ハリーポッターと化物となった少女   作:96℃

25 / 45
化物(フリークス)と賢者の石 十三

 

 

sideメルセデス

 

 

 

 

入学の日からもう五日ほど経ったが、ホグワーツでの生活は予想を遥かに越える困難に満ちていた。一番厄介なのはホグワーツ中に張り巡らされた百四十二もの階段だ。突然一段消える階段に特定の日に違う所へと繋がる階段、その他様々な迷惑極まりない階段が授業へと向かう私達に立ち塞がる。ホグワーツでは階段だけではなくありとあらゆる物が魔法によって動き回っており、それら全てを把握しようとするだけで一つの学問が出来るのではないかと思う程だ。

 

スリザリン生とのもめ事は想像していたよりも少なかった。大半の生徒は私の姿を見て陰口になっていない陰口を叩くくらいで直接突っ掛かって来るのはマルフォイとその取り巻きくらいのものだった。そのマルフォイ達にしたって手を出してくる訳では無い。汽車での投げ飛ばしが効いているのか大人しいものだ。

 

私は一番厄介なのは階段だと考えているが、他の生徒からすれば階段より厄介なものが少なくとも二つ....否、二人はいるようだ。その二人とはポルターガイストのピーブズとホグワーツ管理人のフィルチである。

 

ピーブズは活動している時間の全てをいたずらに捧げていて、そのターゲットは生徒から教員まで多岐に渡っている。ゴミを頭から被せる、物を投げつけてくる等のいたずらを廊下を歩く人間に対して仕掛けてくるのだが、彼が唯一恐れている存在、スリザリン付きのゴーストである血みどろ男爵に遠慮してかスリザリン生に手を出してくることは殆ど無い。

 

管理人のフィルチはスリザリン生に対しても容赦なく罰則を受けさせようとしてくる。少しでも規則違反の兆候が生徒に見えた瞬間彼は何処からともなく飛んできて、例えわざとでなくても徹底した追及をしてくる。生徒に罰則を受けさせることが生き甲斐な彼の行動からは生徒に対する憎しみのようなものが透けて見えるのだが、何故そんな危険人物をホグワーツの管理人に置いているのかが全く分からない。

 

しかし、何故か私は彼の追及を受けた事が無かった。興味本位で四階の立ち入り禁止の廊下の入り口に嫌がるシャロンを引きずって近づいた際に現場を見られたのだが(そこにはダニーとハリー、ロンもいた。どうやら順調に仲を深めているらしい)彼は何故か私と私の背中にかじりついていたシャロンを無視して他の三人に対して脅しを開始したのだ。理由はまだ分からない。ハリーとロンからは助けを求めるような目で見られたが、悟ったような顔をしたダニーに早くこの場を去るように目で促されたので早々に退散した。

 

ダニーと言えばだが、初日の連絡会で彼から接触を避けることを提案されたのだ。もちろん問答無用で却下した。私との接触を断っている内に他の人間にかっさらわれては敵わない。ダニーはずっと私の側に居ればいい。

 

シャロンとダニーの顔合わせは二日目の朝食の時間にさっさと済ませておいた。スリザリン生がグリフィンドールのテーブルに行ったら袋叩きにされると必死に逃げようとするシャロンの首根っこを掴み、グリフィンドールの席に座っていたダニーの元へと突貫したのだ。

 

案の定グリフィンドールの生徒達からの猛ブーイングが私達を歓迎してくれたが、もう気にしないことにした。どうせ遠くない未来私が起こす戦争によって殺されるかもしれない有象無象共だ。既に死んでいるような連中に払う注意など無駄にしかならない。全て笑顔で黙殺する。私が何の反応も示さないのを見て彼らはつまらなそうに食事へ戻った。目だけはこちらを憎々しげに睨み付けている。

 

ダニーは猫のように首を掴まれてぶら下がっているシャロンを見て一瞬ひきつった表情をしたが、直ぐに何時もの笑顔になって迎えてくれた。

 

「おはようございます、ダニー。見てください、私の新しい友人ですよ。」

 

「友人だと思ってくれているならこんな小動物みたいな運び方しないでください!恥ずかしいし惨めです!」

 

ダニーの前につき出されたシャロンが喚きだしたので仕方なく下ろす。運ばれ方に不満があるなら最初から逃げなければいいのに。

 

「っとっと。え〜、メルセデスの友人になりましたシャロン・ガードナーです!四階の廊下の前で一度会いましたよね?あなたのことはメルセデスからよ〜く聞いています。よろしくお願いしますね、ウォードさん!」

 

シャロンはよ〜くの部分を強調して言った。少しダニーがどんな人か数時間に渡って話しただけなのに大げさだ。

 

「ああ、よろしく。僕のことはダニエルと呼んで欲しい。メルセデスには敵が多いからね。メルセデスの友人になってくれたことには感謝してる。....色々と大変だろうけど頑張って。」

 

シャロンは何やら感激したような顔をしている。シャロンにもダニーの素晴らしいところが分かったようだ。

 

「良かった.....こっちは常識人だった.....私のことはシャロンと呼んでください。それで....その.....そっちの凄くこっちを睨んでいる人はどなたですか...?」

 

気づくと少し遠くに居るロンが嫌悪感丸出しの目でシャロンを見ている。また持病のスリザリン嫌いを発症しているらしい。ロンの隣にはハリーもいた。

 

「彼はロナルド・ウィーズリー。僕の友人だよ。すまない、彼はスリザリンが嫌いでね.....まあメルセデスのことは認めたようだから君も認めてくれるさ。」

 

「ああ、純血のウィーズリー家の方なんですか....それなら.....」

 

何か思い付いた様子のシャロンはロンの方へと歩きだした。ロンは彼女が自分から近づいていくるとは思っていなかったのか目に見えて慌て始める。

 

「あなた、ウィーズリー家の方なんですか。血の裏切りだって言われている......」

 

「そうだよ!お前も僕の家を侮辱しに来たのか?そうだったら許さないぞ!」

 

ロンは警戒心を顕にしてシャロンを睨み付け続けている。

 

「私の名前はシャロン・ガードナーです。ガードナーという家名に聞き覚えは?」

 

「ガードナー?そういえばママとパパが何か話していたような.....」

 

ロンはガードナー家の名前に心当たりがあるようだ。

 

「私には兄が居るんですが、兄が結婚した女性がマグル生まれなんですよ。だから私の家も血の裏切りだって言われてるんです。あなたとは仲良く出来るんじゃないかって思って......やっぱり、スリザリン生はお嫌いですか?」

 

シャロンがしょんぼりとした顔でロンに上目遣いをすると、彼の顔はみるみる赤くなっていった。

 

「えっと、いやっ、べ、別に、君なら仲良くしても良いかな〜なんて.....」

 

ロンは小動物的な可愛さを持つシャロンの上目遣いにあっさりと陥落したらしい。情けない。

 

「前もメルセデスと一緒にいたよね?四階の廊下でメルセデスの背中にしがみついてたし.....君もメルセデスの友達なのかい?」

 

横にいたハリーがシャロンに話しかけた。ハリーも若干顔を赤くしているがロンのような醜態を晒していない分かなりましだろう。

 

「はい、初日にスリザリンのグループから除け者にされていた所をメルセデスに話しかけてもらってそのまま友達になって貰いました!思ったよりも大変な人ですけどね......あ、そういえばあなたは....?」

 

「僕はハリー、ハリー・ポッター。」

 

「あなたがあのハリー・ポッターなんですか!?」

 

ハリーの名前を聞いたシャロンは少し大袈裟に驚いて見せた。シャロンはハリーのことも私から聞かされていたはずなので、あの会話も含めて全て演技なのだろう。持ち上げて相手の気を良くしようとする意図が見える。

 

「お会い出来て光栄です!ポッターさん!あなたもメルセデスの友達なんですか?」

 

「うん。そうだよ。メルセデスとダニエルは僕が魔法界に来てから初めて出来た友達なんだ。」

 

「へぇ〜!メルセデスと友達ならこれから私とも関わる機会があると思います。その時はよろしくお願いしますね!シャロンと呼んでください!」

 

「僕もハリーでいいよ。」

 

シャロンはちゃっかりハリーとも友好を結ぼうとしている。まあ、彼女の立場上有力者と関わりを持っておくことは重要なことなのだろう。

 

「僕もメルセデスやダニエルと友達なんだ!僕も関わることがあると思うからよろしく!ロンってよんでくれ、僕も君のことをシャロンって呼んでいいかい?」

 

ロンがハリーに負けじとシャロンと仲を深めようとする。何を考えているかは見え見えだ。

 

「ダニーはあんなことしませんよね?」

 

「僕にはメルセデスしか見えていないからね。でもまぁ、ロンも年頃の男なんだしあまり否定しないであげてくれ。男としては正常な反応だから......多分。」

 

そういうものなのだろうか?まぁ、ダニーがああならなければ気にすることはないか。

 

それから暫くハリー達と話して戻ってきたシャロンを連れてスリザリンの席へと戻る。後ろではダニーが周囲のグリフィンドール生に質問攻めされていたが彼なら何とかするだろう。

 

スリザリンの席に戻ってくると待っていたのはやはりマルフォイ御一行だった。

 

「おいウォルター。お前が会いに行っていたのはマグル生まれの生徒だろう?親のようにマグルを殺す下調べでもしてきたのかい?ガードナーもそうだ、ウィーズリーの末子と仲良さそうに話していたじゃあないか。同じ血の裏切り同士で傷の舐め合いをしていたんだろう?もしかして、あいつに好意でも抱いているのか?あいつと結婚なんてしてみろ。待っているのは身につけるものが全てお下がりになる生活だ!惨めなものだな!」

 

マルフォイは相変わらずのにやけ面で畳み掛けてくる。後ろの豚二人もマルフォイに追随するようにせせら笑いをしているが自分の名前すら満足に喋れなさそうな二人だ、きっと話の中身が分かっていないに違いない。

 

「別に彼に好意を抱いている訳ではありませんよ!それに、例え好意を抱くとしてもあなたのような純血かぶれの嫌味ったらしい男より彼の方がましです!」

 

「私の一族が殺してきたのは何もマグルだけではありませんよ?先に目の前の純血貴族様から殺して差し上げても構わないのですが...?」

 

そう言いながら懐から杖を取り出すとマルフォイの顔が僅かに強張った。

 

「相変わらず野蛮な奴だ!こんな奴と話していたら僕の品も下がってしまうよ。いくぞ、クラッブ、ゴイル。」

 

微妙な捨て台詞を残すとマルフォイはさっさと大広間から出ていってしまった。杖を見せただけで逃げ腰になるようではまだまだ私の脅威にはなり得ない。

 

「ふん!メルセデスが杖をだしただけでびびる腰抜けは居なくなりました!ほら、早くご飯を食べましょう!」

 

このようにしてダニーとシャロンの顔合わせと些細な言い争いは終わった。その後に待ち受けていたのは様々な魔法の授業だった。

 

 

 

 

 

 




次回 授業風景

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。