Fate/Twilight 終末相剋決戦 ラグナロク 作:しんけ
タイトルについては自分の好きなゲームから使いました。
ーー場所は変わりヴァルハラ内とある廊下。
ブリュンヒルデ、オルトリンデはギルガメッシュに続くように後ろを歩いていた。ラグナロクの開催が決まり議事堂から神々が出て行く中ギルガメッシュがこの二人にただ付いて来いとそれだけ言い2人は目的地が分からぬままギルガメッシュに付いて歩いている状況である。
「あ、あの一体何処に向かってるのですか?」
オルトリンデが沈黙に耐えきれず質問する。
「なにおのずと分かる。それよりも…」
ギルガメッシュがこちらに何かを言おうと口を開いた。オルトリンデが緊張した顔でギルガメッシュを注視する。
「見たか神共のあの顔!ふははは‼︎全くもって傑作だ。ここまで傑作なのはイシュタルの阿呆めに臓物が炸裂した時以来よな」
「え?あの、その…」
オルトリンデは何て返したらいいかわからない。硬化のルーンで護られてたとはいえ九死に一生を得る状態だったのだ。自分からしたら神達の顔を見る余裕も無かったのだ。だがオルトリンデは真面目な性格な為正直に言うべきか悩んでいた。
「…フン其処は分からずとも合わせよたわけ。我の機嫌が良くなければ即引導を渡していたぞ?」
「は、はい!」
「…ギルガメッシュ王、何故あの様な事を?」
ギルガメッシュとオルトリンデの会話にブリュンヒルデがゆっくりギルガメッシュに質問をする。
「先程のか?所詮我の興が乗っただけのこと。それに我は神そのものが好かん、当然といえば当然であろう」
「ですが。その…」
ギルガメッシュの言葉にブリュンヒルデは口篭る、ギルガメッシュは何が言いたいのか察したのかブリュンヒルデを軽く一瞥し口を開く。
「暴君である我が人類の窮地を救う行動が不思議か?」
「…はい」
「別段不思議ではないだろう。我は人類の守護者として生まれたのだからな。この星の
あえて厳しく突き放すと言う守護者としてのありかた。
「…与太話はこの辺でいいだろう、そら着いたぞ」
「ここは…」
ギルガメッシュが立ち止まる。たどり着いた場所を見てオルトリンデが場所を知っているのか声を漏らす。そこはヴァルハラ中央部に位置し天井は無く神殿の様な作りをしている。ここは戦死者の間と言われる祭壇である。本来戦乙女であるワルキューレ達が勇士の魂、エインヘリャルと言われる者達を集め有事の際、主神オーディンの命により召喚する為の部屋。部屋の中心部にはエインヘリャルを召喚するための巨大な召喚陣が描かれている。
「貴様等の神話ではここに選定した魂を集め競わせ決戦の際に喚び出し戦わせるのであったな。おおかたこれを使いラグナロクに参戦させる気であったか?だがこれでは足りん。神を殺すには遠く及ばん、それは貴様も分かっていよう?」
「…はい、私達が誇る勇士達の魂、エインヘリャルでも各神話から選ばれた13柱の神達と戦うには余りにも力が離れ過ぎている…」
ギルガメッシュはヴァルハラに集う勇士では神を殺すには力不足だと否定する。このシステムを使いエインヘリャルを召喚しラグナロクに参戦する、北欧出身である者ならばそう考えるのが妥当だろう。しかしそれを真っ向から否定された。本来なら憤慨する所だろうがブリュンヒルデは分かっていた、いや戦乙女の長であるブリュンヒルデだから分かるのだろう。天界側は人類を完膚無きまで絶望に突き落としたい筈だ、そうなると選ばれるのは各神話が誇る主神か闘神を選び向かって来るだろう。北欧神話が誇る勇士の魂、確かに勇士の中には神に肉薄出来るであろう者もいる、だがそれはほんの一握り、一人二人いるかいないかである。だがそれでは決して各神話の最強クラスの神には太刀打ち出来ないと。ブリュンヒルデは顔を曇らせる。オルトリンデはまさか姉であるブリュンヒルデから否定的な発言が出るとは思わず声が上擦ってしまう。
「で、ではどうするのですか?エインヘリャル達でも神に勝てないとなるとこのままでは人類は負けて滅亡するしか!」
「確かにこのままでは到底神には勝てん。だが策はある、そうであろう戦乙女よ」
「はい、このエインヘリャルを召喚するシステムを使い直接『英霊の座』に繋げ英霊を喚び出します」
「英霊の座?」
聴き慣れぬ言葉にオルトリンデが聞き返す。
「英雄が死後、祀り上げられ精霊化したものを英霊と言い、その英霊がこの世法則から解き放たれ世界の外側にある場所。それを『英霊の座』と呼ぶ」
「私達の集めた勇士の魂とは何が違うのですか?」
「まるで違う。貴様らのは戦死し資格ある者の魂を拾い上げ有事の際に神の指示により召喚されるもの。だが英霊は違う“世界の危機”に際し『世界からの要望』により過去・現在・未来を問わずあらゆる時代に召喚されるもの、人類史そのものから喚び出される
「世界の要望から…‼︎」
ギルガメッシュの説明にオルトリンデはそのスケールの大きさにただ困惑する。説明を一通り終えたギルガメッシュがブリュンヒルデに視線を向ける。
「成る程な、貴様も座を使い召喚する気であった様だな。だが如何様にして座に繋げる?」
「私自身の核を触媒としてこのヴァルハラの大気中の真エーテルそしてこのエインヘリャルを召喚する為の召喚陣を持って英霊の座に強制的に繋げます。私は元は女神でもありました。女神の核ならば英霊を呼び出すには足りるはずですから」
「ほう、自らの核を触媒にか」
「そ、そんないけません!ブリュンヒルデお姉様が命を賭ける必要なんて…‼︎」
ブリュンヒルデは躊躇いも無く自身の命とも言える核を触媒に捧げると謳うのだ。これにはオルトリンデもブリュンヒルデのしようとする事に声を荒らげる。
オルトリンデにはブリュンヒルデが何故命を賭してまで人類を守ろうとするか分からない。それは彼女達ワルキューレは長姉のブリュンヒルデを除き“個”というものが無い。彼女達はそれぞれの個体名もあり、外見・性格・言動も一人一人異なるが彼女達はそれぞれの別個体であるという事を断固として拒絶している。知識、認識を互いに同期しており異なる見解を持つということが原則としてあり得ないし、そのように設計されている。だから分からない。ブリュンヒルデの行動が、心が。
オルトリンデの言葉にブリュンヒルデは微笑み諭す様に語りかける。
「いいえ、あるのですよ。オルトリンデ。私は感情を知り個性を得た、それにより零落した。だけど私は一切後悔していません」
「嘘です‼︎お姉様は!ブリュンヒルデお姉様は最後に…!あんな結末になって後悔が無いだなんて…!」
「オルトリンデ、私のかわいい妹。確かに私の最後は怨念と復讐に囚われ身を滅ぼした。けれど私はあの人に出会い、あの人と一緒にいられて幸福だった。心から幸せだったのです。…だからこれは、私の我儘。あの人との出会いを思い出を歴史から世界から消させない為の我儘。そのためなら私は魂も身体も捧げる事が出来る」
「お、お姉様…で、でも」
「いつか、いつか必ず貴女達にも分かる日が来る、愛を知る幸福を。それは故障や不調では決して無い。個を得るとはそういう事なのですよ」
「ーーっ‼︎」
ブリュンヒルデの言葉にオルトリンデは何も言えなくなる。他の同期体にどうすればいいのか共有しようとするが纏まらない、何体かは同期を切断している始末だ。オリトルンデは胸から込み上げる引っかかりを処理出来ずにいた。そんなオルトリンデを見てブリュンヒルデはーークスリと笑う。…この子ならきっと..。そしてブリュンヒルデはオルトリンデに自分が消えてから召喚されるであろう英霊達にーー神に対抗する為の
「不十分だな」
「…え?」
ーーギルガメッシュが唐突に口を挟む。
…今何と言った?ブリュンヒルデが聞き間違いかと思いギルガメッシュを見やる。だがギルガメッシュは当然のようにあっさりと言い放つ。
「不十分だと言ったのだ。貴様の行う英霊召喚では
「格落ち…?」
「そうだ、貴様が行う英霊召喚ではただ座に繋げ召喚してもその英霊の側面として切り出したコピーにすぎん。それでは万に一つも勝つ事は出来ん」
「…そんな。ではどうすれば…」
「たわけ、話をよく聴いておけ。言ったであろう。
ギルガメッシュの言葉にブリュンヒルデは疑問を浮かべる。そんなブリュンヒルデに対しギルガメッシュは間髪入れずに答える。
「『抑止力』。これを媒体とし本来召喚される英霊達その
抑止力。別名カウンターガーディアン。それは星、人類の危機に対し破滅の要因を排除して今ある世界を存続させようとする見えない力。集合的無意識によって生まれた世界の最終安全装置である。
「抑止力!いえ、しかし抑止力は…」
「そう本来ならば抑止力は作動せん、
「ーー‼︎人類の滅亡」
「勘付いたか、そうだ。人類の滅亡、これ程迄の抑止の発動条件に見合うものもなかろう」
ーーなんとギルガメッシュは神々が決定した人類の滅亡、これを抑止を発動させる為に利用すると言うのだ。
「人類存続を守り、霊長の世を救うための抑止からの召喚、決戦魔術、『降霊儀式・英霊召喚』により召喚されるサーヴァント。ーー名をグランド、冠位の器を持ちし英雄達の頂点。本来のグランドクラスの役目とは違うが人理そのものの危機だ、変わりは無かろう。先程貴様が行おうとし召喚されるサーヴァントを“個人に対する
「グランドクラス!…そんな存在を喚び出す事が出来るのですか?それに抑止力に繋ぐとなると…」
「無論喚び出さねばならん。無理矢理にでもな、『
ギルガメッシュの後方に金色の波紋が現れ何か杯の様な物がギルガメッシュの手の上に着地する。その杯から感じる膨大な魔力にブリュンヒルデは目を見開く。
「ーーそれは」
「聖杯、望みを叶える願望器その
「す、すごい!こんな物があるなんて…‼︎」
「当然だ。我を誰だと思っている、この世全て万物万象この我の物よ」
オルトリンデの素直な感想にギルガメッシュがドヤ顔をかましている中、ブリュンヒルデはその聖杯があれば召喚出来るか思考する、確かにこれなら可能性は…でもーーと
「…ギルガメッシュ王、その大杯を使い抑止力に繋ぐのはわかりましたが
「
「え」
オルトリンデの顔が固まる。やはりとブリュンヒルデが目を閉じる。そう抑止力これが一番の問題なのだ。そもそも抑止力は二種類に分類される、一つは人類の持つ破滅回避の祈りである「アラヤ」。そして
即ち相対するこの概念がある限り召喚は叶わないのだ。
…手詰まりか、空気が沈み込む中ーー
「なにを勝手に落胆している、
ーーギルガメッシュがさも当然のように告げる。だがそれでは矛盾しているのではないか?ブリュンヒルデがすかさず質問を投げ掛ける。
「しかしそれではガイアが召喚を阻止するのでは?」
「ああ、このまま召喚を行なえば星の抑止力ガイアが邪魔しよう。ーー
「ーー!」
「よいか!これより行う事、それは神との決別の戦い。神が否定した人の歴史、意思その価値を叫び人の時代を始めるものだ。それを星の意思すら突破出来ぬ程度で何が英雄か、それすら越え立ち上がる者こそ人の存続を賭けるに値する英雄であろう」
星の意思の妨害に負ける程度では人類の窮地を任せるには値しない。これから戦うのは星そのものである神なのだから。英雄ならば英雄であるならば目の前の尽くを乗り越え立ち上がらなければ到底この人理を救う事が出来ようか。ギルガメッシュの言葉に二人は唯息を飲む。
「これより決戦魔術、『降霊儀式・英霊召喚』を持って、人類最強の
「12騎?それでは1騎足りませんが…」
「当然だ。残りの一騎。それはこの我だ」
「‼︎、ギルガメッシュ王自ら!」
「言ったであろう興が乗ったと。本来ならばこれは人の戦い、王である我が出るまでもないが…ーー」
…ギルガメッシュは目を閉じる。記憶が蘇る。ただ一人の
「…相手は忌々しい神共だ。ならば話は別だ」
ーーギルガメッシュがそのまま召喚陣の前まで移動する。手に持っていた大杯を空中に放り投げる、すると大杯が空間に取り込まれ巨大な歪みが出来上がるではないか。更にその歪に連動する様に召喚陣が輝きはじめる。
「聞けい!人類史に刻まれし一騎当千、万夫不当の英霊達よ!我等の敵は神、世界そのもの。だが貴様らが真の英雄であるならば最強の名ここに証明してみせよ!我が名はギルガメッシュ。人類最古の王、英雄王ギルガメッシュである!」
ギルガメッシュの声に反応する様に召喚陣の輝きが増していく。
ーーだが突如何かがそれを押さえつけるように祭壇がいや空間そのものが振動し始めた。抑止力であるガイアが介入してきたのだ。歪みから止めどない程の魔力が雷のように暴発し祭壇の壁や床を融解させてゆく、空間の振動が大気を震わせる。さらに重力波が発生し周りを潰し粉砕させてゆく。
その光景は余りにも現実離れしている。これが、ガイア、星の抑止力。
ブリュンヒルデ達は先の神々に匹敵する重圧に何かをする術すらない…
ーー唯一人を除いては。
一人、ギルガメッシュは生物が生存出来ぬ現象が発生してる中一切の顔すら歪ませず眼前を睨みつけ召喚陣の前に依然と立ち続けているのだ。その姿は正に全ての英雄たちの王。
ーー英雄王がそこに居た。
そして英雄王は宣言する。新たな時代の始まりを。
「ーーそして我は宣言しよう。この戦いこそ神との真の決別の戦いであると!心せよ!これは貴様等にしか出来ぬ大偉業、神殺しの英雄譚にして人類史最大の英雄譚‼︎我が声は届いていよう‼︎さぁ 立ち上がり剣を翳せ!勝利の暁に輝き、その光で時代を繋ぐために!」
ガイアの力が極限まで強まっていく。星そのものが襲い掛かる。
ーーだが吹き荒れていた魔力、空気中の真エーテルが召喚陣に取り込こまれ召喚陣の輝きは最高潮にまで至り、そして凄まじいまでの魔力が眩い極光の束となり空高く天を越え宙すら穿たんとする柱が顕現する。
ーーその光は人理の終焉を否定するもの。世界に告げる叛逆にして凱旋の狼煙ーー
「抑止の輪より来れ天秤の護り手よ!」
ーーそれは表現するには信じ難い出来事だった。
ーー
これは比喩と言うことでは決してない。本当にヴァルハラ、いや地球そのものが余りの衝撃に揺らいだのだ。まるで星が傾いたと錯覚する程の衝撃。世界を揺るがす程の衝撃はすぐに治った…だが問題はそこではない。星そのものが揺動したのだ。そんなことがあり得るのかーー
ーー隕石衝突か?…違う。
ーー
光の柱が消え辺りには魔力による熱で周りが溶けた煙と衝撃による砂塵が漂っている。何が起こったかこちら側からは何も視認する事はできない。オルトリンデは先程の衝撃に体勢を支えられず尻餅を着いていた。一体何が?そう呟こうとして口を開こうとするーー
「是は人理を救う戦いである」
オルトリンデは耳を疑う。祭壇の中心部、召喚陣から声が聴こえてきたのだ。
声を出した者の姿を形はおろか影すら見る事は出来ない。だが一つだけ言える。
ーー
「人の歩み。遥かなる旅路。この輝かしい人類の航海図ーー人理。その運命の封が切れし刻ーー」
ーー神を斃すために、命の価値、未来を照らすため抑止力、星そのものすら跳ね除けてーー
「ーー我ら来たれり」
そう星を震撼せしモノそれは…ーー
◇◇◇◇
ーー時は少々遡りヴァルハラ、神の間
ヴァルハラの最上部に位置する神の間と言われる空間。ここは議事堂とは違い構造物は見当たらず唯巨大な円卓があるのみ。
この場所は創世以来一度も使われたことが無い、何故なら
だが今宵その空間への扉が開かれた。神々が一堂に介している。先程のヴァルハラ会議とは違い半神、神格された人間達を除き全世界の神話の神々、
人に行く末を託した神も、どちらに転ぼうが興味すらない神でさえここに集結している。本来ならば有り得ない事だがギリシャの伝令神であるヘルメスが世界中に伝えたのだ。ヘルメスが伝えたことは2つ。
ーー特別事項が可決された事。
ーーそしてどの神が神々の最強に相応しいか。
ーー
神々はヘルメスのこの言葉を聞きこうして集まった…
ーー誰がラグナロクに於いて神々の代表たる最強の神かを決めるために…
“どの神話の神が最強か?”そんな子供の考えた様な絵空事を神々が話し合う事は絶対に無い。何故か?どの神話の神も己と己が神話こそ至高であると疑わないからだ。もし仮に神話間でその様な話し合いをする事になれば全世界を巻き込んだ大戦争が起きるだろう。…しかし此れは、この光景はどういう風に説明すればいいのか…
なんと神々が集結し、ものの数分も経たずラグナロクに出場する神、13柱が決定したのだ。神々が手を抜いて決めたのか?ーーいやそれはあり得ない。半神とは言えどあれだけ啖呵を切られたのだ、目に物を、絶望を味あわせたい筈。協調性の欠片も無く自己顕示欲の塊である神がこうもこの水掛け論に近い話し合いを終わらせれたかーー
ーー答えは簡単。
…そんな異常としか言いようの無い存在が13柱も選出された。神々は薄っすらと笑みを浮かべる。
余りにも容赦の無い布陣にこれから
「この者達で異論は無いな?」
円卓の中央にて異論が無いか問うのは首。北欧神話に於いて主神オーディンの伯父にあたる巨人ーー名をミーミル。首を切られたがオーディンの力により首だけ生き返らせた知恵の神。そしてラグナロクにおける議長でもある。
ミーミルの問いはこの万物万象全ての神に問うもの。だが一切の反論は無い。先程述べた通り、この神達こそ世界最強なのだから…。
誰も異論が無い事を肯定と受け取ったラグナロクに選出された神々が口を開く。だが誰一人として拒否する事は無い…ある神は当然かの様に、またある神は考えた上で戦いに出る事を表明する。
「おう!全くねぇな!」
「ふふふ。いいわ!いいわぁ‼︎殺しましょう!殺戮しましょう!ウフフ!アハハハハ!」
「よかろう!我が全能を見せようぞ!」
「ええ、無いわ… 。…こうなっては仕方無いわね。…せめて全力で、全力で殺しまショウ」
「……‥」
「了承」
「此処に臨場する者は定まった。此れにて閉廷とする。残すは滅亡のみ…」
返答を聞きミーミルが言葉を残し空間から退去する。それに続くように神々が退去していく。そんな中ゼウスにシヴァが首を鳴らしながら近づいて来た。
「よぉ、じいさん」
「なんじゃシヴァ。それとじいさんでは無い、お主と対して変わらんわい」
「カカッ。悪りぃ、つい癖でな。…それよりよくあんなモン連れ出して来たな。
「アレは唯の巨大な概念の様なもの、自我が極端に薄いからな。それを言うならお主の
「ああ。ヴィシュヌ、ブラフマー。我等トリムルティ、…いや我等インド神話の総意によるものだ。何より本来ならアレは終焉に顕れ出でる者だ。この戦いで人間を滅亡させるなら尚更だ」
「ゼウス様!!」
「お?なんだ?」
「私は納得いきません!ゼウス様‼︎」
「…何じゃ?アレス」
ゼウスとシヴァの会話に割り込んで来たのは全身筋肉で覆われた偉丈夫。ギリシャ神話に於ける闘神ーー名をアレス。
「私はこのラグナロクの布陣に納得がいきません」
「…それはわしよりラグナロクを取り仕切るミーミルに言わんか、それとも何か?わしが出る事が不満か?」
ゼウスから殺意が圧となってアレスに襲いかかる。アレスは冷や汗を出し弁明する。
「い、いえ!ゼウス様の出陣については全く異論はありません!…私が気に食わないのは
「悪神?ああーー」
「ーーそれって俺の事かい?」
ゼウスが言い終わる前にまた一柱の神が会話に入り込んで来た。アレスは眉間に皺を寄せ殺気も隠さず睨みつける。
「貴様!」
「おお、そんなカッカすんなって。楽しそうにお話ししてるもんだから俺も混ぜてもらおうとしただけだぜ?仲良くしようぜー?なんてたって俺たちは
「ーーッ!貴様の様な屑と一緒にするな‼︎」
「おいおい手厳しいな。辛えなぁ、悪役ってのはさ。いいねぇ正義の神様は。お気楽で」
アレスが怒り胸ぐらを掴む。
「ッ‼︎ 殺す゛!……ア゛ぁ゛?」
「大丈夫か?顔色が悪いぜ?」
ぼたりと、何かが地面に落ちる音が耳に届く。音は一回では止まらず無数に聞こえ出す。
なんとアレスの目、口から赤黒い血の様な何かが止めどなく流れアレスの身体に付着していく。…まるで侵食するかの様。
「あ゛あ゛アアアアァァァァ゛‼︎◾️◾️◾️◾️◾️‼︎ぎざまァ゛…‼︎」
「おいおい俺に触れたあんたの自業自得だぜ?ほら、
「ぞまる!や、ヤめ゛r¿ ァァアaあア゛ぁあ゛ーー¿‼︎」
「ーー止めよ」
ーー瞬間、アレスの身体が縦に一閃された。アレスの身体が上下にずれ、次の瞬間には何事もなかったように身体がくっ付いていた。斬られたアレスは事切れたかの様に崩れ落ちる。だが先程までとは違いアレスの身体から止めどなく流れていた血の様な液体も無くなり顔色が良くなっている。息をしている事から死んではいないのだろう…。正に神業。そんな神業をしたのはゼウスでもシヴァでも無い。また一柱の神がやって来たのだ。その神は長い
「……」
「おぉ!流石日本の神様だ。助け合いとお祓いはお手の物ってな」
「…この場は
「なぁおいそりゃ無いぜ、俺はお喋りしてただけなんだけどなぁ」
「……」
「オーケー、嫌われ者は寂しく去りますよっと」
言葉と共にその神は部屋から退去する。退去するのを見届けたもう一柱の神も無言で立ち去った。この光景の一部始終を見ていたゼウスはため息を漏らす。
「はぁ…全く纏りの無い。この時位は普通に出来んのか」
「あー、無理だろ。俺等はそう言う存在だ。所詮身内以外にはこんなもんだろ」
「まぁそれはそうじゃがな。はぁ…」
「お、そうだ。忘れてた、ジィさんはどう思う?人間共はどうやって俺等に対抗する気かねぇ」
「だからジィさんでは無いと…ふむ、そうさな」
シヴァが思い出したのか急に話の話題を変える。それに対しゼウスも特に気にせず髭を撫でながら思考する。
「まぁ考えられるのは幾つかあるがの。最も妥当なのが北欧の勇士達の魂の召喚じゃろうなぁ」
「あぁ、エイ…エイなんちゃらだろ?」
「エインヘリャルじゃ、あれはワルキューレの専売特許だからのぅ。…のぅ?オーディン」
ゼウスが視線をずらし少し遠くを見やる。そこにはまだこの部屋に退去せず席に座り目を瞑り続けるオーディンが居た。ゼウスの声に反応して閉じていた目を開ける。
「…確かに。ワルキューレならば我が所有物を使おうとするだろう」
「へぇ、それはどれくらい楽しめる?俺。…いや神と戦えんのか?」
「いるにはいる。…が拮抗はすまい」
「まじか、そっちは神との差がしっかりしてんだな、こっちなんてやれ最強の僧侶とかやれ三界を単独で制覇する奴とかいるんだぜ?羨ましいなおい」
「肉薄出来る者は何人かはいた…が、ワルキューレ共が魂を回収せず消えていった」
「へぇ?そりゃまた何で?」
「…ワルキューレ共が感情を得て愛に狂い、殺すからだ。魂の回収役であるワルキューレが殺しては意味をなさん」
「お、おぉ。そりゃすげーな、色々と」
オーディンの言葉にシヴァが結構ガチ目に引いている。顔を引きつらせていたシヴァだがニヤリと、口角を上げる。
「だがまぁ、人類側は打つ手が無えって事だよな」
「そうなるのぉ」
「退屈だが。まぁ一方的な戦いも悪くねぇ。よっしゃ、いっちょ蹂りーーお?」
「なんじゃ?ーーいやこれは…」
神達は急にとてつもない力そして異常なまでの魔力を知覚した。ーーこの魔力量いやそれよりこの大気の震え、圧は何だ?まるで何かを抑え付ける様な…。ここまでの規模の現象となると主神か主神クラスのみだろう。だがこれは違う神の権能とは違う。主神の権能に匹敵する程の何か?思考していたゼウスが一つ思い当たりをつける。
(もしやこれは抑止力か?…いやしかし抑止が作動する事態は無い筈。それになんじゃ?何かを抑え込んでいる?…何かが召喚されるのを防いでいる?一体何を?抑止が作動する程の存在…ーーまさか!)
ゼウスの頭の中でギルガメッシュの姿が一瞬過ぎり線と線が繋がっていく。まさかと、顔を上げた瞬間ーー
「「「ーー‼︎」」」
ゼウス、シヴァ、オーディンの三神が身体が
ーー何かが降臨した。
抑止が介入し星を揺るがす存在…
(この気配…いや知っている?だがこれ程の存在の召喚。もしくは降霊。…だがどうやって…エインヘリャルではこうはなるまい、抑止力すら跳ね除ける…ーー!抑止力、アラヤか!アラヤを発動させおった。ならばこれは英霊の座からの直接召喚…成る程の。この懐かしい気配、
シヴァ、オーディンも同じ回答に行き着いたのだろう。
この主神にすら匹敵する神性、熱量そしてこの規格外の
忘れる訳がない。これ程の魂を持った者達を忘れる訳がない、我ら神が心底惚れ、その生を祝福した。ーーその流星の様な瞬きの生命を燃やし眩い光を放つその存在を…。
三神達は心から湧き上がる感情を抑えきれない。
自然と笑みが溢れる。この主神達の共通点、飛びっきりの戦好きそして英雄好きという事。そんな神がこの状況で笑わない訳がない、それはこのラグナロクに出場する他の神々も同じだろう。今頃笑っている筈だ。同じ戦闘狂だから。ゼウスは興奮し歓喜した様子で喋り始めた。
「素晴らしい!これぞ決戦に相応しい!これ程の興奮はいつぶりか!そうか貴様らは
◇◇◇◇
ーーヴァルハラ、戦死者の間。
「我ら来たれり」
ーーその言葉と共に辺りを漂っていた煙、砂塵が晴れる。
オルトリンデは目を見開く。ワルキューレは勇士の魂を測る事が出来る機能が付いている。いやその機能が無くても分かる、魂の規模が、桁が違う。ーーまるで恒星そのものが目の前にいるかの様。その規格外の存在が12人も、疑うまでも無い確信する。
ーー抑止を退ぞけ星をも震わせ、世界、いや人理の危機に参上した。例え神が相手であろうとも。
ーーそう彼等が彼等こそが…ーー。
「人理の命運を賭けた戦い。ならば此処に誓いを。我が武勇、誇りは人と共に。我ら人類史に刻まれ座にて眠る英霊達の頂点、代表として。そして人の繁栄、光輝く未来を願う先人として。神殺しの
ーーそう彼等こそが人類の最後の希望。
ギルガメッシュが目蓋を閉じる。思い出す…。懐かしい友との記憶。…そして降雨の中友が神の手によって無惨に土に帰っていく様が。
ーーエルキドゥ…。
ギルガメッシュが目を開き喚ばれた英雄達見渡し、告げる。
「よくぞ来た、などとは言わん。抑止を退けた程度ではな…。我らの敵それすなわち神、世界そのもの。その神共がこの星から人を排斥すると決めた。このままいけば人類は滅びよう。だが貴様らはこうして降臨した、相手を知ってなお滅びの運命を否定し戦い諍うと。ならば赦す。我と共に戦う栄誉、真に赦す!貴様らの全てを賭け神を斃し己が英雄譚にしてみせよ!その生き様を後の世に我ら英雄の栄光を伝える為に‼︎」
ーーそしてギルガメッシュは続ける。世界を森羅万象全てを巻き込んだ大いなる戦いの始まりを。
ギルガメッシュの言葉に神の間にてはしゃいでるゼウスも同様に喋りお互いの言葉が重なる。
「舞台は整った!神が世界を支配するか、それとも人類はこの世界を
「決めようではないか。
「答えを出す時が来た。神と人による最後の戦いーー」
「「ーー
ーーさぁ、究極の戦いが始まる。
因みにギルガメッシュについては単独顕界してるって事で…。
ブリュンヒルデ達に優しいのは神に造られた人形だからちょっと強く出れないみたいな感じです。