グレイが召喚されました。   作:アステカのキャスター

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 お久しぶりです。
 各戦いが雑な気もするが仕方ないと割り切った。話を進めていきます。今回の主役はジークくんです。では行こう!
 
 


負けるつもりは毛頭ないが、勝てる気はしないのもまた事実だ。

 

 

 大英雄アキレウス。

 その膂力は槍を振るっただけで大気を押し除け、地を踏みしめただけで大地を砕く。トロイア戦争に於いて、アキレウスはその力を奮い、アマゾネスの女王やヘクトールを打ち破った。

 

 そんな化け物と相対して勝てる見込みは多く見積もって三割と言った所だが……

 

 激しい連撃がもう二十分は続いている。

 ケイローンの援護が途絶えてしまう中、流石に疲労が増し、足が鈍くなってきた。

 

 

「っっぅおっ!?」

「どうしたぁ!動くが鈍いじゃねえか!」

「アッド!!」

 

 

 アキレウスの追撃をグレイが防ぐ。

 グレイがアッドの礼装を限定応用解除し、鎌から盾へ変化させ槍を受け流す。すかさずクイナは女神の槍を振るうが、右腕で防がれた。

 

 

「……っ!?ハアアッ!!」

「ぐっ!」

「きゃあ!?」

 

 

 盾の上から蹴り飛ばされ、クイナとグレイは後方に。

 アキレウスは防いだ右腕をジッと見つめる。アキレウスには『勇者の不凋花(アンドレアス・アマラントス)』と言う宝具により踵以外が不死である。そしてランクが低い攻撃は通らない筈なのだが、今アキレウスが防いだ右腕から僅かに()()()()()()

 

 

「……その槍、まさか神造兵器か?」

「バレたか、畜生……」

 

 

 クイナが持っているのは『煉愛の魔槍(ロマンシア)

 女神であるブリュンヒルデから亜種聖杯で願いを叶えてもらった故に授かったもの。神性には神性で対抗する事ができる為、黒の陣営ではケイローンかアサシンをぶつけるしかなかったのもある。

 

 

「『炎よ(アンサズ)!』」

「チッ……!」

 

 

 地面に仕込んでおいたルーンがアキレウスの足下で爆ぜる。しかしアキレウスは跳躍し、それを回避する。クイナは決戦が始まる前にこの森に罠やルーンをありったけ用意した。飛びナイフ、氷結、炎、毒、そして……

 

 

「んなっ!?」

「アサシン!」

「はいっ!」

 

 

 地面に刃がビッシリと詰まった原始的な落とし穴。

 アキレウスが着地した地面が崩れ剥き出しの刃が敷き詰められていた。アキレウスと戦う事を想定し、死角からの攻撃も地雷も落とし穴も全てが踵に向くように設定している。

 

 アキレウスは落とし穴に落ちる前に槍を突き立て落ちるのを回避する。しかし、叩き落とせれば踵を潰せる。グレイが間髪入れずにアッドを大鎚に形態変化させ、アキレウスに迫るが……

 

 

「ペーダソス!!」

「っ、グレイ下がれ!」

「っっ!?」

 

 

 アキレウスの幻獣がグレイを轢き殺さんとする勢いで突撃する。グレイはクイナの声に反応して、それを回避する。やっぱり、二対二の構図になってしまう以上、ペーダソスの幻獣達をどうにかしないとまともに隙を突けない。

 

 

 

「面倒な罠張りやがって。よっ、と」

「結構焦ったろ。脚を止める手段ならそこいらに散りばめたし、足を封じるには得策だろ?」

「ド正論だよ。確かに俺は踵潰されちまったら速度七割減だ。だが、英雄ってのはそんな弱点を容易に突かせねぇ。正論だし得策なのは認めよう。だが、たかが脚を封じた所でこの俺を下せると思うな」

 

 

 実を言えば七割。

 既に罠の殆どを使ってしまっている。そもそも不死性を持つアキレウスに効く罠をそれ程多く用意する事は出来なかった。飛びナイフは潰され、氷結や炎は効くはずが無く、毒も英雄に効く毒を用意するには量が少なかった。なので踵を潰せる先程の落とし穴が本命に近かった。

 

 もう一つ本命を用意しているが、駿足を捨てる代わりに警戒を強められた。残念ながらこの後は殆どの罠に引っ掛からないだろう。

 

 そして、一番の問題は駿足を潰した所でアキレウスに勝てる保証はどこにもない事。悔しいが負けるつもりはなくとも勝てる見込みも少ないのが今の現状なのだ。

 

 罠は残り三つ。

 その間にアキレウスを倒さなければ勝ち目がないという悲しい事実に背中を震わせる。

 

 だがそんな中……

 

 

「んっ?」

「な、んだこの魔力……まさか!?」

「アッド!第一段階、応用限定解除!!」

『いけんのかコレ!?畜生なんて扱いだよ全く!!』

 

 

 メキメキと木々を薙ぎ払うように迫り来る衝撃波。

 木々を消滅させ、大地すら抉り取るかのような魔力が迫る中、アキレウスは霊体化し、クイナはルーンで結界を張り、グレイはクイナを庇うようにアッドを盾にして防いでいた。

 

 

 

 ★★★

 

 

 時は二十分を遡る。 

 

 竜牙兵を一掃する黒のセイバー。

 ジークフリートは魔力の余波だけでそれを蹴散らし、一振りで大地を抉るほどの斬撃を放ち、目の前の最後の竜牙兵を一掃する。

 

 息切れなどは全くない。

 英雄であるジークフリートからすればウォーミングアップにも等しい軽い運動。

 

 そんな中で現れた日輪にも等しいサーヴァントが天から舞い降りる。

 

 

「約定を果たしに来たぞ。黒のセイバーよ」

「来ると思っていた……赤のランサー」

 

 

 一度闘い、もう既に言葉はいらない。

 ただ目の前の敵を全霊を持って屠るのみ。

 

 

 黒のセイバー(ジークフリート) VS 赤のランサー(カルナ)

 

 

 ★★★

 

 

 黒のランサーは竜牙兵全てを狩るために戦場へ、

 黒のアーチャー、ケイローンは各戦場のサポートとして森から狙い撃ちをしていた。そして、足止めにもならないが、空を浮かぶ空中要塞に矢を番え、放つ。

 

 しかし、空中に浮かぶ要塞を落とすには足りない。

 魔術によって防衛され、動力源となる部分を貫くには威力が足りない。

 

 

「やはり、一筋縄ではいきませんか」

 

 

 空中要塞からの洗礼が降り注ぐ。

 圧縮した魔術の光線が空から堕ちる。それだけで森は焼き尽くされ、アーチャーを追うように第二波、第三波と降り注ぐ熱線。

 

 

「出鱈目な……!?」

 

 

 あんな高出力の攻撃が無尽蔵に。

 本体を叩かねば恐らく堕ちる事はないだろう。黒のアーチャーは回避しながら空中要塞に乗り込む術を考えつつ、回避しながらも仲間の支援に弓を番えていた。

 

 

 ★★★

 

 

 黒のライダーであるアストルフォは赤のアサシンを狙い空中庭園までピポグリフで飛んだのだが、対魔力Aの上で魔術のダメージを食らい、地上まで落とされてしまった。

 

 そこで赤のセイバーと遭遇し、地上戦となってしまい、圧されている。黒のバーサーカーであるフランケンシュタインの攻撃も止められ、セイバーに斬り伏せられた。

 

 

 そんな中、現れたのは……

 

 

「なんで……!」

 

 

 ライダーが授けた剣でセイバーに立ち向かうジークの姿だった。

 

 

「なんで来たんだ!ボクは助けてもらうために、君を助けたんじゃない!」

「……確かに、俺はライダーの手助けにもなれない。そんな事はもう痛感している。けど、俺はライダーを死なせたくない」

「ボクはサーヴァントだ!」

「それでもだ!それでも、俺は死なせたくない。無力でも、勝てない相手でも、俺はこの命にかけて死なせたくない!」

 

 

 赤のセイバーはその言葉に少しだけ認めた。

 確かにこのホムンクルスは戦場に出て粋がるだけの馬鹿だ。命を投げ出し、無力に死ぬような雑魚に過ぎない。

 

 だが、それでも心からそう思っている。

 それでも死なせたくないその度胸だけで戦場に出れる奴は少ない。

 

 

「ジーク、だったか?その名は我が身に刻んでやる」

「ガッ……!」

 

 

 故に手を抜かなかった。

 ザシュ、とジークの胴体に赤き宝剣が突き刺さる。戦場に出れたその度胸は認めても勝てるかは別問題だ。鮮血を撒き散らし、地面へと倒れ伏せた。

 

 それを見たアストルフォは激昂し、セイバーに襲い掛かる。

 

 

「赤のセイバーァァァアアア!!!」

 

 

 だが、その激昂もセイバーに届かない。

 アストルフォの槍捌きによる猛攻もセイバーの剣技に吹き飛ばされ、落とされた傷がまだ響いている。

 

 アストルフォでは赤のセイバー(モードレッド)に勝てない。

 

 

「あん?なんだコレ……っっ!?」

 

 

 垂直に立つ黒のバーサーカーの宝具。

 そして、バーサーカー本人はセイバーの頭にしがみつき、剥き出しになった自分の機械の腕を首に巻き付けた。

 

 

「バーサーカー!?なんで……」

『退きなさいライダー。バーサーカーは自爆するつもりよ』

「なっ!?」

 

 

 バーサーカーを中心に雷が()()()()

 空から降る落雷とは訳が違う。それはまるで桜のようにバーサーカーの第二種永久機関とも呼べる魔力のエネルギーを全て生体電気に変え、暴発させる人造人間フランケンシュタインの出せる最後の手段。

 

 

「ガッ…アアアアアアアアアアッ––––!!?」

 

 

 その圧倒的帯電にしがみつかれたセイバーは苦痛の叫びをあげる。カウレスの令呪により、全リミッターの拘束は解除。その威力は対軍を超え、一時とはいえ圧倒的火力は対城にさえ届き得る。

 

 

「ワタシト……イッショニ…コイ!!」

 

 

 バーサーカーはその宝具を発動する。

 名を『磔刑の雷樹(ブラステッド・ツリー)』。雷電は聳え立つ大樹は赤のセイバーの肉体を崩壊させる程の高電圧。フランケンシュタインの最後の生体電気全てを爆発力に変えたそれは戦場に一つの花を散らした。

 

 

 

 ★★★

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うっ……ここは……」

 

 

 暗転していた意識が元に戻っていく。

 先程、赤のセイバーに身体を貫かれた筈なのに……生きている。

 

 気が付けばそこは黄昏と、芝生の上に居た。

 先程までは夜で、草木も生えない地の上に立っていたのに……

 

 

『––––ここは当方の記憶の欠片。我が愛と一緒に刻んだ我が宝である』

「!」

 

 

 声が聞こえた。

 振り返るとそこに居たのは人の形をした影だった。

 

 姿はハッキリ捉えられない。少なからず人であるという事は理解出来るが、それ以上は理解ができない存在だった。

 

 

『––––当方が座に帰す時に僅かながら聖杯に魔力が注がれた。その魔力を貴殿が飲んだのなら、この世界が見えるのも無理はない』

「貴方…は……」

『どうやら時間が少ないらしい。なので率直に回答を求める』

 

 

 揺らぐ影はジークにただ一つ問いかけた。

 

 

『––––貴殿はどうしたい』

「俺が……どうしたいか?」

『既に貴殿は欠片を受け取っている。当方望むなら我が旅路の記憶にて身に付けた剣の理を貴殿に授けよう。彼女の欠片と合わせれば、セイバーに迫る力を得られるだろう』

 

 

 既に欠片は託された。

 その力を使う事が出来れば、出力はサーヴァントに匹敵する。拙い剣技も、影の記憶があればセイバーと斬り結ぶ程の力を得られる。

 

 

『だが、それは有償の奇跡。使い続ければいずれソレは貴殿から全てを奪うだろう』

 

 

 都合の良い力などありはしない。

 恐らく、数回使っただけでも身体を蝕み、自分という存在を崩壊させてしまうだろう。

 

 

『それでも、貴殿は力を望むか』

 

 

 それでも影はジークに再度問う。

 ジークには過ぎた代物だ。それを受け取らなくとも恐らくは生きていける。ライダーを見捨て、逃げる事が出来ればジークは生き残れるだろう。

 

 しかし……

 

 

「……俺は、ホムンクルスだ。生きる意味もない消耗品に過ぎない」

 

 

 ジークはその道を否定する。

 自分はホムンクルスだ。元より死ぬはずだった未来から救われただけの幸運者に過ぎない。

 

 

「でも、彼が言ったんだ。願いは自分が進んだ道の先にあるものだと。歩いた道なんてまだ数える程度しかない。俺に願いなんて崇高な考えは持ち合わせていない」

 

 

 ジークはただ運が良かっただけだ。

 それだけで生き延びた。生かしてくれた人がいた。そんな人達がまさに死んでしまうかもしれない状況にいる。

 

 

「けど、俺はライダーに生きてほしい!理屈も歩いた道なんて関係ない!俺が()()()()()()()()!」

『………!』

「力を貸してほしい、俺はライダーを助けたい!それが俺の今の願いだから!!」

 

 

 ジークは願いを吼えた。  

 その願いに偽善はなく、穢れた思考も全くない。

 

 ただ、助けたい。

 その為に立ち上がり、力を求めた。

 

 そんなジークの願いに影は笑ってるような気がした。

 

 

 

『了承。ならば受け取るといい、我が身に刻んだその力を!』

 

 

 高らかにその答えに叫ぶように告げた。

 影は霧散し、ジークの中へと消えていった。

 

 流れ込んでいく。

 かつて竜を殺し、女神を愛し、そして殺されてしまった英雄の記憶がジークの中に流れ込んだ。

 

 

 その英雄の名は……

 

 

 

 ★★★

 

 

 

 バジジジッと、電流が流れる音が聞こえた。

 セイバーが虫の息であった死体に等しいホムンクルスから流れていた微弱な魔力。それが一瞬にして跳ね上がる。

 

 

「あっ……?」

 

 

 セイバーが無視できなくなるほどに膨れ上がった魔力に思わず視線を向ける。死に体だったホムンクルスが立ち上がっていた。土手っ腹を貫いた傷が修復されていくのを見て目を見開いた。

 

 

「腹の傷が……どうなってやがる」

 

 

 傷が塞がり、顔を上げセイバーを見据えた瞬間。

 ジークの身体が赤のセイバーの視界からブレた。

 

 

「なっ……オラァ!!」

 

 

 一瞬、捉えるのが遅れた。

 迫り来るジークを剣ごと弾き飛ばすが、ジークは受け身を取り自分の変化を実感する。先程の無謀で拙い剣技から一転して、歴戦の英雄の緊張感が張り詰める。ジークは剣を構えて赤のセイバーの前に立つ。

 

 

「………」

 

 

 鎧に僅かに傷が入った。

 それはジークの攻撃が僅かながら入った証拠である。ありえない。人の身で、ましてやホムンクルスの身でありながら、サーヴァントに匹敵する力を得るなんて……

 

 

「テメェ……何が起きやがった」

「自分でも、驚いている」

 

 

 赤のセイバーはジークを見据え、剣を向けながら問いかける。これほどの劇的な変化にセイバーは顔を顰める。

 

 ジークの瞳はホムンクルス特有の茶色から()()()()()()()()に変わっていた。

 

 

 




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