ハリーポッターと化物となった少女   作:96℃

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また遅くなりました.....今日で二話投稿するので許してくださいお願いします。



化物(フリークス)と賢者の石 九

 

 

 

sideメルセデス

 

 

 

 

扉から現れたのはエメラルド色のローブを着た老齢の魔女だった。厳格な顔つきをしており、規律や秩序といったものを深く重んじているだろうことが滲み出る雰囲気から察せられる。

 

ルールを破りたい盛りの少年達にとっては煙たい存在だろうが、私にとっては関わりやすいタイプだ。彼女のような人間は、人を噂や評判で判断することが無いことが多い。最初から悪印象を持たれていることばかりの私の数少ない警戒せずに済む人間になって欲しいところだ。

 

「マクゴナガル教授、イッチ年生の皆さんです。」

 

「ご苦労様、ハグリッド。ここからは私が預りましょう。」

 

老齢の魔女、ホグワーツ副校長であるミネルバ・マクゴナガル教授らしい彼女は、中途半端に開かれた扉を大きく開け放つと一年生を中へと導き始めた。

 

ホグワーツの中は解放感に溢れている。石壁が四方八方に先が見えないところまで続き、天井は存在などしないのではないように見えるほど遥か彼方にあった。

 

一年生達は巨大な大広間の扉を横切り、脇にある空き部屋に詰め込まれた。隣の大広間からは大勢のざわめきが聞こえる。上級生は皆既に大広間に集まっているようだ。

 

マクゴナガル教授が一年生の前に立った。挨拶が始まるらしい。

 

「ホグワーツ入学おめでとう。新入生の歓迎会が間も無く始まりますが、大広間の席に着く前に皆さんが入る寮を決めなくてはなりません。」

 

教授は寮について話を始めた。グリフィンドール、レイブンクロー、ハッフルパフ、スリザリン、どの寮に入ったとしてもホグワーツにいる間は勉強も自由時間も睡眠も寮で行う。寮生が家族のようになると言われたが私の場合はそうはならないだろう。何処に入ったとしても敵が多すぎる。せめて私の時間を無駄に浪費させないでいてくれればいいのだけど。

 

「――――――学年末には、最高得点の寮に大変名誉のある寮杯が与えられます。どの寮に入るにしても、皆さん一人一人が寮にとって誇りとなるように望みます。」

 

寮の得点か...正直興味は無いけど、少しくらいとっておかなければ寮に貢献していない等の理由で突っ掛かって来る輩が現れるだろう。面倒なことだ。

 

「間も無く全校生の前で組分けの儀式が始まります。待っている間、出来るだけ身なりを整えておきなさい。」

 

教授の目が数人の生徒に向けられる。私もダニーも身なりは整えているので何かする必要はない。

 

教授が部屋を出ると途端に一年生達がざわめき出す。話の内容は大体組分けの方法のようだ。

 

「組分けねぇ...どんな方法なんだろうね?公平な方法で決めてくれるなら何の不満も無いんだけど。」

 

ダニーも組分けの方法に興味が有るようだ。

 

「私は何かの魔法で生徒の適性ごとに分けるものだと考えています。周りは魔法の試験だの凄く痛いだの言っている人がいますが、まだ魔法を知らない生徒もいるでしょうし、痛みを伴う試験など実施していれば保護者が黙っていないでしょうからね。生徒が何かをするわけでは無いかと。」

 

少し耳を澄ませてみると何かをぶつぶつと早口で唱えている少女がいた。汽車の中でダニーに詰め寄っていた少し気に障る少女だ。名前は確か....ハーマイオニー・グレンジャーだったはず。

 

ハーマイオニー・グレンジャーはどうやら本で覚えた呪文を繰り返しているらしい。呪文集に載っている呪文の記載を載っている順番に呟いている。

 

丸暗記したのだろうか?私ですら記述の丸暗記はしない、丸暗記をするよりは要点をまとめた方が必要な知識を直ぐに取り出すことが出来ると考えているからだ。丸暗記を全否定するわけでは無いが、あの分厚い呪文集を丸暗記するなんて...勉強熱心というか病的というか...

 

私がハーマイオニー・グレンジャーに引いていると不意に周囲の空気が冷え始めた。咄嗟に振り向くと、背後の壁から二十人ほどのゴーストがすり抜けてきた。ゴースト達は一年生に目もくれずに何か話し合いをしながら部屋を横切っていく。唖然として自分達を見ている一年生に気づいた何人かのゴーストが生徒に話しかけ始めた。

 

「新入生じゃな?これから組分けされるところから?ハッフルパフです会えるとよいな。わしはそこの卒業生じゃからの。」

 

生徒に話しかけた修道士のような格好の太ったゴーストはハッフルパフ出身らしい。生徒達は死後数百年はたっていそうなゴーストから嫌でもホグワーツの歴史を感じとることができただろう。

 

しかし、ホグワーツの卒業生がホグワーツでゴーストとして住み着いている理由はなんだろうか?というよりは死後ゴーストになる条件はなんだろうか?死んだ後もさまよい続けるのは御免なので、ゴーストにはなりたくないものだ。

 

「さあ、行きますよ。組分けの儀式が間も無く始まります。」

 

再び部屋に入ってきたマクゴナガル教授の先導によって私達は大広間の扉をくぐった。いよいよ組分けが始まる。何処に組分けされたかによって私の学校生活の難易度が大きく変わってしまう。もはや結果は見えているようなものだが、番狂わせが起きることを祈るばかりだ。

 

大広間の中には見事光景が広がっていた。空中に浮かぶ幾千幾万も存在しているだろう蝋燭によって四つに別れた長テーブルが照らされ、恐らく寮ごとに別れているのであろう上級生達がこちらを興味津々に見つめている。上座にも長テーブルが置かれており、ゴースト、ターバン、小人、等々酷く個性的な教授陣が座っている。

 

マクゴナガル教授は私達を上座のテーブルまで誘導し、上級生の方を向く形で並ばせた。

 

ふと天井の方に目をやると、そこには天井がなく、どこまでも広がる星空が見えていた。

 

「本当の空に見えるように魔法がかけられているのよ。ホグワーツの歴史に書いてあったわ。」

 

何処かで誰かがそういったのが聞こえる中、私は天井の魔法を掛けた魔法使いに想いを馳せていた。あの魔法を掛けた者はきっと素晴らしい感性を持ち、人に美しいものを魅せようとする芸術家であったに違いない。

 

私の魔法は既に人に害を成すものに特化してしまっている。今さら人を喜ばせる生き方をしたいなどとは思わないが、もし私が只の少女であったのなら、どのような未来を描いていたのか?あの素晴らしい魔法を見て自分も...ということがあり得たかもしれないと考えてしまう。

 

「天井、綺麗だね...」

 

「ええ......」

 

天井から視線を自分の隣に移すと、ダニーがこちらを見ていた。

 

「メルセデス、君が望むのなら...僕は生き方を変えることに何の不満もないよ。」

 

私の頭を一瞬過った想像をダニーは見透かしていたらしい。そんな言葉をかけてくる。

 

「今さらです。私はもう、人の道には戻れませんよ。」

 

ダニーから目をそらし、前を向くとマクゴナガル教授がスツールの上に古くさいとんがり帽子を置いたところだった。あの汚ならしい帽子に何の意味が...?そう思った瞬間、帽子の破れ目が開き歌を歌いだした。

 

「私はきれいじゃないけれど 人は見かけによらぬもの

 

私をしのぐ賢い帽子 あるなら私は身を引こう

 

山高帽子は真っ黒で シルクハットはすらりと高い

 

私は彼らの上をいく ホグワーツ校の組分け帽子

 

君の頭に隠れたものを 組分け帽子はお見通し

 

かぶれば君に教えよう 君が行くべき寮の名を

 

グリフィンドールに行くならば 勇気ある者が住う寮

 

勇猛果敢な騎士道で ほかとはちがうグリフィンドール

 

ハッフルパフに行くならば 君は正しく忠実で

 

忍耐強く真実で 苦労を苦労と思わない

 

古き賢きレイブンクロー 君に意欲があるならば

 

機知と学びの友人を ここで必ず得るだろう

 

スリザリンではもしかして 君はまことの友を得る

 

どんな手段を使っても 目的遂げる狡猾さ

 

かぶってごらん!恐れずに!

 

おろおろせずにお任せを!

 

君を私の手にゆだね(私に手なんかないけれど)

 

だって私は考える帽子!」

 

帽子の歌が終わると広間にいた全員が拍手を始め、地響きすら感じた。帽子はお辞儀をすると再び動かなくなる。

 

組分けというのはあの帽子を被るだけのようだ。だけど少し不味いことになったかもしれない。

 

あの帽子は頭に隠れたものも何でもお見通しだと歌った。それが誇張で無いならば強力な開心術でも使って判断をするのかもしれない。私は隣のダニーに小声で囁く。

 

「あの帽子は開心術を使ってくるかもしれません。知られては困るものは今のうちにしまっておいてくださいね?」

 

ダニーは小さく頷く。閉心術は特に力を入れて鍛えたが、太古から存在する魔法具を相手にどこまで通用するかは未知数だ。下手をしたら全ての企みがダンブルドアにばれるかもしれない。私達二人は周囲の生徒とは違った理由で緊張に顔を強ばらせた。

 

「ABC順に名前を呼ばれたら、帽子をかぶって椅子に座り、組分けを受けてください。アボット・ハンナ!」

 

最初の一人が帽子を被り椅子に座ると、帽子は一瞬の内に叫ぶ。

 

「ハッフルパフ!」

 

右側のハッフルパフのテーブルから歓声と拍手が沸き上がり、アボット嬢は迎え入れられた。アボット嬢を皮切りに組分けが進んでいく。

 

「ボーンズ・スーザン!」

 

「ハッフルパフ!」

 

「ブート・テリー!」

 

「レイブンクロー!」

 

――――――――――

―――――――

―――――

―――

 

組分けが進む内に何人か知った人間が組分けされた。ハーマイオニー・グレンジャーはグリフィンドールに組分けされ、ダニーがカエルを探してあげていた少年、ネビル・ロングボトムもまたグリフィンドールに組分けされた。

 

マルフォイは帽子をかぶってすらいない間にスリザリンと叫ばれていた。もしあれがスリザリンに選ばれなかったなら、私は大いに安堵することができただろうに。マルフォイをスリザリンに選ばない、それはつまりあの組分け帽子の目が節穴であるに違いないからだ。

 

マルフォイの後に何人かの組分けが終わり、また一人知った名前が呼ばれた。呼ばれたのは、恐らくこの場にいる誰もが知っているであろう英雄様だった。

 

「ポッター・ハリー!」

 

ハリーの名前が呼ばれた瞬間、大広間は静寂に支配された。誰もが彼の行く寮に興味を示し、自分達の寮に入って欲しいと噂の英雄に穴が空きそうなほどの熱視線を浴びせた。彼にかかるプレッシャーは相当なものだろう。魔法界に入ってまだ日も浅い内に気の毒なことだ。

 

ハリーの組分けには時間がかかった。恐らく今までの生徒の中では一番長いのではないだろうか?帽子が悩むほどに各寮への適性が分散しているのかもしれない。

 

更に五分ほどたった頃に帽子は叫んだ。

 

「グリフィンドール!」

 

瞬間、グリフィンドールのテーブルから爆発と聞き間違える大歓声が炸裂した。グリフィンドール寮生達は自分の寮に英雄が選ばれたことを大層喜んでいる。汽車であったウィーズリーの双子も「ポッターを取った!」と叫んでいた。凄まじい歓迎ぶりだ、ハリーも笑顔になっている。

 

しばらく興奮が覚めなかった大広間だったが、次に呼ばれた名前によって時が止まったかのように静まりかえった。

 

「ウォルター・メルセデス!」

 

誰もが私を見ている。嫌悪、嘲り、恐怖.....様々な負の感情が込められた目線が私を射ぬく。ハリーとは全く逆だ、誰もが私の行く寮を気にしているのは同じだが、自分達の寮にだけは来ないで欲しいと思っている。

 

ふとスリザリンの方を向くとマルフォイと目があった。これがお前の評価だ、とでも言いたげにニヤニヤとこちらを見ている。ここが一目の無い場所だったのならまた投げ飛ばしていたところだ。

 

ダニーとも目があった。彼は周りの反応に不快感を抱いているようだ。顔が珍しく歪んでいる。ハリーの方にも目をやってみると、彼は周りの反応に困惑しているようだ。ウォルター家の悪い評判は知っていても、想像を越えた嫌われぶりだったのだろう。

 

視線に晒されつつ、椅子に座って帽子を被る。低い声が私の耳の中に響いてくる。

 

「フーム...頭は良い、何事にも怯まずに向かって行くこともできる。だが正々堂々とはいかない、狡猾さも見えている。そして.....随分と隠し事が多いようだが、見せてはくれないのかな?」

 

やはり気づかれたようだ。だが、無理やり抉じ開けることまではしてこない。それならば、このまま通させてもらう。

 

「申し訳ありませんが組分け帽子。私はどのような存在かもわからないあなたに全てをさらけ出すつもりはありません。あなたが私の弱みとなるものを何処かの誰かに伝えないとも限りませんからね。」

 

組分け帽子は私の言葉に何か言いたげな雰囲気を出していたが、口には出さなかった。

 

「なるほど......では今見えている部分で判断するとしよう。私の選択に文句は言うまいね?フム、ならば.......」

 

組分け帽子は数瞬の貯めの後に叫んだ。

 

「スリザリン!」

 

歓声も拍手も無い。スリザリン生達からは見下したような目線で迎えられた。他寮の生徒は殺人鬼の娘がスリザリンに入ったことによって更に嫌悪感を増したようだ。

 

私は近くに人がいない端の方の席に陣取ると次に組分けされるだろうダニーを見る。

 

「ウォード・ダニエル!」

 

名を呼ばれてスツールへと歩きだしたダニーを見て、大広間の女生徒達が色めき立った声をあげる。ダニーは女性にモテる。物腰は基本柔らかく、女性には紳士のような振る舞いをすることが多い。何より顔がいい。今のダニーの表情は不快感に歪んでいるのだけど、見慣れていないとわからないものなのだろうか?

 

私によって凍りついていた大広間の雰囲気はダニーによって溶けだしていた。正直気に入らない。ダニーが周りの黄色い声になんとも思っていないだろうことが救いだろうか。もし嬉しそうな表情でも見せていたら、少し...いや、かなり機嫌を悪くしていたと思う。

 

黄色い声援を受けながらダニーは帽子をかぶり、椅子に座る。しばしの沈黙の後に組分け帽子が叫んだ。

 

「グリフィンドール!」

 

グリフィンドール...か...

 

私はダニーがハリーを含めたグリフィンドールの寮生から歓迎されている姿をじっと眺めていた。

 

 

 

 

 





次回はダニエル視点でメルセデスの組分けからスタートです。
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