとはいえまさか手も足も出せないとは……。

 

この男……強い!

 

しかも

 

「……どうした突然? 何か気に障るようなことをしたか?」

 

これほどの力を有していれば、私をあしらうなど造作もないはずなのに、私が殺す気がないなかったことがわかっているかのように、こちらの動きだけを封じたのだ。

非常に困惑した様子ではあったが、本当に戦う気はないらしい。

言葉からも挑発や侮辱は感じられない。

本当に私が斬りかかった理由がわかってない様子だった。

 

「……我が真名を呼んだというのにか?」

 

怒りはまだ続いていたが、それでも確かめずにはいられなかったため、私はそう男に言葉を投げかけた。

すると男はさらに困惑した様子で……

 

「まな? 真の名前ってことか?」

 

……本当にわかってないらしい

 

男の口調と発した言葉でどうやら悪意をもって我が真名を呼んだことではないことがわかった。

 

 

 

そしてこの次の男の言葉で……私は自らの信念を問われたのだと……

 

 

 

このときはわからなかった……

 

 

 

無論この男がそういう意図を持って問うてきたわけではないのだろう……

 

 

 

だがそれでも、こうして時間が経ってから思い返せば、これが私の転換点であったことは……

 

 

 

自らが否定することができず、する気もなかった……

 

 

 

「何か侮辱したのなら心から謝罪しよう。その前に、槍を引け」

「何?」

 

「子供が怖がっているのがわからないのか?」

 

!?

 

 

 

 

 

 

どうやら悪いやつではないようだし、俺が粗相をしたのは間違いないようだ

 

俺の言葉で気づき、すぐに一歩体を引きながら槍を納めた。

ちみっこも俺のことは警戒し、さらに怒りをまき散らしてはいたが、しかし俺の後ろの子供が怖がっているのがわかったのだろう。

必死に怒りを制御しようとしていたが……

 

うむ……俺も人のことはいえないが、こいつらもまだまだ修行が足りないな

 

ちみっこは実にわかりやすかった。

憮然としてではなく、俺にいいたいことがあるのが如実にわかる表情をしているし、片側ポニーについても憮然としている。

だが悪党ではないのはすぐに理解できた。

俺は愕然としている片側ポニーから一歩引いて再度両手を挙げる。

 

「……どうやら男の俺では介抱が難しいんだ。奥の剣を持った子」

「! は、はい?」

 

自らが指名されるとは思ってなかったらしく、素人娘が一瞬驚いていたが、すぐに察したようだ。

 

「申し訳ないが、女の子をあやしてほしい」

「わかりました!」

 

あまりきれいではない子供をあやす。

触れればおそらく汚れるであろうその役目を、素人娘はとびきりの笑顔で引き受けてくれた。

その笑顔に嘘は見られず、何よりその体から発せられる柔らかな態度と優しさが、見る人を暖かい気持ちと優しい気持ちにしてくれるし、こちらもつい警戒がゆるんでしまう。

生来のものなのだろう。

いい子であることがすぐにわかった。

 

まぁちょっと警戒心なさすぎだが……

 

状況からいって俺が悪党ではないと何となくわかるのだろうが、いくら自分にとって頼れる存在が二人そばにいるからといって、初対面の男に警戒心がなさ過ぎる。

しかもいくら素人とはいえ俺が片側ポニーよりも強いのは察せられそうなものだが……しかし後に俺はこの素人娘がそれすら気づいていなかったことに気がつき、あきれることになる……警戒もない。

 

天然?

 

それですませてはいけない気がするが、まぁここはどうでもいいことだろう。

 

「大丈夫?」

「――ぁ」

「いいよ、無理しなくて。よしよし、怖かったね。もう大丈夫だから」

 

素人娘は子供のそばに近寄って膝をついて、優しく声をかけて頭をなでた。

ようやく自分が安心できる状況だと、察せられたのだろう。

女の子は目から大粒の涙を流して、素人娘に抱きついて泣き出した。

素人娘は抱きついてきた女の子を優しく抱き留めて、頭をなで続けた。

そして女の子が疲れて寝てしまった。

話を聞けば山を越えた先に寒村があるとのこと。

そこに行ければよかったが、しかしすでに夜にさしかかりつつある森を抜けることは厳しく、何より悪党どもを放置するわけにもいかない。

故に悪党どもを小屋にあった縄で拘束し一部屋にまとめ、この小屋で一晩を明かすことになった。

そして、子供が寝ているうちに、片側ポニーに手伝ってもらって、すでに事切れてしまった女たちの供養をした。

 

ある意味で子供が寝てくれてよかったな……

 

まだ話が聞けてないためどういう間柄かはわからない。

だがそれでも捕らわれていたことを考えれば、想像に難くない。

ただただ静かに……その女の冥福を祈った。

 

さて……ある意味でここからが本番だ。

 

供養を終えて小屋の中で俺は三人と対面した。

こちらを警戒してのことだろう。

先頭が片側ポニーで、斜め後ろにちみっこ。

ちみっこの斜め後ろで片側ポニーのほぼ真後ろに、寝てしまった子供のそばで頭をなでながら素人娘が座る。

三角形の座り方で、俺と対面していた。

片側ポニーは自らの槍を壁に立てかけているが、ちみっこはいつでもきりかかれるように槍を手元に置いていた。

 

なるほど……だいたいつかめた

 

この三人組の関係というか役割というか……その辺がこの座り方でだいぶ理解できた。

戦闘に関しては言わずもがなだが、素人娘は人との対応等を担い、片側ポニーがまとめ役で、ちみっこは折衝とかができるようには見えないので基本戦闘オンリーなのだろう。

 

苦労してそうだなぁ……

 

素人娘は悪い子ではないがあまりに警戒心がない。

ちみっこも折衝能力がないとなると、必然的に一番しわ寄せがくるのがまとめ役の片側ポニーになる。

苦労していることが察せられた。

だがそれでも二人とも素人娘を気にかけているというか、尊敬し慕っているのがその態度や座り方からすぐにわかった。

 

いったいどういう関係なのだろうな?

 

顔や背格好から鑑みて血がつながっているようには見受けられなかった。

そうしてあれこれ失礼のないように……女ということで嫌らしい目で見ていると思われないように細心の注意を払い……観察していたのだが……

 

次の片側ポニーの言葉で……俺は絶句した。

 

 

 

「落ち着いた故に話をしよう。我が名は関羽。字は雲長。我が主君、桃香様の妹だ」

 

 

 

……うん?

 

 

 

「鈴々は張飛っていうのだ! 字は翼徳! 鈴々も愛紗と一緒で桃香お姉ちゃんの妹なのだ! よろしくなのだ、変な格好のお兄ちゃん!」

 

 

 

……へ?

 

 

 

なんかありえない単語を自らの名前だと名乗っている気がするんだが?

 

 

 

「最後は私ですね」

 

 

 

俺が非常に困惑していることなどつゆ知らず……といっても必死になって感情が表に出ないように制御していたので無理はないのだが……素人娘が幼子の頭をなでるのをやめ顔を上げつつ、こう言い放った。

 

 

 

「私は劉備。字は玄徳。よろしくお願いしますね!」

 

 

 

朗らかに……それはもうすがすがしいほど気持ちのいい笑顔で、素人娘は己のことを

 

劉備

 

と名乗った。

 

 

 

「………………………………何?」

 

 

 

その三人の自己紹介に対して俺は激しく混乱した。

そして先ほどまで失礼にならない及び不快にさせないように慎重に観察していた視線を、端から見てもすぐにわかるほどにまっすぐと……女性という性別をもっとも顕著に表す部位へと注いだ。

 

 

 

でけぇ……

 

 

 

下世話だが片側ポニーと素人娘は実に巨乳だった。

ちみっこはぺったんこだったが、それは成長期ということだろう。

さらに胸がない……大きさ的な意味で……のは間違いなかったが、それと同時に股間に目を注げばそこにふくらみはなく、どう見ても三人とも女にしか見えなかった。

 

俺は一度目を閉じて顔に手を当てて……心の中で叫んだ。

 

 

 

 

なんじゃそりゃぁぁぁぁぁっぁぁぁ!!!!!

 




こんな感じです
まぁ月夜にひらめく~に書いてた予告編からまだそこまで逸脱してない
当時考えていたのよりもだいぶ変わりましたが……・

が、がんばって書ききるつもりです

暖かく見守ってくれたら非常にうれしいです

あとぶっちゃけ

今回の話では基本的に刃夜は「○○に○ってる」ので、そこらもまぁ……おいおいどうにかしますw

久しぶりだからこわ~いw

がんばりま~す
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。