放置してたらいつの間にやら三ヶ月経ってしまいましたね
まっていた方、お待たせしました
やること……というかやりたいことが多くてなかなか時間がとれず
今年も後二ヶ月ですね
コロナが落ち着いてきたとはいえまだ油断は出来ないので、気を引き締めながら年末に向かって頑張っていきましょう
それから数日間は……結構めんどくさかった。
飯の用意。
相手のお子様とこちらのお子様の相手。
他にも南蛮の連中と果実を取りに行ったりと……実にてんてこ舞いだった。
また、今後のことも考えて、蜀の連中に対して密林におけるサバイバルなんかも多少は指導した。
問題が解決したからそう遠くなく引き上げるだろうが、一応引き上げるにしても指導するっていったしねぇ~
先日会議の時に伝えた濾過装置の造り方。
そして行軍も行う。
全ての人材を引き上げるわけではないだろうから、相手をある程度聞いた上でそいつらに対して指導を行う。
実に多忙な日々を送っていた。
ちなみに素人娘に対する報告については、既に和服もどきが書状を早馬で届けにいっている最中だった。
あちらがどう判断するかわからないが、それでも素人娘の性格上直接話をすることを選ぶだろう。
今の蜀は非常にタイトな状況で各方面に対処している。
なるべく早く問題は片付けたいだろう。
素人娘、片側ポニーの両名は成都の事もあるため動くわけにはいかない。
南蛮平定が終わった上に、俺と入れ墨娘がいるのだから砦の防衛は必要ないので、和服もどきが直接報告に行くといって成都に向かったのだ。
書状だけでは説明しづらいところも直接話せば伝達ミスなどもなくロスも少ない。
そして報告を聞いた上で素人娘とミドリボンの二人の判断として、話し合いをするということで成都に招くことになるだろう。
それまでこっちで相手するのが面倒だ
日々の忙しさに嫌気が差していたが……一応俺が行動を起こした責任もあるし、そもそも南蛮の連中の相手はほとんど俺しかできなかった。
ついでに言うと、訓練をしてる最中に獣妖女にも何故か勝負を挑まれた。
どうやら一応強者であることも確認したいようだった。
俺としても蜀の新兵連中に実力を見せる必要性があった……行軍訓練とかで俺の指示に不満を抱いている奴もいた……のでやむなく受けた。
するとびっくり……普通に強かった。
密林での果実採取兼行軍訓練の最中だったので、地の利が獣妖女に有利だったのは事実ではあった。
戦法としては始まりの合図と同時に真上に跳んで、木々の間を跳び回り始めたのだ。
……おぉ、すげぇ
その木々の間を飛び回るのが意外にも様になっているというか……かなり速い。
将レベルでしか目で追うことが出来てない。
「ふっふっふ! 美以のこの攻撃から逃れられた者はいないにゃ! 覚悟するんだじょ!」
直線距離の速度なら尾行娘が勝つだろうが、ここまで周囲を飛び跳ねるのは無理だろう。
暗殺というか……尾行娘を先行させて忍び込んで捕獲出来ると考えたが、実行していたら尾行娘が負けていたかもしれない。
意外にも身体能力が高いことに、俺は内心で感心してしまった。
一騎打ちと言ってくるだけのことはある。
「良いからさっさとかかってこい」
しかし俺からすれば別段問題のない速度だ。
また目で追う必要もないのでそのまま突っ立っているだけ。
「む、ゆったにゃ! ならばくらうんだじょ!」
何度か飛び跳ねて……俺に向かって急降下してくる。
その勢いを乗せて肉球ハンマーで襲いかかってくるが……俺はそれをあえて、念のために持ってきていた木刀で真っ向から打ち合った。
「にゃにゃ!?」
驚きに声を上げるがそれまでだ。
俺の気力を使用した打撃に相手の打撃が勝てるわけもなく……突っ込んできた全ての運動エネルギーを文字通り叩き潰した。
「ぎゃん!?」
結構痛そうな声を上げているが……俺が直接攻撃したわけではないので怪我はしている様子はなかった。
また暴れ回られても困るので……俺は首根っこを掴んで宙ぶらりんにする。
「満足したか?」
普通であればここで負けを認めるのだが……交易をすると決めた後もあきらめが悪かった獣妖女。
少し痛がった後にすぐに暴れ出して、俺の拘束から逃れようと暴れ出す。
俺としても本気で掴んでいたわけではないので、あっさりと手放す。
「まだなんだじょ! 美以はこの程度じゃまけないんだじょ!」
「がんばれ美以さま!」
「まけるな美以さま!」
「まけるな美以……ふにゃぁ」
おい最後の……せめて応援はきちんとしてやれよ
それなりに慕われてはいるようで、配下の中では気が強い方の三人が声援を飛ばしてくる。
その声援が力になったのか……獣妖女がさらに速度を上げる。
「くらうにゃ!」
そして今度はフェイントなのか……肉球ハンマーを振りかぶってきて俺の木刀が受けると同時に、ハンマーを手放して素早く背後に回った。
「にゃ!」
変なかけ声と供に爪を振りかぶって来る。
俺は空いていた手で爪攻撃を掴んで……獣妖女を前方へと投げ捨てる。
「にゃ!?」
投げ飛ばされるとは思ってなかったのか、驚きの声を上げるが……投げ飛ばされながらも宙で体勢を立て直して、木の幹に足から着地する。
本当に見事な身体能力だな……
身体能力だけで言えば、武将達にも十分渡り合えるレベルだ。
しかし虚実もなく、武としては非常に未熟だ。
確かにアクロバティックな動作であり、また密林であれば木々を飛び回る身体能力を生かした撹乱戦法で大概の奴には勝てるだろうが……真の武将には勝てないだろう。
「忘れ物だぞ」
木の幹に着地した瞬間を狙って、俺は受け取れるレベルの勢いで肉球ハンマーを投げ飛ばす。
別段試合みたいなものなので本気で戦うつもりはない。
そのため怪我をさせるつもりもなかった。
「にゅにゃ!?」
驚きこそすれとれる程度の速さで投げたので……獣妖女は驚きつつも投げられたハンマーをとって地面に降り立った。
「むう! 美以の攻撃をここまで躱すとは……なかなかだじょ!」
「そいつはどうも」
「でも調子に乗るんじゃないじょ! おまえなんじょ、美以の攻撃が当たれば木っ端微塵なのにゃ」
すでに数度負けていることは獣妖女もわかっている。
だがそれでも降参しないのは部下の手前ってのと、自分の全力を受けてないからという考えからなのだろう。
「ふむ……ならば受けてたとう」
なんかちょっと乗ってきた俺は……あえて一騎打ちの最中の一撃勝負を受けてみることにした。
回りの連中が驚いていたが……負ける要素がないので俺としては受けるのもやぶさかではなかった。
「にゃにゃ!? 大した自信なんだじょ! じゃが、美以の力を舐めすぎなんだじょ!」
「いいから掛かってこい」
クイクイと……挑発するように人差し指で攻撃を促す。
さすがに少しかちんと来たのか……獣妖女が少し顔を歪ませて、武器を構えた。
「後悔してもしらないんだじょ!」
そういってから……突進してきた。
先ほどの跳躍と違って全力の突進だ。
相当な力と勢いがあり、さらに肉球ハンマーの重さも相まって、すごい威力になるだろう。
間違いなく獣妖女の全力と見えた。
俺はそこであえて……木刀を上空に投げ捨てて右拳を握りしめて構えた。
「「「!?」」」
回りの連中が驚いているが……声を上げることはしなかった。
なんだかんだでそれなりに高レベルな戦いになっているので、誰も口を挟むことが出来ないのだ。
そんな状況で俺は……獣妖女の打撃を真っ正面から打撃で打ち破った。
「ふっ!」
!!!!!
今まででもっとも大きな音が俺の右拳から鳴り響いて……敵の肉球ハンマーを粉砕した。
気力と魔力を乗せた俺の打撃に獣妖女自身のパワーが合わさったのだ。
壊れるのも無理がないと言えた。
「にゃ!? み、美以の武器が!?」
さすがに得物を真っ正面から粉砕されてはあきらめの悪いと有名な猛獲といえど、負けを認めると踏んで真っ向勝負を受けたのだが、獣妖女は驚くと同時に涙ぐんで……泣き出した。
「み、美以の武器が壊れたにゃぁぁぁあ!?」
えぇぇぇぇぇぇぇぇ!?
これはさすがに俺も読めてなくて……思わずフリーズしてしまった。
敵との一騎打ちの最中にまさか武器が壊れて泣き出すとは思ってなかったのだ。
俺も夕月……狩竜の前身の打刀(親父鍛造)……がリオレウスに粉砕されたときは失意の中で呆然としたことがあるので人のことは言えないのだが、まさか泣くとは思っていなかった。
「泣かせたのにゃ! ひどいのにゃ!?」
「みいさま、元気だすにゃ!」
「みいさま、がんばるにゃ」
部下の三人が鼓舞しているが……あまりに想定外の出来事に、俺も固まりつつ後ろを振り向くと、皆が呆気にとられているのが見て取れた。
普段と違う感じで……何とも言えない雰囲気になっている。
行軍に付いてきていた尾行娘に入れ墨娘、妖艶寡婦なんかも何とも言えない表情をしている。
「刀月様……さすがに少しやり過ぎかと」
「とーげつ、ひどい」
「刀月さん……いくら何でもそれはやり過ぎじゃないかしら」
なんか……子供を泣かせたみたいで嫌だなぁ……
気の感じから言って子供ではないはずなのだが……見た目と思考回路が子供に思えて成らない。
だがともかくこのまま放置するわけにはいかないので……俺は獣妖女に近寄って謝罪をしておく。
「すまない興が乗りすぎて思わず壊してしまった。許して欲しい」
「にゃ、にゃぁぁ」
「菓子を作ってやるからそれで機嫌を直してくれないか? 結構良いの作るから……」
「うぅ……わかったにゃ」
何とか機嫌を直してくれて、俺としては心の底から安堵していた。
そこでさらに面倒なことが起こる。
俺がそばまで近寄ってあやしていたのだが……途中で何かに気付いたかのようにぴたりと泣きやむと、何故か俺に近寄ってきて臭いを嗅いでくる。
「……なんだ?」
嫌な予感しかしないので離れたいのだが……突き飛ばすわけにもいかないのでされるがままになってしまった。
「とうげつは、不思議な感じがするんだじょ」
「あ? まぁ……否定はしないが……」
不思議な存在と言われればその通りだろう。
俺自身もそうだが、その上に古龍の力も所持しているのだ。
不思議な存在と言われても否定は出来ない。
なんか動物というか……本能に忠実というか近いというか、そんなやつにはそれを自然と感じ取られてしまっていると思えてならない。
入れ墨娘とかな……
「不思議な気持ちもするし、美以に勝ったなら文句も言えないにゃ! とうげつなら南蛮大王の座をゆずってもいいじょ!」
ろくな事にならなかった……というか、一応敗北は認めるんだな……
顔に手を当てて文字通り天を仰いだ。
面倒事とは……ひょんなところから沸いて出てくるものである。
南蛮は強さが全てっぽいって……自分で思ってたやん……
一騎打ちを軽々に受けてしまったのは、少し軽率だったかもしれない。
しかも獣妖女が意外にもアクロバティックな動きで俺を楽しませてくれるものだったから……思わず興が乗って調子に乗ってしまった。
だが後の祭り。
そして次の言葉で……俺は思わず叫んでしまう。
「美以の夫になるんだじょ! 南蛮大王になるのは当然にゃ!」
「どうしてそうなる!?」
反射的に叫んでしまったが……確かに強さが全てであればそんな思考回路に行くのも無理はないと思えた。
一番強いのが自分 → そんな自分を倒した男 → 夫に迎えて位も譲る
め、面倒な……
確かに強さはもっとも簡単に他者との優劣を測れるものではあるが……これが同姓ならばまだ簡単だが、異性では男女の関係で面倒事が跳ね上がってしまう。
男が単純だから楽ってのもあるけどね~
力のみに頼ってしまえば……俺はこの世界においては全てそれで解決出来てしまうからだ。
それは避けたかった。
ともかくとして南蛮大王なんぞになる予定はないのでどう断るか考えていたのだが……意外なところから援護が来た。
「だ、駄目です!」
そう大きな声を上げたのは……尾行娘だった。
先ほどまで色々と唖然としていたのだが、慌てた様子でこちらに走ってくる。
そして俺と獣妖女との間に入ると、まるで猫のように威嚇する感じで目をつり上げている。
……どうした? 尾行娘?
あまりにも意外な行動に、俺は本気で驚いた。
確かにそこそこ気にかけてはいたが……ここまで反応されるとは思っていなかった。
「む!? にゃんだじょ!? お前には関係ないんだじょ!?」
「いいえ、関係あります! 刀月様は……え、えっと、呉の客将です!」
「そんなの美以には関係ないんだじょ!」
だが……尾行娘の慌て方と雰囲気、言葉、さらには何か「必死さ」を感じ取って、何となく理由を察した。
……もしや命じられたか?
俺は呉でも蜀でも客将である。
客将とは正式に使えてない将のことであり、よほど仁義に反する事をしなければいつでも移籍しても良い存在である。
俺の心からの本音は「さっさと自分の世界に帰りたい」のである。
しかし俺の予測ではあの二人が、並行世界への移動を俺に対してしている可能性が非常に高く、またこの並行世界への移動は修行である可能性が高い。
故にこそ、俺はがむしゃらに帰ることだけを考えるのではなく、修行やらを意識して日々生きているのだ。
またよほど人との交わりを避けない限り、人は人と交わって行かなければ生きていけない人間だ。
やろうと思えば俺は人と交わらなくても生きていける人間なのだが……俺自身の力と能力がそれを許してはくれなかった。
まぁ便利だしね……俺の力と知識は……
しかしどんなにこの世界の住人達と仲良くなろうとも、俺はこの世界の住人ではないのだ。
また俺自身の目的のためにも、俺はどうあがいても最終的には消えていなくなるのだ。
故にこそ国に忠誠を誓う事なんぞ出来るわけもないので、俺は客将としてやっているのである。
一応「国に帰るために客将」ということは明言しているのだが……それは今のところ呉の連中にしかいっていない。
ならば客将を引き抜こうとするのも無理からぬ事。
他の陣営が俺をスカウトするのも有り得る話だろう。
おそらく……そんなスカウトを可能なら阻止しろと命じられているのかもしれないな……
それをあの褐色知的眼鏡が警戒してないわけもない。
そして今回の派兵においてそんな俺の監視みたいな事が出来る人材は……尾行娘しかいない。
そして尾行娘は職務に忠実なために、その妨害を行っているのだろう。
生真面目だが、真面目すぎる嫌いのある尾行娘らしい妨害であった。
その辺を……もっと俺も考えておくべきだったか……
蜀からは日々が忙しすぎてその暇もなかった。
しかしタイミングが良いというか……よもや獣妖女からも引き抜きとは違うが、スカウトみたいなことをされるのは驚いてしまった。
というか、その辺も別に俺に直接言えばいいのに……
一応客将としての立場でいるが、俺自身別の陣営に行くつもりはないのだ。
その辺を明確に伝えていなかった俺にも責任はあるが、尾行娘に命じる前に俺自身に直接言えばいいものを。
しかし直接言えば俺がめんどくさがるのも事実なので……その辺を考慮してくれたのかもしれない。
「おーい、面倒なことはやめい」
なんか一触即発な雰囲気の二人が暴れ出す前に俺は声をかけて止める。
尾行娘が間に入ってくれたのである意味で助かった……面倒なことになってるのがわかったので……が、こんな幼子のような存在と、わざわざ変なことで争うのもあほらしい。
「む、邪魔するんにゃとうげつ!」
「いや、邪魔するわい。俺は南蛮大王なんぞにならんし、お前の夫になるつもりもない」
「にゃ!? 南蛮大王はすごいんだじょ!? おいしいもの一杯たべられるんだじょ!?」
「俺が作ってる菓子とか料理よりもおいしいか?」
「にゃにゃ!? それは……」
確かに果物はそれ単体でも十分おいしいが……俺的には菓子なりに加工するとか調理した方が良いと考えているし、俺は加工された物の方が好きな人間である。
ケーキで一番好きなのはチーズケーキ、果物系なら果物を潰したりして生クリームと混ぜた物なんかのケーキが良い
俺の飯やら菓子を何度も食べている獣妖女もそれはわかっているので、南蛮大王になることにメリットはないとわかっているのだろう。
「それに俺が南蛮大王になると、菓子とか料理が作れなくなるぞ」
「にゃにゃ!? なんでじょ!?」
「何でも何も、南蛮大王の俺が何で料理しなくちゃいけないんだ?」
「にゃ!? 確かに」
強さとして特権を得ていたこともあるので、獣妖女も自分の食い扶持程度は自分で稼いでいただろうが、人に施すことはあまりしたことがないだろう。
王=えらいという思考のため、そんなことはしなくて良いのが王様なのだ。
そんな単純な理屈じゃないけどな……
しかし相手が単純なので、俺はこのままゴリ押すことにした。
「それでいいならなるが? ただ俺は料理とか菓子をみんなに食べてもらいたいからなぁ」
これは紛れもない俺の本心。
独占も……まぁ悪い気分ではないが、それでは腹が満ちても心が満ちない。
それに俺自身料理をするのは好きなので、それが出来なくなるのは嫌だった。
南蛮だとあまり食材手に入らなそうだしな……
「わかったにゃ! ならとうげつはそのまんまでいいんだじょ」
「そらどうも」
少しだけ一波乱があったが……何事もなく終えて助かった。
ただ勝負に勝って自分よりも強い男であることは認識されたので……以前よりも獣妖女に懐かれてしまった。
「とうげつ! とりでに戻ったらまた何かつくってにゃ!」
「気が向いたらな」
猫みたいな見た目に違わずと言うか、それとも見た目通りの子供なのか、何故か俺の頭に抱きついてきたり、背中にくっついてきたりと……なんか猫化している。
武器を壊したのに逆に懐かれてしまって困惑している俺だった。
何故?
「離れなさい」
「いやにゃ!」
「離れないと菓子作らんぞ」
「にゃ!? それはひどすぎるんだじょ!」
「ひどいんだにゃ!」
「お菓子ないのはひどいにゃ!」
「ひどい……ふわぁぁ」
なんか側近?の三人組も揃ってニャーニャーニャーニャーいってくる始末である。
うっとうしくて叶わないが……また泣かれても困るので対処に困る。
ただひっつかれてもこの南蛮の森の中では暑苦しいだけなので、剥がしては投げ捨てて、剥がしては投げ捨ててを繰り返すが……それもあちらからしたら面白いようだ。
「あらあら。大人気ね」
「黄忠殿。出来れば助けてくださいよ? お子様いらっしゃるんだから相手得意でしょ?」
「そうだけど、それだけ慕っているのだからかわいそうよ。少し相手をしてあげて」
「え~~~」
とそんなやりとりをするが、結局は面倒になってなすがままになってしまった。
餌付け作戦は便利だが、不便なところもあるのだと再認識した俺だった。
マジで早く帰ってこい……和服もどき
今すぐ能力を使用して迎えに行きたいレベルだが、そんなことを他国の将相手に出来るわけもないので、諦めてこちらにやってくるまで待つしかない……というような騒がしい日々が続いていた。
しかし早馬でも、所詮は早馬でしかないので結局数日の日数が必要になった。
その間に砦の兵士達に南蛮の連中の扱い方を教えておく。
いつまでも俺がこの場にいるわけではないからだ。
俺がいなくても機能するようにしておかなければ、無責任というものだろう。
あ~~~~酒飲みたい……
今の俺のストレス発散がそれしかないのだが……満足出来る味の酒が俺自らが作った酒のみということで非常にストレスが溜まる。
刀も鍛造できず、まともに戦闘できる相手がいない上に得物は抜けない。
そして頼みの綱とも言える料理も、素材から改良しなければどうにもならない。
その食材の改良とかも、四六時中やるわけにもいかないという事実。
いや、本当に時間ってすごいわ
文明の発展に伴って自分のしたいことがある程度したように出来る世の中……現代。
こうして歴史上の時代に足を踏み入れるとは思いもしなかったが、貴重な経験と言えなくもなかった。
しぶとく生きるね、人間ってのは……
そんなことをしみじみと考えていながら仕事をこなしていると、和服もどきが帰ってきた。預かってきた書状に書かれていたのは、当然のように歓迎だった。
是非とも国交を結びたいとのことで、申し訳ないが成都まで来て欲しいとのこと。
まぁ本当はこっちに素人娘が来るのが筋だろうが……
上下関係を作らないのであれば、敵地……まだ正式に国交を結んでない以上、南蛮が蜀の領地に入るのは、敵地に入るのと同義……に入るのを避けるために素人娘がこちらの砦に出向いて対談が正しいのだろう。
蜀の都合に合わせて南蛮がわざわざ蜀の首都である成都に赴くのは、明確な上下関係を作っていると言ってもいい。
まぁ一応こっちが勝者だから……間違ってはいないか?
しかしそこについては獣妖女には申し訳ないが、砦の呉と蜀の将で話し合いをしていた。
素人娘がこちらに来ることになれば、その分だけ成都の即応性が低下する。
軍師がほとんどものごとを決めている……さすがに会議の時にそういったことは言わなかったが……といっても、最終決定権は素人娘にある。
その素人娘をこちらに呼んでは何かあったときに問題が起こる。
また素人娘が、南蛮との国交のためにわざわざ出向いたと言うことも、対外的に考えて他国に知られるのはあまり得策ではない。
さらに素人娘がこちらに来る場合は、最低限の部隊編成が必要になる上に、素人娘自身の移動速度……乗馬は出来るだろうが、それでも将ほどうまくはないだろう……も早くない。
対してこちらから成都に出向くのであれば、単純計算半分の日程で対談が終わる上に、砦の兵や将も同時に引き上げをすることが出来るからロスがなくていい。
そのため獣妖女には申し訳なかったが、成都まで出向いてもらうようにし向けるつもりだった。
まぁ非常に申し訳ないが……丸め込むのは簡単だろうな……
餌……文字通り……を与えればほいほい付いてくるのは間違いないだろう。
餌で誤魔化すというのはあまりいい思考ではないが、俺としても出来れば成都に戻りたい。
というよりももっといえば一度報告という形で呉に帰還したいのだ。
問題ないとは思うが、黒幕の連中が呉や刀村の連中に何かをしていることも考えられるので、様子を見ておきたいのだ。
今のところ俺に危急を知らせる俺の呪物は発動してないが……直に見るに越したことはない。
獣妖女が成都に行くのを渋るかと思ったが、うまい物が食えると言うことで素直に頷いて出向くことになった。
確かに成都であれば文化もそれ相応に発展しているので、南蛮とは違った食べ物が多いことは間違いないだろう。
ただ、道中の事を考えると俺としては溜め息を吐きたくなるレベルだった。
獣妖女にその側近の三人……おまけに部隊全部の食事担当は俺だろうなぁ……
砦から戻る部隊も考えると相当規模の部隊になる。
食事の用意を考えるだけでも、面倒で少し気分が重くなる。
「やったのにゃ! とうげつと一緒においしいものをたべるじょ!」
「たべるにゃ!」
「おいしいのたべたいにゃ!」
「たべるの」
俺が少し暗くなったのを察したのではないだろうが、獣妖女が俺に飛びついてくる。
ここ数日ではそれが当たり前になっているので、俺としてはもうなすがままだった。
「おや、随分と慕われたようですな。羨ましい限りだ」
しばらく俺と獣妖女とのやりとりを見ていなかった和服もどきが、俺の悟りを開いたかのように無反応でいると、おもしろがってこちらにやってくる。
わかっているだろうにこういってくるのだから……こいつも大概面白い奴である。
「なら変わってくれ。暑苦しくて叶わん」
「おや? 幼女を取られてもよいのですか?」
「……黄中殿、こいつぶっとばしていいですか?」
からかってくるこの和服もどきにたいして、真剣にぶっ飛ばしたくなってきたので結構真顔で聞いてしまった。
その表情から割と本気なのを感じ取ったのか……妖艶寡婦が苦笑いを浮かべている。
「えっと……それはさすがに……」
「というか刀月殿はどうして紫苑には敬語なのだ?」
「素直に敬える感じの人だからだよ」
年上で穏やかな感じだし、有能だし性格も良い。
素直に敬おうという気持ちになれる御仁だった。
しかし年上云々は言えば地雷なのは目に見えているので、俺は口にはしない。
「なんと。私はてっきり紫苑の年の色香に惑わされたもの――」
「星ちゃん?」
「……冗談だ、本気にするな紫苑」
「まぁ美人で色香があるのは同意するが……」
「あら、お世辞でも嬉しいですね」
一応世辞ではないが、あまり言い過ぎて口説いていると言われても面倒なので、俺はそれ以上は言葉を口にしなかった。
ただ、それが尾行娘的にはまずかったようで、驚きながらこちらを見てくる。
その反応を見て……確かにあまり女性を褒めたことがない事を思い出して、再度俺は自分の迂闊さを呪った。
色々考えることが多いなぁ……おい……
そして成都に戻った後も忙しいことになりそうで、俺としては溜め息を吐くしかなかった。
南蛮の問題は片付いたが、他の場所……五胡、北の曹操……の問題がまだまだ片付いていない。
南蛮の連中が成都にいくのが決まったので、砦の引き継ぎやらを終わらせてほとんどの部隊が成都に引き上げることになった。
また南蛮との争いを終えたことも兼ねて、夜には南蛮の連中も招いて宴が催された。
その際は、急遽宴が決まったこともあって俺は料理人としてかり出されたので死ぬ気で働いた。
何せみんな相当食うので……糧食がつきるのではないかと少し心配になったくらいだった。
そして引き上げ準備が終えた次の日……超大部隊での成都への帰還となった。
成都に行くために、俺達は砦を出発した。
和服もどきと妖艶寡婦、ちみっこ。
砦に詰めていた蜀の部隊の半数。
そして呉より派兵されている全員。
さらに獣妖女に三人の南蛮娘もいる。
騒がしくて叶わなかった。
「あーーーーー! 猛獲が鈴々のお菓子取ったのだ! それは鈴々の分なのだ!」
「先に取ったのはちょうひなんだじょ!」
「無駄に荒そうなあほらしい。そう騒がしくしてるともう作らないぞ?」
「「それは嫌なのだ(なのにゃ)!!!」」
気分はまさに……保育園の引率の先生だ。
騒がしいこと騒がしいこと。
だが……平和な騒がしさなので大変だし進んでやりたいとも思わないが、気楽なのは確かだった。
「ごめんなさい、刀月さん。私たちの分の食事も用意してもらっちゃって」
「気にしないでください黄忠殿。飯でこれだけ騒げるんだから平和でいいです。それに飯一つで互いに仲良くなれるんだったら安いもんですよ」
妖艶寡婦が恐縮しながらそう言ってくるが、俺としては別段よかった。
わかりきっていたことだしね~
俺が用意した方が飯がうまくなるのは当然だが……それで呉の連中だけがうまい物を食っていれば蜀の兵達の鬱憤が溜まる。
特に俺の料理はその辺から……俺の移動範囲故に、部隊から相当離れた小川から魚なんかを捕ってくることもある……食える物を探してきて新鮮で味も良い物を振る舞うようにしているから、なおさら不満が溜まるだろう。
そんなことで鬱憤をためられても困るので、俺が食事をするだけで良いなら安い物である。
というか、妖艶寡婦が上機嫌だな?
それなりに注視すれば、妖艶寡婦が喜んでいる様子なのがよくわかった。
聞いてみようかと一瞬思ったが、そこで俺は気づいた。
獣妖女の相手をしてないことに。
……あぁ、なるほど
妖艶寡婦には娘がいたはず。
話を聞く限りそこまで大きくはないはずだ。
砦に気配がなかったことからも、成都に置いているのだろう。
安全を考えればそれが一番なのは間違いない。
南蛮は、気候もけっこう独特だしな
幼子では体調も崩しやすい。
戦場の最前線ということも考えれば置いていくのは致し方ないことだろう。
別段普段獣妖女達を構っているのが代償行為だとは思わないが……それでも実の娘にもう少しであえるのだと考えれば、気分もあがるという物だろう。
まぁ代償行為であったとしても、否定する気は全くないが……
となると成都に戻ったとき、なるべく邪魔をしないようにしなければ成らないだろう。
そうなると、俺のお守り案件が増えることになるのだが……仕方がないと割り切るしかないだろう。
やれやれ……やることが多いなぁ……
道中は特に問題が起こらず……というかこんな大部隊を襲ってくる馬鹿はさすがにいない……俺達は無事に成都へと帰還した。
「初めまして猛獲ちゃん! 私は劉備! みんなのおかげで蜀の王様をさせてもらってます」
「美以は南蛮大王猛獲なんだじょ! よろしくにゃ劉備!」
成都到着より次の日。
ようやくトップ同士が対談できた当日。
蜀の国交ということで重要な会談だというのに……何故か呉の客将である俺も対談に出席をお願いされて対談場所の部屋に来ていた。
蜀からは素人娘に片側ポニーにミドリボン、和服もどきと妖艶寡婦。
南蛮からはこちらにやってきた獣妖女と三人娘全員。
そして俺。
謎だ……
王の間で対談をしないのは対等であるという意思表示なのだろう。
本来ならば緊張感を持って臨むべき対談なのだが……砦での交流、行軍中の間で南蛮自体があまり好戦的というか、殺戮的な存在ではないとわかったため、殺伐とした雰囲気になるわけもなかった。
そして言うなれば、まぁ子供のような体躯に子供のような思考回路だ。
見る人間から見れば、いちころだろう。
実際……片側ポニーが非常にそわそわしているのが見ていて面白い
ナナに対する態度や、ミドリボンや魔女リボンに対する感じを見れば、可愛い物が好きなのだろう。
本人には絶対に言わないが、自分にも他人にも厳しい感じの人間のため、ギャップがあるように思えてしまう。
まぁ外見は美人系だし武力もあるから、片側ポニーとしては自分がなれない故のあこがれみたいな物もあるんだろな……
別に男でも女でも可愛い物が好きなのは問題ないと思うが……わざわざ言ってやることもなくそんな義理も道理もないので、俺としてはその辺どうでもよかった。
ともかく獣妖女は見た目が可愛いし、口調こそ偉そうな感じだがそこに悪意はない。
素人娘自身もあまり偉そうに言う存在ではないので、口調程度で問題は起きない。
実に和やかな雰囲気で対談は進んでいった。
そして互いに悪人じゃないというか、能天気というか……ともかく人がいいので特段問題が起こることもなく、国交が決定し南蛮が平定された。
ほとんど血が流れることもなく終わったのだから実に良いことだろう。
ミドリボン的にはもっと時間がかかるものと思っていたので、面を食らっていた。
まぁ……実質一日で南蛮と和平というか仲良くなってたらそら驚くはな……
俺が着任して次の日には問題解決だ。
誰がそんなことを予想できるだろうか。
当の本人である俺ですら予想も出来なかったというのに。
しかし……何かしてくると思ったのだがそれもなしか……
無事に平定が終わったのは喜ばしいことだが……あまりにも黒幕の連中が何もしてこないので俺としては逆に怖かった。
何せ南蛮とやりとりをしている時に……こちらを妨害すれば南蛮との争いが激化したのは容易に想像できる。
褐色ポニーを暗殺しようとした連中を黒幕が操っていた場合……砦に詰めている兵を一人でも操って南蛮の誰かを傷つけるか殺すかすれば、大混乱は必至だ。
招き入れておきながら卑怯にも裏切ったとなれば……感情豊かな分、南蛮達は死にものぐるいでこちらを攻めてきただろう。
それがわからないはずがないのだが……今回も黒幕は何もしてこない。
マジで何が目的なんだろうか……
俺に接触してきた事。
そして明らかに俺を敵視してきたということは、黒幕にとって俺が邪魔なのは間違いない。
何かに利用しようとしているのかもしれないが……それにしたって動きが穏やかすぎる。
余力がないにしても、もう少し何かしらしてこないと不思議でならなかった。
……読めん
相手の意図が読めなくて困惑するしかない。
警戒するが、俺もただの人だ。
全てに対応できるわけもない。
せめて何か問題が起こったその瞬間に、携帯電話とかで電話が来て俺に即座に伝われば何とか出来なくはないのだが……無い物ねだりをしても仕方ない。
とりあえず無事に終わったことを喜んでおこう。
「にゃ! これでとうげつのごはんがいつでもたべられるにゃ!」
「いや、それはないって。俺は南蛮には戻らないぞ?」
対談が終わったことで、獣妖女が俺に飛びついてきながらそんなことを言ってくる。
何故俺が南蛮に戻るのかと思っていたのかは謎だが……ともかく獣妖女としてはこれで俺の料理がいつでも食えると判断したようだ。
そんな獣妖女に呆れつつ、俺は飛びついてきた獣妖女を体から引っぺがす。
「にゃ!? そうなのかにゃ!? なら美以もこの都にいるじょ!」
「それは駄目――」
駄目だと思ったが……この自由奔放とも言える奴を野放しにするのも危険かもしれないという思考に俺は至った。
何せ身体能力だけで言えば間違いなく武将と同レベルだ。
放置すれば機嫌を損ねて暴れるかもしれない。
そうすると……砦に誰をおいていくかにもよるが、対応は難しいだろう。
しかも蜀は人員が不足している。
問題が解決した南蛮に、強くて優秀な人材をおいていくほどの余裕はないだろう。
手元に置いておくべきか?
成都なら誰かしらの武将はいる。
何か問題が起きても対処自体は出来るだろう。
しかし成都は俺のホームではない。
勝手に判断するわけにはいかなかった。
俺は意見を求めたくて、妖艶寡婦に視線を向ける。
「どう思います?」
「そうね……。放置するのもかわいそうだし、このままいてもらった方が良いんじゃないかしら?」
「いや、かわいそうとかじゃなくてですね?」
「ふふ、冗談よ。刀月さんの考えは正しいと思うわ。だからこの四人はこのまま来客として招いていたほうがいい気がするわ」
からかってきた妖艶寡婦に一瞬イラッとしたが、考えは同じだったことに少しほっとした。
俺が言葉にする前に妖艶寡婦も同意してくれた。
獣妖女が色々と面倒なことを良く理解しているだけあって、放置するのも危険だとわかってくれたようだ。
「ですよね」
「どうしたの紫苑さん。何か問題があるんですか?」
「いいえ桃香様。特に問題ないです。この子達四人を成都に客人としてこのまま暮らしてもらえればと思うのですが、よろしいですか?」
「もちろんです!」
目敏く俺達が相談していると気付いて、こうやって確認に来るのは素直に感心した。
また招待することに関しても、嬉しそうに満面の笑みで答えていた。
能天気……と、とれなくもないが、こいつ自身の良いところだろう。
本当にこいつ人たらしなんだな……
飛び抜けて優秀ではないが人の気持ちに敏感で、優しすぎる位に優しい。
偉そうにしないし、自分が出来ないことがわかっているから人に素直に頼れる。
そして……天下太平を目指して……
誰もが笑顔でいることの出来る世界を本気で叶えようとしている。
ある意味まぶしく見えて……俺は思わず素人娘から目をそらしてしまう。
黒い感情も、胸に抱きながら……
「とりあえず、無事に終わったから今日は宴を開こう! 猛獲ちゃんも是非参加してね!」
「にゃ!? おいしい物が食べられるんならいくんだじょ!」
「決まりだね!」
「桃香様、しかしそれでは仕事が……」
「いいじゃない愛紗ちゃん! 嬉しい出来事があったんだからお祝いしないと!」
「それは……そうですね、悪くはないですね」
「朱里!? いや……もういい……」
のんきだなぁ……
と思うが、それなりに有効なのは間違いないので俺としても否定する気はなかった。
相手を歓待するということ自体は決して悪いことではない。
それに砦に詰めていた連中に褒美を与えるという意味でも、宴を開くことは鬱憤をはらすことでも良いだろう。
そして獣妖女を丸め込むためにも使える。
さらに言えば俺が出向いてすぐに解決したことで予定よりも予算を使わなかったので、その分を歓待に使えば印象もよくなるという方式だろう。
まぁ素人娘もミドリボンもそこまで暗いことは考えてないだろうけど……
素人娘はただただ騒ぎたいというか、仲良くなった人を歓迎したいという善意と、仕事から少しでも逃げる程度の考えだろう。
それが利点というか良い方向に繋がっているのがこいつの得なところというか、すごいところだろう。
純粋に歓迎するって気持ちがいいんだろうがな……
相手を喜ばせたい。
誰かのために何かをしたい。
それを虚飾でもなく本心からそう思って行動している。
だからこいつの周りには人が集まるのだろう。
「刀月さんに、それに呉の皆さんも! もちろん参加してくださいね!」
「え? いや……良いのか? 一応蜀と南蛮の国交だろ?」
「呉の皆さんにだってお世話になったんですから、一緒に楽しみましょうよ!」
もしかしたらただ騒ぎたいだけかもしれない……
と思うがそれは蜀の出来事。
俺としては騒げるのは別段嫌いじゃないので、乗っておくことにした。
ただ料理については俺が用意しないと面倒なことになるのは目に見えているので、対談が終わった後俺はすぐに料理の準備に取りかかることにした。
そして呉の連中にも誘いがかかり……結構大きな宴会が開かれることになった。
たださすがに全員が一斉参加というわけにはいかないので、将とかお偉いさんは建物の中で、一般兵たちは外で騒ぐことになった。
まぁ一般兵達は将がいたら騒ぐに騒げないだろうし……こっちとしても気楽で良いか……
食事の準備は終えたので俺も普通に宴会に参加していた。
といっても宴と言っても報償も兼ねている感じなので、最初の方は少しお堅い感じで宴は進んでいく。
しかし相手が相手なのですぐに無礼講というか……賑やかなバカ騒ぎへと変わっていく。
「にゃにゃ!? おいしいのにゃ! これはなんて料理なんだじょ!?」
「それは肉まんだ。落ち着いて……食べればいい」
お前がな!
本能的に自分にとって良い相手がわかるのか……獣妖女の相手は片側ポニーがやっていた。
矢継ぎ早に来る質問なんかに色々と答えているが……なんか今にもとろけそうなほど相好を崩してる。
というか崩すまいと必死になっているが、雰囲気と頬の紅潮具合からしてだだ漏れである。
可愛い物が好きというのは間違いないんだなと……適当に俺は料理を摘みながらそんな感想を抱いていた。
ちなみに食べているのは俺が手がけた物ではない料理である。
宴の飲みなので結構良い物が出てきているのだ。
そのため、俺は味のリサーチも兼ねてそちらの料理ばかり食っていた。
俺の料理も出したが、やはり生の意見と現地の料理というのは大事なので積極的に取り入れておこうという気持ちなのだ。
普通にうまいしな……
国のトップが食べるのだから料理人も本気を出す。
故においしい料理が並んでいるのも事実。
俺ならばこうするというのはあるが、祝いの席にそれを口にするのはNGだろう。
「お母さん! これおいしいよ!」
「そうなの? お母さんにも、持ってきてもらって良いかしら?」
「うん!」
そんな普段聞かない幼子の元気な声に目を向ければ、そこには妖艶寡婦と、妖艶寡婦をお母さんと呼ぶ幼子の姿があった。
台詞に、気配からいっても間違いなく妖艶寡婦の娘だろう。
予想よりも幼い娘で少しびっくりしていた。
もう少し年のいった子供を想像していたのだが……
時代が時代なので、契りを結ぶのも早いはずだ。
だがあの様子からしてまだ一桁前半の本当に幼子だ。
妖艶寡婦がいくつかは知らない……ある意味で怖くて聞けない……が、俺の考えが正しければ、妖艶寡婦は十代最後の方にあの娘をもうけたように思えた。
璃々といっていたか?
それが果たして真名なのかわからないので呼ぶことはしない。
しかし、実に見てて微笑ましい光景だ。
あれだけの幼子が、母親と離れてきちんとしているところがすごいと言うことだろう。
さすがは戦国の世に生まれた娘と言ったところか?
だがそれでも甘えたいのは事実。
ならばなるべく邪魔をしないようにしてあげるのが良いだろう。
「むむ? こうちゅーはどこ行ったんだじょ?」
「娘と久方ぶりの団らんなんだから、邪魔してやるな?」
「む? そうなのか? ならしょうがないんだじょ」
おや意外……
聞き分けの良さにびっくりしたが、少し我慢している雰囲気をしているのを見て、俺は獣妖女の評価を上方修正した。
腐っても南蛮大王を……上の存在として名乗っていただけのことはあると、感心した。
だがそれでもそれなりに気になるようなので、俺はなるべく獣妖女の相手をすることにした。
だが全部を見る必要性はなかったようだった。
食べ慣れてない物が多かったこともあって、色んな物に興味を示してあっちこっちに行っていたからだ。
そしてその度に、回りにいる連中がフォローしていた。
まぁ、大丈夫そうか?
無知と無邪気さ故の爛漫さなのは見ててわかるので、成都でもうまくやっていけるのかも知れない。
そんなことを考えながら、俺は自分の腰に備えた竹筒の中身を飲む。
中身は俺の酒だ。
酒だけはどうしても我慢ならなかった……質的な意味で……ので、酒はこっそりと自分の酒を飲んでいたりする。
そうでなければまともに酔えないからだ。
腰に下げた竹筒の酒を飲みながら料理を堪能していると、蜀の連中が寄ってきた。
「おや、一人とは。寂しく飲んでますな?」
メンマが大量に盛られた皿を手に持ちながら、和服もどきが近寄ってくる。
そこそこ時間が経過したこともあって、正式な場というよりも完全に宴という雰囲気になりつつある。
俺としても堅苦しいのは嫌いなのでかまわないのだが……こうして和服もどきが近寄ってきたということは、そろそろ俺の勉強の時間も終了に近づいたと言うことだろう。
「別に良いだろう? 俺は料理の味を盗むのに必死なんだよ」
「ほう盗むときましたか? 流石ですな」
「からかいに来たのか?」
一通り味わって分析は完了しているので、人との繋がりを築く時間にすべきだろう。
俺は酒を一口飲んで口の中と気分をリセットして、和服もどきへと向きなおる。
ちなみに今の食事は立食のような感じになっている。
呉と蜀の連中もまだ交流が足りないので俺がそう提案したのだ。
席に座ればどうしても移動が出来ず会話の相手が近い人間によりがちだ。
ならば最初から席を取っ払ってしまえばいいと提案したのだ。
本来であれば上下は明確に視覚化すべきだが、その辺を素人娘が気にするわけもない。
「ふむ。噂の土木怪人が宴を楽しんでいるのか気を遣ったというのに、ひどい反応ですな」
「ほっとけ」
一心不乱というか……会話しながらもメンマを口に運んでいく姿はなんか見ていて面白かった。
その食す速さと表情から見て、よほどメンマが好物なようだ。
今度作ってみても良いかもな……
目の前でうまそうに食べられていては食いたくなるのが人情だろう。
メンマはさすがに作ったことないのでこの際に作ってみても面白いだろう。
「ところで刀月殿。おぬしが持参したその竹筒には……もしや噂のあれが入っていたりするのですかな?」
「噂のあれってなんだよ?」
噂をされるのは致し方ないので、噂が蜀まで来ていること自体は別段驚くべきことではない。
だが噂されすぎるのも問題で、一体何の噂なのかわかったものではない。
まぁ先ほどからちまちま飲むために呷ってるので飲料だというのは誰でもわかること。
そしておそらく酒も噂程度にはなっているだろう。
卸してないけどな……
酒だけは俺が厳守しているので、刀村の連中すらもほとんど飲むことが出来ない。
というかそんなに大量生産していない。
しかし試飲だったり、なんだかんだで宴の時なんかは俺が酒を出している。
噂になるほどの量を出したことは今のところない……というか刀村以外の連中の一般民に出したことはない……のだが、そこは噂が色々ある俺だ。
悪目立ちという意味で酒のことも噂になっているのだろう。
「刀月殿が作られた酒なのだろう?」
「噂になっている事はまぁ想像付くが、プリンの件と良い酒まで蜀に噂が来ているのか」
プリンはまだわかる。
あれはかなりの連中に食べさせたものだからだ。
だが酒は違う。
基本的に俺が楽しむ物で生産も俺個人で行っている。
そのため人に呑ますほどの量がないのだ。
というよりもそんな量が出来たら俺が飲む
食い物と酒は人類の中でも根幹にあるといってもいい文化だ。
特に俺はそれらを大事にしているという自覚と自負がある。
「他にも色々ありますが、やはり一番大きな噂は土木怪人ですな」
「だろうな」
「そして逆に一番変な噂になっているのは酒です」
「なるほど」
噂に尾ひれが付くのは珍しいことではない。
酒は外に出してないのでなおさら変にもなるだろう。
別にどうでも良いけど……
「何でも、呉の王が刀月殿の酒を得るために決闘を申し込み負けたとか、歴戦の勇士である黄蓋殿も挑み敗れて地団駄を踏んでいるとか……。後料理に使ったことでより料理がうまくなってなんでか血が流れたとか……二つはそれとなくわかりますが最後の一つがよくわかりませんな」
「……だろうな」
意外に真相に近いというか……尾ひれが付いてないことで呆れるしかなかった。
酒好きが多い呉の連中は俺の酒を勝利の品物として、俺に決闘を挑んでくる場合が多かった。
そのことごとくを返り討ちにしたのだが……一応上の立場も考えて出来る限り人目に付かないところで勝負をしていたのだが、どうやらそれでも噂は流れてしまっているようだ。
人の口に戸は立てられないってな……
「おや? 否定しないと言うことは事実なのですか?」
「まぁ……否定はしない」
同盟国とはいえ他国だからこれも話題に挙げるべきではないのかもしれないが……しかし否定できないものを否定するのはいいとは言えない。
人として信頼できるかどうかにも繋がってしまうからだ。
しかも内容がただのバカ騒ぎの話だ。
別に気にすることもないだろう。
「どうですかな? 私も少し味わってみたいので、後日一手手合わせなど?」
お前も好戦的な奴だったね……
結局話の流れがそこに行き着いたので、俺としては心の底から溜め息を吐くしかなかった。
今は宴席故に酒も出ているので、和服もどきも酔っているのだろう。
しかし俺の返答は決まっていた。
「面倒だからやだ」
「む? 美女からの誘いを断るとは珍しいですな」
「否定はしないが自分で言うか?」
確かに俺の好みではないが、美人なのは間違いない。
語彙がなくて非常に残念な表現しかできないないが、ボンキュボンだ。
顔も美人で武将故に体も引き締まっている。
実力を知らなければ盗賊なんかが喜んで襲うだろう。
まぁ襲わないけど……
「否定しないと言うことは、私の色香にすでにめろめろということか」
「おい劉備。部下の手綱はしっかりと握ってくれ」
すぐそばに来ていた素人娘に俺は振り向かずにそう言う。
見もせずに接近を知っていたこと素人娘が驚いている様子だったが、俺が相手のためか驚いただけで……少し考えて苦笑した。
「え、えっと……それはなんというか、ごめんなさい」
「おや桃香様までひどいいいようだ」
獣妖女の相手は終わったのか……というよりも既にたらふく食べたのか、三人の獣娘と一緒に丸くなって寝ている……素人娘だけでなくミドリボンもやってきていた。
トップと頭脳面のトップが同時にやってきたのだから何かしら話があるのだろう。
俺は振り向いて挨拶を交わす。
「今日は宴会を開いてくれてありがとうな。猛獲なんかは宴がないと暴れてたかもしれないし」
「いえいえ! むしろ客将なのに料理の準備までお願いしちゃってすみません。でも刀月さんの料理を食べたいと思ってたので……止めませんでした!」
もう完全に裏がない、完璧に朗らかな笑顔で……こいつ……
「なかなかすごいこと言うな、おい」
「とってもおいしいです!」
「そうかいそうかい」
確かに客将の俺に料理の用意を任せるべきではない……毒殺しようと思えば出来た……のだが、その辺は信用してくれていると言うことだろう。
それに将だけでなく、この場にはいない兵達の食事も俺が用意を手伝っている。
呉の将に呉の兵士。
これらも一緒くたに食べるのだから毒を盛れないとはいえ、それでも用意させるのはなかなか肝が据わるというか……なかなか選ばないであろう選択である。
ただ俺の料理は噂でも知れ渡っているところもあり、俺が料理を作るのを完全に却下するのは難しいのだろう。
こちらとしては別に作ること自体何ら抵抗がないのでどうでも良いのだが。
「と、刀月しゃま! た、楽しんでましゅか!?」
「楽しんでるけど……何故そんなに慌てている?」
「はわわ、噛んじゃいました」
そんなに俺って怖い?
諸葛亮が寄ってきたのはいいのだが、何故かがちがちに固まっている。
そんなに怖いのだろうかと思ったが、こいつの性格なのは何となくわかっているので別段特に何もしない。
少ししゃべったことで落ち着いたのか……一度咳払いをしてからこちらに向き直った。
「それにしても刀月さんには驚かされてばかりです。まさかこんなに早く南蛮の問題が解決するなんて思ってませんでした。本当に助かりました」
あの有名な諸葛亮に褒められるのは俺としても嬉しいことなのだが……相手がどう見ても幼い子供なので、内心複雑なことは複雑だった。
「お役に立てたなら何よりだ」
「実は最初、星さんが早馬で報告に来たときはびっくりして冗談かと思っちゃいました。まさかたったの一日で南蛮が平定できるなんて、とても思えなくて」
「全くだ。私も正直自分で見ていて信じられなかった」
話題をかっさられた事で少し不満があるようだが、それでも特に不満を言わずに和服もどきが話題に入ってくる。
おそらく勝負自体はいつでも良いと考えてのことだろう。
実際まだ蜀にいるのだからあちらとしてはチャンスがあるわけだ。
まぁその時考えれば良いか……
こちらも面倒事を増やしたくないのでなるべくなら避けたいのだが……恐らく絶対に無理だとは思うので、とりあえず対処については状況に至ったときに考えればいいと、思考を放棄する。
命に関わることならばそれは完全に怠惰であり悪手だが、全く問題ないので余計な思考は疲れるので放棄するに限る。
「まぁ正直に言うと……俺も一日で平定できるとは思ってなかった……」
確かに……相手が獣というか子供というか、言うなればちょろかったのは事実だが、色々と信じられないのも無理はない。
そして口にした通り、俺自身も驚いていたのだから他の連中からしたら驚くのは当然だろう。
だが、驚きこそすれ良い報告ではあるので、結果としては問題ないだろう。
本気でぶつかっていればどちらも被害は大きく出ていたのは間違いない。
また討って出ようにも水の問題もあるため、非常に長引いていた。
そして兵糧についても気候のせいで駄目になるのが早かったはずだ。
長引けば長引くほど、色んなところに影を落としていくのは間違いないので……早めに解決できたのは喜ばしいことだ。
偽善なのは間違いないが、俺が行ったのは非常に大きいと言えただろう。
「本当に。私も一番間近で見させてもらっていたけど、噂以上に出鱈目だったから、見ていて面白かったわ」
人が集まったのを見越してか、妖艶寡婦までこちらにやってくる。
砦では呉の人間故に、自由勝手にやりたい放題するわけにも行かない。
そのため俺の移動にも耐える平も連れ回したが……獣妖女が妖艶寡婦に懐いたため、母親に甘えるかのようによく妖艶寡婦を指名していたのだ。
南蛮の対応をしなくてよくなったので妖艶寡婦としても暇が出来て、よく連れ出されていた。
そのため蜀の将の中でもっとも俺の出鱈目さを見ているのは妖艶寡婦になっている。
だが、あれだけ俺のそばで俺の出鱈目さを見てもあまり態度を変えないのが……俺としては少し新鮮だった。
「恋も、とーげつはすごいって、おもう」
もしゃもしゃと……人よりもゆっくり食べている様子なのに何故か他の連中よりも食べている謎の存在、入れ墨娘が口にほおばっていた飯を飲み込んでからゆる~い感じでそんなことを言ってくる。
ある意味でこいつも子供のような存在だが、あまり騒がないでくれるから俺としてはありがたかった。
というかどんどん人が集まってくるんだけど……
俺の周りが囲まれてきて居心地が悪い。
だが話題の種が俺である以上、逃げるわけにも行かないので仕方なく話をするのだが……正直に言って居心地が非常に悪い。
いや、不快って意味ではないんだが……
集まられると……ほぼ唯一の男参加者として非常に居づらい。
ただでさえ肌色面積がおかしいのだこいつらは。
「そうなのです! 刀月様はすごいのです! 色んな事を知ってるし、料理だっておいしいのです! 何よりお猫様に貢ぎ物を差し上げなくても好かれるなんて……羨ましいのです!」
最後の方、少し暗い感情が漏れてたぞ~尾行娘
行く先々の動物に好かれ、何よりも猫に好かれているのが、無類の猫好きの尾行娘としては羨ましいのだろう。
こいつ自身も猫に嫌われるような奴ではないのだが、あまりにも猫を神格化しすぎていて逆に舐められているのかもしれない。
俺は老山の力がある故に好かれやすくなっているというか、俺が圧をかけたり殺気を振りまかない限りは自然と寄ってくる奴が多い。
まぁ大地そのものみたいなものだしな……
相当な猫好きなこいつからしたら無条件で寄ってくるのは羨ましいのだろう。
別段俺は動物については可も不可もない感じなので、その辺はどうでもよかった。
「そうです! 刀月様の出鱈目さはこんなものじゃないです! 刀月様は遠くの海まで一人で漁に出かけられることもあるのです!」
「おい、呂蒙。余計なことをいわんでよろしい」
もっとも俺が出鱈目なことを知っている……というかおそらく能力のことなんかも少し勘付いている……呂蒙もなんか変に対抗してそんなことを言ってくるが、漁の話はして欲しくなかった。
漁と呂蒙を背負子で背負っての行商は、完全に能力を使用しての行動だからだ。
あまり知られたいことではない。
直接的な事を言ってはいないが突っ込まれたら面倒なことはわかりきっている。
それに俺を持ち上げるような雰囲気と話題が正直むずがゆくて……俺は強引に話題を変えた。
「というか宴ならこんなところに固まってないで飯食って騒げよ」
「あ、刀月さん、照れてるんですか?」
「なれてないことはして欲しくないだけだ劉備。むずがゆいからやめてくれ」
俺が滅多に見せない姿を見せているので、全員が俺を見ている感じだった。
目立つのはなれているが、こんな事になるのは今までなかったので、むずがゆくて仕方なかった。
「ふむ。それならどうだ刀月殿? 一手交えるのはいかがだ?」
あ、こいつ、話題変えたけど戻しやがった……
好戦的な笑みを浮かべて、和服もどきが俺にそんなことを言ってくる。
俺としては面倒でしかない。
宴も始まってそこそこ経過している。
酔って来ているのかもしれない。
とりあえず俺はすっぱりと断った。
「面倒だからやだ」
「む? 二度も振られるとさすがに悲しいですな」
大袈裟に肩をすくめながらそんなことを言ってくる。
その仕草が無駄に可笑しかったのか、酒の力もあって皆が陽気に笑っている。
一応話題を斬ってくれた形か?
勝負したかったことは本当だろう。
趙雲といえば武芸も秀でていたはずだ。
というか確かかなり強い部類に入った気がする。
それを考えれば戦いたいという気持ちは嘘ではないのだろう。
俺としても久しぶりに戦いたいという気持ちがあるのは嘘ではない。
対人戦闘の勘が鈍っていることもあって、恐らく俺としても悪い話ではないのだ。
だが……今戦えば、俺自身全力を出せないことに対して、もっと鬱憤が溜まってしまう気がするのだ。
何せ得物が何一つあつかえないのだ。
好敵手とは到底言えないが、それでも稽古相手としてはそこそこ良い相手がいるというのに。
ねじり金棒でも戦えなくはないのだが、これはあくまでも修行のために鍛えた得物だ。
あまり全力を出しているとは思えない。
武器としては相当強いが。
どうにか……どれか抜けるとありがたいのだが……
恐らくあらゆる意味でもっとも強いのは夜月で間違いない。
だがそれも当然のように封印されている。
つい先日、俺が気力を使いすぎて悟ったというか思考に至った……刀に依存しているかも知れないということ。
そういう意味では夜月は間違いなくもっとも依存している。
この世界では刀が不要であるとわかっているが……それでも刀を抜けないのはストレスなのは間違いなかった。
そして何よりも……いざというときの最強の得物がないのは本当に怖いのだ。
……どうなるか
黒幕がいる。
そしてその黒幕は明らかに俺に敵対している。
相手がこちらを殺すつもりでかかってきているのに、こちらは得物がないのだ。
おそらく得物なしでも殺すことは出来るだろうが……それは違うと思えた。
殺さずに相手を屈服させるというか、それで勝てということなのか?
未だ刀が抜けなくなった理由がわからない。
さらに言えば、蜀の武将の中には……絶対に戦わなければいけない奴もいる。
果てさて……どうしたものか……
考えることも、やることもあるというのに……なかなかうまくいかないことに溜息を吐くしかなかった。
なかなか進まぬ
赤壁もあるというのにw
がんばりまーすw