ハリーポッターと化物となった少女   作:96℃

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化物(フリークス)と賢者の石 十一

 

 

 

 

sideメルセデス

 

 

 

 

「さあ、諸君、就寝時間。駆け足!」

 

ダンブルドアは先程の騒音に対する感激の涙を拭きながらそう言った。正直、あの老人は既に耄碌しているのではないかと思う。なんだか拍子抜けしてしまったが、あんなふざけた言動をする人物にこそ油断のならない一面があったりするので警戒をしておいて損は無い。

 

ダンブルドアの号令によって四寮の生徒達は大広間から各々の寮へと向かう。一年生には監督生が付き、寮への案内をしてもらうようだ。

 

マルフォイとその取り巻きが一年生の集団の最前列を我が物顔で歩いているので、あのにやけ面がこちらに意識を向けないように最後尾へ避難する。

 

最後尾に近づくと、前列の生徒からかなり距離を開けて歩いている一人の女生徒がいる。その女生徒は近づいてくる私を見て目に見えて狼狽え始めた。理由は分かりきっているのだけど、それを無視するのもさらに印象が悪くなると思うので話しかける。

 

「どうかなさいましたか?」

 

突然私に声をかけられたことによって彼女は更に狼狽え始めた。彼女は栗毛の髪をショートボブにした眠たそうな緑目の少女だ。綺麗というよりは可愛いといわれるだろう容姿をしている。そんな彼女を狼狽えさせている現状を周りが見れば苛めているように見られるに違いない。

 

そう思い至って周囲の誤解を招く前に立ち去ろうとすると彼女が口を開いた。

 

「えっ、いや、そのぉ....ウォルターさん?ですよね....す、すみません、あなたの家の噂を聞いて育ってきたもので.....少し、体が過剰に反応してしまって.....」

 

おや?少し意外な返答だ。問答無用で嫌われるか見下されるかしているものだと思っていたけど、この娘にはまだ話せる余地がありそう。

 

「ああ、気にしないで下さい。慣れてますからね。初対面でいきなり見下したり暴言を吐いたりしない分、あなたの反応はむしろ有難いぐらいですよ。」

 

ため息を吐きながらそうこぼすと、彼女は呆気にとられた表情をしていた。

 

「有難い.....ですか?それだけで?何もそんなことにまで有り難みを感じなくても.....一体どんな人生送ってるんですか.....」

 

信じられないといった表情をした彼女は下を向いて何かを考え込み始めた。

 

「あの....?」

 

そのまま口を開かなくなった彼女にどうしたのか問いかけようと顔を近づけた瞬間彼女の顔が勢いよく上がり、思わず後ずさってしまった。彼女の顔は謎の決意に満ちている。

 

「決めました!ウォルターさん。私と友達になって下さい!」

 

「友達?」

 

こともあろうに彼女は私に友達になろうと提案してきた。今の数秒で一体どんな思考の巡り方をしたらそうなるんだろうか?

 

「私の評判を聞いて育ったのでしょう?それに、組分けの時に私に向けられた視線をあなたも感じているはずです。私と関わりを持てば、あの視線があなたにも向けられるのですよ?」

 

彼女も自分の評判を落としたくはないだろう。友達になりたいという発言も何かが間違って出てきた戯言に違いない。そう思っていたのだが彼女の口は止まらない。

 

「私の評判だってスリザリン内では既に地に落ち欠けているようなものです!私はシャロン・ガードナー!嫡男の兄がマグル生まれと結婚して純血主義者からはぶられた貴族家、ガードナー家の娘です!」

 

前方にいる純血の家系の者達を気にしたのか、彼女は小声で叫ぶという器用な芸当をしながら私に名乗った。ガードナーという家名には聞き覚えがある。純血主義者からはぶられたというところで思い出したのだが、ルシウス・マルフォイが魔法界の今後を憂いている(ウォルター家をなじる)時にウォルター家と並べられていた家だったはずだ。

 

「私のスリザリンでの扱いがひどいことになるのはほぼ確実です。だから、あなたと関わりを持ってもあまり変わりません!むしろウォルターさんと一緒にいた方が、強い人と一緒にいた方が安心できます!」

 

強い人?私が?荒事に対する能力には自信があるが彼女が言っているのは立場のことだろう。立場という面で見ればウォルター家は弱い部類に入るはずだけど?

 

「私とて純血主義のスリザリン生からは下に見られているはずですよ?あなたが期待するような影響力はありません。」

 

「彼らも内心ではあなたを恐れてるんですよ。あなたを下に見ることで自分が優位に立っていると思いたいだけなんです。あなたを見下すような発言はしてくるかもしれませんが、直接危害を加えようとはしません。だから」

 

ガードナー嬢はそこで言葉を区切ると私に頭を下げる。

 

「ウォルターさん、私をあなたの庇護下に置いてください。私にできることなら何だってやります。それが例え、悪いことでも。」

 

彼女の顔からは嘘の気配は見えない。開心術を使うことも考えながらその真意を問おうとする。

 

「いいのですか?私が本当に悪いことをあなたに頼むかもしれませんよ。」

 

「そんなことは百も承知です。あなたは決していい人ではありません。むしろ悪い人の部類だと私の無駄に当たる勘が言っています。でも、あなたは役に立つ人間を意味もなく害する人ではないとも勘が言っています。私もまたいい人ではないです。今までもそれなりに悪いことをしてきました。役に立つと思いますよ?私は。」

 

私はこっそりと開心術を使用する。彼女が私に一切の嘘をついていないことは直ぐにわかった。詳細は省くがかなり悪どいことをしてきたのは確からしい。実行までは行かなかったようだが殺人を計画していたことも見えた。なるほど、人畜無害そうに見えたこの少女も内面はかなり壊れているらしい。純血主義に傾倒している訳では無さそうなところはプラスだ。仲間に引き入れるにしてもダニーといさかいを起こされてはたまったものではない。

 

「解りました....受けましょう....しかし、その関係は友達と言うのでしょうか?」

 

友達と呼ぶには殺伐としすぎているように感じる関係だと呟くと、反ってきたのは、彼女のこれまでの人間関係がよく分かる一言だった。

 

「友達とはそういうものじゃないんですか?あっ、私のことはシャロンと呼んでください。」

 

「......私のことはメルセデスと。」

 

「解りました、メルセデス。これからよろしくお願いします。」

 

「ええ、シャロン。」

 

会話を終えるといつの間にかなり離れていたスリザリンの列へと早足で近づく。スリザリンの一団は階段を下っていき、地下へとたどり着く。地下はまるで牢屋のようになっており、とても陰鬱とした雰囲気に溢れている。まさか寮内もこんな雰囲気なのだろうか?

 

私がスリザリン寮の中を想像していると、先頭を歩く監督生が何もないように見える壁の前で一年生の方に振り返った。

 

「さて、一年生の皆、入学おめでとう!私は監督生のジェマ・ファーレイ、スリザリン寮に心から歓迎するわ。」

 

ここで歓迎の挨拶を始めるらしい。わざわざこんなところでするということは目の前の壁がスリザリン寮の入り口だったりするのだろうか?

 

「スリザリンの紋章は生物の中でも最も賢い蛇、寮の色はエメラルドグリーンと銀、談話室は地下牢の隠され入り口、今私の後ろにある壁の奥よ。すぐに目にすると思うけど、談話室の窓はホグワーツ湖の水中に面しているわ。よく巨大イカが水を吐きながら通りすぎていくし、ときにはもっと面白い生物を見れるわ。神秘的な沈没船といった趣でみんな気に入ってるのよ。」

 

思った通り入り口はここのようだ。しかし、談話室の窓が湖の底に面しているのは興味深い。昔ダニーから話に聞いた水族館のようなものだろうか?

 

それからもジェマ・ファーレイの話は続いた。内容は大きく2つに別れており、一つはスリザリンが何でないか、もう一つはスリザリンが何であるかという話だった。彼女の話をまとめると、スリザリンが全員闇の魔法使いだとか有名な血縁者がいなければ無視をされるだとかそういう話は全てでたらめであり、仲間を大切にし、常に勝利を目指して努力する誰もが偉大になれる寮だということだ。片親がマグルの生徒も増えてきているとも語られた。

 

彼女は他三寮への若干優しめの皮肉と小粋なジョーク、分かりやすい例えを用いてこれらの話を進めていった。ただ聞いている分には素晴らしく、いかにも自分が素晴らしい寮に入れたように感じる話方だ。話の上手さも監督生には必要のなのだろうか?

 

聞いている分には素晴らしいと言ったが私とシャロン、そして恐らく片親がマグルだったりするのだろう一部の生徒はいまいち話にのめり込めていなかった。特に仲間を大切にするという部分から冷めてしまっていた。私とシャロンは言わずもがな、片親がマグルの生徒のくだりで純血主義者達の眉間にシワがよったことを敏感に察知し、監督生の話があくまで純血同士の話でしかないと気づいたのだ。

 

「談話室に入る合言葉は二週間ごとに変わるわ。だから掲示板に気を配ること。他の寮の生徒を連れてきてはいけないし、合言葉を教えるのも禁止。談話室には七世紀以上も部外者が立ち入っていないのよ。」

 

合言葉が変わる頻度がかなり早い。掲示板の確認を怠って寮から閉め出されることが無いようにしなければ。

 

「まあ、こんなところかしら。私たちの部屋を気に入るはずよ。私たちが寝るのは、緑の絹の掛け布がついたアンティークの四本柱のベッド、ベッドカバーには銀色の糸で模様が入っている。有名なスリザリン生の冒険が描かれた中世のタペストリーが壁を覆い、天井からは銀のランタンが下がっている。きっとよく眠れるわ。夜、湖の水が窓に打ち寄せるのを聞いているととても落ち着くから。」

 

そう締めくくって彼女は壁に向かって「純血」と唱える。すると壁から隠し扉が現れたのだが、私は思わず頭を押さえてしまった。誰が合言葉を考えているのかは知らないが、よくもまあスリザリンが純血主義に染まっていることを一発で露呈させる頭の悪い合言葉を作ったものだ。隣でシャロンも呆れ返っている。

 

何とも言えない表情をしつつ、スリザリンの談話室へ入ると、そこは私が地下牢から連想していたような陰鬱とした談話室ではなく、どこか宮殿の一室を思わせる内装だった。

 

荒削りの石でできた壁や天井には壮大な彫刻が施され、中央には人が五人ほど横に並んで入りそうな大きさの暖炉が鎮座している。暖炉の前には手触りに良い革が使われたソファーセットとテーブルが置かれている。談話室の一番奥には監督生が言った通り湖の中に面した窓があり、丁度巨大なイカが通り過ぎていったところだった。

 

正直に言うとかなり好みの内装だ。質素なウォルター邸も居心地が良いのだがこのような落ち着いた高貴さというのも捨てがたい。

 

「もうとっくに就寝時間よ!一年生の皆!自分の荷物が置いてある部屋を探してね。そこがあなた達が七年間過ごす部屋よ。同じ部屋にいる人達は苦楽を共にする家族になるわ!」

 

談話室をうろうろしていた一年生が監督生の指示に従って動き出す。私はルームメイトによっては常に寮から抜け出すことを考えていたのだけど、それは杞憂に終わった。

 

何の奇跡が起きたのか本来四人部屋の筈が二人部屋で、ルームメイトがシャロンだったのだ。さすがに出来すぎだと思い、さりげなく他の部屋の四人組を見てみるとどうやら純血主義とそれ以外で分けられているように感じた。

 

ホグワーツ側も最低限の配慮はしていたらしい。しかし、私とシャロンが同室なのは疑問だ。彼女と知り合ったのはつい先程のことなのだから。

 

......まあ純血にも関わらず純血主義者からはぶられているという共通項も有ることだし考えすぎないようにしよう。

 

「まさかメルセデスと同室になれるとは思いませんでした.....これで周りを気にすることなく悪巧みができますね!それじゃ、今日のところはおやすみなさい.....」

 

そう言うとシャロンは直ぐにベッドに潜り込み、寝息をたて始めた。私は夜はダニーと両面鏡で話す約束をしているので荷物の中から鏡を取り出し、念のために耳塞ぎの魔法を周囲に掛けてから鏡に向かって呟く。

 

「ダニエル...」

 

ダニーの名前を鏡に向かって呟くとダニーも丁度鏡を取り出したところだったのか直ぐに鏡に彼の顔が映った。

 

「やあ、メルセデス。さっきぶりだね.....君には色々と話したいことがあるんだ。」

 

「こちらもですよ。あなたに伝えなければいけないことが幾つも有ります。」

 

私達のホグワーツ初日の連絡会が始まった。

 

 

 

 

 






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