新サクラ大戦外伝〜改過自新の花の都〜   作:ふぁみゆ

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お待たせしました。
少しずつですが更新を始めていこうと思います。


第一話「発足!素人だらけの華撃団!?」壱

フランスが花の都巴里。その街はずれに不気味な声が響いた。

「われらの復活の時は来た。この地に眠る古の怨念よ新たな魔を宿し、再びその姿を現せ。」

その声にこたえるように、何もない空中に五つの炎が現れ、ゆらゆらと揺らめき始める。

「さあ、始めよう。かつての光は消えうせ、魔がこの地を覆いつくすのだ」

その声の主はその場から姿を消す。するとそれに合わせて五つの炎も、消えるのであった。

 

 

 

太正29年。帝都にて第三回華撃団大戦が開催。全国の華撃団が集う平和の祭典に世界は大きく湧いていた。その様子は世界中で中継されており、公共施設や大衆が集う場所のテレビやモニターには華撃団大戦の特集番組や中継番組が映し出されてた。フランスが花の都巴里、その駅でも同じように華撃団大戦・開会式の映像が映し出されていた。

そんな興奮のただなかにある巴里の駅に一人の青年がやってきた。青年の名は真神獅子之介。日本からの留学生としてやってきた士官学校の学生だ。

「ここが花の都巴里か、帝都とはまた違った華やかさのある街だな…。」

真神は巴里の空気をその肌で感じながら駅の出口へと歩いていく。目指すはホームステイ先であるライラック伯爵の邸宅。これからお世話になるお宅に挨拶に向かうためだ。モニターに映っている華撃団大戦の中継は気になるが、自分は遊びに来たわけではないと背筋を伸ばして足早に出口へと向かった。

その時、開会式の最中に降魔が乱入するという事件が発生していたのだがその時の真神は気付かないまま出てしまった。

 

 

バスを乗り継ぎ約5分、真神目的地へとたどり着いていた。ホームステイ先のライラック邸だ。ライラック邸は日本からの留学生の受け入れをしている邸宅だけあって、外から見てもわかるほどの大豪邸だった。

「話には聞いていたけど、本当に大きい家だな…。なんだか緊張してきたぞ。」

襟を正して、背筋を伸ばす。それから一つ深呼吸をして真神はチャイムを鳴らした。

しばらくしてから、扉が開き30台半ばの妙齢の美女がやってくる。

「はい、どちら様?」

その姿に一瞬息を飲む真神だが、すぐに姿勢を整え、啓礼。

「本日よりこちらでお世話になります、留学生の真神獅子之介であります!未熟者ですが、なにとぞよろしくお願いします!!」

こちらの気合いを相手も感じ取ったらしく、女性は少し目を見開いたあと、くすりと笑う。

「これはご丁寧にどうも。私はアカシア・ライラックよ。よろしくね坊や。」

「よろしくお願いしますマダム・ライラック。しかし、坊やというのはちょっと…。」

真神も日本男児だ。坊やという呼び方はかなり嫌らしい。だがマダムはおかしそうに笑う。

「あら、気に入らないのかい。へんなところ気にするんだね。まあ、そう思うならこれからの生活で男を見せてくれたら、考えさせてもらうよ。」

そういって肩をたたくマダム・ライラック。釈然としないがうなずく真神。

「さて、ゆっくり話でもしたいところだけど、これから用事があるんだ。すまないが、部屋に荷物を置いたらしばらく自由にしておいておくれ。」

「わかりました。では、邸宅でお待ちしています。」

変わらず真面目に答える真神だが、「それには及ばないよ」とマダムは一枚のチケットを手渡した。

「これは…。」

チケットをまじまじと見つめる真神にマダムは応える。

「巴里華撃団記念博覧会のチケット。この街はかの三大華撃団の一つ、巴里華撃団があった街なの。だから華撃団大戦のシーズンにはこの記念博覧会があるのさ。」

華撃団、人々を怪異から守るために霊力を用いて戦った秘密結社。降魔大戦によって多くの人々に認知されるようになった戦士たちの存在は、もちろん軍人を志す真神にとっては羨望の対象だ。現在世界に無数に存在する華撃団のいわば始祖である三大華撃団の記念博覧会、興味がないわけがない。

キラキラを目を輝かせる真神にマダムは優しく笑いかける。

「どうやら気に入ってもらえたようだね。それじゃあ、私は行ってくるからこの街を楽しんでおいで」

「はい、ありがとうございます。」

お辞儀をする真神を残して、マダムは去っていった。

真神も出かけるマダムを見届けた後、すぐに博覧会の会場へと向かうのだった。

 

 

華撃団博覧会の会場はライラック邸から歩いてすぐのところで開催していた。展示物はすべて屋外だが華撃団大戦シーズンということもあり、非常ににぎわっている。

その雰囲気に気おされつつ真神も展示会を楽しむ。

「さすがは華撃団の展示会だけあってすごいにぎわいだ。おっ、あっちには最新の蒸気機械の展示もやっているのか!」

そういって真神が蒸気機械の展示に行ったその時だった。

「な、なんだ?うわあああ!!!」

展示品を見ていたひとりの男が悲鳴を上げた。

声のほうを真神が見ると一台の蒸気機械が暴走し、辺りのものを壊しながら暴れまわっていた。

それに気づいた人たちは慌てて会場の外へ逃げようと走り始める。

だが、暴走した蒸気機械はまるで人々の後を追いかけるかのように皆が逃げる方向へ動き始めた。

(まずいぞ!このままだと、けが人が出るかもしれない!)

とっさに近くにある持ちやすいがれきを手に取る真神。

(俺だって帝国軍人の卵なんだ!今俺にできる精一杯のことをやるんだ!)

そして、そのがれきを暴走する蒸気機械を投げつけた。

がれきが蒸気機械に命中しガツンという鈍い音が響く。

暴走した蒸気機械は背後に向き直り、攻撃してきた真神を視界に捉え、反撃しようと動き出す。

だが、それこそが真神の狙い。そのまま人の少ない方に誘導しようとしているのだ。

「よし、こっちだ!」

人々が避難する方向とは逆側に走り出す真神。蒸気機械も真神を追う。

必死で走る真神、しかし、相手は機械。逃げ切ることはできずに追いつかれてしまう。

鋼鉄の腕を力任せに振るう蒸気機械。咄嗟に防御するも丸腰の真神ではどうにもできずに大きく吹き飛ばされてしまった。

「ぐわぁぁっ!!」

壁に叩きつけられて地面に転がる真神。そんな彼に容赦なく蒸気機械が迫る。

「く、くそっ、ここまでなのか…」

腕を振り上げる蒸気機械、思わず目を瞑る真神。

だが、その時、突然目の前の蒸気機械が動きを止めたかと思うと1泊遅れて縦に真っ二つに別れて倒れた。

その蒸気機械の中から目を怪しく光らせた怪しげな蜘蛛が逃げ出すのだった。

 

 

目の前で起こったことがすぐに理解できずに固まる真神。そんな彼に一人の少女が声をかけた。

「あの、大丈夫ですか?」

黒いシスターの服に桜色の羽織というアンバランスな服装、縦に切り傷が入り閉じられたままの左目、美しく慎ましやかな黒髪に黒い瞳をした日本人の女性。そんな彼女が右手に刀を持ち優しい声色で真神に話しかける。

「あ、あぁ、大丈夫」

まだ痛む体をゆっくりと起こして立ち上がる真神。

それを見た少女は、良かったと言って刀を鞘に納めた。

「もしかして、君が助けてくれたのか?」

「はい、でも、あなたが人の少ないところに誘導して時間を稼いでくれたおかげで被害が大きくなる前に斬ることができました。」

「ありがとう、えっと…」

「ふふふ、夜桜です。」

「ありがとえ、夜桜さん、僕は」

真神は自分の名前を言おうとした。だが、そこに騒ぎを聞きつけた警官がやってきた。

「大丈夫ですか!蒸気機械は!?」

警官隊がやってくると、夜桜は慌てて刀を背中に隠す。そして、咄嗟に答えた。

「はい!き、機械は途中で爆発して壊れました!」

突然出てきた嘘に真神はどうすればいいのか悩んだが、困った顔でこちらを見てくる夜桜を見て、真神も話を合わせることにした。

「はい、内部の機関が耐えられなくなったのかもしれませんね。」

「そうですか、では、ここからは我々警察が預かりますのでお二人は帰っていただいて結構です。」

こうして、二人はパシャパシャとカメラのシャッター音を聞きながら現場から離れることになった。

「ごめんなさい、話を合わせてもらって」

「いや、いいんだ。夜桜さんは僕の恩人だからね。でも、どうして?」

「シスターが刀を持って暴れまわってるなんて評判を広めたくありませんから。そういう噂は教会の評判に傷をつけますから」

テヘ、と舌を出して笑う夜桜。真神は改めて彼女に礼をいう。

「助けてくれて本当にありがとう。助かったよ、夜桜さん。」

「いえいえ、困った人を助けるのは私の勤めです。」

そう言って笑う夜桜。そんな時に教会の鐘がなった。

「いけない!もうこんな時間!あ、あなたも何かあれば教会に来てくださいね。それじゃあ!」

それだけ言うと夜桜は慌てて走り去って行った。

「あぁ!ちょっと!!」

呼び止める日間もなく走り去っていく夜桜の背中を見つめる真神。

「結局名前、名乗れなかったな。よし、俺も今日は帰るか」

僅かに心残りを残しながら、彼もライラック邸への帰路についた。

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