ハリーポッターと化物となった少女   作:96℃

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連日の夜勤により投稿が滞っております。申し訳ありません。次の更新は土曜日の夜になりそうです。



化物(フリークス)と賢者の石 十二

 

 

 

sideダニエル

 

 

 

 

初めて訪れるホグワーツという環境。慣れない環境に興奮と僅かな今後の心配を感じ続けて疲れきった一年生達が寝静まった頃、メルセデスと僕は両面鏡を使って連絡をとっていた。念のため、ルームメイト達に睡眠魔法を掛けた上で耳塞ぎ呪文を使用している。

 

僕のルームメイトはハリー、ロン、カエル少年のネビル、あと二人いるのだけどまだ名前は分からない。ハリーとルームメイトになれたのはこれ以上無い幸運だろう。個人的には残念なことだが彼とは今後敵対する可能性が非常に高い。恐らく敵の中心人物になるだろう英雄を近くで観察できることは大きなアドバンテージだ。

 

「それでは....お互いの報告を始める前にこのホグワーツで私達が達成しなければならない目標と、その為に必要な準備を確認しておきましょうか。」

 

鏡の中に映ったメルセデスが二本の指を立てる。僕達がホグワーツに来たのは勉強の為だけじゃない。メルセデスの望む世界の為。魔法史上最大の戦争を起こす準備の為だ。

 

「まず一つ目は、ダンブルドアと真正面から渡り合える力をつけることです。人質をとる、何かしらの毒を盛る、精神的な打撃を与える等の相手の戦力を削ぐ小細工を一切使用せずに真正面からです。老いて尚も英国魔法界の守護神と崇められるあの老人を擁護のしようもなく叩き潰す。英国全土の魔法使いに、最強の魔法使いすら打ち倒すことのできない化物(フリークス)が生まれたことを知らしめなければいけません。」

 

メルセデスは熱を込めた様子で語りながら指を折る。

 

例え魔法界を揺るがす事件が起こったとしても、英国の魔法使い達は次々にこう口走るだろう。ダンブルドアさえ居れば何とかなる。彼が何とかしてくれる。彼が解決できない問題がある筈がない.....ダンブルドア校長の存在は英国魔法界に他人任せな風潮を蔓延させている。

 

だけどそれじゃ駄目だ。それでは彼らは全力で戦おうとしない。全力で生き残る為に戦おうとはしない。メルセデスの望む終着点の為に、彼らには全力で生き残ろうとしてもらわなければ困るのだ。

 

だからダンブルドア校長には死んでもらわなければいけない。それも壮大に。彼の死に様が広く世間に響き渡るように。

 

「その為に、まずは私達が魔法の研究、訓練を行える部屋の確保。更なる魔法の知識を得る為の書物の収集。そして、私が今まで研究してきた再生者(リジェネレーター)の技術を昇華させる為、命の石を凌ぐ核となる物質を発見すること、これ等三つが必要となってくるでしょう。」

 

メルセデスはそこまで言い切って一呼吸おくと二本目の指を折りながら続ける。

 

「二つ目は、協力者を見つけることです。協力者といっても二種類います。一つは単純に私の手の届かないところで動いてくれる。分かりやすく言えばダニーのような協力者です。もう一つは、手っ取り早く魔法界を恐怖に陥れることのできる強力な闇の魔法使いで、協力することにお互い利益を見いだせる存在です。候補としては、闇の帝王と黒い魔法使いです。誰の事かは分かりますね?」

 

メルセデスが挑戦的な笑みを向けてくる。闇の帝王は誰でも答えられるだろう。黒い魔法使いはあまり知られていない呼び名だろうけど、存在自体はよく知られているはずだ。

 

「ヴォルデモート卿とゲラート・グリンデルバルド氏だね。どちらも英雄に打ち倒されてしまっているけど、彼らはまだ生きているのかい?」

 

ヴォルデモート卿はハリーに、グリンデルバルド氏はダンブルドア校長にそれぞれ打ち倒されている。その後どうなったのかまではあまり気に止めて来なかったから僕には分からなかった。

 

「ヴォルデモート卿は遺体が発見されていません。何があったにせよ、彼ほどの闇の魔法使いならば死を回避する方法の一つや二つは持っていたでしょう。今はどこかに潜伏していると考えています。グリンデルバルドの方は現在オーストリアの監獄、ヌルメンガードに囚われたままです。獄中死したなら大きく報道されていると思うのでまだ生きてはいるのでしょうね。」

 

メルセデスの意見はどちらもまだ生きているという内容だった。もしそれが本当なら、英雄に打ち倒されて尚生きている最悪の闇の魔法使い達は今どんな気持ちで生きているのだろうか?

 

「私としては、この二人がまだ再起を狙っていることを望んでいます。彼らと手を組むことが出来たならば、出来なかった場合と比べて私の計画を十年は早めることができます。まあ、在学中に彼らと接触出来る可能性はかなり低いです。あまり期待はしていませんが。」

 

在学中の闇の魔法使いとの接触をメルセデスは諦めているようだ。だけど、やりようによっては接触出来る機会があるように思える。

 

「メルセデス、今のホグワーツにはハリーが居る。彼を狙って帝王の配下がホグワーツに現れることも有るんじゃないのかな?帝王が消えた後にも魔法省の追求から逃げ延びた配下も居るはずだ。中には自分の主を奪った憎い英雄を許しておけずに直接手を下そうとする人物が居るかもしれない。その人物に何とか渡りをつけられれば在学中に接触出来るかもしれない。」

 

僕の発言にメルセデスは首をかしげていたが、暫くすると合点がいったというような顔をした。

 

「.....そういえばそうですね。彼があまりにもらしくない背格好をしているので彼が闇の帝王を打ち倒した張本人であることを失念していました......ダニーの言うとおり、ハリーが虫を引き寄せるランタンになってくれる可能性は高いでしょう。機会を逃さないようにしていきたいところです。」

 

ハリーが哀れでならない。色んな意味で。からかい半分でメルセデスに抗議じみた視線を送ると、彼女は素知らぬ顔で横を向いてしまった。

 

「目標の確認はこのくらいにしておきましょう。次は今日あったことの報告ですね。ダニーからお願いします。」

 

何かを誤魔化すようにメルセデスが早口で言ってのける。まあ、これ以上からかうと拗ねられるかもしれないし素直に従っておこう。

 

「それじゃ始めるよ。知っての通り僕はグリフィンドールに組分けされた。組分け帽子に情報を抜かれることはなかったよ。ああそうだ、ルームメイトにハリーが居るんだよ。これはかなり都合が良いと思う。」

 

メルセデスは少し驚いたように目を開くと、直ぐに目を細めて微笑んだ。

 

「ルームメイトにハリーが居るんですか?それは良いことです。一つ屋根の下....とは少し違いますが、同じ空間を共有することで相手に対して信頼感を得ることは私とダニーで証明済みです。ダニーにはハリーにとって信頼出来る友人となり、彼の動向をある程度制御できるようになって欲しいですね。」

 

メルセデスは機嫌がよさそうにしているけど、これから言うことは彼女の機嫌を損ねてしまうんだろうな.....

 

「それと......すごく気が進まないけど、出来ればやりたくないんだけど、暫く人前での接触を避けた方が良いんじゃないかと思うんだ。君はマグル生まれと仲良くしていることで非難されるし、僕もあまり良くは思われないだろうからね。勘違いしないでくれよ?僕の行動原理は全て君にある。僕はグリフィンドールの生徒を懐柔して徐々に君の評判を....」

 

「それは駄目です!」

 

メルセデスは大声を出して僕の言葉を遮った。彼女に大声を出されたのはいつぶりだろうか?機嫌を損ねるだろうとは思っていてもここまで強く提案を否定されるとは思っていなかった僕の心臓は大きく脈打っていた。

 

「あなたの行動が私の為であることは言わずとも十分わかっています....ですが、あなたが私から離れていくことは許しません。あなたは、私の協力者である前に友人なのでしょう.....?」

 

鏡の向こうにあるメルセデスの顔は幾つかの感情がぐちゃぐちゃに混ざりあった表情が浮かんでいる。大きいものは怒りと不安。メルセデスは僕が自分の側から居なくなることに不安を覚えている....?彼女は僕が側に居ることを求めていてくれる.....?

 

そう考えた途端、僕の心臓は先程までとは違った理由で大きく脈を打ち始めた。メルセデスが僕を求めてくれている。それだけで僕の胸には言い様の無い歓喜に満ち溢れていく。

 

「そうだ、僕は君の友人だ。何よりも優先するべきは君との時間だった。あの大広間の空気を変えたいあまり大事なことを見落としていたよ。すまない。考えてみれば、僕との関係が無くても君の寮内で向けれる視線の悪意は変わらない。僕だけがその悪意を回避しようなんて烏滸がましいにも程がある。僕も化物(フリークス)の友人としてのそしりを受けよう。」

 

メルセデスの表情に安堵が見え始めた。安心してくれたのかな。

 

「僕の報告は以上だよ。君の報告を聞きたい。」

 

メルセデスは軽く頷くと話を始めた。彼女の表情からは先程のような怒りや不安は消えている。

 

「私は予想通りにスリザリンに組分けされました。組分け帽子には多少怪しまれましたが秘密がバレることはなかったはずです。スリザリンの寮生達からは案の定下に見られているようですが.......それは内心の恐怖を隠しているからだと言われました。」

 

「言われた?誰に?」

 

スリザリン寮にメルセデスに話しかける奴が居たのか?真っ先にマルフォイ一派が思い浮かんだけど、自分達の弱みを敵に伝えるはずは無いから違うんだろう。一体誰が?

 

「実はスリザリンの一年生の一人が私の庇護下に入りたいと言ってきたのですよ。名前はシャロン・ガードナー。マグル生まれを家系に入れたことで純血貴族から疎外された一族の娘だそうです。スリザリン寮内で孤立するとろくなことがないから同じく孤立するであろう私と....といった具合ですね。」

 

納得できる理由ではあるけどよくメルセデスを頼ろうと考えたね.......メルセデスの間違った情報を聞いて育ったなら中々彼女に近づこうとは考えないと思うのだけどよほど肝のすわった人なんだろうか?

 

「そのシャロンという人はメルセデスから見てどう思ったんだい?僕らの協力者になり得るかな?」

 

シャロンという人物が計画に関わらせられる協力者になり得るなら一歩前進したことになる。メルセデスが彼女を信用するなら僕には否はない。

 

「そうですね....見た目は人畜無害な小動物なのですが、中身はかなり計算高いというか悪どいというか.....自分の保身のためなら化物に近づくことも人を殺すことも厭わない人柄のようです。私もまだ彼女のことをよく知らないので、計画に関わらせるかどうかはこれからの観察によって決めようかと。」

 

なるほど、現時点では状況によっては簡単に裏切るタイプに見えるようだ。観察は妥当な判断だね。

 

「私の方からは以上です。もう夜も遅いので今日はこの辺りで終わりたいと思います。そろそろ眠くなってきましたからね。他に何か有りますか?」

 

そう言いながらメルセデスは小さくあくびをした。僕も今日は色々あって疲れたし、ここで終わることには賛成だ。

 

「いや、もう何もないよ。それじゃあお休み、メルセデス。.....また、明日。」

 

「はい、お休みなさい。ダニー。また明日会いましょう。」

 

鏡からメルセデスの顔が消えて僕の顔が映った。魔法が切られたようだ。

 

鏡を片付けてベッドに潜り込む。横になりながら明日からのグリフィンドール内での立ち回りを考えていると、直ぐに意識が沈んでいった。

 

 

 

 

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