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屋外宴会場で兵士の話を聞いてわしは頭を抱える。今日は勇者でろりんに【覇者の冠】を授与する大事な日。そんな日にデルムリン島の化け物がやってくるとは…。
「王様…ここはでろりん殿にもう一度撃退して貰いましょう」
大臣がわしに駆け寄りそう言ってくる。
「むむ…確かにもうそれしか方法は無いか…」
魔王が倒れ、軍備も縮小した我が国の兵士達では化け物は倒せん。ここは恥を忍んで頼む事にしよう。
「勇者…む?何奴だ!」
でろりんを呼ぼうとした時、丁度少年が通りかかり前に置いてあった幻の【ゴールデンメタルスライム】を持って走って行く。
「ゴメちゃん!」
「ピィ~!」
「なっ!?あの島の小僧だっ!!」
「なんだとおっ!!」
「!?」
でろりん達も気が付いたようで酷く驚いている。
「ちっ!行けっ!」
彼らは少年を取り囲む。
「くっ。ゴメちゃん少し待ってて!【
少年はゴールデンメタルスライムを地面にそっと置き、夜空に向かい呪文を放つ。小さな火球が夜空へ上がりはじける。
「おぉ…」
「なんだ!?」
周囲の少ない兵も気が付いて集まってくる。
「ふん!下手糞め!」
「へっへ~ん。作戦だもんねぇ~」
少年は舌を出しでろりんを挑発する。
「作戦だと?」
「ふん。その前に片付ければいいさ」
でろりんはにやりと笑い、新調したというサーベルを抜いた。
「そうじゃな」
「なっ!?」
少年一人をでろりん達が取り囲む。まだ幼い少年に大の大人が4人がかりにする行為に驚きを隠せない。
「【
「っ!……」
「なにっ!?」
僧侶のずるぼんが真空の刃を作り出す呪文唱えるが少年は全て避けてしまった。
「ふ、ふん!まぐれだ!へろへろ!」
「おおぉ!!」
戦士のへろへろが少年に【てつのオノ】で切りかかる。少年は近くに落ちていた【どうのつるぎ】で応戦した。
「たぁぁ!!」
「ぬっ!?うおぉ!?」
力自慢のヘロヘロを少年はすばやい動きで翻弄して攻め立てた!なんと言う少年だ!
「ん~【
「っ!?」
「なんと!?」
魔法使いのまぞっほが少年を後ろからメラで攻撃した。少年は【
「なんだあのあの小僧!」
「はぁぁっ!」
「くっ!」
少年はすぐさまでろりんへ切りかかる。でろりんはサーベルで応戦しながら大きく叫んだ。
「へろへろ!」
「お、おう!」
「くっ…!!」
二人の猛攻をすばやく避け、時には受け流す。様々な者達を見てきたが凄まじい強さの少年だ。
「あぁっ!剣がっ!?」
「フン!まぞっほ!」
「【
「ぐぇ!?」
剣が折れ、動揺した少年に【
「ピーピー!」
「手間取らせやがって…」
「ぐっ…ご、ゴメちゃん…」
「ピィピィ!!」
でろりんが少年を掴み上げ、サーベルを構える。い、いかん!
「待つんじゃ!」
そう言おうとした瞬間、空から大きな何かが落ちてきた。
ドゴン!!
「な、なんだ!?」
「き、来たわっ!!」
土煙が出来るほど大きな窪みの中心には話で聞いていたデルムリン島の化け物の姿があった。
「ぼ、ボストン…」
少年は化け物の名前を呼んだ。
「……ダイから手を離せ」
「ひぃぃ!!」
ボストンと呼ばれた者は怒っていた。ダイと呼ばれた少年を掴むでろりんを凄まじい眼光で射抜く。多少いる兵士達も余りの事に震えて動けない。
「……聞こえなかったか?ダイから手を離せ」
ザッっとボストンが近づく音が酷く大きく聞こえるほど周囲は飲まれている。わしもこれほどの威圧は経験が無い。
「ち、近づくな!近づけばガキを殺すぞ!」
「なっ!?」
この状況ででろりん達は少年を人質にした!
「……わかった。私達はただ友達のゴメちゃんを返して欲しいだけだ。二人を返して貰えればそれでいい」
「誰が返すものですか!」
「そうだそうだ!」
「あれだけ苦労したんじゃぞ!」
でろりん達は好き勝手な事を言い始める。その姿を見てダイが苦しげな表情で悲しげに言う。
「か、勝手なこと言って……オレをだましてゴメちゃんを連れ去ったくせに…」
(な、なんじゃと!?)
どうやら彼らはデルムリン島に赴いた際、少年達を騙して友達のゴールデンメタルスライム連れ去ったようだ。
「だ、だまれっ!」
「あっ…ぐっ!」
本当の事を言われて怒ったのか、でろりんがダイの首を強く掴む。
「やめろ!」
「待ちな。動くんじゃないわよ。坊やがどうなっても言いのかしら?」
「くっ…」
するぼんが脅すと彼は苦しげな声を上げて立ち止まる。
「ほら!武器を…ちっ!まぞっほ!【
「?…!よしわかった!【
「っ!……ぐぅぅ…!!」
彼は一瞬まぞっほの【
「ああぁっ!!」
「ピィピ~!」
少年達がその光景を見て悲痛な声を上げる。
「フ、フハハハッ!いいぞ!よくわかってるじゃないか!安心しろ。お前を片付けたらガキは解放してやるよ」
「ぐあっ!?」
そう言ったでろりん少年を地面に叩きつけ、踏みつける。そして空いた手に魔力を集める。
「い、いかん!」
わしは止めねば!と声を上げ踏み出す。
「ボストン…っ!…!!…んッぎぎぎ…ッ!」
「なにッ!?」
少年が大声を上げ、ハッと表情を変えた後、最後の力を振り絞り抵抗する。でろりんは驚き手が止まる。
「『デルパーっ!!』」
少年が魔法の筒の呪文を唱えるとカッと閃光が辺りを照らす。そして周囲に見たことも無い6体のモンスターが現れた!
「なッ!?ど、どこから現れた!?」
でろりん達は魔法の筒を知らなかったようで酷く慌てている。
「お、王様を守れぇっ!」
「おおぉっ!!」
成り行きを見守っていた周囲の兵達は突然出て来たモンスター達を警戒し、わしを中心に守りを固める。
「グルル…」
「ギャワァ…」
モンスター達は攻撃をしてくる気配は無い。どうやら指示を待っているようにも見える。
「な、なんだこいつらは……」
「なんなのよ…!」
各地を旅したでろりん達も知らないモンスター。もしやのボストンのようにデルムリン島固有の種かも知れぬ。
「ま、まっぞほは何か知ってるか?」
「ワ、ワシも知らん!ただこいつらが出てきたのは魔法の筒からだろう…」
流石に魔法使いのまぞっほは魔法の筒を知っていたようだ。
「……!ピィーー!」
全員がモンスター達の行動を注意していた中、少年が何か気が付いた様子で口笛を鳴らす。
「ギャオォン!!」
「ギチギチッ」
「う、うわあぁぁっ!?」
少年の口笛を皮切りにモンスター達がでろりん達を攻撃する。
大きなタコのモンスターは触手でまぞっほをあっと言う間に捕らえ、ヘロヘロは二種のドラゴンのようなモンスターに押さえつけられ、大きな目玉のモンスターはするぼんを踏みつけた。
「く、くそぉ!?」
仲間が気絶したでろりんは魔のサソリに似たモンスターに追い詰められる。
(なんと言う強さだっ!?)
でろりん達は弱くない。このロモス王国全体でも彼らに勝てる者は数人居るかどうかという実力者だ。その者達をこうも簡単に倒すとは…
「ギチギチ…」
「ピーピィ!」
巨大なクワガタのモンスターがゴールデンメタルスライムを入れた鉄の籠を切りさく。自由になったゴールデンメタルスライムは周囲を飛びボストンの所へ行く。
「私は大丈夫。ゴメちゃんはダイの元へ」
「ピィ!」
羽を器用に動かして敬礼して少年の方へ向うゴールデンメタルスライムを見て、わしは過ちを確信した。
「ピィピィ!」
「ゴメちゃん…へへ…よかった…」
「ピー!?ピーピーー!!」
少年はゴールデンメタルスライムを見て安心したのか倒れこんだ。それを心配したのかまぞっほ達を倒したモンスター達も少年に集まりだす。
「フン!」
パリン!という音と共にボストンが氷から開放される。そして抵抗していたでろりんに近づいていく。
「ば、化け物めッ!」
「……私達は静かに暮らしたいだけだ。お前達が何の為にゴメちゃんを連れ去ったのはわからない。だが友達を連れ去られたダイを見て何か思ってくれ」
「う、うぅ…」
でろりんはボストンの言葉を聞いて武器を落とし、力無く膝を付く。わしらにもそう言われているようで見れば周囲の兵達も浮かない表情を浮かべている。
「これに懲りて本当に改心してくれることを願う」
そう言ったボストン…殿はダイの元へ向い、頭をそっと撫でる。
「よくがんばったなダイ……流石勇者だな」
勇者か…少年は勇敢で仲間を思い、正しい心の持ち主だ。
「【生命の水】」
「おお…」
ボストン殿は見たこと無い呪文を唱え、大きな雫が少年を包み傷を癒した。
「それと……【生命の水】」
「なっ!?」
早々に気絶したまぞっほ達とは違い、最後まで戦ったでろりんは多くの傷が付いていた。その傷をボストン殿は治してしまう。
「な、なんで…」
「……正直私はゴメちゃんを連れ去ったお前達の事は好きじゃない。でも人間の悪い奴らの中でもいい奴はいる。私にはお前達がそうじゃないかと思っただけだ」
「………ぅぅ…」
悪い奴らの中でもいい奴か……確かにでろりんはボストン殿達の友人を連れ去った。それは確かに悪い事だ。しかしワシがでろりん達を調べた時、村を襲っていたモンスターを倒した。座礁した船を助けた等人々を助けていた事は事実だ。
「さぁ帰ろうか」
「ピー?」
「……そうだな。すまないがみんなも一度魔法の筒に戻ってもらうがいいか?」
「ギャゥゥ」
モンスター達が返事している姿を見ていてワシは決断する。
「ボストン殿」
「…なんだ?ロモス王」
「すまなかった…」
「王様!?」
ワシが頭を下げると兵士達が酷く驚いている。王国の王たる者が頭を下げる。それは重大な意味を持つ。
「……」
「ワシの目は曇っておったようだ。でろりん達ゴールデンメタルスライムを献上してきた時、わしは世界にこんな綺麗な物があるのかと喜んだ。しかし今思えば檻に入れられたその者は悲しい顔をしておった…」
「ピー…」
「わしがその時にそれに気付く事が出来れば……いや。まず、様々な者の上に立つ王たるわしが人となりを見抜けぬのが問題じゃ…」
そう。王であるわしが人を見抜けぬ事が問題だ。
「此度の件でわしは変ろう。ロモス王国にふさわしい王に……ボストン殿。大事な事に気付かせてくれた勇敢な少年ダイにこれを受け取って貰いたい」
さっと従者用意してくれた【覇者の冠】を持ち、ボストン殿に近づく。
「これは?」
「この冠は代々ロモス王家に伝わる覇者の冠。言い伝えでは伝説の金属【オリハルコン】で出来た真の勇者が装備したと…」
「これをダイに?」
「ええ。王宮に眠るより、勇敢な少年であるダイに装備する方が相応しい」
「……ロモス王よ。ありがたく頂戴しよう」
思案していたボストン殿は頭を下げる。打算的だがボストン殿や魔物達に少しでも良い印象を持って欲しいという思いも少しある。もちろん覇者の冠の件は言葉に出した通りだ。しかしわしはロモス王国の民を守る義務がある。もし、彼らが本気で大暴れしたらロモス王国はどうなる?これは謝罪の意味も含まれている。その為、ボストン殿は思案して返事を返してくれたのだろう。
「……ふむ…よく似合っておる」
「ピィーー!!」
「「ギャウゥ!!」」
わしが気を失っているダイに覇者の冠を頭に装備すると、月光に照らされ祝福を受けたように輝きを増す。モンスター達もその姿に大喜びで騒ぎ出す。曇っていたわしの目でもこの少年ダイは輝いて見える。
パチパチ……パチパチ!
小さいながら拍手は大きな拍手になり城内に響く。先ほどまでの重い雰囲気が消え優しい大らかな雰囲気が周囲を包む。そんな光景を見てわしはこの判断は間違いではなかったと確信した。
ボストン視点だとダイがボコボコにされてる所から始まるし、ダイ視点だと気絶したら終わってしまう。第三者視点が一番いいのだろうが登場人数が多いし王様の行動が今後に関わるので王様視点にしました。