荒野に轟くねじり金棒の凪払い(仮)   作:刀馬鹿

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いろいろつっこみどころはあるが、可能な限りリアルに書いてるつもりです

え? 刃夜がもはやリアルからは程遠いって?

そのとおりなんだが、そこはスルーしてくれ!

そんな心の広い方のみ読んでくれ!

ほかの方も読んでも問題ないけど、誹謗中傷はお控えください!






村と出会いと繁栄

東に食い物に困らない村がある

 

刀月を見た人間たちは、口々にそう話した。

衣服こそそれなりにぼろかったが、物々交換で持ってくる食物はどれも珍しい上に量も多い。

また貴重な塩は要求すればするだけ持ってくる。

食べたこともない魚に、干し肉等々……正直に言ってあまりにもおかしな食物だった。

そして何よりも……本人が全く身体的に問題ないことだった。

しっかりとした体。

今のこの時代に、やせ細ることなく健全な肉体を持っていることは、軍に所属している人間くらいだ。

だが男はただただ食物を持って行商にくるだけ。

明らかに軍の人間ではなかった。

最初こそいぶかしんでいたが物々交換に来ているため、出稼ぎと判断した人間……商人は大勢いた。

故に最初こそ買い叩こうとしていた商人達だった。

だが……

 

「それだと取引にならんからいいや」

 

買い叩こうとするのを正確に見抜き、男は何も気にせず別のところに売りに出していた。

困っているから買ってやる……そう思い儲けようとしてた商人から見れば拍子抜けするほどあっさりしていた。

村全体でそれを行うと何も気にせず村を出て、別の村へと向かったという。

しばらくしたらまた来て今度はもっとすごい物を売りに来た。

 

蜂蜜だ。

 

しかも一度ならず何度も蜂蜜を持ってきたのだ。

この時代、蜂蜜というのは大変貴重なのだ。

今度は適正に取引しようと持ちかけるが……

 

「やだ」

 

の一言でばっさりと切り捨てられる。

商人の面目丸つぶれだった。

故に何度か懲らしめてやろうと強い奴らを雇って脅したが軽くあしらわれ、身につけさせた得物に握らせた小銭、さらに衣服も全部はぎ取られた。

何度か尾行しようとしても、いつの間にか姿を消している。

だが東の方に向かっているのはわかっていた。

何せ魚をとったのが海であると、本人が言っていたのだから。

そして当然塩も海でなければ作れない事は商人たちもわかっていた。

商人だけでなく、村や町の人々も。

故に村が襲われて、運がいいのか、悪いのか……生き残った者達は自然と東を目指したのだ。

 

生きていけると……信じて。

 

 

 

 

 

 

……面倒なことになった

 

それが俺の心からの正直な気持ちだった。

尾行されるへまなどするわけもなく、また距離もかなり離れていた。

同じ村にはなるべく期間を空けてから行くようにした。

売るときも海という単語こそ口にしたが、それでも具体的な俺の拠点の位置は伝えていない。

当然漁法なんかは伝える訳もなく、教えてもいなかった。

 

教えたところで出来るわけないし、禁止漁法

 

俺もこの時代を舐めていたということだろう。

もしくは人々を舐めていたと言ってもいい。

 

そして何より……本当の乱世というものをわかっていなかった。

 

黄巾党が闊歩する時代。

争いや略奪などが当たり前の時代なのだ。

襲われた村々で生き残りがいることもある。

そして身寄りが亡くなった者や、何もなくなってしまった人は、壊れかけの心でただ生きることが出来るかもしれないという……あまりにもか細い糸に望みを見いだしてしまうのだ。

 

希望の糸が切れてしまったとしても、動かなければただ死ぬだけなのだから……

 

何も残されてないのなら、わずかな望みに賭けてみてしまう。

 

何もなく、何もしなければ、死ぬだけなのだから。

 

最初は少人数でまだそれなりに余裕がある連中だった。

何とか馬車を走らせて、俺が開拓した村にたどり着いてきた連中。

仕方なく保護し、食料を与えて治療も行った。

まだ何とか生命力があったので俺の気功術でどうにかなったのだ。

当然そいつらも働かせる事になった。

小屋が足りなくなったので俺はやむを得ず新たな小屋を建築。

また材木が足りなくなったので、再度森を伐採し新たに開墾を行い、何でも作れるように更地も増やした。

抜根したときに周囲の土を掘り起こして、霞皮の護りの力を使って根を腐食させるのも忘れない。

 

そこからは……それの繰り返しだった。

 

何とかたどり着いてきた人々。

老若男女様々だった。

中には辿り着き、最後に飯を少しだけ食べて息を引き取った奴もいた。

俺はそいつらを丁重に葬り……火葬して骨を海に流してやった。

墓を作ることも考えたが……申し訳なかったが墓を作る余裕はなかったのだ。

丁寧に葬ったことを感謝されたが……俺としては内心複雑だった。

 

なるほど……確かにこれなら素人娘が立ち上がろうとしたのもわかるな……

 

ただただ生きていたかっただけだったのだ。

だが力もなく、また奪ってでも生きたいと思うこともなく……ただ奪われた事と重税を呪って死んでいくしかなかった弱者達。

この世界に来てそれなりに時間が経過していたが……よもやこれほどひどいとは思っていなかった。

 

乱世がこれほどとはな……

 

三国志は大して詳しくないが、世界中どこに行っても歴史を見れば、ひどい時代がない国などないのだ。

だから知識としては知っていた。

だがまさか異世界とはいえ、実際に時代をさかのぼって乱世の時代を経験することになるとは、想像もしていなかった。

 

いや……それが当たり前なんだろうが……

 

自分のあまりにも、事実は小説よりも奇なりな事態に内心で失笑しつつも……俺はやむなく逃げ延びてきた人々の面倒も見ていた。

さすがに小屋をそれぞれ建てることは出来なかったので、大きな家をいくつか造ってそこに住まわせた。

長屋がもっとも感覚的に近いだろう。

何人か治療が必要な奴もいたが……栄養失調が主だったので俺の知識でもどうにか対処できた。

動けない奴らは仕方ないのでそのまま休ませ、家族や連れ添ってきた連中などに代わりに労働をさせた。

重傷者は見捨てられると思っていたらしく、家族の連中なんかから見捨てないでほしいと懇願された。

 

俺はいつからそんな非道な人間になったんだ?

 

別段聖人君子を気取るつもりはないが、それでも悪逆非道になった覚えもない。

当然見捨てることもせず治療等を行い、回復させた。

もちろん回復したやつは無理しない程度に働かせた。

幸い知識人や職人もいたので、そいつらの知恵を借りつつ何とか凌いでいた。

結果として、最初は俺一人で、しばらくしたら四人で暮らしていた廃村を利用した拠点は……小規模な村へと変貌していた。

食料については穀物こそそこまで余裕はなかったが、魚だけはいくらでもとれたので食料そのものは困ることがなかった。

野菜も少々不安だったが、それも何とか切り詰めること、そして俺が方々走り回ることでで、ぎりぎり空腹を満たすだけでなく、栄養面でもどうにか出来ていた。

 

欠乏症にかかっていた子もいたから……少々不安だったが

 

 

 

欠乏症

タンパク質・エネルギー栄養失調と、微量栄養素栄養失調(人体で合成が困難な栄養素であるビタミンやアミノ酸の欠乏)の二つに大別される栄養失調の事

 

 

 

全ての作業をやってきた人間全てに手伝わせて何とかまかなっていた。

しかし俺の小屋にある貯蓄……主に干物や塩などの、地下冷蔵庫に保存してある食料等……も徐々に減っていっていた。

減るのを防ぐのは難しかったが、その分俺があほほど働いて、何とかイーブンにしていた。

貯蔵庫も三人野郎がやってきてすぐにいくつか追加したことも功を奏したのだろう。

またやむなく漁船も大型化し、生け簀も船に作成した。

たまに賊集団が襲ってきたが……それは俺が皆に気づかれる前につぶした。

そしてつぶした賊も受け入れざるを得ず……労働をさせた。

一度懲らしめても、賊の中にはまだ悪さをしようとした愚か者がいたので、そいつは問答無用で折檻した。

具体的には食料をちょろまかして逃げたので、ある程度逃げたところで追いかけて捕まえて身ぐるみを全て……文字通りすっぽんぽん……剥ぎ、荒野に放置する。

何とか命からがら村に戻ってきて許しを請うてきたが、俺は甘ったれた根性を叩きのめすために裸のまま首を掴んで海を走って……海の上を走ったように見せかけて風雲の羽衣で浮いている……ぎりぎり泳いで帰ってこれる距離まで沖に出ると海に捨ててくる。

何とか泳いで帰ってきたそいつを、俺は気力を分け与えて放置した。

反撃しようにも精も根も尽き果てているので、何も出来ずにぶっ倒れるのである。

そして次の日……起きてきて本気で許しを請うてきたので、飯を減らすことで許してやった。

たまに俺を殺しにくる馬鹿もいたので……そいつはひたすら何もせず攻撃を気壁で防いで、息切れしたところを平手打ちする。

よろけたら平手打ち、平手打ち、平手打ち、平手打ち……反省して許しを請うてもひたすら本当に心が折れるまで、平手打ちを繰り返した。

ほとんどいぢめである。

本気で許しを請うてきたら……飯抜きで一晩縄で木にくくりつけて放置した。

他の折檻方法として、上記のやり方が面倒だったときは、逆らってきた愚か者を気力と魔力で思いっきり天高くぶん投げる。

感覚だが、だいたい二百メートルほどの高さ……高層ビル50階ほどの高さ……まで投げて、地面に激突する寸前に風翔の力や紅炎の力を用いて激突死を阻止する。

それを何度か繰り返した。

これらの折檻があまりにも恐ろしかったようで効果は抜群だった。

 

中には上でしょんべん漏らす奴もいたからな……

 

その場合は風翔の力で遙か彼方へと水滴を飛ばす。

このように……労働に差し支えない程度にいたぶるのは実に大変だった。

普段であれば調子に乗って殺しに来たやつなど、問答無用で返り討ちにするのだが労働力を減らすのは避けたかった。

放逐することも考えたのだが、放逐しても途中で別の賊に襲われてくたばるかもしれないし、遠くに行って再度賊になるかもしれない等々……放逐したらどうなるかわかったものではない。

 

恐怖による統治をするつもりはないが……それでも俺を殺せば全てが手にはいるという風潮はどうにかしないと、村としての機能が成り立たなくなる

 

あまりやりたくはなかったが、ある程度恐怖で抑えつけるのも必要だろう。

能力を使うと変にあがめられる可能性があるので、人前での能力はほとんど使用しなかった。

 

おかしい……どうしてこうなったんだ?

 

そもそもにして……俺は自分の生活拠点を「村」にしたかった訳ではない。

だが……やむを得ないだろう。

 

 

 

さすがに……本気の命乞いを見て放り出すようなことは、俺には出来なかった。

 

 

 

そうしてどんどん規模が増えていった。

 

そんなあわただしい日々を送っていると、時は流れていき……俺がこの廃村を見つけて開拓してから、すでに一年ほどの月日が流れようとしていた。

 

 

 

 

 

 

最近の俺のお仕事はまず、誰よりも早く起きてさっさと漁に出ることだ。

能力を使ってるのを見られるわけにもいかないのもあったが、仕事が多いため時間的に余裕が無く、夜が明けるよりも前に沖に出る必要があったからだ。

 

まぁすぐにいけるから楽でいいが……

 

沖に出て禁止漁法で大量の魚を仕入れて、いくつかは俺の漁師飯として腹に収める。

戻ると砂浜に建築したでかい家屋の中の生け簀に、本日の魚を入れておく。

これがほかの連中の仕事になる。

またそれとは別に寄ってきた鳥なども締めておいて血抜きを行う。

それらの作業を行っていると、他の連中も起き出すので、俺は作業が一段落すると小屋を出て広場へと向かう。

 

「刀月さん、おはようございます!」

「おう、おはよう」

「刀月さん、畑の収穫がそろそろ出来そうです」

「わかった。無理をするなよ」

「刀月さん、私の息子が少し体調を崩して……」

「わかった。朝礼の後見に行こう」

 

起きてきた連中に次々に挨拶されたので俺はそれに返事を行いつつ……集合広場へ向かっていた。

集合広場は文字通り広場で、俺が最初に開墾した畑よりも内陸側にある。

というよりも最初の俺の小屋以外は、開墾した森の中に作っていた。

三人野郎の小屋、松坂と神戸の家畜小屋に他の家畜たちの小屋も、全ての木材を一度解体してある程度区画整理した場所へと立て直していた。

元々俺が最初に住み始めた建物、俺の専用倉庫、魚の生け簀の小屋以外のほとんどの施設は、立て直して移設しており、俺の小屋の周囲にはほとんど人がいないように区画整理を行っている。

 

組木故の利点だな……

 

そのため俺はすでに早起きで作業を行っている畑や、家畜の放牧地などを突っ切って広場へと向かう。

集合広場にはすでに百人前後の規模まで膨らんだこの村の連中全員が、集まれるだけの広さがある。

そこに屋根だけの小屋を造って、複数の椅子と机を用意した。

俺が座る椅子だけは背もたれも作って少し豪華な作り……といってもすごい簡素な木材椅子だが……にしている。

俺が座る椅子の対面側には……すでに担当長が席について俺の到着を待っていた。

そして俺が座る席のすぐそばには、二人の男と一人の少女が立っており、俺の姿を見て頭を下げた。

 

「親分、おはようございます」

「おはようございます! 親分!」

「おう、助、格。おはよう」

 

助と格は俺がつけたあだ名だ。

三人野郎の次に流れ着いてきたのが助の一家だった。

助は商人で文字の読み書きが出来る存在で、俺の補佐をお願いしていた。

格は助の護衛として雇われていた者で、助とは旧知の間柄らしい。

俺自身、力は化け物じみていて、知識もそれなりだが……それでもこの世界の常識には疎いため、商人の助はうってつけの存在だった。

格は元護衛と言うこともあってそれなりの強さを持っていた……といっても片側ポニーには遠く及ばない位の力量だったが……ので、村全体の警護と警備を任せていた。

防衛隊は俺が直々にしごいているので結構な強さを誇っている。

最初こそ助がその知識とかを使って悪さしないか警戒していたが、命を救われたことで俺に忠誠を誓っているようで、悪さをすることはなかった。

ちなみに二人の愛称の由来は、水戸黄門の助さん格さんだ。

そしてもう一人……

 

「呂蒙もおはよう」

「お、おはようございます、刀月様!」

 

緊張しながら、そして若干おどおどしながら俺と挨拶を交わしたのは、呂蒙だった。

その目はきつく細められていたが、目が悪いことが原因であることはすでに知っていた。

片眼鏡がどうやら合ってないようだ。

 

……この時代に眼鏡ってもうあったのかね?

 

もうわからんからその辺は考えないことにした。

名を呂蒙、字は子明で、真名は亞莎。

助の娘で、非常に優秀な子だった。

商人の家で生まれたこともあるのだろうが、幼い身であるにも関わらずすでに父親の助の補佐をしている事で、優秀なのがわかる。

また、どうやら女の子と言うことで身を守るために武術も仕込まれているようで、それなりに強いのがわかった。

しかしその格好が……

 

もうなんつーか……目に毒だなぁ……

 

そして何故か、この世界のそれなりに裕福な女の子は、実にきわどい格好をするのが普通らしく……胸元は開き、肩も露出、足の付け根が見えるチャイナ服を身に纏っている。

何故かアンバランスというか……肌の露出のバランスをとるためか、逆に手は完全に隠れており、足下まで垂れそうな長い袖を身につけていた。

どうやら暗器使いらしく、長い袖に隠しているらしい。

俺も若い男なので欲情しないわけではない。

かといって性欲に負けて襲うと言うことはないのだが……目に毒なのは変わりなかった。

最初は人見知りでずいぶん警戒されていた。

これでも慣れた方だが、まだ緊張は抜けきっていないようだ。

 

「みんなもおはよう」

「「「「おはようございます!」」」」

 

正確な時間がわからないこの時代だが、週に一度……明け方すぐに朝礼を行うことを義務づけていた。

俺は村にそれぞれの分野の担当長を任命し、必ず報告をさせていた。

 

「では各人、報告を頼む」

「「「「はい親分!」」」」

 

すでに百人前後の人が集まっているのだ。

村長が必要になったら俺がなるのは必然と言えるだろう。

何故呼び名が親分なのかというと……三人野郎が俺をそう呼んでいたからそうなった。

 

「まず畜産担当」

「はいなんだな。畜産は順調だな。増えた牛や馬なんかはきちんと親分にみてもらったから問題ないんだな。子牛も順調に育ってるんだな。乳もとれているので、親分の家の前に運んで置くんだな」

「頼む。桶とかは不足してないか?」

「大丈夫なんだな。糞も親分に言われた通りまとめて土と混ぜておいてあるんだな」

「わかった。後で俺が様子を見に行く」

 

堆肥を作るのにはそれなりに日数がかかるが、早期に腐らせるのは俺が出来る。

故に俺がさっさと堆肥を作って肥料を多くする事で作物を大きくさせる。

これでどうにかしていた。

 

小手先でいつまでごまかせるか謎だが……

 

「後、番犬と猫に特に異常はみられないんだな」

「わかった。異常があったら教えてくれ」

 

犬は文字通り番犬。

猫はネズミ駆除に役に立つ。

特にネズミについては疫病の元にもなりかねないので、猫を飼うのは重要だった。

犬も猫も、迷い込んできたり、俺がいろいろ採取している際に拾ってきた。

その世話をお願いしていたのだ。

そのおかげか、村の連中には犬も猫もなついており、また村の連中もきちんと仕事をしてくれるので、かわいがっていた。

いくら魚の余った部位などを上げているとは、食料を犬や猫に上げられるのは、この村がそれなりに豊かな証拠と言えるだろう。

 

「次、作物担当」

「ういっす。収穫は順調っす。親分の堆肥のおかげで作物が大きく育って皆喜んでるっす。また道具がいくつか足りなくなってきたので、親分に追加の作成を願いするっす。これが数の帳簿っす」

 

チビが渡してきた木簡には、鍬、掘棒(シャベル)とかかれた下に、「正」の字で数を確認できるようにしていた。

この時代、文字の読み書きが出来る者は少ないので仕方なかった。

その意味合いもあって、俺は必ず報告をさせていた。

 

「わかった。近日中に仕上げておこう」

「あと、一班の連の息子が体調不良だそうです」

「連の息子もか? わかった、それも見に行こう」

 

男女別で言えば、幼少時は男の方が虚弱だ。

栄養が十分にとれないこの時代では、それがより顕著だった。

子供が死んでしまえば、何とか生き残った大人達の生きる意味がなくなってしまうので、俺は可能な限り子供を死なせたくはなかった。

 

後はまぁ……俺の苦い経験もあるが……

 

まだ幼い故に虚弱だが、それでも生きるための気力は、子供と言うこともあり成長しているので、栄養をきちんと摂取して、俺の気功術で何とか健康を保っていた。

 

「後、蕎麦の生産はどうなっている?」

「特段問題なく育ってるっす」

 

これはかなり重要な事項であり、俺は必ず報告させていた。

蕎麦。

それは主食になりうる食物であり、かつ貧しい土地でも育つ植物だ。

これも俺が冬木で仕入れておいた食材であった。

蕎麦も当然品種改良されており、この時代の蕎麦よりも植物として強く、安定して育っていた。

蕎麦はこの村の生命線に近い存在だ。

まだ一度しか収穫出来ていないが、それでも交易だけではまかなえない食料をなんとかまかなっていた。

 

「報告は以上っす」

「次、加工担当」

 

加工部門は発酵食品や保存食などの担当だ。

俺が一番力を入れている担当であり、そこには三人野郎のヒゲを担当長にしていた。

 

「はい親分!」

 

俺がもっとも力を入れているのはわかっているようで、ヒゲは元気よく返事をして、嬉々としながら仕事をしている。

調味料の一つとして、魚醤はすでに完成させており、それの量産体制と、塩の生産を一手に担わせている。

また俺は大豆の制作……これも冬木で仕入れている……にも着手していた。

大豆があれば日本料理に欠かせない味噌と醤油が制作可能だ。

どちらも作り方は知っているので、冬木で仕入れた大豆がこの三国志の大陸で育つのかが賭けだったが……何とか育っていたので助かった。

 

食品改良故の強さかな……

 

現代の農作物というのは品種改良された人類の叡智の結晶の一つだ。

栄養価が高く、おいしく生産も容易……といっても昔に比べればという前提はつくが……なので、非常に助かっていた。

品種改良はそれこそ長い年月をかけて作られてきたもので、何とかこの大地でも育ってくれたことに、心から先人達に感謝したものだった。

もちろんだめになった食物もあったが、それでもジャガイモも無事に育ったのは大きかった。

植物性タンパク質としてはこれほど優秀な食材はない。

何よりもうまい。

大豆にジャガイモが育ってくれたのは本当に助かった。

 

後は米の生育がうまくいくといいのだが……

 

まだ一年も経っていないため、稲は育てている段階で、稲刈りまで終えていない。

俺の知識とこの世界で稲作に携わっていた奴が流れてきたので、そいつの知恵も借りて栽培を行っている。

当然品種改良されていない米なので、俺が求める米ではないだろうが、それでも米が手に入ればいくらでも用途はある。

品種改良された食品に比べれば味が落ちる……とまでは言わないが、俺が心から求める味ではないだろう。

だがそれはそれで、この世界の食材と俺が持ち込んで栽培が出来ている作物で、新たな料理を作るのは、正直楽しみだった。

この世界に来て食事を何度か食べたが……あまり納得できる味がなかった。

 

まぁ妙手娘のところでしかまともな料理って食ってないのだが……

 

妙手娘……公孫賛は実に名君だった言うのが、こうして村を統治することになって俺は実にしみじみと理解した。

その一つが料理で、この時代にあれだけの料理を作れるということは、政治が優れている証拠だろう。

街……つまり市場が盛んでなければ、食材が手に入らないからだ。

俺も何とか頑張っているが……いかんせんこの村には余裕がない。

何とか生きていけるだけの食料を確保しているが、種類が少ないのだ。

もう少し食材を増やして料理の事情をどうにかしたいと言うのが本音だった。

 

まぁそれでも餌付けはうまくいっているのだが……

 

俺の知識を総動員して、たまにみんなが食べたこともない料理を振る舞うことで、村人達を喜ばせていた。

質素ながらも素材がうまいので、非常にありがたがられていた。

この食べたこともないというのが重要で、大量の干物を食えている理由も俺のおかげなので、反乱防止にも一役買っていた。

 

平行世界だからいいとは思うが……タイムパラドックス的な意味で大丈夫かね?

 

料理や調味料についてはそう思わなくもないが、それでも俺は自身の食事情を優先した。

大豆醤油については仮に栽培がうまくいったとしても、魚醤よりも生産量が圧倒的に少ないので、味噌、醤油はほとんど俺専用の調味料となるだろう。

また蜂蜜もこの村の特産品として俺が密かに集めていた。

 

蜂蜜は貴重だった……

 

食物的にも、物々交換の素材としてもだ。

実際、塩よりもかなり高値で、蜂蜜は取引された。

蜂蜜が現代の形……巣箱などに巣を作らせてその蜂蜜を採取する方式……になったのは近代のはず。

つまり……物々交換でこれを使わない手はなかったのだ。

村から遙か遠くにある森とかにも俺は一瞬でいけるので、巣箱を作って至る所の各所に設置したのだ。

そして定期的に観察に向かい、ある程度量が手には入ったら採取。

俺は気壁があるので蜂に刺されないので採取は簡単だった。

遠心分離器なんかは俺が自らの家屋につくって誰にも知られないようにしている。

 

初期の頃は蜂蜜にずいぶん助けられたなぁ……

 

定期的に蜂蜜を仕入れられるのは相当貴重と言えた。

逆を言えば蜂蜜が手に入らなかったらやばかったのだ。

黄巾党が闊歩しているので、どこに行ってもあまり余裕がある村や街がないのだ。

そうなるとかなり利益が高い品物を持って行かなければ取引してくれない。

そこで蜂蜜を採取して少々安めに売り出して、何とか生活必需品を入手していたのだ。

定期的に売りに出しているので噂になっているかもしれないが、まぁそこは致し方ないと割り切るしかないだろう。

特産品として売りに出しているが……密かに蜂蜜酒も造って俺が一人で飲んでたりもしたので……

 

まぁ独占ですね……

 

しかし蜂蜜は食材としても貴重で優秀だ。

また万が一の薬にもなるので、俺がほぼ独占していた。

また蜂蜜捜索ついでに山葡萄を入手して、ワインの制作も行っていた。

ブドウには果皮に酵母が付着しているので……発酵さえうまくいけば別段作ること自体は難しくないのだ。

故に、これも俺がちまちまとためており……熟成させている。

これも当然地下の貯蔵庫に保管しており、ワインについても俺が独占……といってもまだ俺自身飲んでもいない……している。

かといって蜂蜜にブドウも100%完全な独占はしておらず、たまに料理や菓子を振る舞っているので、不平不満は今のところ出ていなかった。

そしてもう一つの特産品。

それは……

 

植物油。

 

である。

主に菜種油を生成している。

これも品種改良された現代の叡智の結晶の一つだ。

まだ文明が発達していない世界等に飛ばされた際に危惧したのは、食料品もそうだが油もその一つだった。

基本的に明かりがなければ人は活動することが出来ない。

そのため、文明が発達していない頃は基本的に裕福な領主や城主などの存在をのぞいて、庶民は基本的に日の出とともに働き、日没とともに寝るという生活を送っていた。

明かりとして利用されたのは油だったが、古く日本では鰯の脂を加工した油を明かりとしたが、臭いがあるため基本的に好まれなかったのだ。

それが一変したのは江戸時代。

文明の発達により菜種油の大量生成が可能となったため、植物油が庶民にも入手しやすくなったのだ。

そのため、江戸時代以降は夜にも活動できるようになったという。

 

まぁ俺に明かりというのは必要ないのだが……

 

元々夜目が利く上に、紫炎の力もあるので明かりには困らない。

では何故油を入手することにこだわったのかと言えば、当然

 

食用油

 

が必要だったからである。

揚げ物は大概の物をおいしく食べることが出来る調理法だ。

また金属の手入れ等に油があったほうが便利である。

そのため、俺は菜種油も栽培を行っていた。

といってもまだ一度しか収穫が出来ていないので、やはり食用油としてしか使用できず、村人達は基本的に日の出、日没の生活を行ってもらっている。

つまりこれも基本的に俺が独占している物だった。

 

「わかった。次、建築担当」

 

と、次々に俺は担当統括をさせている担当長の報告を聞いてある程度指示を出す。

わからないところは助にも助力を請うて、何とか体裁を整えていた。

 

畜産(牛、馬、鶏等の世話。人や家畜の糞処理を行って堆肥作り。番犬、番猫?の世話)

作物(農作物全般だが、俺の知識が必要な大豆等の部門は俺も関わっている)

加工(醤油、味噌等の加工食品。魚醤や塩、油の作成)

建築(家や小屋の建築、柵の維持補修、道具の手入れ等。また公衆浴場の定期的手入れ)

開墾(土木工事全般に、森の開拓に木材加工に薪制作。野草や山菜食料の捜索)

保存(俺がとってきた魚や狩猟で得たジビエの解体と保存食作業。もっぱら干物作り)

物産(衣服や布団、網、桶や簑(昔のカッパ)等の制作。主に職人に任せている)

防衛(読んで字のごとく)

 

この八担当に分かれて作業を行わせていた。

それの総監督として俺はこの村にいる感じになってしまっている。

組織図で言えば

 

俺→三人野郎、助と格に呂蒙→担当長→村人達

 

となっている。

 

「報告だけは必ずしろ。自分で判断してもいいがその際は責任を持ってやるように。へましても助力でどうにか出来たらどうにかしてやる。後怪我しないように」

「「「「はい!」」」」

「ただし、加工担当。お前だけは独断を許さない。何かあったら必ず俺を呼ぶように」

「わかってます、親分!」

「後、常々言ってるが、白い格好の変な奴が見たらすぐに作業を中断して俺を呼んで己の安全を優先しろ。漁に出てたら迷わず俺の家の前の鉄棒をぶったたけ」

 

鉄棒というのは本当にただの鉄棒だが、俺の気が込められている棒であり、非常にもろく鍛えたので叩くだけで形状が変化する。

鉄棒の形状が変化すると呪術が発動して、俺に棒が壊れたことを知らせる仕組みだ。

 

念のためだがな……

 

「では解散。今週もよろしく」

「「「「よろしくお願いします!」」」」

 

挨拶を終えた後、担当長が自分たちの担当へと散っていった。

それが終わると今度は俺と助と呂蒙が椅子に座り……会議を始める。

 

「特別事項は?」

「特段ありませんが……そろそろ麦が切れそうです。また衣服もぼろくなってきた者も多いです」

「主食がなくなるのはまずいな。服も技術があっても材料がなくては作れないのは道理だしな。仕入れが必要だな」

「まだ季節的に問題ないとは思いますが、不安を持っている者もいます。そのため……親分にはまた買い出しに行っていただけると」

「わかった。もともと買い出しの予定だったしな。呂蒙、買い出しの品をしたためた木簡は出来てるか?」

「はい、刀月様!」

 

助と話をしつつ、俺は呂蒙にリストを要求した。

俺の言葉に呂蒙は遅れることなくリストを差し出してくれた。

俺は一度それを開いて確認し……問題ないと判断した。

 

「さすがだな呂蒙」

「そ、そんなことないです。父様に比べたらまだまだです」

「謙遜するな」

「あ、ありがとうございます」

 

褒められて嬉しかったのか、呂蒙が赤くなった頬を袖で隠していた。

人見知りで最初は俺のことも怖がっていたが、少しは信頼してくれたようで何よりだった。

そうして報告だけでは判断できない事を確認するために、一通り村を見て回って様子を確認し、そして体調を崩した連中の容態を確認、気功術で治療を行った。

体調を崩したやつは幸い子供だけだった。

子供は気功術ですぐに直ることが多かく、すぐに状況確認を終えた。

 

「さて、では俺は出かけてくる。この前俺が教えた相場の情報から、どこに売りに行くのが一番都合が良さそうだ?」

 

俺は呂蒙を教育したいという助のお願いもあって、会議小屋の壁に掛けてある地図を見ながら、呂蒙にそう問いかけた。

まだ一人で色々とやっていたときに、俺は自分なりに近辺の村や街の場所を書き込んだ手製の地図を作成していた。

気配や実際に見た感じからの村や街の規模、人数、住民の構成、男女比等を書き込んだ木製の地図だ。

俺に助けられ、回復した後に助がその地図を見て、ずいぶんと驚いていた。

商人として生きていた助から見ても、かなりの精度の地図だったようだ。

 

「はい。この時期だとここと……この村に食料が不足する時期です。食料ではなく、資材での物々交換であれば、あちらとしてもそれほど損にならないはずです。また情報についてはいつも通り領主様の村と、ほかの村や街の数カ所で仕入れてきていただけると助かります」

 

この村がこうして何とか持っているのは助だけじゃなく、呂蒙のおかげでもあったのだ。

俺が交易に向かう際、呂蒙が自分なりにもっとも取引が公平……もしくは利益が出る村や街を検討し、俺に教えてくれたのだ。

そのおかげで俺一人でやっていた時よりも利益が向上していた。

向上することで村人が飢える事なく生活できているのは、実に助かることだった。

この世界の常識がないのもそうだが、俺としても統治などしたこともないので、呂蒙のひらめきや知識にかなり助けられていた。

呂蒙の計算のために、交易に行った際に俺はその村や街の人々や、必要に応じて近隣の村々に話を聞いて情報収集を行い、呂蒙に報告していた。

その情報を元に、呂蒙がどこがもっとも利益を得ることが出来るか教えてもらうのが、最近の通例だった。

 

「それがみんなのためなら問題ないさ。もっと堂々と指示を出してくれていいぞ」

「!? そ、そん――」

「いろんな面で俺に勝てないと思っているだろうが……少なくとも知識面ではどう足掻いても俺は呂蒙には勝てないぞ? もっと命令してくれていいんだぞ」

 

最後の方はからかいながら伝えると、顔を赤くしながら少しふてくされてしまった。

さすがにからかいすぎたと少し反省するが……それでも素直に負の感情をぶつけてくれるのは、俺としては嬉しかった。

しばらく指示や確認事項を話し合い、俺は自らの小屋に赴いて荷造りを始めた。

まず新たに作成した台車……鍛造鉄製……に今回売りに出す品物を積み込む。

次に二宮金次郎と言われても不思議ではない巨大な背嚢を背負う。

荷物は干物に塩、山菜に蜂蜜を使った焼き菓子……クッキーである……に、ほか諸々。

俺のへそくりとも言える蜂蜜を売りに出す。

そしてチーズも今回売りに出す。

 

チーズ。

 

それは乳製品より作られる食材。

栄養価も高く、何よりうまい。

牛乳をナチュラルチーズに加工するには、レンネットと呼ばれる酵素が必要だ。

そのレンネットは、子牛の胃より抽出出来るのだが、子牛を殺すことは難しい……労働力に牛乳生産等々……ので、ナチュラルチーズを作るのは難しかった。

雌は乳牛。

雄牛は育てて労働力と、最後には食物として考えているが、それでも子牛のうちに殺すのは難しかった。

そのため俺が作っているのはカッテージチーズだ。

カッテージチーズはレンネットではなく、牛乳とレモンで作ることが可能だ。

蜂蜜採取、山葡萄探索の際に、ほかの果物も採取していたのだ。

果物はこの時代の高級品だ。

採取してでかい街に行ったときなどに売っているのだ。

そうして採取している際、俺が知る蜜柑に似た果物があったので、試しにとって食べたことがあった。

しかしそれはとても俺が知る蜜柑ではなかった。

ものごっつ酸っぱかったのである。

蜜柑も品種改良を重ねた結果、種がない品種や甘い果実となったので、酸っぱいのはある意味で当然といえた。

ぱっと見た感じ蜜柑ではあったが、その原種といっていい食物だったのである。

そこで重要なのが

 

酸っぱい

 

ということ。

この酸っぱさが、レモンに似た風味だったので、俺は試しに牛乳に混ぜたのだ。

そしたら運良く、カッテージチーズが出来たのだ。

 

蜂蜜、ワイン、チーズ等々。

俺の地下室には実にいくつものへそくりがあった。

助と呂蒙にはきちんと知略で働いてもらうために、俺の地下室にある秘密の食材もある程度……俺専用の食材ではなく、売りに出す食材のみ……話していた。

当然話をするだけではなく、普段の知略のご褒美もかねて何度か試食させている。

この時代の人間の口に合うのかも確認するためだ。

試食の結果、かなり高額で取引できると助と呂蒙は判断した。

故に助と呂蒙は今回売りに行く蜂蜜やチーズ等を、俺が定期的に採取&加工していることを知っている数少ない人物だった。

 

「では行ってくる」

「お気をつけください、親分」

「行ってらっしゃいませ!」

 

ほかのみんなはすでに作業に入っているので、会議を行っていた助と呂蒙に見送られて、俺は全速力で台車を引いて村を出た。

 

「……相変わらず、すごい人だ」

「……なんであんな大荷物で、あんな早さで走られるのかわかりますか? 父様」

「私に聞かれてもわからんよ」

 

そんな二人の言葉が遙か後方より聞こえてきた。

まさか二人も風翔の力を用いて盗み聞きしているとは思うまい。

 

……何度も出てるから大丈夫とわかってはいるのだが……不安に思うのは仕方ないか

 

すでに何度も、こんな形……俺が呂蒙の指示に従って近隣や遠方の村や街に出ること……で俺は行商に出ている。

俺が遠方に行ってもその日の内に帰ってくるので悪さをしようにも出来ないだろうが……少々心配するのは致し方ないと信じたい。

 

ここまで大人数と密接に関わり合うって言うのは、初めてだしなぁ……

 

モンスターワールドでは村人とは関わっていたが、当然長ではなかった。

冬木でもただの一般市民だ。

誰かを統治したりまとめ上げるなどしたことがない。

また俺が作っている物がこの時代の人間からしたらあまりに魅力的な食材だ。

悪さをしようと考える者も出てきておかしくない。

実際何度か俺の小屋を夜陰に紛れて物色しようとした愚かな村人がいたが……そいつらはとっつかまえて折檻しておいた。

 

余裕が出来れば欲をかく……それが人間というものだ……

 

ほかの人間の愚かな行為を戒めるためにも、俺は翌日朝になったら折檻する奴らに俺を襲わせて……そのことごとくを防ぎ、最後には天高く空に投げてスカイダイビングを経験させた。

二、三度ほどやったらさすがに俺の小屋に突撃する者はいなくなった。

 

統治って……大変だなぁ……

 

恐怖政治をしないように努力はするが、それでも統治する知識もないので、最後は力業になってしまう。

それを防ぐ意味合いでも、助と呂蒙の助けは本当にありがたかった。

 

っと……この辺でいいかな?

 

しばらく走って荒野のただ中に出ると、俺は周囲に気配がないことを確認して……一度走るのをやめた。

そして新造した台車に、荷物が完全に固定されているか再度確認を行い……その台車を俺は持ち上げた。

 

「さて、修行の時間だ」

 

俺は誰に聞かせるでもないが言葉を発して、意識を切り替えた。

台車を頭上に持ち上げたまま俺は再度気力と魔力で走り出し……ある程度加速したところで俺は全力で飛び上がった。

放物線を描いて飛んでいく俺。

そしてすぐに……風雲の羽衣を使用する。

 

風雲の羽衣

 

これは荒天神龍を討伐して得た能力。

浮遊能力だ。

台車で運ぶとどうしても荷物が暴れてしまい、品質や破損などの損害を被る可能性がある。

故に俺はその対策として、宙に浮くことで荷物が暴れるのを防いでいた。

気力と魔力で飛び上がり、風雲の羽衣を使用して緩やかに下降していく。

ハンググライダーのように滑空しているのだ。

これのおかげで荷物が痛むことなく、また俺自身も魔力の制御等の修行となるので、一石二鳥だった。

また速度を出したいときは電磁投射の応用で……一度荷物を完全に固定して、地上で斜め上空に向かって己自身を投射する等の方法も用いていた。

しかしその場合一度に持てる荷物の量が減ってしまうので、その辺は今後の課題だ。

そして今行っている滑空運搬の加速の方法は……風翔の力を用いた追い風加速か、電磁の力を用いて遙か前方の空中に磁力を発生させて、その磁力に引っ張られるように己の体にも磁力を発生させる、の二つが主だ。

このような能力しようのおかげで、俺は大量の食料をわずか一時間足らずで大都市に行くことも可能だったので、商売が成り立っていたのだ。

そして本日俺が行くのはすでに何度か商売を行っている……江都だ。

 

 

 

 

 

 

この江都で何度か商売を行ったことが、俺の今後の運命を決定づけるとは、俺自身つゆほども思っていなかった。

 

 

 

 

 

 

商いを終えてかさばった荷物が減った……今回は主食の買い出しで小麦は袋に入っており、衣服も袋に詰められる……ので、俺は電磁投射もどきで帰還した。

といってもすぐに帰還するのではなく、帰還する際の村々に噂話の収集や、途中の森等で食物採取などを行いながらだが。

そして江都での情報やほかの村で得た情報を、働いて疲れた現場連中が眠りにつく中、俺に助、呂蒙は俺が会議のために作った会議小屋に集まっていた。

さすがに月明かりだけでは暗いため、松明……といっても俺が紫炎の力を使って火を灯しているので、薪はほとんど減らない……の明かりで会議を行っていた。

 

「江都での小麦一袋の相場は五銖銭で50枚と行ったところだな。衣服については原材料の仕入れが難しくなったようで少し値上がりしていた。果実に蜂蜜は大層高く売れたが、ほかに販売しているのがあまりいないから相場がわからん」

「蜂蜜と果物については致し方ありませんな。やはり小麦がまだ値上がりしたままですね。物々交換ではどうしても、相場よりも安くされてしまいます。一度まとめて貨幣を仕入れたいところですが……」

「この村ではあまり貨幣の意味がないのがネック――いや、頭の痛いところだな」

「そうですね。この村では貨幣があっても近隣に村がないため買い物も出来ませんし」

 

助と呂蒙に報告しながら、今後のために会議を行う。

呂蒙は細い目をさらに細めて、言葉を思考を巡らせながら言葉を発してくれている。

目が悪いのに夜の会議に参加させるのは心苦しかったが、呂蒙の知識や戦略はすでに助を超え始めているので、俺としても助としても、この会議には参加してほしかった。

本人も嫌がっておらず、真剣になってこの村の事を考えてくれるので、苦ではないようだが、少々申し訳なかった。

それなりに裕福なこの村だが、当然課題はまだ多く残されていた。

その内の一つが……娯楽である。

 

娯楽が極端に少ないのはどうにかしたいところだが……まだ余裕がなぁ……

 

子供も労働力として貴重であり、大人も娯楽に浸れるほどの余裕はない。

俺自身もものすごく働いており、さらに俺自身は修行が娯楽にもなっているので、俺としては問題ないが、誰もが労働ばかりでは飽きてしまう。

 

木で作れる遊具なんかはある程度作っているが……

 

木製の独楽、剣玉なんかがそれに当たる。

またこの時代、撃壌(げきじょう)なる遊びがはやっていたので、それをやるための下駄も作った。

 

 

 

撃壌(げきじょう)

下駄を地面にさして、30~40歩ほど離れたところからもう片方の下駄を手で投げて飛ばして地面にさした下駄に当てる遊技。

 

現実世界でも三国志時代にはやった遊技です by作者

 

 

 

まぁ当面は我慢してもらうしかないのだが……

 

しかしこの村も普通の村よりも裕福だが……まだ娯楽をするほど余裕はない。

今のところ食えるだけでも皆の心が満たされているので、とりあえず今後の課題として考える事にする。

果物に蜂蜜はほかに売る者がそんなにいないので相場がわからなかった。

これは分かりきっていたことなのでそれはかまない。

だが、蜂蜜を買いに来る奴については、俺としては少し気になることがあった。

二人の意見が聞きたいため、俺はそれも報告する。

 

「それと蜂蜜についてだが……江都や、江都とは言わないまでもそれなりに発達している街で商売をする際、必ず軍人とおぼしき奴が買いに来るんだ。何か思い当たる節はあるか?」

「軍人とおぼしき奴というのは、どういう事ですか?」

「普通の衣服で買いに来ているんだ。そこそこ鍛えられた人間ということはすぐにわかったし、それに体躯もしっかりしている。きちんと食事が出来ている証拠だ。そんな人間がわざわざ平民を装って買いに来るのが不思議でならない」

 

最初は鎧で買いに来たこともあったが、最近では何故か商人や平民と偽ったり、もしくは平民にわざわざ小銭を握らせて買ってくるやつもいた。

江都に入る際はきちんと通行税も払っているし、場所代も払っている。

また別段怪しい物を売ってもいないのに、軍人に目をつけられた理由がわからなかった。

 

「……それは恐らく孫策様の軍人だと思います」

「孫策?」

 

呂蒙の口から三国志の有名人が出てきて、俺は首をかしげた。

孫策。

俺の知識では呉の親玉で武にも長けているのだが、毒で殺されたとしか記憶にない。

そのため正直よくわかっていないというのが本音だった。

 

「孫策様は袁術様と同盟を結んでいて、袁術様の好物が蜂蜜と聞いたことがあります」

「つまり進物ってことか?」

「恐らく……。ここからは、わ、私の見解ですので、間違っているかもしれませんが……」

「間違っていてもいい。呂蒙の考えを聞かせてほしい」

 

俺は助と呂蒙を信頼している。

その思いを乗せて言葉を紡ぎ、まっすぐにそして真剣に呂蒙を見て、先を促した。

その信頼が少しは伝わったのだろう。

呂蒙は最初驚いたが、すぐに嬉しそうに顔を少し赤くしながら言葉をつむいだ。

 

「わかりました!」

 

商人として得ていた知識や自らの考えを述べる呂蒙。

要約すると孫策の親である孫堅がなくなった際に、この州を治めるように帝が任命したのが袁術という。

孫策は親が死んだことでごたごたしており、さらに言うなら帝の任命に逆らうことは出来ず、半ば袁術に吸収される形になったという。

そのため同盟と言いながらも、孫策は袁術に下手に出るしかない。

これを公で言うわけにはいかないので、くれぐれも秘密にするようにと……呂蒙に釘を刺された。

 

進物として蜂蜜を出して入れば……まぁそれなりに点数は稼げるわな

 

いろいろとどの時代に行っても大変な物は大変なのである。

そんな事を人ごとと思いつつ、俺は報告を続けて、二人の意見を聞いて議論を重ねていた。

 

 

 

こうしていくつか情報を俺が報告し、助と呂蒙の三人で話し合うのが、買い出しに行った日の夜の恒例だったのだが……今日は何故か途中から呂蒙の口数が少なくなった。

というよりも、何か決心しているというか、考えているというか……何か覚悟を決めているかのようなそんな雰囲気を醸し出している。

そんな様子を見て……俺は嫌な予感がした。

 

というか、なんか既視感あるなぁ……これ……

 

俺を救ってくれた、あの娘の姿によく似ていた。

そしてそれは……的中した。

 

「刀月様!」

「……なんだ呂蒙?」

 

 

 

「わ、私も……刀月様の行商に連れて行ってくれませんか!?」

 

 

 

予想通り……やっかいなことになったなぁおい

 

その呂蒙の言葉に、俺は内心で頭を抱えることしかできなかった。

 

 

 

 

 

 





まぁ・・・・・・便利だわこいつ

あ、ちなみにわかってるとは思いますが、呂蒙が商家の生まれってのはオリジナルというか、話の都合のために設定を変えてますのであしからず

ほかに後何人かをヒロインにする予定ですが・・・・・・まぁ刃夜だしw

外道の「-(マイナス)」の数がどうなるか、こうご期待w
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