荒野に轟くねじり金棒の凪払い(仮)   作:刀馬鹿

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一日遅れました
すまない
新しい野太刀入れを裁縫して作っている最中なもので
その作業に夢中になりすぎて誤字脱字が遅くなったでござる



ご褒美と雑炊

いやぁ……良い天気だ

 

それがまだ空が明るくなる前に起きた俺の正直な感想だった。

本日の業務も農作業なのだが、その前に俺は一度刀村に帰って、漁を行ってこようと思ったからだ。

 

今晩あたり……飲みたい……

 

毎日夜明けから夜遅くまで……それなりに仕事をしていた。

昼間は農作業にちんちくりんの菓子と飯作り。

飯はちんちくりんだけじゃなく、呉の連中の将達にも振る舞っている。

また内政にもたま~に助言をしたりする。

助言といってもたいしたことは無い。

現代の感覚で行っていることや、坂本龍馬のまねをした土木工事の監督の仕方……大規模な土木工事を行う際に一日の仕事量を早く正確に行った班には報酬を与えるといったやり方……を教えたりしている。

その土木工事は俺も良く参加しているため、そのときの飯当番は俺だったりする。

誰よりも早く仕事を終えて、飯の準備を行って工事を行っている連中に配給を行う。

報酬に俺の飯という餌があるおかげか、土木工事はずいぶんと行えており……ちんちくりんと褐色ポニーが住まうこの都はずいぶんと整備されて、商人からも評判の街になっている。

そのためか、俺の料理の腕は軍の連中だけでなく街の連中にも知られているようで、仕入れの時なんかに作ってくれと言われたりする。

そのため、たまに振る舞うこともあるのだが……そうするとちんちくりんが拗ねるのであまり行うことが出来なかった。

他の仕事としては俺にとってもっとも重要な仕事である加工品の仕事も行っており、正直毎日てんてこ舞いだった。

そんな俺もたまには休んでも罰は当たらないだろう。

そのために……俺は準備を行っていた。

 

まずは刺身だ! 刺身を要求する! そしてチーズだ!

 

ということでやってきました刀村。

秘密の地下貯蔵庫に保管してあるワインに日本酒を、持って行く予定だった。

そうなるとつまみが欲しくなるので俺はそれらの調達に来たのだ。

電磁投射道でひとっ飛びしながら、俺は夜の時間を楽しみにして……吐き気を必死にこらえていた。

そして村の近辺に着くと着地して一度身体の状態を整える。

数日前に今日の夜が明ける前に、俺が刀村を訪れて漁を行うことは助と格に文で伝えてある。

俺がいなくなったが、俺と直接取引をしているため村は貧しくはなっていない。

しかし俺が漁に行かなくなったことで、日々の食事は少し質素になってしまっている。

そのため……俺が行くとなると……

 

「刀月様!」

「お待ちしておりました!」

 

俺が村にたどり着くと、まず警備している警備隊の連中が出迎えてくれる。

村の連中はまだ起きていないが、警備隊の連中は交代しながら夜通し起きて警備に当たっている。

そしてすぐに助と格の家に俺が到着したことを報告に向かって、二人が飛んでくる。

 

「刀月様! お久しぶりです!」

「親分! お久しぶりです!」

 

とこういった具合に警備隊の連中に村のトップ二人が熱烈に歓迎してくれる。

すぐに来たから恐らく起きて待機していたのだろう。

俺はそれに軽く挨拶をしつつ、用意してくれた朝飯を軽く食べて漁へと向かう。

その際村の連中にも渡せるように超大量に漁を行う。

この漁で収穫した物は基本的に無償で村の連中に振る舞う。

半数ほどは保存食として加工するが、残りは村の連中に軽い宴の飯として出される。

俺が来ることは生の魚が食える機会のため、村の連中も命の恩人たる俺が帰ってくるのと同時に宴が開けるので、非常にありがたがられていた。

俺は俺で氷結晶を入れてあるクーラーボックスもどきに本日のつまみである、生き締めした魚を大量に詰め込む。

他に酒を秘密の貯蔵庫から持って行く。

 

ある程度の加工品のつまみはあるし……とりあえず生鮮のつまみはこの程度で良いかな?

 

日常的に使うことになってしまった加工品は、そのほとんどを俺は自らの生活拠点である都で生産できるようにすでに整備を終えている。

あまり量は作れないが俺以外の将達の分……俺の分は別口で生産、保管を行っている……はまかなえる程度には生産が出来ていた。

 

結構大変だが……まぁ楽しくはあるか……

 

忙しくも楽しい今の状況を心の中で嬉しさ半分、悲観半分で反芻しつつ……俺は漁を終えて村へと戻った。

 

「大漁だ。加工品部隊にきちんと通達しておくように」

「わかりました!」

「格、防衛関係では特に以上はないか?」

「特段ないです!」

「助、問題は?」

「特段ございません」

「もう少ししたら俺が住んでいる都の居住区が完成するから、そのときはみんなで引っ越してくると良い」

 

生産体制が整った段階で、俺は褐色ポニーとちんちくりんに刀村の連中が移住できるための居住区の建築許可をもらっていた。

その理由は表向きは加工品と俺の農産物の管理を行わせるためだ。

最大の理由は……村の連中を守るためだった。

正直海沿いの村を潰すのは惜しかったのだが……未だ敵の本拠地が把握できていない状況で、守護対象を遠方においておきたくなかったのだ。

また都ならば軍がいるため、襲撃を受けても無防備ということにはならないだろう。

刀村は俺が元々住んでいた小屋だけ残して……俺が来たときに漁に出るため……廃村となるだろう。

俺の引っ越しの提案を聞いて……すでに前から説明はしてある……助と格は少し残念そうな表情を浮かべていた。

 

「盟主様の都で住めることは実に嬉しいことなのですが……この村を離れてこの村が無くなってしまうことが……非常に残念です」

「まぁ……それは俺も思う」

 

数年。

言葉にすればたった二文字だが、その数年の間に、あまりにも多くの出来事があった。

最初は一人だったというのに……あっという間にふくれあがり、村になってしまった俺の生活拠点。

何人も迎え入れた。

何人も海へ見送った。

襲われても、俺が撃退し……そいつらも迎え入れた。

そうして大きくなったこの……刀村。

 

刀月村とか呼ばれそうになったよね……

 

全力で阻止したのが良い思い出である。

命を救い、家を、飯を、仕事を……生きる糧を与えた。

労働力と引き替えにして。

これがどれほど破格の待遇かというのは……俺はよく知っていた。

 

まぁ別段夜伽とか命じても良かったんだけど……責任持てないしね~

 

性欲が枯れているわけではない。

それ以上に責任感と自制が強いだけである。

俺だって若い男。

やりたくはあるが……それ以上に孕ませたときの責任が重いのでするわけもなかった。

 

閑話休題。

 

俺の都合とはいえ、この村から村の連中を引き離すのは少々心苦しかった。

海に帰したとはいえ、この村は……この村の浜辺は、死んでいった連中の墓のような物なのだから。

だから、そこから引き離すのは心苦しかったが、しかしそれでも俺はこいつらの命のためにも、村を離れさせるしかなかった。

 

まぁエゴですね

 

一度助けた以上……この世界の事が原因で死んだのであれば、俺が責任を問われることはない。

そして今回の騒動……敵の黒幕の連中は俺が来る以前からこの世界に根付いていた連中だ。

故に、そいつらが原因で村の連中が死んだといっても……俺が全ての元凶で巻き込まれた訳ではないと言って良いだろう。

暴論だが……死ぬ瀬戸際だった連中を助けたのだ。

その後俺の関係で巻き込まれて死んだとしても、一度命を救った恩義がある以上、俺が責任をとる必要性は無いかも知れない。

 

まぁこれも俺のエゴだな……

 

確かに責任は無いかも知れない。

ただ俺が死なせたくないだけなのだ。

少なくとも俺がこの世界から離れるまでは……死なないで済むのであれば、死なせたくないのである。

 

まぁそれに……こいつらに俺の都に来てもらえれば俺の料理関係の生産力もあがるからってのも大きいしな

 

都の連中にも俺の技術を教えても良かったのだが……仕事もあるためあまり付きっきりで指導を行うことが出来ない。

そんな半端な指導ではろくな物が出来ない。

だからこいつらを呼び寄せると言うこともあった。

 

「まぁ海沿いじゃなくなるから魚をあまり食えなくなるかも知れないが……その代わり都会で暮らせるんだから悪い話じゃないだろ?」

「それはまぁ……そうですが」

「助は良いかもしれませんが、俺はあまり頭が良くないので……ちょっと不安ですよ」

 

助は元商人。

都で住めば今よりも遙かに稼ぐことが出来るようになるだろう。

だが格は……格自身が言うように頭が良くない。

都に行って仕事があるのか心配なのだろう。

 

「安心しろ。街の防衛隊とかそんなのに入ればいい。俺が鍛えたこともあって、お前は軍の連中が相手であっても武将とかと戦わない限り、大概の奴には勝てるぞ?」

「そうなんですか?」

 

これは事実。

俺が鍛えたことで防衛の連中は正直かなりの力量を有している。

鍛えたと言っても基本的に体力なんかを鍛えただけで技は教えていない。

故に武将には勝てないだろうが、強いことは間違いなかった。

 

「なら、親分の部下になることは出来るんですか? 正直別の知らない奴に仕えるのは嫌なんですよ」

 

格の気持ちはわかった。

軍属と言えば聞こえは良いが……上司がどんなやつなのかはわからない。

それこそこの時代は汚職も多い。

当たり外れは……文字通り死に直結する問題と言って良い。

しかも格もそれなりに強いと言っても、武将クラスから見れば足下にも及ばない。

ある程度は重宝されるだろうが、自分の希望が通ることはないだろう。

となれば俺の下に行きたいと考えるのは自然だったが……

 

「あ~~~~。俺は部隊を率いている訳じゃないからな。難しいだろうな」

 

俺は自分の部隊という物を持っていない。

別段、下が出来るのがいやというわけではない。

だが部隊を率いた場合……もしもの時に自由に動くことが出来なくなる。

最悪全ての責任を捨てて自分勝手に動けばいいのだが……さすがに戦場で自分の部下を放り捨てて自分のために行動することはしたくなかった。

出来なくはないが、それはさすがに仁義と義理と道徳的にアウトである。

 

まぁ俺がやりたくないってのが最大の理由だな……

 

ということで俺は大陸最強……恐らく……でありながら、自ら戦わないどころか部下を率いていることもしていないのである。

呉の連中も恐らく俺が何故戦わないのか疑問に感じている連中もいるだろうが……しかし呉の盟主である褐色ポニーが表立って何も言ってないのだ。

部下の連中がおいそれと口にしてくることはないだろう。

 

まぁ何言われてもやりたくないのでやらないけど……

 

「都に来て軍属になるって言うなら……多少は口利きはしてやれるから、最悪は頼ってきてくれて構わないぞ。それに呉の連中は優秀なの多いから安心して良い」

 

俺の口利きほど強力な物はないだろう。

ただ俺自身不正を働くのは嫌いなので、別段厚遇してやれと言うつもりはない。

実力も伴っていないのに、精鋭部隊に配属されても迷惑をかけるだけじゃなく本人が死ぬ可能性が上がるだけだ。

そして働く事に関しては俺が公明正大……とまでは言わないまでも、不正が好きじゃないことは助も核もよく知っている。

そのため……

 

「本当ですか!? ならもしもの時はお願いします親分。俺に合う部隊とかあったら是非お願いします!」

 

相応のお願いをしてくるだけで終わるのである。

俺はそんな二人に苦笑しつつ、ある程度の情報交換を行って都へと帰還した。

 

 

 

 

 

 

一日休みを取るというのはなかなか難しい。

特に俺のような料理人の場合はなおさらだった。

しかも俺が料理を振る舞う相手はわがままが少しは鳴りを潜めたと言っても、あのちんちくりんである。

故に、俺がいる状況で俺以外の調理を許すはずもなく……俺が三食を用意しなければならない。

だがそこは俺。

下準備もすでに終わらせているので別段時間がかかるようなこともない。

何より能力のおかげでこの時代においては難しい一定の火力なども自由に行うことが出来る。

他にも色々応用できるのは当然だが……それはまた別段使う必要性はないだろう。

 

「うむ! 刀月の作るご飯は本当においしいのじゃ!」

「そらよかった」

「七乃! 七乃も食べるのじゃ! これなんか七乃が好きな物じゃないかえ?」

 

そういって満面の笑みでほうれん草のソースをかけた鹿肉料理を甘やかし短髪に差し出すちんちくりん。

以前のちんちくりんからは想像も出来ない姿だろう。

さらに言えば、自らも好物と言ってもいい肉料理を差し出しているのだ。

差し出された甘やかし短髪からしたら……天にも昇れるほどの気持ちだろう。

二人して実に幸せそうに飯を食べていた。

 

よしよし……計画通り……

 

俺はそんな二人の様子を微笑ましさ半分……下卑た気持ち半分で見つめていた。

もちろん下卑たと言っても、劣情を抱いているわけではない。

予定通りに飯を平らげてくれている事にしめしめと思っているだけだ。

人間というのは基本的に欲求が満たされれば油断する物である。

就眠時、起床時がもっとも危険な睡眠欲。

空腹を満たすことで、動きも鈍くなる可能性のある食欲。

異性ないし同性相手にあらゆる劣情をはき出すことに酔って満たされる性欲。

 

これらをあわせて三大欲求という。

 

そして食欲に関しては……この時代のこの大陸の人間としてはまさに破格の食事を味わっているのがこの二人だ。

また自分にとって大切で仲が良い相手と一緒に食べることで会話と箸が進む。

さらに言えば……食べやすくも少し濃いめの味にすることで、普段よりも主食である米を食べたくなるような食事を提供している。

必然的に少し食べすぎになり、動くのがおっくうになってしまう。

そしてそうなると……もう今日はお開きということになる。

お開きにしても問題ない状況……内政的な意味で……は確認済みで、そうなると……

 

「ふぁ~あ。眠くなってきたのじゃ。七乃、もう床にいこうかえ」

「はぁい! 美羽様!」

 

眠そうに目をこするちんちくりんの手を引いて、甘やかし短髪はもうそれはそれは満面の笑みで……毎度思うが若干危なげな笑顔に見えるのは気のせいではない気がする……二人して寝床へと向かっていった。

時刻はすでに、この世界の時間で言えば深夜に近い。

しかし現代人の俺からすればまだまだ問題のない時間だ。

 

感覚的に二十時位ってところか?

 

二十時といっても夜明けから起きて活動をしているこの時代の人間からすれば間違いなく深夜……朝の四時から働き、遅くとも夕方の十八時には寝るのが平民の生活スタイルだ。

肉体労働が主の平民はマジで起きるのも寝るのも早いのだ。

しかし内政……いわゆる事務仕事が主なお偉い連中は肉体労働が主ではないため、少し遅くなる。

まぁ政をする連中が忙しいのは当然といえる。

といっても四時頃に起きて、通常は二十時、遅くとも二十二時には寝る。

そして俺の主な仕事はちんちくりんと甘やかし短髪の飯と菓子の面倒を見る事だ。

そうなると緊急事態でもおきない限り、ここからは俺の自由時間と言っても過言ではない。

 

しからば!

 

気配でも二人が寝たことを確認し、俺はすぐさま行動を開始した。

まず密かにくすねておいた……横領……食材と調味料をまとめる。

次に俺はさらに密かに作っておいた菓子……これも砂糖を横領している……を布でくるむ。

後はご褒美を届けてから……

 

 

 

俺の時間だ!

 

 

 

 

 

ペラリ

 

一つの部屋に……紙をめくる音と、少し堅めの物に筆を走らせる音が小さく響いていた。

それ以外にほとんど音がせず……蝋燭で灯された明かりで、一心不乱に書き物をしている少女がいた。

長い袖から手を出さずに、実に器用に筆を握っていた。

勉強をしているのが、その真剣な眼差しから容易に想像が出来た。

しかし元々目が悪いというのに、蝋燭が一つだけの灯りではさらに目が悪くなるのもまた……容易に想像できることだった。

だが勉強を行っている少女……呂蒙からすれば時間が足りない気持ちだった。

取り立ててもらった恩義を返すためにも……少しでも早く一人前になりたい一心だった。

時刻はすでに二十一時を回っている。

この時代の人間からすれば、徹夜するほどの勢いだと言って良かった。

さすがに徹夜をしてしまえば次の日に支障を来す。

無論必要があれば徹夜をするのをためらうことはしないだろう。

だが、今は緊急事態でも何でもない。

故に気持ちが逸るのはわからないでもなかったが……さすがに根を詰めすぎといってよかった。

 

 

 

そんな呂蒙の背後に……音もなく、姿もなく……

 

 

 

ひっそりと静かに歩み寄る……怪しい人影の姿があった。

 

 

 

 

 

 

ま~た夜更かししてやがる

 

それが自分のことを棚に上げて、俺は呆れ半分、感心半分に……目の前で一心不乱に勉強を行っていた呂蒙を見た俺の感想だった。

確かに呂蒙の仕事は文官のため、事務仕事が主だ。

また献策も行うため、知識があって困ることはない。

特に時代が時代なので……さぼるわけにはいかないのは間違いない。

しかし……この娘の場合は暴走しすぎるきらいがある。

 

まぁだから……普段なら絶対に、絶対に!!! したくない夜這いみたいなことしてるんだけど……

 

俺は呂蒙の部屋に音もなく気配もなく、完全な隠密で侵入して、すでに呂蒙の背後に潜んでいた。

潜んでいたといっても気配こそ断っているがただ突っ立っているだけなので……振り返りもすればすぐにみつかる。

無論、全ての能力を総動員すれば完全隠密……霞皮で完全に気配を断ち、風翔の力で空気を歪めることで透明化……をすることも可能だが、無駄なのでしない。

そして殺すつもりもない。

 

性的に襲うつもりはもっとない!!!!!

 

もう少ししたら問答無用で就寝させるために、とっておきを持ってきただけである。

 

「ふぅ……」

 

しばらく背後で何も言わずにただただ背後霊かストーカーのようにただただ見守っていると、呂蒙がわずかに吐息を漏らした。

そのまま筆を置いて、一度腕を伸ばして肩のこりをほぐしている。

そして……なんか本当に文字通り一息を吐いただけで再度勉強を始めようとしたので、俺はやむなくやめさせることにした。

 

 

 

「こら、呂蒙」

 

 

 

「ふぁっ!?」

 

特段叫んだ訳ではなく、普通に声をかけただけだ。

だが、音も気配もなく忍び寄った……といっても、これだけ集中していた呂蒙だから、もしかしたら普通に入ってくるだけでは気づかなかったかも知れないが……存在が突然声をかけてきたのだ。

驚くのも仕方ないと言うことだろう。

だが、あまりにも驚きすぎて椅子事倒れそうになってしまった。

このまま放置すると下手をすると倒れた拍子に後頭部を打ちかねないので……俺は瞬時に近寄って倒れそうになった椅子事、呂蒙を助けおこした。

 

「そんなに驚くなよ。というか、本拠地とはいえ少し油断が過ぎるぞ?」

「無茶を言わないでください! 前にも言いましたが、完全に気配を断って忍び込むのはやめてください!」

「まぁ言ってることはごもっともだが……俺からも言わせてもらえれば、前にも言ったぞ? あまり無理をしすぎるなと? だから俺が無理矢理にでも休ませに来たんだよ」

 

現代人の俺からしても遅い時間に起きていたことに、気配で気づいた。

それが幾日も続く物だからさすがに見かねて何度か強引に寝かしつけに来たことがある。

寝かしつけ方は様々……気を送り込んで強引な入眠、整体による入眠、深夜のおやつによる入眠等々……だったが、何度かすでに行っているので、本当に最初こそ驚いたが俺の出鱈目加減をよく知っているので、半ば諦めているような感じになっている。

 

「ですが刀月様……。私は本当に未熟なので、日々勉強をしないと不安なのです」

「何か勉強依存症みたいになってるぞ、その言葉。確かに勉学は大事だが、体も大事だ。また目が悪くなったんじゃないか? 目が前よりも細くなっている感じだが?」

 

俺の言葉に呂蒙ははっとして、咄嗟に目元を手でこすっていた。

その仕草に俺としては呆れるしかなかった。

呆れるには呆れるのだが……あまり責められないのが実に情けないことだった。

 

「まぁ頑張っている事は事実で……そのお前のがんばりが必要なのもまた事実。故に……俺としても無理をしすぎない程度に無理をして欲しい」

「い、言ってることが矛盾してませんか、刀月様?」

「否定はできんが……まぁ根を詰めすぎるのは良くない」

 

武で俺は大陸最強と言えるが……しかし文に関しては間違いなく中途半端な存在だ。

未来人故に画期的な施策もたまに出すこともあるが……俺は間違いなく肉体労働の人間だ。

頭脳労働では逆立ちしても呂蒙に勝てるわけがなかった。

故に、呂蒙には文官として頑張ってもらわなければならないのだが……この娘は無理をしすぎることがある。

自分で止まることが出来ないのなら……周囲の人間が止まらせるしかないだろう。

故にこそ、最初から出す気満々だった呂蒙が寝るために用意した……とっておきを出すことにした。

 

「頑張っている呂蒙にご褒美だ。にんじんケーキを持ってきた」

「!? またですか!?」

 

俺の台詞に、呂蒙は実にわかりやすく大きな声を上げる。

声と表情から嬉しさ半分、困っているのが半分という感じの呂蒙に俺は苦笑しながら説明をする。

 

「安心しろ。少々ちょろまかしているのは事実だが……問題ない程度かつ、問題ない方法で横領したから少なくとも処罰されることはない」

 

先ほどから横領という言葉が出ているが……本当にやばいことはしていない。

このにんじんケーキも……ケーキ故に砂糖が使われているのだが、そこは俺。

日々のちんちくりんの菓子作りの際に、ほんのひとつまみだけ……使用する砂糖を減らして調理を行う。

俺が作る菓子が物珍しいこともあって少し砂糖を減らしても問題がない。

さらに言えば砂糖が足りないなら蜂蜜を使えば良いだけなので……特段問題が無かったりする。

そうして少しずつ貯めた砂糖がたまり次第……俺はこうして呂蒙へのご褒美として菓子を作ってくるのが最近の習慣になっていた。

確かにばれたらまずいかも知れない。

微量かつ問題ないようにやっているとはいえ、横領に変わりはない。

 

まぁ……それで怒られたらこちらにも考えはあるのだが……

 

どうにでも出来るので心配する理由がない。

というか、ばれるわけもないのでばれる心配をしても無駄という物。

ならば今日のこの時間と、菓子を食べることの出来る贅沢を味わえば良いだけの話だ。

そしてにんじんケーキは呂蒙の体を慮った菓子である。

にんじんに含まれるビタミンAは皮膚や粘膜の健康を保つ働きがあり、視覚の正常化にも関与する栄養だ。

ブルーベリーがあったらソースを作りたかったのだが……残念ながらブルーベリーはさすがに無かった。

 

さすがに準備における優先順位は菓子よりも野菜と主食だよな……

 

にんじんケーキだけでも贅沢だろう。

しかも食べるのは俺と呂蒙のみ。

十分に食べることが出来るだろう。

俺は早速持ってきていたナイフでケーキを切り分けて皿に乗せ、竹製のフォークを添えて呂蒙へと差し出した。

切り分けたサイズとしては、一般的なケーキ屋のショートケーキくらいのサイズだ。

全体としてはホールケーキサイズある。

この時代の菓子としては十分な量と圧倒的なまでの質のある菓子と言える。

 

「ほ……本当に食べても良いのでしょうか?」

 

しかし俺が横領していると言ってしまっている故に、真面目な呂蒙としては躊躇ってしまうのだろう。

俺はそんな呂蒙に苦笑しつつ、自分用に切り出した少し小さめのケーキを先に口にした。

 

「先にも言ったがちょろまかしているのは事実だが、ばれるほどの量じゃない。他の材料も俺が主に生産しているから、言うなれば俺の給料で買った代物だと思えばいい。そして罰せられたとしてもそれは俺だ。胃袋に入れてしまえば、呂蒙が食べたことをわかるやつなんぞおらん。お前のために作ったのだから食ってくれ」

 

俺は屈託なく笑ってそう呂蒙へと促した。

呂蒙のため……という言葉に呂蒙が蝋燭の暗がりでもわかるほどに顔を赤くしていた。

軟派な事を言っている自覚はあったが……これは俺としては嘘でなく本心であり、そして心から言った言葉だった。

 

今の俺があるのは……間違いなくこの娘のおかげだしな

 

刀村でどれだけ世話になったのか?

そしてこの都で過ごしている間にも、ちんちくりんとどうにかするために実に様々な施策を考えてくれた。

正直……足を向けて寝れないと思えるほどの献身っぷりである。

それに比べれば……たかが菓子を作る程度、安い物であった。

 

「ほれ、とりあえず甘い物食べて寝なさい。甘い物は疲れた体を癒してくれる。ただし寝る前には歯を磨くようにな」

 

これは俺が知っていた知識を利用して作った物だった。

房楊枝である。

これは木の枝なんかを細かく割いて作ったもので、手間こそかかるが材料そのものはそこら中にあるので別段難しい物ではない。

虫歯になっても困る……さすがに虫歯治療は出来ない……ので、俺は刀村時代から生産してみんなに配っていた。

これはちんちくりんにも実に好評だった。

蜂蜜ばかり食べていた頃は虫歯に悩まされていた……甘い物食べて歯を磨かないのであれば当たり前である……らしく、面倒だが痛くならないので実に喜んでいた。

歯磨き粉としては、炭を細かく砕いた物に薬用成分として薬草を乾燥させてこれも粉末にし、配合した物を配っていた。

仕上げに塩水で口をすすげば塩の殺菌と唾液分泌促進、さらに歯周ポケットも閉じるので、虫歯対策は万全といえた。

そんな俺のあまりにも普段通りの言葉に、やがて気が抜けてしまったのか、呂蒙は一度おかしそうに笑うと遠慮がちにケーキを口にした。

口にした瞬間に……おいしさに目を見開いて、後は夢中に食べていた。

 

「慌てて食べると詰まらせるぞ。ゆっくり食べろ。とりゃせん」

 

なんだか夢中に食べる姿が年相応というか……少し幼く見えて俺も苦笑してしまった。

最初遠慮していたのはどこに行ったのか……夢中においしそうに食べて、呂蒙は食べ終えると疲れが一気に来たのか、そのまま船を漕ぎ出したので俺はそのまま寝かしつける。

そして……俺の本番の時間がやってきた。

 

 

 

俺のターン!

 

 

 

別段引く山札もないのだが……そんな馬鹿なことを思考するほどに俺自身テンションがあがっていた。

まだ現代人の俺からすれば、深夜になったばかり。

そして今宵は見事な満月。

故に……

 

月見酒だ!

 

ということで、やってきたのは城壁の上。ちょうど物見台も兼ねた少し広めの場所に俺は陣取り……自らのつまみやら酒やらを取り出した。

 

では……近日の俺の仕事をねぎらいつつ……

 

 

 

「いただきます」

 

 

 

誰もいないのだがしかし口にすべきことは口にする。

俺は食物に感謝を捧げながら、本日のつまみと酒を取り出した。

今朝とってきた魚をさばいた刺身。

チーズと言った加工品。

揚げかき餅等々……実に酒の進む品物を多くクーラーボックスもどきに詰めて持ってきていた。

 

そして取り出したるは、試作?号の日本酒!

 

?なのは途中でめんどくさくなって数えるのをやめたからである。

俺はその酒を静かに注ぎ……天に捧げて一人で飲み始めた。

 

お~~~~、少し辛口に出来たか……チーズがあうのぉ……

 

一人自分の作ったつまみに舌鼓を打っていると……すぐそばに実に小さな小さな客人が忍び寄ってきていた。

 

「ニャー」

「お前は……入れ墨娘のとこのクロ」

 

真っ黒な体ゆえにクロ。

実にひねりのないネーミングである。

俺は入れ墨娘に懐かれていること、そして家族を助けに行ったこと、あと最大の理由として老山の力もあって、入れ墨娘の家族の連中に好かれていた。

また俺がたまに用意する餌も好かれる要因なのだろう。

そして……こうして寄ってきたのはほかでもない。

 

この干物だろうな……

 

先日仕込んだ鰺の干物である。

実によい仕上がりとなっている。

それを食うタイミングで現れたこいつは……子猫ながらに実に狡猾と言えるだろう。

 

やれやれ……

 

「食うか?」

「ニャー♪」

 

俺が少しむしって差し出すと、実に嬉しそうに鳴いてから俺にすり寄ってきた。

人間の食べ物故に塩分濃度が高いのであまり食べさせるわけにも行かないが……少しくらいなら良いだろう。

すり寄ってきたクロに俺はそれを与えて……呆れつつ苦笑した。

 

「んで、いつまで影から見守ってるんだ周泰。さっさと出てきたらどうだ?」

「!?」

 

よもや見つかっているとは思っていなかったのか……驚いて気配が少し乱れていた。

しかし俺がわかるだけであって、声を掛ける前の気配の消し方、そして驚いた事による乱れ方程度では、他の連中では気づかれることはないだろう。

それほどまでに、周泰の隠密としての能力は一級品といえた。

 

だが、猫に気をとられたことで気配を乱すようでは、まぁ落第だが……

 

猫を見つけた事で気配を乱す前からすでに察してはいたのだが……乱す時はやはりすごく目立つ物である。

細作故に夜目もきくのだろう。

故に夜の警護として働いているのは容易に想像できた。

 

「別段俺に見つかったことを報告したりしないし、悪いようにはせん。影から見られていても居心地が悪いだけだ。出てこい」

「で、ですが私は監視の仕事中で……」

「休憩すればいい。その間監視の仕事は俺が引き受けるから」

 

俺が監視すれば他の誰よりも厳重な警備が行えるだろう。

といっても、気配で察知できるという事を別段明かしていないので、信じられる訳もなく……

 

「い、いいえ! これは私の仕事なのです! それをおろそかにするわけ――」

「ニャー」

「はぅぅぅぅ!?」

 

埒が明かなかったので、俺はそばに寄っているクロの喉を撫でて鳴き声を上げさせてやった。

すると本当に効果は抜群だったようで、崩れ落ちて……そのまま四つんばいでまぁ無防備に猫へと近寄ってきていた。

 

って……早!?

 

その動きがあまりにも速い物で、俺の方が少し驚いてしまった。

しかしそんなことなど些末事。

猫が怪我をしないように至極優しく抱き上げて……その頭にほおずりしていた。

 

「はぅわ~。モフモフ気持ちいいです~~~」

 

何かこいつ自身も小動物みたいだなぁ……

 

もう満面の笑みで抱きついている姿は、本当に幸せそうで……少し呆れてしまうほどだった。

それほどまでに好きだと言うことなのだろう。

 

「好きなんだなぁ」

 

あまりの油断っぷりに思わずぽつりと俺が呟いた。

すると照れくさかったのか恥ずかしかったのか、何故か否定してきた。

 

「そ……そんなことはありませんよ?」

「説得力ないからその様子で」

「ば、バレバレでしょうか?」

「むしろ何故ばれてないと思っている」

 

ばれたくないのかばれたいのか謎だが……嘘でも否定している状況だというのに、尾行娘はクロをモフモフする手を止めることはなかった。

 

「はぅあ~~~」

 

撫で撫で撫で。

 

「あぅあぅ~」

 

撫で撫で撫で撫で撫で撫で。

 

止めないといつまでも続けそうだな……こいつ……

 

「はっ!? す、すみません」

「いや、謝らんでも良いけど……」

 

誘ったのは俺だがよもやここまでとは思わなかったのでちょっと驚いた。

特にこいつは普段の態度やら勤務態度が真面目だったので、結構お堅いイメージがあったのだが……どうやら好きな物を前にして少し興奮しているようだ。

そう思っていると……

 

グギュルルルル

 

大きな腹の虫が……俺の側にいる尾行娘から鳴り響いた。

いつから食べていないのかと……心配するほど大きな音だった。

 

腹へって……るんだろうなぁ……

 

この腹の虫を聞いて、俺は一つ思い出したことがあった。

以前俺をこの尾行娘が半日以上監視していたことがあった。

俺が無理矢理ちんちくりんと呉を合併させてすぐの頃だ。

その間……本当に俺を監視している気配が一切とぎれなかったのだ。

ほぼ一日……完全に俺の監視をしていたのだ。

その間食事や生理現象……ぶっちゃけトイレ……をどうしているのか、監視対象である俺が心配したほどだった。

真面目なのだろう。

そして真面目なこの馬鹿は……恐らく今日城壁の監視を命じられて一日張り込んでいたに違いない。

そしてバカ真面目なこの小娘は……恐らく腹が減っている事にすら気づいていない。

 

はぁ……やれやれ

 

俺は心底呆れながら……持ってきていた竹の筒を取り出した。

竹の節を利用した昔ながらの水筒である。

飲み口の穴に俺は鉄製の細い棒を差し込み、左手を添える。

鉄棒を熱して熱湯を作る。

しかし熱すぎても食べにくいのでほどほどの温度にして、俺はさらに味付けを改良したインスタント雑炊を取り出して持ってきていた椀にインスタント雑炊を入れる。

そしてインスタント雑炊に湯を注ぐ。

 

うむ……我ながらよく出来たな……

 

実に香ばしい香りが辺りに広がった。

匂いが良いのがわかったのか、クロも尾行娘に撫でられるままだったのだが、俺の飯に興味を示した。

 

「良い匂いなのです」

「まぁ俺の自信作というか……とっておきだからな」

 

量産前の試作品ということで……結構贅沢な雑炊なのだ。

具は醤油で味付けした焼き豚を小さな角切りにし、油で揚げる。

根菜類を中心に油で炒めた物を一度冷まして、これも揚げる。

さらに濃いめの塩を振った干物。

この具を飯玉に詰めて、醤油を塗る。

塩分が少々多いのが気になるが、行軍後の食事なので塩分補給と糖質補給と考えて、塩分過多とは考えないこととする。

 

「食って良いぞ」

「へ?」

「へ? じゃね~よ。どうせお前の事だから監視の任務に必死で何も食ってないんだろ? 腹の虫鳴ってるの気づいているか?」

「……???? はぅぁ!?」

 

言われてようやく気づいたようだ。

バカ真面目な娘とはいえ、年頃のおなご。

腹の虫を異性に聞かれて平気なわけもなかったようだ。

 

「!? はぅぅぅぅ!?」

 

顔を真っ赤にしている。

その反応がまぁ本当に微笑ましくて、笑うしかなかった。

 

「クロには食べさせるなよ? 塩分濃いめだから。クロには干物を与える」

 

これもあまりよろしくなかったが……興味を示しているクロをさしおいて雑炊を食べることはこいつには出来ないだろうから、さきに先手を打っておく。

クロも俺が干物をむしって差し出すと、早速興味を移して……俺が差し出した干物に興味津々だった。

 

「腹が減ってたら注意力も散漫になるし……何より体に悪い。細作として一番のお前が体を壊すと困るのは上の連中だ。良いからくっとけ。文句を言われたら俺が無理矢理食わせたと言えばいい」

 

そういって俺は問答無用で椀を尾行娘へと差し出した。

食わなければ任務に戻してもらえないと思ったのか、尾行娘は恐縮しながら一口食べて……うまかったのか一瞬驚いた表情をしたが、すぐに満面の笑みを浮かべた。

 

「おいしいのです!」

「ならよかった。慌てずに食べるんだぞ」

「はいなのです!」

 

口を付けていない別の水筒を差し出しながら、俺はそう言った。

満面の笑みで食べてもらえたらこちらとしても嬉しい物だった。

 

 

 

それがたとえ……俺がシメのご飯として持ってきておいた秘蔵の雑炊だとしても……

 

 

 

まぁ……いっか……

 

味については心配していない。

食べたかったのは事実だが……頑張っている娘達に褒美としてあげるのは悪いことではないだろう。

俺は満面の笑みで食事をする尾行娘の笑みを肴に……注いだ酒を飲み干した。

しばらく尾行娘とクロが嬉しそうにしている姿を見ながら、俺は久方ぶりの休暇を満喫した。

 

 

 

 

 

 

~翌朝~

 

年下の娘を肴にするとか……完全にやばい奴だな……

 

ロリと言っても差し支えない女の子がおいしそうに食べる姿を肴に飲む男。

どう考えても通報物レベルの変態である。

多少は俺も酔っていたのかも知れない。

酔っていてもさすがに手を出すとか本当にまずいことはしてないのだが……さすがにあまりにもおっさん思考過ぎて自分自身どん引きだった。

 

 

 

確かにもう二十歳を超えているのは事実だが……いくらなんでも思考が老いすぎじゃないか!?

 

 

 

しばらく落ち込んだ俺だった。

 

 

 

 

 

 

 





前書きにも書きましたが、現在三尺越えの太刀を入れる運搬用の竹刀袋を作成中です
そのため来週はお休みするかもしれませんので、よろしく~

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